都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館
多摩美術大学美術館
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」
7/12-9/15
多摩美術大学美術館で開催中の「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」を見て来ました。
古くから東北地方に伝わってきた正月のオカザリこと切り紙飾り。今も神社や民家などで作り続けられているそうです。主に宮城県北部から岩手県南部における紙飾り文化を紹介します。
さて紙飾り、必ずしも見る機会が多いとは言えませんが、まず思い浮かぶのは神社や神棚での飾り物。私も行く前は漠然とながらそのようなイメージで捉えていました。
「網飾り」宮城県 琴平神社
百聞は一見にしかずです。上の図版に挙げた飾りはどうでしょうか。やはり違って見える。これは宮城県の琴平神社に伝わる「網飾り」と呼ばれるもの。中には1メートル四方にも及ぶ大きな紙飾りもあります。これぞ東北独自のオカザリの姿なのです。
少し情報を整理しましょう。まず東北に伝わる紙飾り、主に正月飾りとして用いられます。出羽三山の修験道から自然神信仰との関係も指摘されているそうです。
「人形御幣」宮城県 御賀八幡宮
素材は一枚の紙です。それを折り畳んでは切り込みを入れ、最後に開いて成型するのが特徴。特殊技能として神社などで伝承されています。出来た飾りは神棚や天井に吊るします。会場でも殆ど全てのオカザリが高い位置に展示されていました。
「御幣 稲荷」 岩手県 江釣子・八坂神社
正月飾りのゆえでしょう。お目出度いモチーフが多いのもポイントです。鶴や鯛をはじめ、小判に打ち出の小槌、それに七福神を象ったものや、中には漢字で「福禄寿」と記した飾りもあります。その意匠はかなり精巧。一体どのように切れば出来るのかと感心してしまうほどです。また色紙をほぼ使わないのも特徴です。白一色としても過言ではありません。白の持つ美しさ。それを感じ取れる展示と言えるかもしれません。
「十六下げの小飾り」宮城県 計仙麻大嶋神社
実際に神棚などに飾られる様子は写真パネルで見ることが出来ます。なお飾りは郷土人形作家の千葉惣次氏のコレクション。また写真は千葉氏とともに東北で紙飾り文化を取材した大屋孝雄氏によるものだそうです。しかるべき場にあってこそより映えるオカザリ。臨場感のある写真で楽しめました。
「上町法印神楽」宮城県 豊里町
また臨場感といえば宮城県登米市での「上町法印神楽」も見逃せません。古くは江戸時代から執り行われてきたお神楽、会場ではその記録映像と写真、さらには舞台の天蓋に相当する「大乗荘厳」と呼ばれる紙飾りが展示されています。
この紙飾りはかなり大きい。内部には白い着物を纏う人形も吊るされています。また下にあるのは舞の際に翁が持つ指物とか。ちなみに映像は2時間ほどあるそうです。私が見た時はまだ日中の様子が映し出されていましたが、写真パネルにある日没後の神楽も美しい。篝火が舞台とオカザリを煌煌と照らし出す。そこで色鮮やかな衣装を纏った舞人が舞いを披露します。これが実に鮮やかです。
東北の民族資料も紹介されています。伏見人形に似た堤人形なども目を引くのではないでしょうか。また興味深いのは米沢地方に伝わる笹野一刀彫です。うち「お鷹ぽっぽ」と呼ばれる鷹の木彫、彩色も造形も至って素朴ですが、何でもアイヌで魔除けを意味しているそうです。そのほかには古布や籠など50点弱の資料が展示されていました。
「恵比須飾り手切り作業」岩手県 白澤神社
それにしてもオカザリ文化の残る地方、気仙沼や南三陸しかり、かの東日本大震災の被災地とも重なります。そのゆえか失われてしまってものも少なくありません。何とも胸の詰まるものがありました。(展示資料の多くは震災前のものだそうです。)
なお余談ですが、展示室は全部で4室です。1階の2室に加え、2階にも2つの展示室があります。(ひょっとすると分かりにくいかもしれません。)ご注意ください。
多摩美術大学美術館
図録が現在制作中です。予約での受付でした。9月頃には完成するそうです。(1冊1000円。)
失われつつも今もまさに神を宿し、さらには後世へと受け継がれようとする東北のオカザリ。シンプルな展示でしたが見入る点は多々あります。好企画でした。
「東北の伝承切り紙ー神を宿し神を招く/千葉惣次/平凡社」
9月15日まで開催されています。おすすめします。
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館
会期:7月12日(土)~9月15日(月・祝)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般300(200)円、大学・高校生200(100)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:東京都多摩市落合1-33-1
交通:京王相模原線・小田急多摩線・多摩モノレール多摩センター駅から徒歩7分。
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」
7/12-9/15
多摩美術大学美術館で開催中の「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」を見て来ました。
古くから東北地方に伝わってきた正月のオカザリこと切り紙飾り。今も神社や民家などで作り続けられているそうです。主に宮城県北部から岩手県南部における紙飾り文化を紹介します。
さて紙飾り、必ずしも見る機会が多いとは言えませんが、まず思い浮かぶのは神社や神棚での飾り物。私も行く前は漠然とながらそのようなイメージで捉えていました。
「網飾り」宮城県 琴平神社
百聞は一見にしかずです。上の図版に挙げた飾りはどうでしょうか。やはり違って見える。これは宮城県の琴平神社に伝わる「網飾り」と呼ばれるもの。中には1メートル四方にも及ぶ大きな紙飾りもあります。これぞ東北独自のオカザリの姿なのです。
少し情報を整理しましょう。まず東北に伝わる紙飾り、主に正月飾りとして用いられます。出羽三山の修験道から自然神信仰との関係も指摘されているそうです。
「人形御幣」宮城県 御賀八幡宮
素材は一枚の紙です。それを折り畳んでは切り込みを入れ、最後に開いて成型するのが特徴。特殊技能として神社などで伝承されています。出来た飾りは神棚や天井に吊るします。会場でも殆ど全てのオカザリが高い位置に展示されていました。
「御幣 稲荷」 岩手県 江釣子・八坂神社
正月飾りのゆえでしょう。お目出度いモチーフが多いのもポイントです。鶴や鯛をはじめ、小判に打ち出の小槌、それに七福神を象ったものや、中には漢字で「福禄寿」と記した飾りもあります。その意匠はかなり精巧。一体どのように切れば出来るのかと感心してしまうほどです。また色紙をほぼ使わないのも特徴です。白一色としても過言ではありません。白の持つ美しさ。それを感じ取れる展示と言えるかもしれません。
「十六下げの小飾り」宮城県 計仙麻大嶋神社
実際に神棚などに飾られる様子は写真パネルで見ることが出来ます。なお飾りは郷土人形作家の千葉惣次氏のコレクション。また写真は千葉氏とともに東北で紙飾り文化を取材した大屋孝雄氏によるものだそうです。しかるべき場にあってこそより映えるオカザリ。臨場感のある写真で楽しめました。
「上町法印神楽」宮城県 豊里町
また臨場感といえば宮城県登米市での「上町法印神楽」も見逃せません。古くは江戸時代から執り行われてきたお神楽、会場ではその記録映像と写真、さらには舞台の天蓋に相当する「大乗荘厳」と呼ばれる紙飾りが展示されています。
この紙飾りはかなり大きい。内部には白い着物を纏う人形も吊るされています。また下にあるのは舞の際に翁が持つ指物とか。ちなみに映像は2時間ほどあるそうです。私が見た時はまだ日中の様子が映し出されていましたが、写真パネルにある日没後の神楽も美しい。篝火が舞台とオカザリを煌煌と照らし出す。そこで色鮮やかな衣装を纏った舞人が舞いを披露します。これが実に鮮やかです。
東北の民族資料も紹介されています。伏見人形に似た堤人形なども目を引くのではないでしょうか。また興味深いのは米沢地方に伝わる笹野一刀彫です。うち「お鷹ぽっぽ」と呼ばれる鷹の木彫、彩色も造形も至って素朴ですが、何でもアイヌで魔除けを意味しているそうです。そのほかには古布や籠など50点弱の資料が展示されていました。
「恵比須飾り手切り作業」岩手県 白澤神社
それにしてもオカザリ文化の残る地方、気仙沼や南三陸しかり、かの東日本大震災の被災地とも重なります。そのゆえか失われてしまってものも少なくありません。何とも胸の詰まるものがありました。(展示資料の多くは震災前のものだそうです。)
なお余談ですが、展示室は全部で4室です。1階の2室に加え、2階にも2つの展示室があります。(ひょっとすると分かりにくいかもしれません。)ご注意ください。
多摩美術大学美術館
図録が現在制作中です。予約での受付でした。9月頃には完成するそうです。(1冊1000円。)
失われつつも今もまさに神を宿し、さらには後世へと受け継がれようとする東北のオカザリ。シンプルな展示でしたが見入る点は多々あります。好企画でした。
「東北の伝承切り紙ー神を宿し神を招く/千葉惣次/平凡社」
9月15日まで開催されています。おすすめします。
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館
会期:7月12日(土)~9月15日(月・祝)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般300(200)円、大学・高校生200(100)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:東京都多摩市落合1-33-1
交通:京王相模原線・小田急多摩線・多摩モノレール多摩センター駅から徒歩7分。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )