都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「指輪展」 国立西洋美術館
国立西洋美術館
「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代までー時を超える輝き」
7/8-9/15

国立西洋美術館で開催中の「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代までー時を超える輝き」を見て来ました。
2012年に同美術館へ寄贈された指輪を含む宝飾品こと「橋本コレクション」。その数は800点にも及びます。まだ一度たりとも同館で公開されたことはありませんでした。
ようはお披露目展です。出品は全部で300点。古代エジプトから近年制作されたものまで含まれます。言わば指輪6000年の歴史を見る展覧会でもあります。
さてずばり指輪展、出品数が物語るように進めども進めども指輪の数々。ともかく煌びやかな指輪がこれでもかと言うほどに並んでいます。
実のところさほど指輪に興味がなかった私にとって、この展覧会、行くかどうかかなり迷っていました。またともすると女性向きの展示と思っていられる方もおられるかもしれません。
実際にも館内は8割方女性でした。そして展示自体は思いがけないほど面白い。指輪ファンでなくとも十分に楽しめるとしても過言ではありません。

「女神ニケ」紀元前4世紀後期 ガラス・金 国立西洋美術館 橋本コレクション
まずは歴史です。先にも触れたように人類と指輪との長き歴史を追いかける。これが造形の展開からしても興味深いもの。指輪は古代ではお守りです。現代人の我々が思いもよらない機能も持ちえています。その性格なり意匠は時代などによって異なっているわけです。
絵画との比較も重要です。具体例を挙げましょう。15世紀スカンジナビアの指輪「聖ゲオルギウスと龍」ではクラーナハの「馬上の聖ゲオルギウス」が参照されている。また十字架をモチーフとしたスペインの指輪「ゴルゴダの丘の十字架」でもグレコの「十字架のキリスト」が添えられています。ようは同時代、近い地域の指輪と絵画をあわせ見ることが出来ます。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「愛の杯」1867年 油彩、板 国立西洋美術館
一方で絵に描かれた指輪を見る展示もポイントです。ロセッティの「愛の杯」やグイド・レーニの「ルクレティア」などの西美常設ではお馴染みの名画。改めて見れば確かにモデルは指輪をしているではありませんか。絵画コレクションを効果的に用いていました。

「エメラルドのソリティアリング」1840年頃 金、エメラルド 国立西洋美術館 橋本コレクション
モードの中に指輪を位置づける展示も秀逸です。ロココから20世紀のココ・シャネルまでの衣装がずらりと並んでいる。いずれもマネキンに着せての展示です。そこにもちろんあわせて指輪も紹介します。ファッションの変遷を追いながら同時代の指輪も楽しむことが出来ました。
またここでも絵画との参照がありました。ブータンの「トルーヴィルの浜」、あの浜辺で婦人たちがピクニックをしている作品ですが、ほぼ同時代のアフタヌーン・ドレスが実際に展示されています。ちなみにこれらの衣装は全て神戸ファッション美術館のコレクション。まさか指輪展で西洋近代のドレスを楽しめるとは思いませんでした。

「ハートのギメルリング」17世紀 金・ルビー、ダイヤモンド 国立西洋美術館 橋本コレクション
最後に一つ、とても興味深かったのが「死」についてです。そもそも指輪、故人に対するメモリアルリングとして作られることも少なくありませんでした。例えば「エドワード4世の遺髪が納められた指輪」では文字通り遺髪が入れられている。そしてメメント・モリです。17世紀の「ギメル・リング」、重ねるとハート型をしていますが、中を開くと下から骸骨が現れる。愛の中でもいつかは訪れる死を忘れてはならないという意味を指輪自身が持ちえているわけです。

「ミルグレイン・リング」1920年頃 ダイヤモンド、プラチナ 国立西洋美術館 橋本コレクション
「指輪は孤立した世界ではありません。」とはチラシにある言葉。まさに展覧会全体と指し示していると言って良いでしょう。指輪をモードや絵画ほか、文学主題などにも参照して見せている。製作技法や模造に関しての展示もあります。引き出しの多い企画です。感心しました。

「フェデリング」17世紀 金、エナメル 国立西洋美術館 橋本コレクション
既に残すところ会期も半月強となりましたが、館内は思ったより空いていました。とは言え、いずれも作品は小さな小さな指輪です。近くに寄らなくては楽しめません。ゆえに一部の展示ケースの前では多少の列も出来ていました。
9月15日まで開催されています。
「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代までー時を超える輝き」 国立西洋美術館
会期:7月8日(火)~9月15日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/21、8/11、9/15は開館、7/22は休館。
時間:9:30~17:30
*毎週金曜日は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大学生1200(1000)円、高校生700(600)円。中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代までー時を超える輝き」
7/8-9/15

国立西洋美術館で開催中の「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代までー時を超える輝き」を見て来ました。
2012年に同美術館へ寄贈された指輪を含む宝飾品こと「橋本コレクション」。その数は800点にも及びます。まだ一度たりとも同館で公開されたことはありませんでした。
ようはお披露目展です。出品は全部で300点。古代エジプトから近年制作されたものまで含まれます。言わば指輪6000年の歴史を見る展覧会でもあります。
さてずばり指輪展、出品数が物語るように進めども進めども指輪の数々。ともかく煌びやかな指輪がこれでもかと言うほどに並んでいます。
実のところさほど指輪に興味がなかった私にとって、この展覧会、行くかどうかかなり迷っていました。またともすると女性向きの展示と思っていられる方もおられるかもしれません。
実際にも館内は8割方女性でした。そして展示自体は思いがけないほど面白い。指輪ファンでなくとも十分に楽しめるとしても過言ではありません。

「女神ニケ」紀元前4世紀後期 ガラス・金 国立西洋美術館 橋本コレクション
まずは歴史です。先にも触れたように人類と指輪との長き歴史を追いかける。これが造形の展開からしても興味深いもの。指輪は古代ではお守りです。現代人の我々が思いもよらない機能も持ちえています。その性格なり意匠は時代などによって異なっているわけです。
絵画との比較も重要です。具体例を挙げましょう。15世紀スカンジナビアの指輪「聖ゲオルギウスと龍」ではクラーナハの「馬上の聖ゲオルギウス」が参照されている。また十字架をモチーフとしたスペインの指輪「ゴルゴダの丘の十字架」でもグレコの「十字架のキリスト」が添えられています。ようは同時代、近い地域の指輪と絵画をあわせ見ることが出来ます。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「愛の杯」1867年 油彩、板 国立西洋美術館
一方で絵に描かれた指輪を見る展示もポイントです。ロセッティの「愛の杯」やグイド・レーニの「ルクレティア」などの西美常設ではお馴染みの名画。改めて見れば確かにモデルは指輪をしているではありませんか。絵画コレクションを効果的に用いていました。

「エメラルドのソリティアリング」1840年頃 金、エメラルド 国立西洋美術館 橋本コレクション
モードの中に指輪を位置づける展示も秀逸です。ロココから20世紀のココ・シャネルまでの衣装がずらりと並んでいる。いずれもマネキンに着せての展示です。そこにもちろんあわせて指輪も紹介します。ファッションの変遷を追いながら同時代の指輪も楽しむことが出来ました。
またここでも絵画との参照がありました。ブータンの「トルーヴィルの浜」、あの浜辺で婦人たちがピクニックをしている作品ですが、ほぼ同時代のアフタヌーン・ドレスが実際に展示されています。ちなみにこれらの衣装は全て神戸ファッション美術館のコレクション。まさか指輪展で西洋近代のドレスを楽しめるとは思いませんでした。

「ハートのギメルリング」17世紀 金・ルビー、ダイヤモンド 国立西洋美術館 橋本コレクション
最後に一つ、とても興味深かったのが「死」についてです。そもそも指輪、故人に対するメモリアルリングとして作られることも少なくありませんでした。例えば「エドワード4世の遺髪が納められた指輪」では文字通り遺髪が入れられている。そしてメメント・モリです。17世紀の「ギメル・リング」、重ねるとハート型をしていますが、中を開くと下から骸骨が現れる。愛の中でもいつかは訪れる死を忘れてはならないという意味を指輪自身が持ちえているわけです。

「ミルグレイン・リング」1920年頃 ダイヤモンド、プラチナ 国立西洋美術館 橋本コレクション
「指輪は孤立した世界ではありません。」とはチラシにある言葉。まさに展覧会全体と指し示していると言って良いでしょう。指輪をモードや絵画ほか、文学主題などにも参照して見せている。製作技法や模造に関しての展示もあります。引き出しの多い企画です。感心しました。

「フェデリング」17世紀 金、エナメル 国立西洋美術館 橋本コレクション
既に残すところ会期も半月強となりましたが、館内は思ったより空いていました。とは言え、いずれも作品は小さな小さな指輪です。近くに寄らなくては楽しめません。ゆえに一部の展示ケースの前では多少の列も出来ていました。
9月15日まで開催されています。
「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代までー時を超える輝き」 国立西洋美術館
会期:7月8日(火)~9月15日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/21、8/11、9/15は開館、7/22は休館。
時間:9:30~17:30
*毎週金曜日は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400(1200)円、大学生1200(1000)円、高校生700(600)円。中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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