都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「椿会展 2010」 資生堂ギャラリー
資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階)
「椿会展 2010 Trans-Figurative」
4/10-6/13
資生堂ギャラリーで開催中の「椿会展 2010 Trans-Figurative」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。
伊庭靖子 塩田千春 祐成政徳 袴田京太郎 丸山直文 やなぎみわ
相互の関係性如何はともかくも、このメンバーをすれば楽しめないはずもありませんが、私として一番惹かれたのは、自身としては数年ぶりでもあるというやなぎみわのオブジェ、「XXXS~XXXXL」(2010)でした。その謎めいたタイトル由来については会場で確かめていただきたいところですが、いわゆる平均ではないサイズの『何か』が並ぶ様子は、彼女が終始テーマとする女性性の問題を改めて浮き彫りにしています。映像、写真以外でも、やや毒もあるメッセージは全く揺らぐことがありませんでした。
目黒区美の個展も印象深い丸山直文の他、αMでのインスタレーションも鮮やかだった袴田の作品にも見入るところですが、失礼ながらも今回、思いの外に魅力を感じたのは一昨年のアーティストファイルにも出品のあった祐成政徳の「Bridge Over Falt Water」(2010)でした。ここで彼はそのBridgeの名の通り、青銅ギャラリーの大小二つの空間の橋渡しを成し遂げています。鋼からブロンズへ続き、その先の暗室に塩田千春の例えれば血みどろの映像作品が続く姿は、一つの展示方法としても見事でした。
お馴染みのクッションを描く伊庭靖子も、ここに来てやや変化見せているかもしれません。とは言え、ホワイトキューブの光を吸収して一番美しく輝いているのは彼女の作品でした。
なお今回で椿会の「第6次」が終了します。本展は昭和22年よりはじまり、それこそかつては大観や土牛らも参加してきた伝統あるグループ展です。またメンバーを入れ替えての「第7次」にも期待したいと思いました。
参考:椿会メンバーの変遷
6月13日まで開催されています。
追記:第4回「資生堂art egg賞」に村山悟郎氏が選ばれました。
「椿会展 2010 Trans-Figurative」
4/10-6/13
資生堂ギャラリーで開催中の「椿会展 2010 Trans-Figurative」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。
伊庭靖子 塩田千春 祐成政徳 袴田京太郎 丸山直文 やなぎみわ
相互の関係性如何はともかくも、このメンバーをすれば楽しめないはずもありませんが、私として一番惹かれたのは、自身としては数年ぶりでもあるというやなぎみわのオブジェ、「XXXS~XXXXL」(2010)でした。その謎めいたタイトル由来については会場で確かめていただきたいところですが、いわゆる平均ではないサイズの『何か』が並ぶ様子は、彼女が終始テーマとする女性性の問題を改めて浮き彫りにしています。映像、写真以外でも、やや毒もあるメッセージは全く揺らぐことがありませんでした。
目黒区美の個展も印象深い丸山直文の他、αMでのインスタレーションも鮮やかだった袴田の作品にも見入るところですが、失礼ながらも今回、思いの外に魅力を感じたのは一昨年のアーティストファイルにも出品のあった祐成政徳の「Bridge Over Falt Water」(2010)でした。ここで彼はそのBridgeの名の通り、青銅ギャラリーの大小二つの空間の橋渡しを成し遂げています。鋼からブロンズへ続き、その先の暗室に塩田千春の例えれば血みどろの映像作品が続く姿は、一つの展示方法としても見事でした。
お馴染みのクッションを描く伊庭靖子も、ここに来てやや変化見せているかもしれません。とは言え、ホワイトキューブの光を吸収して一番美しく輝いているのは彼女の作品でした。
なお今回で椿会の「第6次」が終了します。本展は昭和22年よりはじまり、それこそかつては大観や土牛らも参加してきた伝統あるグループ展です。またメンバーを入れ替えての「第7次」にも期待したいと思いました。
参考:椿会メンバーの変遷
6月13日まで開催されています。
追記:第4回「資生堂art egg賞」に村山悟郎氏が選ばれました。
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「寺崎百合子 音楽」 ギャラリー小柳
ギャラリー小柳(中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
「寺崎百合子 音楽」
4/9-5/29
伝えられてきた楽器の記憶をモノクロームの世界にて呼び起こします。ギャラリー小柳で開催中の「寺崎百合子 音楽」へ行ってきました。
展示の冒頭、正面に並べられた鉛筆の小さな欠片が全てを物語ります。バイオリンの他、パイプオルガンの管が鈍く光るホールなどを描いた素材は、言うまでもなく黒鉛筆そのものです。もちろんそれらは精緻でありながらも、例えばモノクロ写真を改めて描き起こしたの如く朧げに浮かび上がっていました。またモチーフに使われた楽器は主に古楽器とのことでしたが、作品から楽器が受け継いできた伝統などを想起させるような面があるのも魅力の一つではないでしょうか。楽器は音を鳴らすというよりも、かつて奏でてきた音を大切に包み込むようにして丁寧に据え置かれていました。
「英国オックスフォードで学ぶということ/小川百合/講談社」
ところで寺崎百合子と聞いても馴染みの薄い方が多いかもしれません。実は私もこの展示に接するまで存じ上げませんでしたが、作家の寺崎は2007年まで「小川百合」として作品を発表し続け、08年よりこの本名にて活動をはじめたそうです。とすると俄然、かつて目黒区美で開催された「線の迷宮」の記憶が蘇ってはこないでしょうか。鉛筆にて図書館などを表したモノクロームの空間は実に寡黙でした。
5月29日までの開催です。これはおすすめします。
「寺崎百合子 音楽」
4/9-5/29
伝えられてきた楽器の記憶をモノクロームの世界にて呼び起こします。ギャラリー小柳で開催中の「寺崎百合子 音楽」へ行ってきました。
展示の冒頭、正面に並べられた鉛筆の小さな欠片が全てを物語ります。バイオリンの他、パイプオルガンの管が鈍く光るホールなどを描いた素材は、言うまでもなく黒鉛筆そのものです。もちろんそれらは精緻でありながらも、例えばモノクロ写真を改めて描き起こしたの如く朧げに浮かび上がっていました。またモチーフに使われた楽器は主に古楽器とのことでしたが、作品から楽器が受け継いできた伝統などを想起させるような面があるのも魅力の一つではないでしょうか。楽器は音を鳴らすというよりも、かつて奏でてきた音を大切に包み込むようにして丁寧に据え置かれていました。
「英国オックスフォードで学ぶということ/小川百合/講談社」
ところで寺崎百合子と聞いても馴染みの薄い方が多いかもしれません。実は私もこの展示に接するまで存じ上げませんでしたが、作家の寺崎は2007年まで「小川百合」として作品を発表し続け、08年よりこの本名にて活動をはじめたそうです。とすると俄然、かつて目黒区美で開催された「線の迷宮」の記憶が蘇ってはこないでしょうか。鉛筆にて図書館などを表したモノクロームの空間は実に寡黙でした。
5月29日までの開催です。これはおすすめします。
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「黒宮菜菜 - 流彩の幻景 - 」 INAXギャラリー
