都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ジョージ・ネルソン展」 目黒区美術館
目黒区美術館
「ジョージ・ネルソン展ー建築家、ライター、デザイナー、教育者」
7/15-9/18
目黒区美術館で開催中の「ジョージ・ネルソン展ー建築家、ライター、デザイナー、教育者」を見て来ました。
20世紀後半のアメリカで活動したデザイナー、ジョージ・ネルソン(1908~1986)。1946年から25年の間は、今も世界で展開するインテリアメーカー、ハーマン・ミラー社のデザインディレクターを務めていたことでも知られています。
ネルソンの業績を紹介する日本で初めての大規模な展覧会です。出品はヴィンテージの家具をはじめ、時計やランプ、また住居などの図面や建築模型など約300点余。また彼が展示デザインを行った「アメリカ博覧会」(1959年、モスクワ)の資料もあります。
「CSS(システム収納棚)」1959年 ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
さてまずはネルソンの家具、キーワードは「システムとしてのデザイン」です。また一方で機能性という言葉にも集約されるかもしれません。そして収納を極めて重視しています。代表的なのは「ストレージ・ウォール」でしょう。今で言う壁に備え付けの収納棚。また「L字型のディスク」でも収納には様々なヴァリエーションがある。チェストもテーブルもシンプル。引き出しはたくさんあります。奇を衒うことはありません。
「スワッグレッグ・デスク」と「スワッグレッグ・チェア」
ハーマンミラー社は「メレッグ・テーブル」を食卓と作業台を兼ねたテーブルとして売り出します。天板にオーク材を用いた長方形のテーブル。確かにどちらの用途でも利用出来そうですが、そもそもネルソン自身、家庭と仕事をあまり区別しなかったそうです。言わばその思想のゆえの家具なのかもしれません。
なお家具の展示方法、率直なところ少し驚きました。と言うのも一部は大きなラックに2段重ねになって置かれているのです。ようは下段の家具は正面から見られますが、上段のそれは下からしか見られない。椅子も脚の部分から反対方向を覗き込む形になります。
まるで某輸入家具店のような2段重ねの展示。ある意味では壮観ですが、やはり上から回り込んで見たい部分はあります。ここは判断が分かれそうです。
「アメリカ博覧会」が一つのハイライトかもしれません。ネルソンにとって展示会は新しい構造技術や建築資材を披露する格好のチャンスでした。会場では当時のジャングルジムと呼ばれるフレームを再現しています。中にも入場可能です。ほかに映像などを加えて体感的に博覧会を知る工夫がなされていました。
照明も目を引きます。「バブルランプ」です。当時人気を集めていたスウェーデン製のシルクを用いたランプを模したもの。しかしながらシルクは高価で決して普及品とは言えない。そこでネルソンは考えました。プラステックの吹き付けです。それを用いることで高い耐久性と低コスト化を実現しました。
「ポール・クロック」1948年 ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
その一方で時計はやや趣きが異なります。有名なのは「ポール・クロック」です。ほかにも星や目の形をしたもの、はたまたダイヤモンドや竪琴などと名付けられた時計がずらりと並びます。いずれも意匠からして個性的です。またいわゆる文字盤はなく、必ずしも正確な時間を伝えるわけでもありません。
そもそもネルソンは時計のデザインに際し、インテリア感を高めることを重視していたとか。収納性が要求される家具とはそもそも別物と考えていたのかもしれません。とは言えパーツを共通化するなどの工夫は抜かりない。コストに関する意識は家具と同じだったのかもしれません。
ネルソンはまた教育者でもあります。デザイナー、プロデューサーとして成功した後は、大学などでの講演活動も盛んに行っていたそうです。その点についての展示もありました。
「マシュマロ・ソファ」
1階の一部分のみ撮影可能でした。(ここにアップした写真は全て撮影可のコーナーで撮ったものです。)良く知られる「マシュマロ・ソファ」も座り心地を試すことが出来ます。
ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムの企画による世界巡回展。日本では目黒のみの単独開催だそうです。ネルソンの家具に関しての嗜好は分かれるかもしれませんが、少なくとも制作の一端を知る良い機会ではないかと思いました。
図録が英語版のみでした。(初めは気がつかずに日本語版を探してしまいました。)それとは別に日本語でのパンフレットを有料で発行しているようです。
「Architect, Writer, Designer, Teacher George Nelson/Vitra Design Stiftung
9月18日まで開催されています。
「ジョージ・ネルソン展ー建築家、ライター、デザイナー、教育者」 目黒区美術館
会期:7月15日(火)~9月18日(木)
休館:月曜日。但し7/21(月・祝)及び9/15(月・祝)は開館。翌日は休館。
時間:10:00~18:00
料金:一般1000(800)円、大高生・65歳以上800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
