「浮世絵百華 平木コレクションのすべて」(前期) たばこと塩の博物館

たばこと塩の博物館渋谷区神南1-16-8
「中央大学創立125周年記念特別展 浮世絵百華 平木コレクションのすべて」(前期展示)
11/21-12/13(後期:12/15-2010/1/11)



中央大学創立125周年を記念し、縁の深い平木浮世絵コレクションを展観します。たばこと塩の博物館で開催中の「浮世絵百華 平木コレクションのすべて」の前期展示を見てきました。



つい先だっての三井記念美術館しかり、このところ浮世絵の展示が続いています。よってそれらと区別するためにも、ここでは本展の見どころ、及び特徴を簡潔に4つに分けて挙げてみました。

1.日本三大浮世絵コレクションの一つを展示。
現東博の松方コレクション、そして先日三井で出品された高橋コレクションに並び、日本を代表する浮世絵コレクションがこの平木の作品群に他なりません。今回の展示では、全140点の作品を前後期、各70点ずつ公開しています。なお作品は総入れ替え制です。当然ながら全て見るには前後期の二回、足を運ぶ必要があります。ちなみに入場料は「たばこと塩価格」の各300円、さらに通し券では破格の500円です。お値打ち展覧会であることは間違いありません。

2.前期では浮世絵の通史を概観。後期では「浮世絵文化史学」と題し、その文化史的な視点より、浮世絵を再考する。
前期展示は菱川師宣に始まり、春信、歌麿、北斎、広重と、浮世絵の流れを時系列に追いかけています。また平木コレクションは、特に浮世絵の初期作の蒐集に定評があります。点数は春信までで10点弱とそう多くはありませんが、重文の鳥居清倍の「初代市川団十郎の暫」をはじめとした鳥居派、奥村政信近辺の作品は見応え十分でした。

3.重要文化財5点を一挙公開。(前期のみ)
本展のハイライトは重要文化財5点のそろい踏みです。鳥居清倍「初代市川団十郎の暫」、石川豊信「花下美人」、歌川広重「江戸近郊八景之内 玉川秋月」、「芝浦晴嵐」、「飛鳥山暮雪」の各作品が横に一列、ずらりと揃う様子は壮観でした。なおこの重文の一括展示は前期のみです。ご注意下さい。

4.関連講演会企画あり。
博物館WEBサイトにも記載がありますが、年末年始にかけても講演会他、ギャラリートークなどが予定されています。今回の展示を切っ掛けに、浮世絵への理解をさらに深めるのも良いのではないでしょうか。

率直なところ、展示作品の発色などを含め、ミネアポリスやボストンなどの里帰り展ほどのインパクトはありませんが、如何せん現状で平木のコレクションをまとめて見るには、あの恐ろしく手狭な豊洲のスペースを訪ねる他ありません。それに比べれば、ここたばこと塩の展示室もゆとりあると言えるのではないでしょうか。三井の高橋コレクションに引き続き、国内屈指の浮世絵群を楽しめるまたとない機会となりました。



歌麿の傑作ともいわれる「歌撰戀之部 思恋仙」に釘付けです。細めた目、くねらせた指、さらには物思い気味ながらも、やや拗ねたような表情などは、恋に浸る女性の複雑怪奇な心理を巧みに吸い上げています。状態も良く、千鳥の衣もまた美しく表されていました。

前期展示は次の日曜、13日までの開催です。後期ももちろん行きます。
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「根来」 大倉集古館

大倉集古館港区虎ノ門2-10-3 ホテルオークラ東京本館正門前)
「根来」
10/3-12/13



朱色の玉手箱は大倉集古館をかつてないほど魅力的な場へと変化させました。大倉集古館で開催中の「根来」へ行ってきました。

私は今回の展示に大いに感銘を受けましたが、長々と書いてしまうにはやや時が遅過ぎたかもしれません。(既に会期末間際です。)ここは簡潔に、全体から特に印象に残った3つのポイントを挙げておきたいと思います。

1.「根来」とは何ぞやを体感的に味わえる。
百聞は一見にしかずという言葉が身に染みます。根来とは「黒漆を塗った上に朱漆を塗り重ねた漆器」(目の眼2009年11月号より)を指しますが、大倉の会場に一歩足を踏み入れただけで、その朱という色の美しさと、盆や器などの多様な形を楽しめること間違いありません。古くは室町にまで遡るというそれぞれの器は、長い歳月の中で歪み、また色を落としながら、まさに用の美と言われる独特な味わいを獲得していました。赤楽、また黒楽を愛でているような気分にもさせられます。

2.朱から広がる多様な表情の魅力。
元来、仏具や什器として使われたという根来は、そもそも実用品ではありますが、そこから広がるイメージは無限大と言えるかもしれません。ひび割れから覗く黒はまるでブラックホールのように深い闇をたたえ、逆に煌煌とともる朱は太陽の輝きを得て力強く放たれていました。朱と黒のコントラスト、色のムラから生まれる表情は、単なる工芸を通り越した何らかのメッセージを伝えるのに不足ありません。霞む雲、ざわめく水の流れというような自然を前にした時のような感覚から、ロスコ、さらには色こそ異なるものの、ザオなどの抽象絵画を見た時のような印象さえ受けました。

3.展示の妙。魅惑的な「根来インスタレーション」。
根来の繊細な表情を伺える環境が整っています。凝った仕掛けはありませんが、器の下に畳を敷き、時に経典と取り合わせた展示構成は、失礼ながらもこれまでの大倉にはない稀な空間を作り上げていました。また控えめなライティングも効果的です。剛胆でかつ押しの強い忠太の建築は、意外なほど根来の美しさを引き出しています。特に横一列、碗や杯などが、それこそ山の雄大な連なりのように並ぶ二階展示室正面のケースの美しさには体が震えました。

「目の眼2009年11月号 - 特集 根来」

私の拙い言葉をこれ以上に重ねても殆ど意味をなしません。根来に魂を吸い取られました。

13日までの開催です。お見逃しなきようご注意下さい。
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「セバスチャン・サルガド アフリカ」 東京都写真美術館

東京都写真美術館目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「セバスチャン・サルガド アフリカ」
10/24-12/13



東京都写真美術館で開催中の「セバスチャン・サルガド アフリカ」へ行ってきました。

まずは本展の簡単な概要です。公式HPから引用します。

・フォト・ドキュメンタリーの先駆者であるセバスチャン・サルガドが、1970年来より取材し続けてきたアフリカの写真を展観する。
・作品数約100点。最新作「ジェネシス」シリーズも公開。

サルガドという名前程度しか耳にしたことのない私にとって、彼の作品群を一挙に見たのは今回がはじめてでしたが、アフリカのドラマ、そして大地をモノクロームに包んだその写真に接すると、確かに多くの人々に支持されているのも頷けるものがありました。90年代のモザンビーグの難民の他、現代アフリカが終始抱えてきている貧困と飢餓、そして戦争の悲劇は、対象を食らい付いて離さないサルガドのアプローチによって、著しくドラマテックに、また神秘的な美しさをもって提示されています。言い換えれば、ジャーナリズム的視点、もしくは実景を超えた、文字通り『サルガドのアフリカ』としての一種の物語が色濃く表れているとしても良いのかもしれません。その意味で、彼の作品をフォト・ドキュメンタリーとして見るのはいささか違和感を覚えたのも事実でした。

なお美術館のHPにも記載がありますが、会期末になってやや混雑してきているようです。この週末はひょっとすると規制などもかかるのかもしれません。

実際に私が出向いた日もかなりの人出でしたが、食い入るように写真を見やる若い観客の姿も印象に残りました。また会場は静まり返っていたことも付け加えておきます。

13日までの開催です。
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「neoneo展 Part2[女子] 」 高橋コレクション日比谷

高橋コレクション日比谷千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井ビルディング1階)
「neoneo展 Part2[女子] - ネオネオ・ガールズは岩戸を自らひらく」
10/31-12/27



第一部の男子編に引き続きます。高橋コレクション日比谷で開催中の「neoneo展 Part2[女子] 」へ行ってきました。

出品作家は以下の20名です。公式HPより転載します。(展示はほぼ各1点ずつ。)

大竹夏紀、樫木知子、加藤愛、児嶋サコ、齊藤彩、櫻井りえこ、塩保朋子、竹村京、田中麻記子、名知聡子、春木麻衣子、ヒョンギョン、藤田桃子、増田佳江、松井えり菜、宮川ひかる、三宅砂織、山田郁予、和田典子

第一部の「男子=草食」はもとより、今回の「岩戸」云々も趣旨が今ひとつ分からなかったので、前回同様、単純に印象深かった作家を何名か挙げてみました。

名知聡子
大きな澄んだ瞳を見開いた前を見据える巨大なポートレート。ピュアな表情をとりながらも、その奥底には強烈な自我が潜んでいた。ブラシを用いた絵具の色遣いも美しかった。

藤田桃子
かつての高橋コレクション展で度肝を抜かれた藤田桃子のペインティング一枚。相変わらずの強烈な迫力で見る者を圧倒する。巨大な嘴を持った鳥は人を呑み込み、まさに怪鳥となって画面を押しつぶすようにして君臨した。日本画を優に超えた独特の画肌の味わいは、まるで凹凸のある青銅製の工芸品を見るかのよう。暗がりにうっすらと靡く金箔がまた不気味に光っていた。

山田郁予
トレーシングペーパーに虚像のような少女を描く。金色の髪を靡かせがらも、うつむき加減に佇むその姿は、紙の包まった様子を相まってか、どこか泣いているような物悲しさをたたえていた。

スペースのお披露目を兼ねたグループ展では如何ともし難いものがありますが、こうした展示に接すると、その見せ方によって作品の印象がマイナスを含めて大きく変化してしまうことを改めて感じました。次回以降は是非とも作家を個別に紹介する「個展」を拝見したいです。

27日まで開催されています。
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2009年12月の予定(+お知らせ)

11月の記録に続きます。今月に見たい展示などをあげてみました。

展覧会

「ユートピア - 描かれし夢と楽園」 出光美術館(~12/20)
「文化資源としての炭鉱展」 目黒区美術館(~12/27)
「浮世絵百華 平木コレクションのすべて」 たばこと塩の博物館(~2010/1/11)
「清方/Kiyokata ノスタルジア - 名品でたどる 鏑木清方の美の世界 - 」 サントリー美術館(11/18~2010/1/11)
「内藤礼 - すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」 神奈川県立近代美術館鎌倉館(~2010/1/24)
「躍動する魂のきらめき - 日本の表現主義」 松戸市立博物館(12/8~2010/1/24)
「Domani・明日展2009」 国立新美術館(12/12~2010/1/24)
「NO MANS LAND 創造と破壊」 在日フランス大使館旧庁舎(~2010/1/31)
「村山槐多 ガランスの悦楽」 渋谷区立松濤美術館(~2010/1/24)
「東山魁夷と昭和の日本画」 山種美術館(~2010/1/31)
「江戸の粋・明治の技 柴田是真の漆×絵」 三井記念美術館(~2010/2/7)
「国宝 土偶展」 東京国立博物館(12/15~2010/2/21)
「束芋 断面の世代」 横浜美術館(12/11~2010/3/3)

ギャラリー

「カンノサカン hunch」 ラディウム-レントゲンヴェルケ(~12/26)
「変成態 - リアルな現代の物質性 vol.6 金氏徹平」 gallery αM(~12/26)
「天明屋尚 風流」 ミヅマアートギャラリー(市谷田町)(12/16~2010/1/30)
「小西紀行 - 個として全」 ARATANIURANO(12/19~2010/1/30)

コンサート

未定

今月も廻りきれないくらい美術展をピックアップしてみた一方、画廊については全然網羅出来ていません。また横浜方面はスケジュールの都合で少々厳しそうですが、未だ見られていない内藤展とあわせ、あの束芋も始まるということで、何とか年内中には行きたいと思います。

ところで地元の話で恐縮ですが、これまで名古屋や栃木など、日本各地の美術館で開催されてきた「躍動する魂のきらめき - 日本の表現主義」が、何故か最後に私の自宅に近い松戸の市立博物館へと巡回します。如何せん知名度もない博物館の上、実際にも辺鄙な場所にあるので、行かれるのを躊躇されている方も多いかもしれませんが、もし差し支えないようでしたら、13日の日曜日に現地ツアーを組んでご案内出来ればと考えております。ご希望の方はコメントかメールでもいただければ幸いです。



「躍動する魂のきらめき - 日本の表現主義」(参考リンク:兵庫県立美術館栃木県立美術館美連協
会期:2009年12月8日(火)~2010年1月24日(日)
場所:松戸市立博物館(千葉県松戸市千駄堀671)
料金:一般800円、高・大生500円、小・中生300円
展示替えあり(前期:12/8~12/20、中期:12/22~1/11日、後期:1/13~1/24)
*かなり小さな会場なので、各会期あたりの展示数はあまり多くないものと予想されます。公式出品リストは現在作成中の模様です。

*現地オフ会(詳細未定)
新京成線八柱駅、もしくはJR武蔵野線新八柱駅に集合し、バスで博物館へ移動。その後、展覧会を自由鑑賞。終了後に八柱駅周辺にて懇親会など。日時は13日(日曜)の午後を予定しています。
 
なお今月も先月同様、途中、ブログの更新をお休みいただくかもしれません。何卒宜しくお願いします。
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2009年11月の記録

恒例の「予定と振り返り」です。まずは先月見た展示を簡潔にリストアップしてみました。

展覧会

「◯セバスチャン・サルガド/・写真新世紀東京展2009」 東京都写真美術館
☆「根来」 大倉集古館
・「ベルギー近代絵画のあゆみ」 損保ジャパン東郷青児美術館
◎「ウィリアム・ド・モーガン」 パナソニック電工汐留ミュージアム
◯「河口龍夫展 言葉・時間・生命」 東京国立近代美術館
◯「講談社野間記念館の名品」 講談社野間記念館
◎「狩野派 - 400年の栄華」 栃木県立博物館
◯「皇室の名宝 - 日本美の華」(第二期)」 東京国立博物館(プレビュー)
◎「特別展 菱田春草」(後期展示) 明治神宮文化館
・「シェル美術賞展 2009」 代官山ヒルサイドフォーラム

ギャラリー

・「伊藤一洋 - Evidence」 hpgrp GALLERY東京
◎「エターナルフォース 画像コア 梅沢和木個展」 frantic gallery
・「田口和奈 - 半分グレーでできている」 void+
・「国本泰英 展」 BASE GALLERY
◯「出和絵理 - 陶 白き小さき光のかたち - 」 INAXガレリアセラミカ
・「Clara Desire + Masako + 大槻素子展」 ギャラリー・ショウ
◎「TWS-Emerging 122 小畑多丘」 TWS本郷
◯「月の庭 深井隆展」 日本橋高島屋美術画廊X
・「Blank Space」 POLA MUSEUM ANNEX
・「変成態 - リアルな現代の物質性 Vol.5 袴田京太朗」 ギャラリーαM
◯「土屋仁応 - 夢をたべる獏が夢みる夢」 MEGUMI OGITA GALLERY
・「開廊展」 ミヅマアートギャラリー

今更ながら☆印をつけておいて根来の感想を書くのを忘れていました。近日中にアップします。

画廊の展示で印象深いものが数多くありました。私としては特に木彫に魅せられた一ヶ月でした。

12月の予定へと続きます。
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「伊藤一洋 - Evidence」 hpgrp GALLERY東京

hpgrp GALLERY東京渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F)
「伊藤一洋 - Evidence」
2009/11/27-2010/1/5