INAXギャラリー2(中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA2階)
「黒宮菜菜 - 流彩の幻景 - 」
4/1-4/27
INAXギャラリー2で開催中の「黒宮菜菜 - 流彩の幻景 - 」へ行ってきました。
作家プロフィールについては画廊HPをご参照下さい。最近では行幸地下ギャラリーでの「ART AWARD」にも出品がありました。
「黒宮菜菜 流彩の幻景展」@現代美術個展ギャラリー2
会場に並ぶ大作のペインティングから受けるイメージは一筋縄ではいきません。画面の奥にはまるで宮殿の装飾のような紋様が細かに敷き詰められ、前面にはあたかもその像を流して溶かすかのような絵具が一面に爛れていました。絵具は基本的に油彩を用いていますが、時に七色にも輝くその光沢感は、上部より垂らされたメディウムにも由来しているようです。上から下へと連なって起立する絵具の膜は、確かに「ギリシャ神殿の柱」(画廊HPより引用)でもあり、また建物を覆う森の木々のようでもありました。幾重にも垂れる絵具の層をかき分け、その奥に広がる装飾的なモチーフに目を凝らすと、まるで宝石の原石がぎっしりとつまった箱を見ているような気持ちにもさせられます。グレーからパステルカラー、さらには近作で多用された原色へと変化する、鮮やかな色彩にも目を奪われました。
図版では作品の魅力の半分も伝えられません。カッティングシートなどを用いた画肌の感触は新鮮味もありました。
4月27日まで開催されています。
「黒宮菜菜 - 流彩の幻景 - 」
4/1-4/27
INAXギャラリー2で開催中の「黒宮菜菜 - 流彩の幻景 - 」へ行ってきました。
作家プロフィールについては画廊HPをご参照下さい。最近では行幸地下ギャラリーでの「ART AWARD」にも出品がありました。
「黒宮菜菜 流彩の幻景展」@現代美術個展ギャラリー2
会場に並ぶ大作のペインティングから受けるイメージは一筋縄ではいきません。画面の奥にはまるで宮殿の装飾のような紋様が細かに敷き詰められ、前面にはあたかもその像を流して溶かすかのような絵具が一面に爛れていました。絵具は基本的に油彩を用いていますが、時に七色にも輝くその光沢感は、上部より垂らされたメディウムにも由来しているようです。上から下へと連なって起立する絵具の膜は、確かに「ギリシャ神殿の柱」(画廊HPより引用)でもあり、また建物を覆う森の木々のようでもありました。幾重にも垂れる絵具の層をかき分け、その奥に広がる装飾的なモチーフに目を凝らすと、まるで宝石の原石がぎっしりとつまった箱を見ているような気持ちにもさせられます。グレーからパステルカラー、さらには近作で多用された原色へと変化する、鮮やかな色彩にも目を奪われました。
図版では作品の魅力の半分も伝えられません。カッティングシートなどを用いた画肌の感触は新鮮味もありました。
4月27日まで開催されています。
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「東北画は可能か?其の一」トークイベント アートスペース羅針盤
アートスペース羅針盤(中央区京橋3-5-3 京栄ビル2階)
トークイベント「東北画はとは可能か?其の一」
日時:2010/4/10
出演:三瀬夏之介、鴻崎正武、赤坂憲雄
アートスペース羅針盤で開催されていた「東北画は可能か?其の一」のトークイベント、「東北画とは何か?」を聞いてきました。
出演:三瀬夏之介(東北芸術工科大学美術科准教授)、鴻崎正武(同大専任講師)、赤坂憲雄(同大東北文化研究センター所長)
開始時間に遅れてしまったので不完全ではありますが、以下、トークの様子を、私のメモを頼りに再現してみます。
三瀬 日本画や美術の既存のフォーマットやルールを打ち破りたい。都市から離れた周縁の東北という地のローカル性を特権化するのではなく、そこに住んだという、ようは地に足の着いたような経験から何か立ち上げてみたいと思い企画した。コマーシャルギャラリー的なものの反対にある、言わばもう一つの輪になるようなイベントにしてみたい。これは単なるプロジェクトではなく、一種の「旅」でもある。基地を作り、そこにビバークしているようなイメージだ。だからこそ部屋の壁を外したりして、通常の展示に風穴をあけるような工夫をしている。なお学生に対しては「東北を探しなさい。」という課題を与えた。そこで見たものや感じたものを各自12号サイズの作品に表現している。
鴻崎 東北出身者も多い学生が「東北って何だろう。」と考え、結果的に一つの答えを出さずに、途中で放棄したケースもあった。一方で、東北のドロドロとした怨念のようなものを前面に押し出した作品もある。ちなみに私は福島出身だが、実は東北をあまり好きではなかった。
三瀬 「東北とはこうである。」というようなバイアスをかけられても、学生は「自分はこういう作品を描くぞ。」というような主張をして欲しい。私の京都での画学生時代もそのようなことがあった。日本画家の上村淳之に師事したが、いつも大げんかばかり。「膠の濃度は味で知れ。」云々など指導や、時折の酷評に私は突き放された感覚を受け、逆にそこから自分の表現を追求していくようにもなった。東北画を半ば強要されることは、例えば戦争画を描くことを強制された画家のようなものかもしれない。また東北芸工大には、幸いなことにも通常の美大ではありがちな日本画と洋画の垣根が低い。そういう環境、そして東北の山形という場所の中で、美術やアートと呼ばれるものは何かということに取り組んで欲しい。ちなみにこの展示は次に東北へ持って行くことになっている。
鴻崎 絵画を例えば屏風のように見せる小屋のような空間には賛否両論もあるかもしれない。また展示の自作についてだが、これは福島の双葉町のだるま祭りに取材している。奇怪なイメージを取り込んで街の人に気に入ってもらえるのかという意識はあったが、幸いなことに現地で飾ってもらっている作品だ。ただこれがいわゆる東北画なのかということは分からない。面白いものとつまらないものの境は常に微妙で、その合間にあるのがアートなのではないかと思うことがある。東北画というお題自体にもそういう部分がないだろうか。
三瀬 今回の企画は見切り発車。思いついたのが去年の夏で、そこから半年ちょっとで開催を迎えただけに準備不足は否めない。ただあえてそれでも早めにやっておかないと、どこかで先にやられてしまうような気がする。もちろん3年くらいかけてしっかり準備すれば良かったという反省はある。
鴻崎 芸工大の面白さというのは、普通は殆どが都会にある「アート」をあえて山形でやっているというところがある。わざわざ美術をするために山形に来る学生も少なくない。
三瀬 東京も一地域であるのは事実。山形も制作をして発表、批評、また売買が成り立つような地域になって思う部分もある。
鴻崎 そもそも作家というのは都会や田舎の区分で割り切れるものではない。この「東北画とは何か?」という展示で、色々なところに種を植え付けたいと思っている。
三瀬 東北画を今回のように東京で見せることにも意義がある。あえて本来の地を離れて浮き上がってくるものは多い。もちろん今回の展示がテーマありきでないかという批判もあるだろう。しかしここにある作品は、作家が確かに東北を描いたものばかりなのだ。もし見ている人が「ここに東北はない。」と感じるようであれば、それは逆にその人が東北に対して何らかの先入観を抱いているからではないだろうか。
赤坂 私は18年前に芸工大に赴任した時から、「果たして東北学は可能か。」ということをずっと研究していた。当時の東北の綴られ方は大きく分けて二つある。一つは東北がいわゆるみちのく、辺境の地にある所以にロマンティックな目線で眺められる「辺境へのロマン主義」と呼ばれるもの、そしてもう一つは辺境として逆に差別されてきた負のイメージの堆積でもある「辺境からのルサンチマン」だ。しかし実際に丹念に追っていくと、今の東北の人達には差別もみちのくの意識もそうあるわけではない。むしろみちのくや東北を解放した方が良いではないかと思うようになった。いわゆるみちのく的なもの、つまりそれこそ道の奥に不思議な世界が広がるような感覚は、むしろ東北だけに限らず、京都や奈良、それに沖縄にだってあるのではないだろうか。
三瀬 世界へ繋がる旅のようなものの一つとして、今回のような展示、また場所を考えている。もがいても何か山形からやっていこうという意識。フォーマットを与えると人にはノイズが出る。そうした中でどのように表現、また先にも触れたが、売買に至るまでの生活をしていくのか。作家は色々な方面から様々な影響を受ける。その中でも半ば孤独に作品をつくり、一つのストーリーを紡いでいくことが重要だ。この小屋からそうした物語、また旅をはじめてみたい。
以上です。この後は質疑応答でも活発なやりとりがなされました。
会場はトークのため、足の踏み場もないほどの混雑でしたが、佐藤美術館での三瀬の個展を彷彿させるような一種のカオスな展示がとても印象に残りました。その合間を歩いていると、うっそうとした森の中を彷徨っているような錯覚にも襲われます。作品は行く手を阻み、そして感性を揺さぶってきました。
なお会期は既に終了しましたが、展示の写真は同画廊HPに掲載があります。
「roots/東北画は可能か?」@アートスペース羅針盤
「東北画は可能か?」、「その弐」の展開に期待します。
トークイベント「東北画はとは可能か?其の一」
日時:2010/4/10
出演:三瀬夏之介、鴻崎正武、赤坂憲雄
アートスペース羅針盤で開催されていた「東北画は可能か?其の一」のトークイベント、「東北画とは何か?」を聞いてきました。
出演:三瀬夏之介(東北芸術工科大学美術科准教授)、鴻崎正武(同大専任講師)、赤坂憲雄(同大東北文化研究センター所長)
開始時間に遅れてしまったので不完全ではありますが、以下、トークの様子を、私のメモを頼りに再現してみます。
三瀬 日本画や美術の既存のフォーマットやルールを打ち破りたい。都市から離れた周縁の東北という地のローカル性を特権化するのではなく、そこに住んだという、ようは地に足の着いたような経験から何か立ち上げてみたいと思い企画した。コマーシャルギャラリー的なものの反対にある、言わばもう一つの輪になるようなイベントにしてみたい。これは単なるプロジェクトではなく、一種の「旅」でもある。基地を作り、そこにビバークしているようなイメージだ。だからこそ部屋の壁を外したりして、通常の展示に風穴をあけるような工夫をしている。なお学生に対しては「東北を探しなさい。」という課題を与えた。そこで見たものや感じたものを各自12号サイズの作品に表現している。
鴻崎 東北出身者も多い学生が「東北って何だろう。」と考え、結果的に一つの答えを出さずに、途中で放棄したケースもあった。一方で、東北のドロドロとした怨念のようなものを前面に押し出した作品もある。ちなみに私は福島出身だが、実は東北をあまり好きではなかった。
三瀬 「東北とはこうである。」というようなバイアスをかけられても、学生は「自分はこういう作品を描くぞ。」というような主張をして欲しい。私の京都での画学生時代もそのようなことがあった。日本画家の上村淳之に師事したが、いつも大げんかばかり。「膠の濃度は味で知れ。」云々など指導や、時折の酷評に私は突き放された感覚を受け、逆にそこから自分の表現を追求していくようにもなった。東北画を半ば強要されることは、例えば戦争画を描くことを強制された画家のようなものかもしれない。また東北芸工大には、幸いなことにも通常の美大ではありがちな日本画と洋画の垣根が低い。そういう環境、そして東北の山形という場所の中で、美術やアートと呼ばれるものは何かということに取り組んで欲しい。ちなみにこの展示は次に東北へ持って行くことになっている。
鴻崎 絵画を例えば屏風のように見せる小屋のような空間には賛否両論もあるかもしれない。また展示の自作についてだが、これは福島の双葉町のだるま祭りに取材している。奇怪なイメージを取り込んで街の人に気に入ってもらえるのかという意識はあったが、幸いなことに現地で飾ってもらっている作品だ。ただこれがいわゆる東北画なのかということは分からない。面白いものとつまらないものの境は常に微妙で、その合間にあるのがアートなのではないかと思うことがある。東北画というお題自体にもそういう部分がないだろうか。
三瀬 今回の企画は見切り発車。思いついたのが去年の夏で、そこから半年ちょっとで開催を迎えただけに準備不足は否めない。ただあえてそれでも早めにやっておかないと、どこかで先にやられてしまうような気がする。もちろん3年くらいかけてしっかり準備すれば良かったという反省はある。
鴻崎 芸工大の面白さというのは、普通は殆どが都会にある「アート」をあえて山形でやっているというところがある。わざわざ美術をするために山形に来る学生も少なくない。
三瀬 東京も一地域であるのは事実。山形も制作をして発表、批評、また売買が成り立つような地域になって思う部分もある。
鴻崎 そもそも作家というのは都会や田舎の区分で割り切れるものではない。この「東北画とは何か?」という展示で、色々なところに種を植え付けたいと思っている。
三瀬 東北画を今回のように東京で見せることにも意義がある。あえて本来の地を離れて浮き上がってくるものは多い。もちろん今回の展示がテーマありきでないかという批判もあるだろう。しかしここにある作品は、作家が確かに東北を描いたものばかりなのだ。もし見ている人が「ここに東北はない。」と感じるようであれば、それは逆にその人が東北に対して何らかの先入観を抱いているからではないだろうか。
赤坂 私は18年前に芸工大に赴任した時から、「果たして東北学は可能か。」ということをずっと研究していた。当時の東北の綴られ方は大きく分けて二つある。一つは東北がいわゆるみちのく、辺境の地にある所以にロマンティックな目線で眺められる「辺境へのロマン主義」と呼ばれるもの、そしてもう一つは辺境として逆に差別されてきた負のイメージの堆積でもある「辺境からのルサンチマン」だ。しかし実際に丹念に追っていくと、今の東北の人達には差別もみちのくの意識もそうあるわけではない。むしろみちのくや東北を解放した方が良いではないかと思うようになった。いわゆるみちのく的なもの、つまりそれこそ道の奥に不思議な世界が広がるような感覚は、むしろ東北だけに限らず、京都や奈良、それに沖縄にだってあるのではないだろうか。
三瀬 世界へ繋がる旅のようなものの一つとして、今回のような展示、また場所を考えている。もがいても何か山形からやっていこうという意識。フォーマットを与えると人にはノイズが出る。そうした中でどのように表現、また先にも触れたが、売買に至るまでの生活をしていくのか。作家は色々な方面から様々な影響を受ける。その中でも半ば孤独に作品をつくり、一つのストーリーを紡いでいくことが重要だ。この小屋からそうした物語、また旅をはじめてみたい。
以上です。この後は質疑応答でも活発なやりとりがなされました。
会場はトークのため、足の踏み場もないほどの混雑でしたが、佐藤美術館での三瀬の個展を彷彿させるような一種のカオスな展示がとても印象に残りました。その合間を歩いていると、うっそうとした森の中を彷徨っているような錯覚にも襲われます。作品は行く手を阻み、そして感性を揺さぶってきました。
なお会期は既に終了しましたが、展示の写真は同画廊HPに掲載があります。
「roots/東北画は可能か?」@アートスペース羅針盤
「東北画は可能か?」、「その弐」の展開に期待します。
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N響定期 「マーラー:交響曲第9番」 ブロムシュテット
NHK交響楽団 第1670回定期公演 Aプログラム2日目
マーラー 交響曲第9番
管弦楽 NHK交響楽団
指揮 ヘルベルト・ブロムシュテット
2010/4/11 15:00~ NHKホール
N響定期からブロムシュテットのマーラー「交響曲第9番」を聴いてきました。
例えばうねり云々を要求する、いわゆるマーラーとしては正統派の演奏ではなかったかもしれませんが、ブロムシュテットらしい端正な、それでいて細部にスコアを抉るような緻密さをも兼ね備えた、非常に格調の高いマーラーであったのではないでしょうか。第1楽章から始まるどこか諦念的なフレーズも、決してお涙頂戴風に情緒一辺倒に流すのではなく、時に縦の線を意識させるように音楽を構築していきます。また第2楽章の舞曲や第3楽章の特にスケルツォ部分も楷書体です。各パートを相互に浮き上がらせる透明感に満ちた響きで、澱みなく、また颯爽と曲を進めていました。良く語られる「悲痛な告白」(解説冊子)を聞くというよりも、音の伽藍の美しさそのもので勝負する演奏であったと言えるかもしれません。
長大なアダージョがこの世との別れを告げる第4楽章はそれまでと一転、音を紡いで一つの大きな渦へとまとめていくような、横のラインへ大きく振幅するスケールの大きな演奏へと変化しました。寄せては返すさざ波や大波は、心の襞に染み入るように伝わってきます。そのドラマというよりも、純化された響きの儚さには涙もこぼれるほどでした。
私自身、偏愛している曲なのでどうしても感興が強くなってしまいますが、この日は久々に音楽が終わって欲しくないという気持ちにさせられました。最後のピアニッシモはいつしか消え行く魂のようにホールで彷徨っていきました。
G MAHLER Symphony Nr 9 Last Movement Adagio Abbado GMJO 1 3
終演後は盛大なカーテンコールが続き、最後にはブロムシュテットだけがステージに呼ばれるいわゆる一般参賀が行われました。力を出し切ったN響にも大きな拍手が贈られていたのは言うまでもありません。
マーラー 交響曲第9番
管弦楽 NHK交響楽団
指揮 ヘルベルト・ブロムシュテット
2010/4/11 15:00~ NHKホール
N響定期からブロムシュテットのマーラー「交響曲第9番」を聴いてきました。
例えばうねり云々を要求する、いわゆるマーラーとしては正統派の演奏ではなかったかもしれませんが、ブロムシュテットらしい端正な、それでいて細部にスコアを抉るような緻密さをも兼ね備えた、非常に格調の高いマーラーであったのではないでしょうか。第1楽章から始まるどこか諦念的なフレーズも、決してお涙頂戴風に情緒一辺倒に流すのではなく、時に縦の線を意識させるように音楽を構築していきます。また第2楽章の舞曲や第3楽章の特にスケルツォ部分も楷書体です。各パートを相互に浮き上がらせる透明感に満ちた響きで、澱みなく、また颯爽と曲を進めていました。良く語られる「悲痛な告白」(解説冊子)を聞くというよりも、音の伽藍の美しさそのもので勝負する演奏であったと言えるかもしれません。
長大なアダージョがこの世との別れを告げる第4楽章はそれまでと一転、音を紡いで一つの大きな渦へとまとめていくような、横のラインへ大きく振幅するスケールの大きな演奏へと変化しました。寄せては返すさざ波や大波は、心の襞に染み入るように伝わってきます。そのドラマというよりも、純化された響きの儚さには涙もこぼれるほどでした。
私自身、偏愛している曲なのでどうしても感興が強くなってしまいますが、この日は久々に音楽が終わって欲しくないという気持ちにさせられました。最後のピアニッシモはいつしか消え行く魂のようにホールで彷徨っていきました。
G MAHLER Symphony Nr 9 Last Movement Adagio Abbado GMJO 1 3
終演後は盛大なカーテンコールが続き、最後にはブロムシュテットだけがステージに呼ばれるいわゆる一般参賀が行われました。力を出し切ったN響にも大きな拍手が贈られていたのは言うまでもありません。
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「ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」 川村記念美術館
川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
「コレクション Viewpoint - ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」
4/10-7/19
川村記念美術館で始まった「コレクション Viewpoint - ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」のプレスプレビューに参加してきました。
定評のある同美術館のコレクションといえば、まず20世紀のアメリカ現代美術が挙げられますが、その中でも特に高い人気を誇るのがこのコーネルではないでしょうか。今回の展覧会では所蔵のコーネル作品全16点(出品リスト)を、高橋睦郎の詩を「道案内」(チラシより引用)にしながら、星空をイメージした展示室にて紹介しています。まさに詩とアートのコラボレーションだと言えるのかもしれません。
(*)
コーネルと詩人の高橋睦郎との接点は、1971年、彼が初めて行ったグッゲンハイム美術館でコーネルのカタログに出会ったことに遡ります。そこで高橋は胸が「キュン」(本人談)となる経験をし、後に実際の小箱を追うようになりました。またこの展覧会が成立した切っ掛けというのも、93年にここ川村記念美術館へ巡回した日本初のコーネル展の際、企画された講演会にて作品に一編の詩を添えたことに由来しています。以来、相当の時間が経過しましたが、結果的に所蔵のコーネルの全作品に詩を詠み終えたということで、今回の展示が実現しました。
(*)
展示室全体がコーネルの小箱を包み込む一種の宇宙のように作り上げられています。ガラス板で区切られた暗室に置かれたコーネルの小箱やコラージュは、それこそ宇宙に点々と漂う星々の如く輝いていました。
今回の展示ではコラージュと小箱、そして詩が、それぞれ各一点ずつ、まさに恋人のように寄り添い合って並べられています。
プレビュー時に高橋氏の詩の朗読がありました。その様子を踏まえ、2、3点の展示作品について簡単に紹介したいと思います。
ジョセフ・コーネル「無題(ピアノ)」(1947-48年頃)
高橋睦郎
音符の鉢でぎゅう詰めの巣箱
表面を叩くと 出てくる 出てくる
耳の孔から入った蜂たちは
頭蓋を あたらしい巣箱にする
音楽の甘い蜜でいっぱいの巣
音符に包まれた小箱。コーネルは元々クラシック音楽をこよなく愛していた。なおこの作品の裏面にはオルゴールが付いている。(その音楽が会場にBGMとしても流れている。)詩ではその音符を蜂にたとえた。
ジョセフ・コーネル「無題(オウムと蜂の住まい)」(1948年頃)
高橋睦郎
オウムたちの世界
チョウたちの世界
二つの世界は お互いを知らない
どちらの世界も知っている人間には
自分の世界がありません
右にオウムが、また左に蝶がまるで博物標本のように置かれている。コーネルは部類の鳥好きでもあった。詩ではそうしたオウムや蝶たちの持つ一つの楽園に対して、我々人間の世界はどうであるのかと問いかける内容になっている。
ジョセフ・コーネル「鳥たちの天空航法」(1961年頃)
高橋睦郎
梢高い巣の中で 卵は夢見る
星となって 天の軌道をめぐること
ときに道を逸れて 落ちること
落下の速度で燃えて 消滅すること
だが 卵は割れ 毛に覆われた雛が出てくる
飛び立っても 飛び上がっても
地上に引き戻される 重たいいのち!
上部の白い球は鳥の象徴ではないだろうか。詩ではその球を鳥の魂に見立て、また下部の人手の散る空間を海と捉えた。(海上を飛ぶ鳥たちのイメージ。)ちなみにこの球については、コーネルが好きだったゲームのピンボールという考えもある。「ペニー・アーケード」でもペニーコインを模したモチーフが見られた。
なお会場内では高橋の詩の原稿もあわせて紹介されています。先に長文の原稿を仕上げてから、何日もの推敲、ようは「引き算」の過程を経て、完成へと至るのだそうです。
(*)
高橋はコーネル作品に感じられる特に寂しさや儚さに強く惹かれています。また小箱を一つの完結した小宇宙、半ば孤独の存在として捉え、その中にこめられた悲しさから逆に一つのモノを作り上げる喜びを得ることを、芸術家の一つの理想であるとも述べました。さらにコーネルは決して生前、知られざる作家というわけではありませんでしたが、ニューヨークという大都会の中で小箱のような作品を作り続けた彼を、高橋は「都会の中の隠者」とも呼んでいます。コラージュや小箱につめられたプライベートな空間は、高橋のテキストを経由することで、より親しみやすいイメージへと解放されているかもしれません。
ところでこの展覧会の主役、コーネルと高橋の詩以外に、もう一つ見逃してはならないものがあります。それがフランス綴じの活版印刷による図録です。高橋の詩集はこうした形態で発行されることも多いそうですが、今回もそれに合わせてこうした味のある図録が登場しました。一枚一枚、ページをペーパーナイフで裂いていくことで初めて高橋のテキストとコーネルの小箱が邂逅します。
(*)
あくまでも「コレクション Viewpoint」、ようは所蔵作品展の一環ということで、決して規模で勝負する展示ではありませんが、(会場は展示室一室です。)回顧展とは異なった切り口で見るコーネルの小箱はとても愛おしく感じられました。もちろん今回のために作られた星空空間のインスタレーションも見どころではあるのは言うまでもありません。
(*)
4月17日に高橋睦郎本人による詩の朗読会があります。展示を楽しむにはこの企画に参加されるのが一番ではないでしょうか。
高橋睦郎 詩の朗読会「コーネルの箱宇宙を讃える」
日時:4/17(土)14:00-15:00
内容:高橋睦郎がコーネルに捧げる新作詩を朗読し、コーネル作品の魅力について語ります。終了後、書籍サイン会も行います。
場所:集合はエントランスホール。予約不要、入館料のみ。
7月19日まで開催されています。
注)写真の撮影と掲載については主催者の許可を得ています。また*の写真については「撮影:渡邊修 川村記念美術館2010」
「コレクション Viewpoint - ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」
4/10-7/19
川村記念美術館で始まった「コレクション Viewpoint - ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」のプレスプレビューに参加してきました。
定評のある同美術館のコレクションといえば、まず20世紀のアメリカ現代美術が挙げられますが、その中でも特に高い人気を誇るのがこのコーネルではないでしょうか。今回の展覧会では所蔵のコーネル作品全16点(出品リスト)を、高橋睦郎の詩を「道案内」(チラシより引用)にしながら、星空をイメージした展示室にて紹介しています。まさに詩とアートのコラボレーションだと言えるのかもしれません。
(*)
コーネルと詩人の高橋睦郎との接点は、1971年、彼が初めて行ったグッゲンハイム美術館でコーネルのカタログに出会ったことに遡ります。そこで高橋は胸が「キュン」(本人談)となる経験をし、後に実際の小箱を追うようになりました。またこの展覧会が成立した切っ掛けというのも、93年にここ川村記念美術館へ巡回した日本初のコーネル展の際、企画された講演会にて作品に一編の詩を添えたことに由来しています。以来、相当の時間が経過しましたが、結果的に所蔵のコーネルの全作品に詩を詠み終えたということで、今回の展示が実現しました。
(*)
展示室全体がコーネルの小箱を包み込む一種の宇宙のように作り上げられています。ガラス板で区切られた暗室に置かれたコーネルの小箱やコラージュは、それこそ宇宙に点々と漂う星々の如く輝いていました。
今回の展示ではコラージュと小箱、そして詩が、それぞれ各一点ずつ、まさに恋人のように寄り添い合って並べられています。
プレビュー時に高橋氏の詩の朗読がありました。その様子を踏まえ、2、3点の展示作品について簡単に紹介したいと思います。
ジョセフ・コーネル「無題(ピアノ)」(1947-48年頃)
高橋睦郎
音符の鉢でぎゅう詰めの巣箱
表面を叩くと 出てくる 出てくる
耳の孔から入った蜂たちは
頭蓋を あたらしい巣箱にする
音楽の甘い蜜でいっぱいの巣
音符に包まれた小箱。コーネルは元々クラシック音楽をこよなく愛していた。なおこの作品の裏面にはオルゴールが付いている。(その音楽が会場にBGMとしても流れている。)詩ではその音符を蜂にたとえた。
ジョセフ・コーネル「無題(オウムと蜂の住まい)」(1948年頃)
高橋睦郎
オウムたちの世界
チョウたちの世界
二つの世界は お互いを知らない
どちらの世界も知っている人間には
自分の世界がありません
右にオウムが、また左に蝶がまるで博物標本のように置かれている。コーネルは部類の鳥好きでもあった。詩ではそうしたオウムや蝶たちの持つ一つの楽園に対して、我々人間の世界はどうであるのかと問いかける内容になっている。
ジョセフ・コーネル「鳥たちの天空航法」(1961年頃)
高橋睦郎
梢高い巣の中で 卵は夢見る
星となって 天の軌道をめぐること
ときに道を逸れて 落ちること
落下の速度で燃えて 消滅すること
だが 卵は割れ 毛に覆われた雛が出てくる
飛び立っても 飛び上がっても
地上に引き戻される 重たいいのち!
