都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「宇宙博2014」 幕張メッセ
幕張メッセ 国際展示場10・11ホール
「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」
7/19-9/23
幕張メッセで開催中の「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」のプレスプレビューに参加してきました。
「宇宙。それは最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。」(スタートレック・オープニング・ナレーションより)
もちろん本展、何もスタートレックの展覧会ではありませんが、宇宙への挑戦、探査と言って私がすぐ思いつくのはこの一節。そもそも1970年代、スペースシャトル計画の初代の試験機は、ファンの声によりスタートレックからエンタープライズ号と名付けられたことも知られています。
宇宙博2014は、これまでの人類への宇宙への挑戦を知り、未来へのさらなる展望を切り開く展覧会です。
アポロ司令船(CM) 訓練用シュミレーター レプリカ
会場を追ってみましょう。まずはアポロ。人類初の有人月飛行着陸計画です。実際にNASAで使われた訓練用のシュミレーターのレプリカが出ています。実に精巧、内部の空間もリアルです。ちなみに上のパラシュート、よく見ると無数の穴が空いていることが分かりますが、こちらはようは本物。1972年12月、アポロ17号が太平洋上に着水した際に使用されたものです。
スペースシャトル「アトランティス」フライトデッキ レプリカ
同じく精巧な内部空間といえばスペースシャトルのキャビンも同様ではないでしょうか。フライトデッキとミッドデッキの二層構造。飛行機のコックピットを思わせる造り。チェレンジャー号やコロンビア号の痛ましい事故もありましたが、スペースシャトルは計130以上のミッションをこなしました。
スペースシャトル「アトランティス」機首部分 レプリカ *前で解説するのはJAXA名誉教授的川泰宣氏
モデルは2011年に最後の飛行をしたアトランティス号の機首部分です。ちなみにスペースシャトル関連ではタイヤや24分の1スケールの全体模型なども展示されています。
小惑星探査機「はやぶさ」 熱構造モデル
「奇跡の生還」の記憶も新しいかもしれません。小惑星探査機「はやぶさ」です。7年の旅を終え地球に帰還してきた「はやぶさ」の実寸大モデル。その横には後継機の「はやぶさ2」のモデルも紹介されています。
「はやぶさ」イトカワ微粒子サンプル 実物
そして言うまでもなく「はやぶさ」が持ち帰ったのは小惑星イトカワの微粒子。大きさは最大で0.1mmと非常に小さなものですが、実際のサンプルを顕微鏡で見ることも出来ます。また地球への再突入カプセルのモデルも展示。カプセルは2010年にオーストラリアの砂漠に着陸しましたが、例えばカプセルを分離するスプリングは社員5~6名の小さな会社によって作られたとか。地道なものづくりあってからこそなし得たプロジェクトでもあるわけです。
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」 1/1モデル
ハイライトと言えるのではないでしょうか。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の実物大モデルです。長さ11m、直径4mの巨大な宇宙施設。円筒型の実験室と保管室が目を引きますが、その前にのびるロボットアームも興味深い。そしてアームの下に広がるプラットフォームはISSで唯一の宇宙空間にさらされた船外実験施設です。実験装置を12箇所取り付けることが出来ます。ここで様々な科学観測や理工学、材料実験などが行われているそうです。
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」内部 1/1モデル
宇宙飛行士気分です。「きぼう」には搭乗も出来ます。内部には操作パネルがびっしり。また宇宙では無重力ですが、飛行士のためにあえて上下を区別しているのもポイント。床と壁と天井が分かれています。
ちなみにこのモデル、プレビュー時に解説して下さったJAXA名誉教授の的川泰宣さんによれば、つくばにある訓練用のモデルよりも良く出来ているとのこと。また実際の「きぼう」もISSの中で最も清潔でかつ静かだと評判だそうです。それにアームの作業も日本人が優れていて、例えば若田さんが指導的役割を果たすことも少なくなかったそうです。
国際宇宙ステーション(ISS) 1/10モデル
「きぼう」の上にはISSの10分の1モデルも展示されていますが、本物は全長110mもあるとか。サッカーグランド程度の広さです。それが今も上空400キロの宇宙空間を廻っています。
ISSのベット/トイレ 1/1モデル
ISSでのベットやトイレの実寸大モデルも面白いと思いました。ベットは縦。寝ている間にふわふわと飛んでいかないためにも袋型です。トイレには脚を固定するためのベルトなどもついています。(やむを得ないとは言え、シャワーがないのは辛そうです。)宇宙飛行士の生活を肌で感じ取れる展示と言えるかもしれません。
火星探査車「キュリオシティ」 1/1モデル
火星探査車キュリオシティがやって来ました。NASAで制作された実寸大モデル。重さは約900キログラムです。カメラや分析装置などが装備されています。また前方のアームは主にドリルで地面に穴をあけるためのもの。自動プログラムによって作動しますが、地球からも交信によっても動かすことが出来ます。
このキュリオシティの成果は目覚ましい。かつて火星に微生物が生息可能だったこと、また川が流れていたことなどが分かりました。そして現在も観測を継続中。日々、地球へデータを送信して来ているそうです。
イプシロンロケット 1/20モデル 他
日本のロケットや衛星の開発のコーナーもあります。うちイプシロンロケットのモデルは目を引くのではないでしょうか。このイプシロンは打ち上げ前の点検を自ら行うという新時代のロケット。コンセプトは「ロケットの知能化」だそうです。2013年に試験機が打ち上げに成功したことでも話題となりました。
H-2ロケット8号機 回収LE-7エンジン
あえて注目したいのがH-2ロケット8号機です。1999年に打ち上げられた同機、エンジンの異常停止により打ち上げに失敗してしまいます。そして原因を解明するために海底深くから引き上げられたのがLE-7エンジン。実物の展示です。どうでしょうか。黒く少し歪んだ胴体は生々しくさえある。宇宙への挑戦は何も成功ばかりだけではありません。
「NASA A HUMAN ADVENTURE」展示室風景
さて色々見どころをピックアップしてきましたが、実のところ、これらはほぼ展示の後半部分。さらに前半部分が加わります。ようは2部構成なのです。後半は「はやぶさ」や「きぼう」といった「日本の宇宙開発」。では前半は何でしょうか。既にこのエントリでも一部をご紹介しましたが、端的に言ってしまえばNASAの活動を追っている。それがこれまで世界各地で行われ、今回アジアで初めて開催された「NASA A HUMAN ADVENTURE展」の日本巡回展なのです。
アポロ月面車 レプリカ
もう一度整理すると、流れとして「NASA A HUMAN ADVENTURE展」が先にあり、次いで「日本の宇宙開発」と続く。そしてこのNASA展も見るべきところがかなり多い。何せはじまりはジューヌ・ベルヌの「月世界旅行」です。そして米ソの宇宙開発競争、さらにはアメリカのロケット開発、またアポロ、スペースシャトルへと歴史を辿っていく。アポロ計画時代の運用コンソールや司令船のハッチ、それに月面車や有人宇宙船マーキュリーのレプリカなどもやって来ています。
ジェミニ計画の宇宙服(G4C) 他
アメリカの歴代の宇宙服も並びます。モデルだけではなく実際に利用されたものも少なくありません。
幕張メッセの2つのホールを用いての宇宙博。広さは約9000平方メートルもあります。ゆうに2時間はかかるのではないでしょうか。私も思わず夢中になってしまい、気がつけば規定の時間を過ぎていました。
ジェミニ計画のアジェナ標的機 トレーナー
会場内は一部を除き撮影が可能(フラッシュ不可。)です。貴重な宇宙船のモデルなど前にしての撮影スポットも多数。カメラをお忘れなきようご注意ください。
ミュージアムショップも展示のスケールに見合ってか広々としたものでした。総アイテムは2000点。お馴染み海洋堂のフィギュアなどに人気が集まるかもしれません。
「小惑星探査機 はやぶさ物語/的川泰宣/日本放送出版協会」
9月23日まで開催されています。
「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」(@SpaceExpo2014) 幕張メッセ 国際展示場10・11ホール
会期:7月19日(土)~9月23日(火・祝)
休館:会期中無休。
時間:9:30~17:00 入館は閉場の30分前まで。
料金:一般2500(2200)円 、大高生1500(1200)円、小・中学生900(800)円。未就学児は無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市美浜区中瀬2-1
交通:JR線海浜幕張駅より徒歩5分。JR線・京成線幕張本郷駅から京成バス「幕張メッセ中央・QVCマリンフィールド」行きに乗車、「海浜幕張駅」及び「タウンセンター」、「幕張メッセ中央バス停」下車徒歩3~5分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」
