「だまし絵2 進化するだまし絵」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「だまし絵2 進化するだまし絵」
8/9-10/5



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「だまし絵2 進化するだまし絵」のプレスプレビューに参加してきました。

2009年、Bunkamuraのほか、名古屋、神戸に巡回して大変な人気を集めた「奇想の王国 だまし絵」展。5年ぶりの続編です。「だまし絵2 進化するだまし絵」展が始まりました。

さてタイトルの「進化するだまし絵」、ずばり一体、何が進化したのでしょうか。

その答えが現代美術での展開です。前回展もラストは現代美術でしたが、今回はより志向が強い。ようは現代美術に重きの置かれた構成になっているわけです。


左:トーマス・デマンド「浴室」1997年 作家蔵

何とデマンドがありました。2012年に東京都現代美術館で行われた回顧展も記憶に新しいアーティスト。確かキャッチコピーは「紙で出来たリアル」、まさに本作こそかの展覧会のチラシ表紙にも用いられた「浴室」です。もちろんデマンドはその背景となる歴史や事件の参照も極めて重要ですが、ここではあえて単に風景が紙で出来ていることを押し出す。ようは「目をだます」の意味でのだまし絵、トロンプルイユとして捉えているのです。


右:杉本博司「Hyena-Jackal-Vulture」1976年 
左:杉本博司「Polar Bear」1976年


そして杉本博司のジオラマシリーズもトロンプルイユ、さらにはリヒターの「影の絵」、高松次郎の「赤ん坊の影」もだまし絵の範疇に取り込む。ともすると力押しかもしれません。とは言え、知られた現代美術もだまし絵の文脈として捉えるとむしろ新鮮に映ることも少なくない。その意味では発見と驚きの多い展覧会でした。

インタラクティブなだまし絵がありました。ダニエル・ローズィンの「木の鏡」(2014)です。


ダニエル・ローズィン「木の鏡」2014年 作家蔵

画像では分かりませんが、実はこの作品、前に立つと木片が自動で動き、人の影を象る。それが顔の形や表情まで感じ取れるほど細やかなのです。

上の写真の前に立つのは作家のローズィン氏本人です。手をさっと開き、頭を素早く動かしても、木片はかなり機敏に反応します。結論から言えば内蔵のカメラによって人影を感知、コンピューター制御によって動くわけですが、木というアナログな素材とデジタル機器を組み合わせた体験型立体だまし絵。何度も試してしまいました。


福田繁雄「アンダーグランド・ピアノ」1984年 広島市現代美術館

ほかに現代美術としてはヴィック・ムニーズ、それにエヴァン・ペニーも目を引くのではないでしょうか。また福田繁雄の「アンダーグランド・ピアノ」(1984)も面白い。半ば破壊されたかの如く不定形なピアノもミラーを通すと「正しい」姿で現れます。アナモルフォーズ的な志向が垣間見えました。


左:アニッシュ・カプーア「白い闇IX」2002年 金沢21世紀美術館

さらにはアニッシュ・カプーアや名和晃平から須田悦弘の作品もある。やはりだまし絵という名からするとかなり意外性のある展示と言えるかもしれません。


右:ジュゼッペ・アルチンボルド「司書」1566年頃 スコークロステル城
左:ジュゼッペ・アルチンボルド「ソムリエ(ウェイター)」1574年 大阪新美術館建設準備室


とは言え当然ながら全てが現代美術というわけではありません。まずそもそも冒頭はアルチンボルド。さらにハーグの画家ピアーソンから18世紀イタリアの歪曲像「アダムとエヴァ」が並ぶ。前回のだまし絵展を彷彿させる展開が続きます。


右:ルネ・マグリット「赤いモデル」1953年 BNPパリバ・フォルティス銀行
中央:ルネ・マグリット「真実の井戸」1963年 富山県立近代美術館
左:ルネ・マグリット「白紙委任状」1965年 ワシントン・ナショナル・ギャラリ


さらにエッシャー、マグリット、ダリといったシュールの画家の作品も目立ちます。これらはアナモルフォーズやメタモルフォーズの文脈、テーマ別での展示です。必ずしも時系列にだまし絵の変遷などを追っているわけではありません。

本来的にだまし絵の定義は厳密でなく曖昧。作家の意図とは別に結果として「だまし絵として見える」ことも少なくありません。

ここは思いっきり肩の力を抜いて楽しんだ方が良いのではないでしょうか。現代美術というとともすると難解とも思われがちですが、今回のだまし絵展においてそうした要素はありませんでした。

[だまし絵2 巡回予定]
兵庫県立美術館:2014年10月15日(水)~12月28日(日) 
名古屋市美術館:2015年1月10日(土)~3月22日(日) 

それにしても前回展は大いに話題となり、会期末は入場待ちの行列も発生しました。今回は今のところ規制も発生していませんが、週末の日中に関しては多少混み合っているようです。

公式サイトに混雑状況が掲載されています。お出かけの際にはあわせてご参考下さい。

「だまし絵2 進化するだまし絵」開催概要(Bunkamura ザ・ミュージアム)


ハンス・オプ・デ・ベーク「ステージング・サイレンス」2013年

ラストのハンス・オプ・デ・ベークの映像作品が20分近くあります。少し長めですが、これが思いの外に面白い。最初から最後まで見入ってしまいました。

ところで先に紹介した須田の彫刻、実は会場に3点ほどあります。うち1点のみがキャプション付き、ほか2点はいつものように片隅へひっそりと隠れています。お見逃しなきようご注意ください。

10月5日までの開催です。まずは早めの観覧をおすすめします。

「だまし絵2 進化するだまし絵」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:8月9日(土)~10月5日(日)
休館:9月8日(月)。
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1300)円、大学・高校生1000(800)円、中学・小学生700(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。要電話予約。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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