上部の白い球は鳥の象徴ではないだろうか。詩ではその球を鳥の魂に見立て、また下部の人手の散る空間を海と捉えた。(海上を飛ぶ鳥たちのイメージ。)ちなみにこの球については、コーネルが好きだったゲームのピンボールという考えもある。「ペニー・アーケード」でもペニーコインを模したモチーフが見られた。
なお会場内では高橋の詩の原稿もあわせて紹介されています。先に長文の原稿を仕上げてから、何日もの推敲、ようは「引き算」の過程を経て、完成へと至るのだそうです。
(*)
高橋はコーネル作品に感じられる特に寂しさや儚さに強く惹かれています。また小箱を一つの完結した小宇宙、半ば孤独の存在として捉え、その中にこめられた悲しさから逆に一つのモノを作り上げる喜びを得ることを、芸術家の一つの理想であるとも述べました。さらにコーネルは決して生前、知られざる作家というわけではありませんでしたが、ニューヨークという大都会の中で小箱のような作品を作り続けた彼を、高橋は「都会の中の隠者」とも呼んでいます。コラージュや小箱につめられたプライベートな空間は、高橋のテキストを経由することで、より親しみやすいイメージへと解放されているかもしれません。
ところでこの展覧会の主役、コーネルと高橋の詩以外に、もう一つ見逃してはならないものがあります。それがフランス綴じの活版印刷による図録です。高橋の詩集はこうした形態で発行されることも多いそうですが、今回もそれに合わせてこうした味のある図録が登場しました。一枚一枚、ページをペーパーナイフで裂いていくことで初めて高橋のテキストとコーネルの小箱が邂逅します。
(*)
あくまでも「コレクション Viewpoint」、ようは所蔵作品展の一環ということで、決して規模で勝負する展示ではありませんが、(会場は展示室一室です。)回顧展とは異なった切り口で見るコーネルの小箱はとても愛おしく感じられました。もちろん今回のために作られた星空空間のインスタレーションも見どころではあるのは言うまでもありません。
(*)
4月17日に高橋睦郎本人による詩の朗読会があります。展示を楽しむにはこの企画に参加されるのが一番ではないでしょうか。
高橋睦郎 詩の朗読会「コーネルの箱宇宙を讃える」
日時:4/17(土)14:00-15:00
内容:高橋睦郎がコーネルに捧げる新作詩を朗読し、コーネル作品の魅力について語ります。終了後、書籍サイン会も行います。
場所:集合はエントランスホール。予約不要、入館料のみ。
7月19日まで開催されています。
注)写真の撮影と掲載については主催者の許可を得ています。また*の写真については「撮影:渡邊修 川村記念美術館2010」
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「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」 ギャラリー・エフ
ギャラリー・エフ(台東区雷門2-19-18)
「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」
3/26-5/9
ギャラリー・エフで開催中の「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」へ行ってきました。
唐突ですが「女書」(ニューシュ)という言葉をご存知でしょうか。これは中国の湖南省の一部の地域において、主にヤオ族と呼ばれる女性たちだけが使ってきた特殊な文字のことで、起源は諸説あるものの、おおよそ数百年間に渡って伝承されてきたそうです。しかしながら2004年、女書の最後の伝承者と言われた女性が死亡し、文化としては事実上消滅してしまいました。
そしてこの展覧会では、そのような女書を研究者の遠藤織枝が紹介しつつ、その文字に感銘を受けたアーティストのYUKAが、同じく女書からインスピレーションを受けた一つのインスタレーションを披露しています。
ギャラリー・エフは19世紀、江戸末期に建築され、現在は有形文化財としても登録された古い土蔵作りの二階建ての建物です。現在は一階手前部分がカフェとバー、そして奥の土蔵部分が展示スペースになっています。その一階の土蔵の狭い入口を潜って見えるのが、YUKAによる3万粒のクリスタルを用いたインスタレーションでした。
これは「女書の語る美しい煌めきと悲哀の物語」(解説冊子より引用)をイメージしたものだそうです。実際に彼女は2001年、中国へ足を運び、女書との出会いを果たしました。
そしてはしご段を上がり、二階部分で紹介されているのが、女書のオリジナルの文字です。
言語学の専門家で、現在は文教大学の名誉教授でもある遠藤織枝は、92年より女書のフィールドワークをはじめ、その研究と保存に尽力してきました。
また研究の経緯については遠藤のWEBサイトが参考になります。
女書世界
展示ではパネルにて女書による歌も紹介されていました。なお「三朝書」と呼ばれる小冊子には、結婚時、母から女性に贈られた詩が記されているのだそうです。
そのあたかもガラス細工とも刺繍とも言えるような文字の繊細さに、時に封建社会の中で教育を受けることも許されなかったという女書を伝承してきた女性たちの悲しみも感じられはしないでしょうか。文革期には女書による作品は破棄されたこともあったのだそうです。
非常に簡素な展示でしたが、浅草へお出かけの際は立ち寄られてみては如何でしょうか。
5月9日まで開催されています。
「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」
3/26-5/9
ギャラリー・エフで開催中の「遠藤織枝×YUCA 『女書:アート×学術の連歌』」へ行ってきました。
唐突ですが「女書」(ニューシュ)という言葉をご存知でしょうか。これは中国の湖南省の一部の地域において、主にヤオ族と呼ばれる女性たちだけが使ってきた特殊な文字のことで、起源は諸説あるものの、おおよそ数百年間に渡って伝承されてきたそうです。しかしながら2004年、女書の最後の伝承者と言われた女性が死亡し、文化としては事実上消滅してしまいました。
そしてこの展覧会では、そのような女書を研究者の遠藤織枝が紹介しつつ、その文字に感銘を受けたアーティストのYUKAが、同じく女書からインスピレーションを受けた一つのインスタレーションを披露しています。
ギャラリー・エフは19世紀、江戸末期に建築され、現在は有形文化財としても登録された古い土蔵作りの二階建ての建物です。現在は一階手前部分がカフェとバー、そして奥の土蔵部分が展示スペースになっています。その一階の土蔵の狭い入口を潜って見えるのが、YUKAによる3万粒のクリスタルを用いたインスタレーションでした。
これは「女書の語る美しい煌めきと悲哀の物語」(解説冊子より引用)をイメージしたものだそうです。実際に彼女は2001年、中国へ足を運び、女書との出会いを果たしました。
そしてはしご段を上がり、二階部分で紹介されているのが、女書のオリジナルの文字です。
言語学の専門家で、現在は文教大学の名誉教授でもある遠藤織枝は、92年より女書のフィールドワークをはじめ、その研究と保存に尽力してきました。
また研究の経緯については遠藤のWEBサイトが参考になります。
女書世界
展示ではパネルにて女書による歌も紹介されていました。なお「三朝書」と呼ばれる小冊子には、結婚時、母から女性に贈られた詩が記されているのだそうです。
そのあたかもガラス細工とも刺繍とも言えるような文字の繊細さに、時に封建社会の中で教育を受けることも許されなかったという女書を伝承してきた女性たちの悲しみも感じられはしないでしょうか。文革期には女書による作品は破棄されたこともあったのだそうです。
非常に簡素な展示でしたが、浅草へお出かけの際は立ち寄られてみては如何でしょうか。
5月9日まで開催されています。
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「ポーラミュージアムアネックス展2010 - 祝祭 - 」 ポーラミュージアムアネックス
ポーラミュージアムアネックス(中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階)
「ポーラミュージアムアネックス展2010 - 祝祭 - 」
4/1-4/25
ポーラ美術振興財団によって在外研修を助成された若手アーティスト、計4名を紹介します。ポーラミュージアムアネックスで開催中の「ポーラミュージアムアネックス展2010 - 祝祭 - 」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。(プロフィールについては公式WEBサイトをご参照下さい。)
斎藤麗(1980~)
遠藤良太郎(1967~)
小木曽瑞枝(1971~)
内田早苗(1983~)
なお作家の選考、展示の監修は、美術評論家の木島俊介氏がつとめています。
同館リニューアルオープンを記念しての「祝祭」ということもあってか、会場内にはどこか華やかな印象を与える絵画やインスタレーションが展示されていました。
遠藤良太郎
アクリル彩色の桜色で空間を美しく演出します。ベイスギャラリーでの個展が多いとのことで、次回はそちらも拝見してみたいと思いました。
小木曽瑞枝
壁に木彫で様々なモチーフを展開します。花火や樹木、それに鳥の巣などのレリーフが宙を舞うように並んでいました。
斎藤麗
セラミックや石膏などで出来た饗応の場を提供します。しかしながらよく見ると割れた食器や曲がったスプーンなど、例えば宴の痕跡のような退廃的な様相も漂わせていました。
全体としてインパクトの強い展示ではありませんが、半ばパステルカラーに染まった軽やかな作品群は、確かに春の門出を祝うのにも相応しいのかもしれません。
なお17日の土曜日に出品作家が揃ってのギャラリートークが開催されます。
会期中無休にて25日まで開催されています。入場は無料でした。
「ポーラミュージアムアネックス展2010 - 祝祭 - 」
4/1-4/25
ポーラ美術振興財団によって在外研修を助成された若手アーティスト、計4名を紹介します。ポーラミュージアムアネックスで開催中の「ポーラミュージアムアネックス展2010 - 祝祭 - 」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。(プロフィールについては公式WEBサイトをご参照下さい。)
斎藤麗(1980~)
遠藤良太郎(1967~)
小木曽瑞枝(1971~)
内田早苗(1983~)
なお作家の選考、展示の監修は、美術評論家の木島俊介氏がつとめています。
同館リニューアルオープンを記念しての「祝祭」ということもあってか、会場内にはどこか華やかな印象を与える絵画やインスタレーションが展示されていました。
遠藤良太郎
アクリル彩色の桜色で空間を美しく演出します。ベイスギャラリーでの個展が多いとのことで、次回はそちらも拝見してみたいと思いました。
小木曽瑞枝
壁に木彫で様々なモチーフを展開します。花火や樹木、それに鳥の巣などのレリーフが宙を舞うように並んでいました。
斎藤麗
セラミックや石膏などで出来た饗応の場を提供します。しかしながらよく見ると割れた食器や曲がったスプーンなど、例えば宴の痕跡のような退廃的な様相も漂わせていました。
全体としてインパクトの強い展示ではありませんが、半ばパステルカラーに染まった軽やかな作品群は、確かに春の門出を祝うのにも相応しいのかもしれません。
なお17日の土曜日に出品作家が揃ってのギャラリートークが開催されます。
会期中無休にて25日まで開催されています。入場は無料でした。
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「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」 サントリー美術館
サントリー美術館(港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階)
「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」
3/27-5/23
サントリー美術館で開催中の「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」へ行ってきました。
切子展の例を挙げるまでもなく、この手の展示は同美術館の得意とするところですが、今回も期待を裏切ることなく、まさに和ガラスの魅力を余すことなく伝えています。会場には、主に江戸時代より国内で生産されたガラスの品々、全150点が、それこそ眩いばかりの輝きを放って紹介されていました。その展示の光景そのものが鑑賞の対象になり得る美しさとも言えるかもしれません。
惹かれた作品をあげるとキリがありませんが、今回、私がとりわけ印象に残ったのがいわゆるビーズ飾りの品々です。今でもビーズは例えばストラップ云々に使われるなど、非常に身近な一種の装身具でもありますが、江戸時代もまるで小さな宝石のようなガラスのビーズが、硯箱や櫛などの至るところに素材として用いられていました。上に画像を挙げたこの硯箱の紋様もまたビーズ製です。他にも灯籠や金魚玉などにビーズが散りばめられていました。
またもう一つ、印象に深いのが、酒を入れたちろりや徳利などです。ちらし表紙にも藍色ちろりが掲載されていますが、マーブル模様を描く「黄緑縞文徳利」など、一度はこうした器でお酒を楽しみたいと思うような作品ばかりでした。
さらに単に和ガラスだけでなく、それを主題に取り入れた浮世絵や屏風が出ているのもまた嬉しいところです。歌麿の「婦人職人分類 びいどろ師」や国芳画などを見ていると、こうしたガラスが人々の身近な場所にあったということが良く分かりました。
展示のハイライトは吹き抜けスペースに掲げられた全500個による江戸風鈴のインスタレーションに他なりません。格子から差し込む陽の光が風鈴を瞬かせ、また時折鳴る音が涼の気配を先取りしていました。
照明によって見事に演出されたガラスの影にも是非注目して下さい。
なおごく一部の作品に展示替えがあります。(前期:3/27-4/26、後期:4/28-5/23。詳細は出品リストへ。)
まさに眼福の展覧会でした。5月23日まで開催されています。
「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」
3/27-5/23
サントリー美術館で開催中の「和ガラス 粋なうつわ、遊びのかたち」へ行ってきました。
切子展の例を挙げるまでもなく、この手の展示は同美術館の得意とするところですが、今回も期待を裏切ることなく、まさに和ガラスの魅力を余すことなく伝えています。会場には、主に江戸時代より国内で生産されたガラスの品々、全150点が、それこそ眩いばかりの輝きを放って紹介されていました。その展示の光景そのものが鑑賞の対象になり得る美しさとも言えるかもしれません。
惹かれた作品をあげるとキリがありませんが、今回、私がとりわけ印象に残ったのがいわゆるビーズ飾りの品々です。今でもビーズは例えばストラップ云々に使われるなど、非常に身近な一種の装身具でもありますが、江戸時代もまるで小さな宝石のようなガラスのビーズが、硯箱や櫛などの至るところに素材として用いられていました。上に画像を挙げたこの硯箱の紋様もまたビーズ製です。他にも灯籠や金魚玉などにビーズが散りばめられていました。
またもう一つ、印象に深いのが、酒を入れたちろりや徳利などです。ちらし表紙にも藍色ちろりが掲載されていますが、マーブル模様を描く「黄緑縞文徳利」など、一度はこうした器でお酒を楽しみたいと思うような作品ばかりでした。
さらに単に和ガラスだけでなく、それを主題に取り入れた浮世絵や屏風が出ているのもまた嬉しいところです。歌麿の「婦人職人分類 びいどろ師」や国芳画などを見ていると、こうしたガラスが人々の身近な場所にあったということが良く分かりました。
展示のハイライトは吹き抜けスペースに掲げられた全500個による江戸風鈴のインスタレーションに他なりません。格子から差し込む陽の光が風鈴を瞬かせ、また時折鳴る音が涼の気配を先取りしていました。
照明によって見事に演出されたガラスの影にも是非注目して下さい。
