「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」 ギャラリー・エフ

ギャラリー・エフ台東区雷門2-19-18
「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」
3/26-5/9



ギャラリー・エフで開催中の「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」へ行ってきました。

唐突ですが「女書」(ニューシュ)という言葉をご存知でしょうか。これは中国の湖南省の一部の地域において、主にヤオ族と呼ばれる女性たちだけが使ってきた特殊な文字のことで、起源は諸説あるものの、おおよそ数百年間に渡って伝承されてきたそうです。しかしながら2004年、女書の最後の伝承者と言われた女性が死亡し、文化としては事実上消滅してしまいました。

そしてこの展覧会では、そのような女書を研究者の遠藤織枝が紹介しつつ、その文字に感銘を受けたアーティストのYUKAが、同じく女書からインスピレーションを受けた一つのインスタレーションを披露しています。



ギャラリー・エフは19世紀、江戸末期に建築され、現在は有形文化財としても登録された古い土蔵作りの二階建ての建物です。現在は一階手前部分がカフェとバー、そして奥の土蔵部分が展示スペースになっています。その一階の土蔵の狭い入口を潜って見えるのが、YUKAによる3万粒のクリスタルを用いたインスタレーションでした。



これは「女書の語る美しい煌めきと悲哀の物語」(解説冊子より引用)をイメージしたものだそうです。実際に彼女は2001年、中国へ足を運び、女書との出会いを果たしました。



そしてはしご段を上がり、二階部分で紹介されているのが、女書のオリジナルの文字です。



言語学の専門家で、現在は文教大学の名誉教授でもある遠藤織枝は、92年より女書のフィールドワークをはじめ、その研究と保存に尽力してきました。

また研究の経緯については遠藤のWEBサイトが参考になります。

女書世界



展示ではパネルにて女書による歌も紹介されていました。なお「三朝書」と呼ばれる小冊子には、結婚時、母から女性に贈られた詩が記されているのだそうです。



そのあたかもガラス細工とも刺繍とも言えるような文字の繊細さに、時に封建社会の中で教育を受けることも許されなかったという女書を伝承してきた女性たちの悲しみも感じられはしないでしょうか。文革期には女書による作品は破棄されたこともあったのだそうです。

非常に簡素な展示でしたが、浅草へお出かけの際は立ち寄られてみては如何でしょうか。

5月9日まで開催されています。
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