「ジョージ・ネルソン展ー建築家、ライター、デザイナー、教育者」
7/15-9/18
目黒区美術館で開催中の「ジョージ・ネルソン展ー建築家、ライター、デザイナー、教育者」を見て来ました。
20世紀後半のアメリカで活動したデザイナー、ジョージ・ネルソン(1908~1986)。1946年から25年の間は、今も世界で展開するインテリアメーカー、ハーマン・ミラー社のデザインディレクターを務めていたことでも知られています。
ネルソンの業績を紹介する日本で初めての大規模な展覧会です。出品はヴィンテージの家具をはじめ、時計やランプ、また住居などの図面や建築模型など約300点余。また彼が展示デザインを行った「アメリカ博覧会」(1959年、モスクワ)の資料もあります。
「CSS(システム収納棚)」1959年 ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
さてまずはネルソンの家具、キーワードは「システムとしてのデザイン」です。また一方で機能性という言葉にも集約されるかもしれません。そして収納を極めて重視しています。代表的なのは「ストレージ・ウォール」でしょう。今で言う壁に備え付けの収納棚。また「L字型のディスク」でも収納には様々なヴァリエーションがある。チェストもテーブルもシンプル。引き出しはたくさんあります。奇を衒うことはありません。
「スワッグレッグ・デスク」と「スワッグレッグ・チェア」
ハーマンミラー社は「メレッグ・テーブル」を食卓と作業台を兼ねたテーブルとして売り出します。天板にオーク材を用いた長方形のテーブル。確かにどちらの用途でも利用出来そうですが、そもそもネルソン自身、家庭と仕事をあまり区別しなかったそうです。言わばその思想のゆえの家具なのかもしれません。
なお家具の展示方法、率直なところ少し驚きました。と言うのも一部は大きなラックに2段重ねになって置かれているのです。ようは下段の家具は正面から見られますが、上段のそれは下からしか見られない。椅子も脚の部分から反対方向を覗き込む形になります。
まるで某輸入家具店のような2段重ねの展示。ある意味では壮観ですが、やはり上から回り込んで見たい部分はあります。ここは判断が分かれそうです。
「アメリカ博覧会」が一つのハイライトかもしれません。ネルソンにとって展示会は新しい構造技術や建築資材を披露する格好のチャンスでした。会場では当時のジャングルジムと呼ばれるフレームを再現しています。中にも入場可能です。ほかに映像などを加えて体感的に博覧会を知る工夫がなされていました。
照明も目を引きます。「バブルランプ」です。当時人気を集めていたスウェーデン製のシルクを用いたランプを模したもの。しかしながらシルクは高価で決して普及品とは言えない。そこでネルソンは考えました。プラステックの吹き付けです。それを用いることで高い耐久性と低コスト化を実現しました。
「ポール・クロック」1948年 ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
その一方で時計はやや趣きが異なります。有名なのは「ポール・クロック」です。ほかにも星や目の形をしたもの、はたまたダイヤモンドや竪琴などと名付けられた時計がずらりと並びます。いずれも意匠からして個性的です。またいわゆる文字盤はなく、必ずしも正確な時間を伝えるわけでもありません。
そもそもネルソンは時計のデザインに際し、インテリア感を高めることを重視していたとか。収納性が要求される家具とはそもそも別物と考えていたのかもしれません。とは言えパーツを共通化するなどの工夫は抜かりない。コストに関する意識は家具と同じだったのかもしれません。
ネルソンはまた教育者でもあります。デザイナー、プロデューサーとして成功した後は、大学などでの講演活動も盛んに行っていたそうです。その点についての展示もありました。
「マシュマロ・ソファ」
1階の一部分のみ撮影可能でした。(ここにアップした写真は全て撮影可のコーナーで撮ったものです。)良く知られる「マシュマロ・ソファ」も座り心地を試すことが出来ます。
ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムの企画による世界巡回展。日本では目黒のみの単独開催だそうです。ネルソンの家具に関しての嗜好は分かれるかもしれませんが、少なくとも制作の一端を知る良い機会ではないかと思いました。
図録が英語版のみでした。(初めは気がつかずに日本語版を探してしまいました。)それとは別に日本語でのパンフレットを有料で発行しているようです。
「Architect, Writer, Designer, Teacher George Nelson/Vitra Design Stiftung
9月18日まで開催されています。
「ジョージ・ネルソン展ー建築家、ライター、デザイナー、教育者」 目黒区美術館
会期:7月15日(火)~9月18日(木)
休館:月曜日。但し7/21(月・祝)及び9/15(月・祝)は開館。翌日は休館。
時間:10:00~18:00
料金:一般1000(800)円、大高生・65歳以上800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )