N響定期 「マーラー:交響曲第9番」 ブロムシュテット

NHK交響楽団 第1670回定期公演 Aプログラム2日目

マーラー 交響曲第9番

管弦楽 NHK交響楽団
指揮 ヘルベルト・ブロムシュテット

2010/4/11 15:00~ NHKホール



N響定期からブロムシュテットのマーラー「交響曲第9番」を聴いてきました。

例えばうねり云々を要求する、いわゆるマーラーとしては正統派の演奏ではなかったかもしれませんが、ブロムシュテットらしい端正な、それでいて細部にスコアを抉るような緻密さをも兼ね備えた、非常に格調の高いマーラーであったのではないでしょうか。第1楽章から始まるどこか諦念的なフレーズも、決してお涙頂戴風に情緒一辺倒に流すのではなく、時に縦の線を意識させるように音楽を構築していきます。また第2楽章の舞曲や第3楽章の特にスケルツォ部分も楷書体です。各パートを相互に浮き上がらせる透明感に満ちた響きで、澱みなく、また颯爽と曲を進めていました。良く語られる「悲痛な告白」(解説冊子)を聞くというよりも、音の伽藍の美しさそのもので勝負する演奏であったと言えるかもしれません。

長大なアダージョがこの世との別れを告げる第4楽章はそれまでと一転、音を紡いで一つの大きな渦へとまとめていくような、横のラインへ大きく振幅するスケールの大きな演奏へと変化しました。寄せては返すさざ波や大波は、心の襞に染み入るように伝わってきます。そのドラマというよりも、純化された響きの儚さには涙もこぼれるほどでした。

私自身、偏愛している曲なのでどうしても感興が強くなってしまいますが、この日は久々に音楽が終わって欲しくないという気持ちにさせられました。最後のピアニッシモはいつしか消え行く魂のようにホールで彷徨っていきました。

G MAHLER Symphony Nr 9 Last Movement Adagio Abbado GMJO 1 3


終演後は盛大なカーテンコールが続き、最後にはブロムシュテットだけがステージに呼ばれるいわゆる一般参賀が行われました。力を出し切ったN響にも大きな拍手が贈られていたのは言うまでもありません。
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