「夏秋草図屏風 酒井抱一筆 公開」 東京国立博物館

東京国立博物館・平常展示8室「書画の展開」(台東区上野公園13-9
「夏秋草図屏風 酒井抱一筆 公開」
6/29-8/8

東京国立博物館・平常展第8室で公開中の酒井抱一「夏秋草図屏風」を見てきました。



大琳派展以来ということで、東博では約2年弱ぶりの展示ではないかと思いますが、このような平常展示室での公開はしばらく記憶がありません。比較的、人出も落ち着いた室内で見る「夏秋草図」の味わいもまた良いのではないでしょうか。ちょうど作品の前にソファも用意されていました。既にじっくり堪能された方も多いかもしれません。



専門的な解説については東博WEBサイトなどを参照していただくとして、今回私がふと感じたのは、夏草と秋草のともに見せる、風にそよぎまた水にうたれたその儚気な生命感でした。流麗でかつ澱みのない線にて草花を描くことにかけては琳派随一でもある抱一の筆ではありますが、ここでは薄や昼顔、そして百合などが、あたかもそれ自体が動くかのような生気を持って妖艶にかつ、言ってしまえばどこか官能的に絡み合うかのようにして描かれています。



そもそもこの作品は言うまでもなく光琳の大作「風神雷神図屏風」の裏面に描かれたこともあり、そもそもモチーフとしての藤袴や百合などに光琳への追慕の念がこめられているのはよく指摘されますが、その強い想いはこの屏風におけるそれぞれの草花の相互の関係にも反映されているように思われてなりません。



画中で薄のように自在に光琳への想いを馳せる抱一は、涙の雨から光琳を象徴する百合を優しく抱き、また野分からも思い草である女郎花をそっと守っていました。

「夏秋草図屏風」は抱一の名をまだ知らなかった2004年、東京国立近代美術館でのRIMPA展で一目惚れして以来、私にとってかけがえのない作品の一つになりました。今回も鈍い銀の光に包まれながら、草花の織りなす刹那的な夢物語にしばし思いを馳せることが出来ました。



かなり前、一度、光琳の風神雷神図と対になった形で展示されたこともあったそうですが、改めてそうした構成の上、無理な注文ではありますがケースなしの露出展示で見る機会があればと思いました。

「もっと知りたい酒井抱一/玉蟲敏子/東京美術」

8月8日まで公開されています。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )