「ヨコハマトリエンナーレ2014」(後編) 新港ピア

新港ピア
「ヨコハマトリエンナーレ2014」(後編)
8/1-11/3



前編(横浜美術館)に続きます。「ヨコハマトリエンナーレ2014」を見て来ました。

「ヨコハマトリエンナーレ2014」(前編) 横浜美術館(はろるど)

横浜美術館に次いでの新港ピア会場。ただし挿話としては最後の2話、第10話と第11話があるに過ぎません。(横浜美術館が1~7話、別会場のライブインスタレーションが8話、札幌国際芸術祭関連のプログラムが9話です。)

とは言え天井高もあり大掛かりな作品も設置可能な新港ピア、場所を活かしてのインスタレーションも目立ちます。そして映像が多いのも特徴。また福岡アジア美術トリエンナーレの乗り入れ企画(第10話)が展示の3~4割近くを占めているのもポイントです。

さてまず映像で見入ったのはメルヴィン・モディの「ノー・ショー」です。とある古びた建物の一角だけが映し出されている。そこで語り出す一人の男。おそらくは大勢の聞き手とともに部屋を移動しながら、目の前にあるであろう絵画について解説を加えていく。ようはギャラリーツアーです。場所はエルミタージュ美術館。そのツアーの様子をナレーションで表現しています。

しかしながら何やらおかしい。というのも絵画をさも思い出すように語っているのです。結論から述べれば二次大戦下において作品が空っぽになった美術館で行われたツアーを再現しているとのこと。聞き手はなんとロシア兵だそうです。作品はまさしく不在である。ただし作品は必ずしも「忘却」されているわけではありません。

福岡アジア美術トリエンナーレで展開された映像作品も見応えがあります。中でも強烈なのがディン・キュー・レです。バシャンバシャンと次から次へに海に落ちるのは軍用ヘリ。何とベトナムから脱出しようとする米軍ヘリの墜落する様子を表現しているのです。

また釜山と福岡、さらにはフィリピンの海を捉えたキリ・ダレナや、閉鎖された工場の廃墟に佇む労働者たちを移したチェン・ジエレンの作品も胸を打つ。この映像のセクション、新港ピアの白眉と言っても良いのではないでしょうか。アジアにおける社会や政治の諸問題へ切り込んだ作品が目立ちました。


笠原恵実子「OFFERING-Collection」2014年

小さな写真ですが目を引きます。笠原恵実子の「OFFERING-Collection」です。ずらりと並ぶ写真、いずれも作家が世界各地で10年間にわたって取りためたキリスト教会の献金箱です。


イライハス・ハンセン「心配するな、再来年にはもっとひどいことになるさ」2014年

専門学校で吹きガラスの技術を習得していたそうです。日本初公開というイライハス・ハンセン。古木やビニール、そしてカラフルなガラス器が用いられたインスタレーションを展開しています。


イライハス・ハンセン「見かけとは違う」2012年

また暗室でライトを取り込んでいる作品もある。ふとお祭りの屋台のネオンサインなどを思い出しました。


大竹伸朗「網膜屋/記憶濾過小屋」2014年

そして会場の最奥部にあるのが大竹伸朗の「網膜屋/記憶濾過小屋」です。ボートを携えた大きな車。まさに新港ピアの前に広がる「忘却の海」へと出港するという意味なのでしょうか。作品の内と外には無数の写真やスクラップが半ば散乱しています。この迫力。ラストを飾るにも相応しい作品と言えるのかもしれません。


やなぎみわ「移動舞台車」2014年

またやなぎみわの移動舞台車も否応無しに目に飛び込んできます。高さは何メートルあるのでしょうか。ちなみにこれはやなぎみわが近年取り組んでいる演劇のための舞台装置。台湾で制作されたものだそうです。

ともすると横浜美術館会場ではやや過去に遡る作品が目立っていたのに対して、新港ピアは比較的近年に制作されたインスタレーションが中心です。その辺でもやや印象は異なるかもしれません。

「ヨコハマトリエンナーレ2014」、言うまでもなく祝典的な雰囲気は殆どありません。感覚的に捉えにくい作品も多く、実のところ見ている時は何とも言い難い重苦しさを感じてなりませんでしたが、主に横浜美術館の「釜ヶ崎」や第3話の「華氏451」しかり、公式サイトにも寄せられたディレクターの森村のメッセージなりがよく反映された展示だったのではないでしょうか。その意味では非常に意義深い企画だと感心しました。


ヤン・ヴォー「我ら人民は(部分)2011-2013年

館内は撮影禁止マークのある作品を除き、全て撮影出来ました。一定の要件を満たせばブログやSNSなどにも利用出来ます。(フラッシュ、動画はNGです。)

8月のお盆休み期間中(平日)に出向いたゆえか、館内は二会場とも余裕がありました。会期末に向けてどうなるかは分かりませんが、現段階であればスムーズに観覧出来ると思います。

新港ピアの後はBankART Studio NYKからヨコハマ創造都市センターへと歩き、最後は黄金町の方へと廻りました。

「東アジアの夢ーBankART Life4」 BankArt Studio NYK(はろるど)



横浜美術館+新港ピアの本編、さらにBankART Studio NYKと廻るとゆうに半日はかかります。時間に余裕をもっての観覧をおすすめします。

11月3日まで開催されています。

[ヨコハマトリエンナーレ2014関連エントリ]
「ヨコハマトリエンナーレ2014」(前編) 横浜美術館
「東アジアの夢ーBankART Life4」 BankArt Studio NYK
「ヨコハマパラトリエンナーレ2014」 象の鼻テラス

「ヨコハマトリエンナーレ2014」@yokotori_) 横浜美術館@yokobi_tweet)、新港ピア
会期:8月1日(金)~11月3日(月・祝)
休館:第1・3木曜日(8/7、8/21、9/4、9/18、10/2、10/16)
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
 *8月9日(土)、9月13日(土)、10月11日(土)、 11月1日(土)は20時まで開場。
料金:
 単体券 一般1800(1400)円、大学・専門学生1200(900)円、高校生800(500)。中学生以下無料。
 提携セット券 一般2400(2000)円、大学・専門学生1800(1400)円、高校生1400(1100)。中学生以下無料。
 *( )は前売券料金。(7/31まで発売)会場で20名以上同一券種の当日券購入の場合は各200円引。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1(横浜美術館)、横浜市中区新港2-5(新港ピア)
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口徒歩5分(横浜美術館)、みなとみらい線馬車道駅6番出口徒歩13分(新港ピア)。

注)「ヨコハマトリエンナーレ2014」会場写真はいずれも「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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