7/19-9/23
幕張メッセで開催中の「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」のプレスプレビューに参加してきました。
「宇宙。それは最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。」(スタートレック・オープニング・ナレーションより)
もちろん本展、何もスタートレックの展覧会ではありませんが、宇宙への挑戦、探査と言って私がすぐ思いつくのはこの一節。そもそも1970年代、スペースシャトル計画の初代の試験機は、ファンの声によりスタートレックからエンタープライズ号と名付けられたことも知られています。
宇宙博2014は、これまでの人類への宇宙への挑戦を知り、未来へのさらなる展望を切り開く展覧会です。
アポロ司令船(CM) 訓練用シュミレーター レプリカ
会場を追ってみましょう。まずはアポロ。人類初の有人月飛行着陸計画です。実際にNASAで使われた訓練用のシュミレーターのレプリカが出ています。実に精巧、内部の空間もリアルです。ちなみに上のパラシュート、よく見ると無数の穴が空いていることが分かりますが、こちらはようは本物。1972年12月、アポロ17号が太平洋上に着水した際に使用されたものです。
スペースシャトル「アトランティス」フライトデッキ レプリカ
同じく精巧な内部空間といえばスペースシャトルのキャビンも同様ではないでしょうか。フライトデッキとミッドデッキの二層構造。飛行機のコックピットを思わせる造り。チェレンジャー号やコロンビア号の痛ましい事故もありましたが、スペースシャトルは計130以上のミッションをこなしました。
スペースシャトル「アトランティス」機首部分 レプリカ *前で解説するのはJAXA名誉教授的川泰宣氏
モデルは2011年に最後の飛行をしたアトランティス号の機首部分です。ちなみにスペースシャトル関連ではタイヤや24分の1スケールの全体模型なども展示されています。
小惑星探査機「はやぶさ」 熱構造モデル
「奇跡の生還」の記憶も新しいかもしれません。小惑星探査機「はやぶさ」です。7年の旅を終え地球に帰還してきた「はやぶさ」の実寸大モデル。その横には後継機の「はやぶさ2」のモデルも紹介されています。
「はやぶさ」イトカワ微粒子サンプル 実物
そして言うまでもなく「はやぶさ」が持ち帰ったのは小惑星イトカワの微粒子。大きさは最大で0.1mmと非常に小さなものですが、実際のサンプルを顕微鏡で見ることも出来ます。また地球への再突入カプセルのモデルも展示。カプセルは2010年にオーストラリアの砂漠に着陸しましたが、例えばカプセルを分離するスプリングは社員5~6名の小さな会社によって作られたとか。地道なものづくりあってからこそなし得たプロジェクトでもあるわけです。
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」 1/1モデル
ハイライトと言えるのではないでしょうか。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の実物大モデルです。長さ11m、直径4mの巨大な宇宙施設。円筒型の実験室と保管室が目を引きますが、その前にのびるロボットアームも興味深い。そしてアームの下に広がるプラットフォームはISSで唯一の宇宙空間にさらされた船外実験施設です。実験装置を12箇所取り付けることが出来ます。ここで様々な科学観測や理工学、材料実験などが行われているそうです。
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」内部 1/1モデル
宇宙飛行士気分です。「きぼう」には搭乗も出来ます。内部には操作パネルがびっしり。また宇宙では無重力ですが、飛行士のためにあえて上下を区別しているのもポイント。床と壁と天井が分かれています。
ちなみにこのモデル、プレビュー時に解説して下さったJAXA名誉教授の的川泰宣さんによれば、つくばにある訓練用のモデルよりも良く出来ているとのこと。また実際の「きぼう」もISSの中で最も清潔でかつ静かだと評判だそうです。それにアームの作業も日本人が優れていて、例えば若田さんが指導的役割を果たすことも少なくなかったそうです。
国際宇宙ステーション(ISS) 1/10モデル
「きぼう」の上にはISSの10分の1モデルも展示されていますが、本物は全長110mもあるとか。サッカーグランド程度の広さです。それが今も上空400キロの宇宙空間を廻っています。
ISSのベット/トイレ 1/1モデル
