「源氏千年と物語絵」 永青文庫

永青文庫文京区目白台1-1-1
「源氏千年と物語絵」
1/10-3/15



源氏物語に関する資料、及び他の物語絵などを紹介します。永青文庫で開催中の「源氏千年と物語絵」へ行ってきました。

 

源氏の展示と聞くと、直ぐさま源氏絵の並ぶ様を連想しますが、今回は永青文庫の主、細川家の誇る桃山期の「最高の源氏学者」(チラシより引用)、細川幽斎(1534-1610)の手がけた様々な研究資料がメインでした。中でも幽斎の書写した「源氏物語」五十五冊と、それを収めた蒔箱には目を奪われます。流麗な文字によって記された大意、そして細かな注釈など、源氏に対する幽斎の熱意と敬意を感じ取れるのではないでしょうか。箱を彩る梅の花々もまた鮮やかでした。



よって物語絵に関しては、主に源氏以外の作品が紹介されています。中でも見るべきは、修復を経て、約5年ぶりに公開されたという重文の「長谷雄草紙」です。これは平安時代の実在した文学者、紀長谷雄(きのはせお)を主人公とする絵巻で、彼が男に変装した鬼と双六勝負に勝ち、百日間は契ってはならない条件で美女を得るものの、途中たまらずに関係を持つことで女は消え、あげくの果てには後に鬼より約束違反を責められるという仰天ストーリーが、生き生きとした精緻な筆にて表されています。展示の最後は、ちょうど鬼に問いつめられる紀長谷雄が焦りながら、神に祈りを捧げて退散を願うシーンでした。また彼の念じた神は、もう一点紹介されていた「北野天神縁起絵巻」にも登場する道真公であったそうです。自分で約束を反故にしたばかりか、最後の必至の神頼みとは何とも虫の良い話ではないでしょうか。ちなみに両絵巻とも巻替えでの一部分のみの公開です。ご注意下さい。



永青文庫へは初めて行きました。鬱蒼とした茂みの中の建物の外観をはじめ、古びて傷んだ書棚の並ぶ内部空間などは、廃屋風ならぬ隠れ家と言った趣が感じられます。実際、隣接の野間のイメージで出向いたので、その秘境的な佇まいには驚かされるものもありました。



HPの記載の通り、お出かけには目白から椿山荘へ向かうバスが便利のようです。行きは副都心線雑司ヶ谷駅から目白通りを、帰りは新江戸川公園から神田川沿いを江戸川橋駅まで歩きましたが、両者とも早歩き気味でたっぷり15分はかかりました。雰囲気は悪くありませんが、一人歩きするにはやや寂しいところです。

「源氏物語1/新潮文庫/円地文子訳」

今更ながら源氏を円地訳でほぼ読み終えたところなので、私としてはタイムリーな展示ともなりました。次の日曜日、15日まで開催されています。
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