都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「誕生!中国文明」 東京国立博物館
東京国立博物館(台東区上野公園13-9)
「誕生!中国文明」
7/6-9/5
東京国立博物館で開催中の「誕生!中国文明」へ行ってきました。
漠然と「中国文明」とあっても展示の具体的なイメージがなかなかわきませんが、今回紹介されているのは、最近発掘調査が進む、黄河中流域の河南省出土の文物、例えば青銅器や金銀器、また彫刻など、約150点でした。そしてタイトルのもう一つ「誕生」とは、遡ること紀元前2000年、中国最古の王朝「夏」が河南省に興ったことにも由来して付けられています。もちろん会場ではそうした紀元前のものだけでなく、例えば後に同じく河南省で栄えた北魏や北宋期、つまりは12世紀に至るまでの仏像や陶磁器なども多く登場していますが、メインはやはりそうした時期の考古品になるのかもしれません。
美の誕生/鎮墓獣(ちんぼじゅう)
河南博物院蔵
展示は単純な時系列ではなく、「王朝の誕生」、「技の誕生」、そして「美の誕生」といった、比較的取っ付き易いテーマ別の三部構成となっています。時代はもちろん、ジャンルも多様ということで見所をあげればキリがありませんが、展示品より私の気になったものを簡単にあげてみました。
王朝の誕生/動物紋飾板(どうぶつもんかざりいた)
洛陽博物館蔵
「動物紋飾板」(夏時代・前17~前16世紀/洛陽博物館蔵)
ちらし表紙にも登場する動物の形をした小さな飾り板です。真上から見た姿とのことでしたが、一見では動物とは分からないかもしれません。はめ込まれたトルコ石がきらきらと美しい光を放っていました。
王朝の誕生/金縷玉衣(きんるぎょくい)
河南博物院蔵
「金縷玉衣」(前漢時代・前1世紀/河南博物院蔵)
何と2008枚にも及ぶ玉片で出来たという衣です。当時の高貴な身分の女性を埋葬する際に用いられていました。ちなみにかつては玉片の一つ一つを金の糸で結びつけていたそうです。玉による耳栓や鼻栓までもあわせて展示されていたのには驚かされました。
「案」(戦国時代・前4~前3世紀/河南省文物考古研究所蔵)
案とは机を意味します。少し反り返った上部には赤と黒の円の模様が力強く描かれていました。ちなみにこの作品を入れたガラスケースが、東博の展示でたまに登場する古いタイプのものです。その格式のあるケースがまた作品を引き立てていて見事でした。
「銀製十花形杯」(唐時代・8~9世紀/洛陽博物館蔵)
西域から伝来したという酒器です。表面には非常に精緻な丸紋があしらわれています。ともかく肉眼では分かりにくいほど細かいので、ここは単眼鏡があっても良いかもしれません。
「金製アクセサリー」(北宋時代・11~12世紀/洛陽博物館蔵)
これまた実に細やかな技巧を施した金のアクセサリーです。宋の貴族がつけていました。こちらにトルコ石がいくつもあしらわれています。
美の誕生/神獣多枝灯(しんじゅうたしとう)部分
河南省文物考古研究所蔵
「神獣多枝灯」(後漢時代・1世紀/河南省文物考古研究所蔵)
三層構造による縦1mはゆうに超えた大型の燭台です。龍の上に羽人と呼ばれる仙人が股がっています。当時のものがそのまま残っているのか、作品の随所に赤い彩色がうっすらとかかっていました。
美の誕生/神獣(しんじゅう)
河南省文物考古研究所蔵
「神獣」(春秋時代・前6~前5世紀/河南省文物考古研究所蔵)
完全な青銅製かと思いきや、随所にトルコ石がはめ込まれている象嵌の神獣像です。体の表面には鳳凰などの紋様が無数に描かれています。頭の上を飾る小さな龍の像には躍動感がありました。
美の誕生/宝冠如来坐像(ほうかんにょらいざぞう)
龍門石窟研究院蔵
「宝冠如来坐像」(唐時代・8世紀/龍門石窟研究院蔵)