ISSでのベットやトイレの実寸大モデルも面白いと思いました。ベットは縦。寝ている間にふわふわと飛んでいかないためにも袋型です。トイレには脚を固定するためのベルトなどもついています。(やむを得ないとは言え、シャワーがないのは辛そうです。)宇宙飛行士の生活を肌で感じ取れる展示と言えるかもしれません。
火星探査車「キュリオシティ」 1/1モデル
火星探査車キュリオシティがやって来ました。NASAで制作された実寸大モデル。重さは約900キログラムです。カメラや分析装置などが装備されています。また前方のアームは主にドリルで地面に穴をあけるためのもの。自動プログラムによって作動しますが、地球からも交信によっても動かすことが出来ます。
このキュリオシティの成果は目覚ましい。かつて火星に微生物が生息可能だったこと、また川が流れていたことなどが分かりました。そして現在も観測を継続中。日々、地球へデータを送信して来ているそうです。
イプシロンロケット 1/20モデル 他
日本のロケットや衛星の開発のコーナーもあります。うちイプシロンロケットのモデルは目を引くのではないでしょうか。このイプシロンは打ち上げ前の点検を自ら行うという新時代のロケット。コンセプトは「ロケットの知能化」だそうです。2013年に試験機が打ち上げに成功したことでも話題となりました。
H-2ロケット8号機 回収LE-7エンジン
あえて注目したいのがH-2ロケット8号機です。1999年に打ち上げられた同機、エンジンの異常停止により打ち上げに失敗してしまいます。そして原因を解明するために海底深くから引き上げられたのがLE-7エンジン。実物の展示です。どうでしょうか。黒く少し歪んだ胴体は生々しくさえある。宇宙への挑戦は何も成功ばかりだけではありません。
「NASA A HUMAN ADVENTURE」展示室風景
さて色々見どころをピックアップしてきましたが、実のところ、これらはほぼ展示の後半部分。さらに前半部分が加わります。ようは2部構成なのです。後半は「はやぶさ」や「きぼう」といった「日本の宇宙開発」。では前半は何でしょうか。既にこのエントリでも一部をご紹介しましたが、端的に言ってしまえばNASAの活動を追っている。それがこれまで世界各地で行われ、今回アジアで初めて開催された「NASA A HUMAN ADVENTURE展」の日本巡回展なのです。
アポロ月面車 レプリカ
もう一度整理すると、流れとして「NASA A HUMAN ADVENTURE展」が先にあり、次いで「日本の宇宙開発」と続く。そしてこのNASA展も見るべきところがかなり多い。何せはじまりはジューヌ・ベルヌの「月世界旅行」です。そして米ソの宇宙開発競争、さらにはアメリカのロケット開発、またアポロ、スペースシャトルへと歴史を辿っていく。アポロ計画時代の運用コンソールや司令船のハッチ、それに月面車や有人宇宙船マーキュリーのレプリカなどもやって来ています。
ジェミニ計画の宇宙服(G4C) 他
アメリカの歴代の宇宙服も並びます。モデルだけではなく実際に利用されたものも少なくありません。
幕張メッセの2つのホールを用いての宇宙博。広さは約9000平方メートルもあります。ゆうに2時間はかかるのではないでしょうか。私も思わず夢中になってしまい、気がつけば規定の時間を過ぎていました。
ジェミニ計画のアジェナ標的機 トレーナー
会場内は一部を除き撮影が可能(フラッシュ不可。)です。貴重な宇宙船のモデルなど前にしての撮影スポットも多数。カメラをお忘れなきようご注意ください。
ミュージアムショップも展示のスケールに見合ってか広々としたものでした。総アイテムは2000点。お馴染み海洋堂のフィギュアなどに人気が集まるかもしれません。
「小惑星探査機 はやぶさ物語/的川泰宣/日本放送出版協会」
9月23日まで開催されています。
「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」(@SpaceExpo2014) 幕張メッセ 国際展示場10・11ホール
会期:7月19日(土)~9月23日(火・祝)
休館:会期中無休。
時間:9:30~17:00 入館は閉場の30分前まで。
料金:一般2500(2200)円 、大高生1500(1200)円、小・中学生900(800)円。未就学児は無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市美浜区中瀬2-1
交通:JR線海浜幕張駅より徒歩5分。JR線・京成線幕張本郷駅から京成バス「幕張メッセ中央・QVCマリンフィールド」行きに乗車、「海浜幕張駅」及び「タウンセンター」、「幕張メッセ中央バス停」下車徒歩3~5分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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