「チャロー!インディア - インド美術の新時代 - 」 森美術館

森美術館港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
「チャロー!インディア - インド美術の新時代 - 」
2008/11/22-2009/3/15



インドを舞台に活躍する27組のアーティストを紹介します。森美術館で開催中の「チャロー!インディア - インド美術の新時代 - 」へ行ってきました。

インスタレーション、絵画、映像、オブジェなど、インドのアートシーンを多様なジャンルから切り取る展覧会です。以下、印象深かった作家を挙げてみました。



バールティ・ケール
冒頭に登場する巨大な象のオブジェ。我々からするともはや象はインドの記号だが、その表面には精子のモチーフが無数にちりばめられていた。メスの象に身体装飾としての精子と、ジェンダーの視点も考えさせられる。

N・S・ハルシャ
会場全体に計10個設置された監視員用の椅子。そこに様々な趣向をこらした装飾が施される。作品に座る監視員を見る鑑賞者。簡単極まりない方法で主客を逆転させた展示の在り方を提示していた。

ジティッシュ・カッラト
かつてのムンバイの移動手段でポピュラーだった三輪車を『白骨化』させる。形を失った車はもはや遺跡ともなっていた。

A・バラスブラマニアム
展示室壁面に貝殻を埋め込む。作家の何らかの訴えが聞こえて来るスピーカーのようだ。



ヴィヴァン・スンダラム
都市にひしめく無数のゴミにて一種のランドアートを作り上げる。以前、渋谷のワンダーサイトで見たムニーズの手法に近い。色とりどりのバケツや空き缶が絵画の『素材』となっていた。見立てのアート。

トゥシャール・ジョーグ
郵便ポスト兼サングラス販売ボックス。インドで問題となる無届け露天商のための解決策を提示した作品。警察が取締りに来たら素早く閉め、ポストに仕立ててごまかすのだろう。何とも皮肉。

プシュパマラ・N
南インド先住民に注目したポートレート。インドとは一口に言えども、その実は多種多様であることが良く分かる。



スボード・グプタ
白銀に輝く金属器を大量に吊るしたオブジェ。ホワイトキューブにも映えて美しい。その形はまるで蓑虫のようだった。

ヘマ・ウパディヤイ
バラックや古びたビルも並ぶインドのスラムを模型でつくり、その下に52階よりの東京の実景を合わせて提示する。混沌として美しいとは言えないインドの架空の町並みは、ひたすら横へ膨張し続けて引き締まらない澱んだ東京の夕景と大差ないのかもしれない。(なお景色は日没後のみ公開)

シルパ・グプタ 
大掛かりな双方向型の映像インスタレーション。シルエット状に映る観客を取り込んで『ゴミ』をキーワードとした映像が流れる。上からゴミが落ちてきて観客にまとわりついていた。途中、偶然と一人になったが、全てのゴミが自分に引っ付いてきて驚いた。最後にはゴミに呑まれて影形もなく消え失せてしまう。

ジャガンナート・パンダ
一見するところ単なるアクリル画にしか思えないが、細部に目を凝らすと細やかな刺繍が施されていた。また一本の木の枝先は時に獣の手となり、古来の神々が舞うモチーフ自体も面白い。

以上です。

時間に余裕がなかったので、無料音声ガイドを借りてじっくり見るまでに至りませんでしたが、それでも素直に楽しめる作品が多いように思えました。インドの土着性、そして社会問題へ鋭く迫るものも少なくありませんが、メッセージ性に優位な状況はそう他の地域の現代アートと変わるものではありません。むしろこの手の『ご当地もの』系の中では、言わば普遍的な手法を確立し得たアートが目立っていたのではないでしょうか。地域性に由来する違和感はあまり覚えませんでした。

3月15日まで開催されています。
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