展示室内でも一際目立つ、非常に大きな如来坐像です。龍門石窟から出土したとのことで、素材は石灰石でした。険しくつり上がった目に異様な迫力を感じたのは私だけでしょうか。宝冠の紋様は比較的細やかでした。
「卜骨」(商時代・前13~前11世紀)
古代の占いに用いられた獣の骨です。何気ない作品のようにも見えますが、そこに刻まれた文字に注目して見て下さい。甲骨文字と呼ばれる漢字の祖先が記されていました。
「関中侯印」(後漢時代・3世紀/河南博物院蔵)
河南省と言えば三国志の英雄、曹操の墳墓が発見されたことでも話題になりましたが、こちらには215年に曹操が定めた官位を記した金印が展示されています。こては三国志ファンには嬉しい作品です。
王朝の誕生/九鼎(きゅうてい)八き(はっき)
河南省文物考古研究所蔵
最近の東博をしてみれば当然かもしれませんが、作品の見せ方などにも十分な配慮がなされている点も見逃せません。仏像や楼閣の露出展示はもちろんのことですが、とりわけ鄭国祭祀遺跡から出土した春秋時代の青銅器群の一括展示には感心しました。暗幕に遮られた薄暗い空間の中、10メートル近くはあろうかという大きなケースに並ぶ青銅器の美しさは、一つのインスタレーションの域に達していたかもしれません。
王朝の誕生/じこう
河南省文物考古研究所蔵
総勢150点の作品数は東博の特別展としてはさほど多いわけではありませんが、体感的にはもっと多くの作品のあるような気がしました。私自身も会場に約2時間ほどいましたが、あらかじめ時間に余裕をもって臨んだ方が良いかもしれません。
人出は東博特別展にしては余裕がありましたが、一部の小さな工芸品の前では列も出来ていました。なお途中の展示替えはありません。(出品リスト)
9月5日まで開催されています。なお東京展終了後、九州(10/5~11/28)、奈良(2011/4/5~5/29)の各国立博物館へと巡回します。
注)展示風景写真(広報用画像)については主催者の許可を得て掲載しています。
「誕生!中国文明」
7/6-9/5
東京国立博物館で開催中の「誕生!中国文明」へ行ってきました。
漠然と「中国文明」とあっても展示の具体的なイメージがなかなかわきませんが、今回紹介されているのは、最近発掘調査が進む、黄河中流域の河南省出土の文物、例えば青銅器や金銀器、また彫刻など、約150点でした。そしてタイトルのもう一つ「誕生」とは、遡ること紀元前2000年、中国最古の王朝「夏」が河南省に興ったことにも由来して付けられています。もちろん会場ではそうした紀元前のものだけでなく、例えば後に同じく河南省で栄えた北魏や北宋期、つまりは12世紀に至るまでの仏像や陶磁器なども多く登場していますが、メインはやはりそうした時期の考古品になるのかもしれません。
美の誕生/鎮墓獣(ちんぼじゅう)
河南博物院蔵
展示は単純な時系列ではなく、「王朝の誕生」、「技の誕生」、そして「美の誕生」といった、比較的取っ付き易いテーマ別の三部構成となっています。時代はもちろん、ジャンルも多様ということで見所をあげればキリがありませんが、展示品より私の気になったものを簡単にあげてみました。
王朝の誕生/動物紋飾板(どうぶつもんかざりいた)
洛陽博物館蔵
「動物紋飾板」(夏時代・前17~前16世紀/洛陽博物館蔵)
ちらし表紙にも登場する動物の形をした小さな飾り板です。真上から見た姿とのことでしたが、一見では動物とは分からないかもしれません。はめ込まれたトルコ石がきらきらと美しい光を放っていました。
王朝の誕生/金縷玉衣(きんるぎょくい)
河南博物院蔵
「金縷玉衣」(前漢時代・前1世紀/河南博物院蔵)
何と2008枚にも及ぶ玉片で出来たという衣です。当時の高貴な身分の女性を埋葬する際に用いられていました。ちなみにかつては玉片の一つ一つを金の糸で結びつけていたそうです。玉による耳栓や鼻栓までもあわせて展示されていたのには驚かされました。
