「VOCA展 2009 受賞作家トークVol.2『樫木知子・高木こずえ』」 上野の森美術館

上野の森美術館台東区上野公園1-2
「VOCA展 2009 受賞作家トークVol.2『樫木知子・高木こずえ』」
3/15 15:00~



Vol.1の三瀬夏之介に続きます。VOCA展初日の受賞作家トークより、樫木知子・高木こずえの対談部分をまとめてみました。

「VOCA展 2009 受賞作家トークVol.1『三瀬夏之介』」

[樫木知子(VOCA奨励賞)]

司会 支持体が二枚あるがこれは全体で一つの作品なのか。

樫木 一点一点、それぞれに独立している。二枚で一つではない。

司会 技術的に洗練されているという印象を強く感じる。表面の細かな木目などはどのようにして表現したのか。

樫木 実際に木目を筆で描いた部分とコラージュ風にして貼った部分に分かれている。(後者が3割程度。)ベニアの木目を貼り、そのまま残すこともあるが、あまり奇麗でない木目の時には、薄い着色を施して描くこともある。木目を隠したり開かせたりしているような感覚だ。混ぜ合わせてやっているつもり。

樫木知子「屋上公園」

司会 アクリルの着色の後に何らかの処理をしていると聞くが。

樫木 絵具を付けた後、その塗った絵具を少し落とすようにしてヤスリで表面を削っている。だから常に表面はツルツルになっているはず。

司会 削ることによって生まれた透明感も魅力的だ。その技法はオリジナルのものなのか。

樫木 そう言うわけではない。学生時代、キャンバスの目地を消すためにどうしたら良いかと先生に聞いた時、ヤスリで削る方法を教えてもらった。その方法が自分にあったので今もずっと使っている。

司会 パネル自体がカーブしているが何か理由があるのか。

樫木 筆で引いた線が画面の端に来た時、90度直角の支持体ではそこでとめるのか、さらに横にまで引くのかが自分で良く分からない。だからあえてカーブさせて一本の線が緩やかに続いているような感じに仕上げている。

司会 少女がいたと思ったら、部屋の中に電信柱が立っていたりする。風景はあるのに現実ではないような白昼夢を見ているような気分にもさせられる。人が浮いているのかそれとも立っているのかも判別出来ないような不思議さが魅力的な作品だ。

樫木 そうした面はあるかもしれない。人を描き、それから居場所を探るようにして背景の山や川を描いている。

司会 少女の手足の指が変形しているようにも見えるが。

樫木 人の全体の形のイメージがまずあるので、手足も指もそれに即したもので描いているつもり。実際的な指を描くと、私の描きたい人の雰囲気には合わない。不気味かもしれないが、統一感を考えている。

司会 作品はタイトルが先か、絵のイメージが先なのか。

樫木 絵のイメージが先にある。タイトルはあくまでも後で付ける。

[高木こずえ(府中市美術館賞)]

司会 写真というメディアはいつから使うようになったのか。

高木 高校の時に写真部に入っていた。ただ大学へは写真をやりたいためだけに入ったわけではない。

司会 写真以外の素材を使うことはあるのか。

高木 元々、絵を描くのは好き。ただ美大は自分にとって技術的に難しそうなので諦めた。それに現代アートをどうしてもやりたいという意識もなかった。

司会 初めの頃はどういった写真を撮っていたのか。

高木 モノクロ。銀塩で自分の好きなものばかり撮っていた。

高木こずえ「ground」

司会 今作の技法はどういったものか。

高木 カラーで一度フィルムにおさめ、それを取り込んでデジタル処理している。

司会 様々なモチーフがあるように思えるが。

高木 やはり身近なものを取り込みたいので花や、それに大好きな猫などを入れることが多い。

司会 コラージュの技法について。

高木 コラージュする際、一度色を全部モノクロに変換した上にて、例えば今回であれば金色を帯びた赤で再度統一させていく。また他の作品では別の色を使うことも多い。

司会 作品タイトルの「ground」に込められた意味とは。

高木 これまでは写真を夢中になって撮ってきたが、去年に改めて今後の自分の方向をどうしようかと考えたことがあった。この作品はそうした自分の中の問いの答えでもある。これからの自分の基盤、土台になるようにという点でgroundと名付けた。

司会 作品の中の世界とは。

高木 自分の中に見えて来る世界そのもの。色々なモノが生きて死ぬ、そして土へと返って行くという「生」の循環、そうした部分も表現したかった。

以上です。

作家の言葉は私のような受け手にとって、時に作品に匹敵するような深い印象を与えられることがあります。特に高木こずえに関してはつい先日、馬喰町のTARO NASU(~21日まで)でも個展を見たばかりだったので、より興味深いものがありました。

「高木こずえ 展」 TARO NASU

なおVOCA展全体の感想は、別記事で以下にまとめました。

「VOCA展 2009」 上野の森美術館

*展覧会基本情報
「現代美術の展望 VOCA展2009 -新しい平面の作家たち-」
会場:上野の森美術館
会期:3月15日(日)~3月30日(月)[会期中無休]
時間:10:00~17:00(金曜日のみ19:00閉館、入場は閉館30分前まで。)
料金:一般・大学生:¥500、高校生以下:無料

*次回受賞作家トーク
3/28 15:00~ 浅井祐介、今津景、櫻井えりこ(申し込み不要)
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