「ブロンズの可能性に挑み続ける彫刻家、伊藤一洋」(*)の世界を紹介します。hpgrp GALLERY東京で開催中の「伊藤一洋 - Evidence」へ行ってきました。

「新種の生命体」(*)を意識したという伊藤のスタンスは、確かにブロンズの質感を、半ばらしからぬ生々しい物体へと変化させることに成功しています。展示されているのは、時に意図せぬプロセスにて生み出されたブロンズを、自在に組み合わせて作り上げた彫刻作品、数点です。円形の塊はあたかも心臓のような肉感的な様相をとり、その一方でシャープな曲線を描く棒状のそれは、日本刀のような光を発しながら、十字架状になって壁面に突き刺さっていました。白銀と黒い褐色、またゴールドと多様に輝く作品を見ていると、それこそまだ知らぬ有機体の誕生のシーンを見ているような気分にもさせられます。ブロンズは一種、異様でグロテスクなまでの内に秘めた生命力を獲得していました。

来年1月5日まで開催されています。

注)*は画廊HPより引用。
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「エターナルフォース 画像コア 梅沢和木個展」 frantic gallery

frantic gallery中央区日本橋兜町16-1 第11大協ビル3階)
「エターナルフォース 画像コア 梅沢和木個展」
11/27-12/19



「ネットから収集されたというサブカルチャーの画像」(画廊HPより引用)が、平面はおろか、画廊の空間全体で激しくぶつかり合います。frantic galleryで開催中の「エターナルフォース 画像コア 梅沢和木個展」へ行ってきました。

梅沢和木のプロフィールについては作家HPをご参照下さい。

BIOGRAPHY@梅ラボ

一見するところの印象では、上のDM画像を遠目で眺めるのと同じく、何やら鮮やかで多様な色面が、非常に動きをもって半ば乱れているようにも見えますが、実際にその下に広がるのは、作家本人が日常的に集めたというサブカル的なネットの画像でした。ドラクエはおろかFF、さらには私の預かり知らないアニメの主人公など、まさにネットに散らばる無限大のイメージをそのままにして用いたモチーフの群れは、同じく力強く上下に行き来する絵具の流れなどによって辛うじて『全体』として留まり、画廊の壁面に血の飛沫をぶちまけたかのようなおどろおどろしさをもって激しく展開しています。ズタズタに寸断された元のイメージはひたすらに解体していくのはもちろん、逆に何ら脈絡なく繋がり合って抽象絵画風のイメージを作り上げる様子は、コラージュと絵画の合間をいとも簡単に引き裂いてしまいました。この解体された溢れんばかりのイメージに囲まれた時、若干の目眩がしたのは私だけではないかもしれません。

見る者が一度に許容出来るデータ量を優に越えたカオスが広がっていました。頭をがつんと殴られた時の感覚に近いものがあります。

19日までの開催です。
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「田口和奈 - 半分グレーでできている」 void+

void+港区南青山3-16-14 1階)
「田口和奈 - 半分グレーでできている」
11/21-12/18



深い霧に包まれた女性の残像は夢うつつの世界へと消えていきます。void+で開催中の田口和奈の個展へ行ってきました。

田口の作品というと、まず多様な人物のモチーフをピックアップ、そしてモンタージュし、それを平面に描きながら、さらには撮影するという複雑な技法がとられていますが、一見するところ今回も基盤となるプロセスは何ら変わることはありません。お馴染みの霞むグレーの世界には、まさに幻影的で謎めいた女性の断片的イメージが、あたかも浮遊するかの如く定着しています。写真と絵画を行き来する独特の質感はもとより、解体と再生を繰り返すというモンタージュの効果は、何とも言い難い対象の不在感を呼び込んでいました。モチーフを前にしながらも、何を見ているのか、また見られているのか分からなくなるような錯覚を覚えた方も多いかもしれません。

当初はその凝った技法自体に目を奪われましたが、最近は一線を越えた、謎めいた複層的な空間全体に魅力を感じることが多くなりました。その喪失感はさらにどこへ進んでいくのでしょうか。

展示は3点のみです。18日まで開催されています。
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