「案」(戦国時代・前4~前3世紀/河南省文物考古研究所蔵)
案とは机を意味します。少し反り返った上部には赤と黒の円の模様が力強く描かれていました。ちなみにこの作品を入れたガラスケースが、東博の展示でたまに登場する古いタイプのものです。その格式のあるケースがまた作品を引き立てていて見事でした。
「銀製十花形杯」(唐時代・8~9世紀/洛陽博物館蔵)
西域から伝来したという酒器です。表面には非常に精緻な丸紋があしらわれています。ともかく肉眼では分かりにくいほど細かいので、ここは単眼鏡があっても良いかもしれません。
「金製アクセサリー」(北宋時代・11~12世紀/洛陽博物館蔵)
これまた実に細やかな技巧を施した金のアクセサリーです。宋の貴族がつけていました。こちらにトルコ石がいくつもあしらわれています。
美の誕生/神獣多枝灯(しんじゅうたしとう)部分
河南省文物考古研究所蔵
「神獣多枝灯」(後漢時代・1世紀/河南省文物考古研究所蔵)
三層構造による縦1mはゆうに超えた大型の燭台です。龍の上に羽人と呼ばれる仙人が股がっています。当時のものがそのまま残っているのか、作品の随所に赤い彩色がうっすらとかかっていました。
美の誕生/神獣(しんじゅう)
河南省文物考古研究所蔵
「神獣」(春秋時代・前6~前5世紀/河南省文物考古研究所蔵)
完全な青銅製かと思いきや、随所にトルコ石がはめ込まれている象嵌の神獣像です。体の表面には鳳凰などの紋様が無数に描かれています。頭の上を飾る小さな龍の像には躍動感がありました。
美の誕生/宝冠如来坐像(ほうかんにょらいざぞう)
龍門石窟研究院蔵
「宝冠如来坐像」(唐時代・8世紀/龍門石窟研究院蔵)
展示室内でも一際目立つ、非常に大きな如来坐像です。龍門石窟から出土したとのことで、素材は石灰石でした。険しくつり上がった目に異様な迫力を感じたのは私だけでしょうか。宝冠の紋様は比較的細やかでした。
「卜骨」(商時代・前13~前11世紀)
古代の占いに用いられた獣の骨です。何気ない作品のようにも見えますが、そこに刻まれた文字に注目して見て下さい。甲骨文字と呼ばれる漢字の祖先が記されていました。
「関中侯印」(後漢時代・3世紀/河南博物院蔵)
河南省と言えば三国志の英雄、曹操の墳墓が発見されたことでも話題になりましたが、こちらには215年に曹操が定めた官位を記した金印が展示されています。こては三国志ファンには嬉しい作品です。
王朝の誕生/九鼎(きゅうてい)八き(はっき)
河南省文物考古研究所蔵
最近の東博をしてみれば当然かもしれませんが、作品の見せ方などにも十分な配慮がなされている点も見逃せません。仏像や楼閣の露出展示はもちろんのことですが、とりわけ鄭国祭祀遺跡から出土した春秋時代の青銅器群の一括展示には感心しました。暗幕に遮られた薄暗い空間の中、10メートル近くはあろうかという大きなケースに並ぶ青銅器の美しさは、一つのインスタレーションの域に達していたかもしれません。
王朝の誕生/じこう
河南省文物考古研究所蔵
総勢150点の作品数は東博の特別展としてはさほど多いわけではありませんが、体感的にはもっと多くの作品のあるような気がしました。私自身も会場に約2時間ほどいましたが、あらかじめ時間に余裕をもって臨んだ方が良いかもしれません。
人出は東博特別展にしては余裕がありましたが、一部の小さな工芸品の前では列も出来ていました。なお途中の展示替えはありません。(出品リスト)
9月5日まで開催されています。なお東京展終了後、九州(10/5~11/28)、奈良(2011/4/5~5/29)の各国立博物館へと巡回します。
注)展示風景写真(広報用画像)については主催者の許可を得て掲載しています。
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