なおごく一部の作品に展示替えがあります。(前期:3/27-4/26、後期:4/28-5/23。詳細は出品リストへ。)
まさに眼福の展覧会でした。5月23日まで開催されています。
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三菱一号館美術館がオープン
本日開館を迎えた三菱一号館美術館へ行ってきました。
開催中の「マネとモダンパリ」展の感想については後日にまわすとして、今回は美術館の印象について少しまとめてみます。
(*)
しばらく前から建物自体は完成していたので、れんが造りの外観をご存知の方も多いかもしれません。この建物は、1894年にジョサイア・コンドルによって設計された日本初の洋風事務所建築を復元したもので、外部内部とも当時の設計図に準じているのはもちろんのこと、一部については当時の部材を再利用して建てられています。さすがに完成したばかりということもあってか、まだ街に馴染むまでには至りませんが、どこか似たような高層ビルの並ぶ丸の内界隈で異彩を放っていたのは事実でした。
(*)
一帯は「丸の内ブリックスクエア」と名付けられたオフォス、商業施設を含む再開発エリアとなっていましたが、その中核となるのがこの三菱一号館美術館です。内部には樹木や花も植えられた中庭もあります。れんがとガラスを連続させたような外観もまた特徴的でした。
(*)
美術館内部はかつての事務所建築ということで、ともかくおおよそ最近の美術館らしからぬ小部屋で仕切られています。ちょうど庭園美術館や、かつてのステーションギャラリーの展示室に似ているかもしれません。
(*)
私自身、そのこじんまりとした外観に比べて、中は意外と広いように思えましたが、3階と2階の2フロアに分かれ、また10以上の部屋の続く館内を歩いていると、まるで迷路の中を彷徨っているような気分になりました。ひょっとすると展示泣かせのスペースかもしれません。また混雑すると多少の圧迫感を受けるのではないでしょうか。これも庭園美と同じでした。
(*)
館内で目を引くのは充実したミュージアムショップと、当時の銀行窓口の吹き抜けフロアをそのまま再現したというカフェスペースです。こちらは美術館オープン前から営業していたこともあり、早くも丸の内エリアの人気スポットとなっていたようでした。
立地は申し分ありません。東京駅の丸の内地下南口からは地下通路で直結し、また千代田線の二重橋前駅からも明治安田生命のビルを経由し、同じく地下通路で繋がっていました。(地下通路周辺マップ)
なお三菱一号館美術館の概要、理念については、館長の高橋明也氏のメッセージが明快です。
美術館概要 - 館長メッセージ@三菱一号館美術館
テーマには「近代都市と美術」が据えられています。この場所が記憶してきた歴史を踏まえたものでした。
またマネとモダンパリ展以降、来年11月までの展示スケジュールも告知されています。
「開館記念展〈2〉 三菱が夢見た美術館―岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」
会期:2010年8月24日(火)~11月3日(水・祝)
「レンバッハハウス・ミュンヘン市立美術館所蔵 カンディンスキーと青騎士展」
会期:2010年11月23日(火・祝)~2011年2月6日(日)
「王妃の画家ヴィジェ=ルブラン マリー・アントワネットと18世紀の女性画家たち」(仮称)
会期:2011年3月~5月
「ジャポニスムの立役者たち―欧米で愛された陶磁器・銀器・装飾品」(仮称)
会期:2011年6月~8月
「トゥールーズ=ロートレック モーリス・ジョワイヤン・コレクション」(仮称)
会期:2011年9月~11月
私としては好きなカンディンスキーの他、同美術館の姉妹館であるフランスのロートレック美術館のコレクションが出品されるという、「トゥールーズ=ロートレック モーリス・ジョワイヤン・コレクション」(仮称)に注目したいと思います。また主に静嘉堂文庫での展示が多かった岩崎コレクションの日本美術が、ここ丸の内でも楽しめる機会が増えるかもしれません。
また最後に一つ、是非とも挙げておきたいのが開館時間です。都心立地でも夕方過ぎには閉館してしまう美術館が多い中で、ここ三菱一号館美術館は、水曜日から金曜日まで、夜の8時まで開館しています。(月曜休館。他は18時まで。)場所柄、お仕事帰りという方も多いかもしれません。これは嬉しい配慮でした。
マネとモダンパリ展は、マネの魅力に改めて虜にされるような展覧会でした。近日中に感想をまとめます。
*の画像については美術館のリリースを転載しています。
開催中の「マネとモダンパリ」展の感想については後日にまわすとして、今回は美術館の印象について少しまとめてみます。
(*)
しばらく前から建物自体は完成していたので、れんが造りの外観をご存知の方も多いかもしれません。この建物は、1894年にジョサイア・コンドルによって設計された日本初の洋風事務所建築を復元したもので、外部内部とも当時の設計図に準じているのはもちろんのこと、一部については当時の部材を再利用して建てられています。さすがに完成したばかりということもあってか、まだ街に馴染むまでには至りませんが、どこか似たような高層ビルの並ぶ丸の内界隈で異彩を放っていたのは事実でした。
(*)
一帯は「丸の内ブリックスクエア」と名付けられたオフォス、商業施設を含む再開発エリアとなっていましたが、その中核となるのがこの三菱一号館美術館です。内部には樹木や花も植えられた中庭もあります。れんがとガラスを連続させたような外観もまた特徴的でした。
(*)
美術館内部はかつての事務所建築ということで、ともかくおおよそ最近の美術館らしからぬ小部屋で仕切られています。ちょうど庭園美術館や、かつてのステーションギャラリーの展示室に似ているかもしれません。
(*)
私自身、そのこじんまりとした外観に比べて、中は意外と広いように思えましたが、3階と2階の2フロアに分かれ、また10以上の部屋の続く館内を歩いていると、まるで迷路の中を彷徨っているような気分になりました。ひょっとすると展示泣かせのスペースかもしれません。また混雑すると多少の圧迫感を受けるのではないでしょうか。これも庭園美と同じでした。
(*)
館内で目を引くのは充実したミュージアムショップと、当時の銀行窓口の吹き抜けフロアをそのまま再現したというカフェスペースです。こちらは美術館オープン前から営業していたこともあり、早くも丸の内エリアの人気スポットとなっていたようでした。
立地は申し分ありません。東京駅の丸の内地下南口からは地下通路で直結し、また千代田線の二重橋前駅からも明治安田生命のビルを経由し、同じく地下通路で繋がっていました。(地下通路周辺マップ)
なお三菱一号館美術館の概要、理念については、館長の高橋明也氏のメッセージが明快です。
美術館概要 - 館長メッセージ@三菱一号館美術館
テーマには「近代都市と美術」が据えられています。この場所が記憶してきた歴史を踏まえたものでした。
またマネとモダンパリ展以降、来年11月までの展示スケジュールも告知されています。
「開館記念展〈2〉 三菱が夢見た美術館―岩崎家と三菱ゆかりのコレクション」
会期:2010年8月24日(火)~11月3日(水・祝)
「レンバッハハウス・ミュンヘン市立美術館所蔵 カンディンスキーと青騎士展」
会期:2010年11月23日(火・祝)~2011年2月6日(日)
「王妃の画家ヴィジェ=ルブラン マリー・アントワネットと18世紀の女性画家たち」(仮称)
会期:2011年3月~5月
「ジャポニスムの立役者たち―欧米で愛された陶磁器・銀器・装飾品」(仮称)
会期:2011年6月~8月
「トゥールーズ=ロートレック モーリス・ジョワイヤン・コレクション」(仮称)
会期:2011年9月~11月
私としては好きなカンディンスキーの他、同美術館の姉妹館であるフランスのロートレック美術館のコレクションが出品されるという、「トゥールーズ=ロートレック モーリス・ジョワイヤン・コレクション」(仮称)に注目したいと思います。また主に静嘉堂文庫での展示が多かった岩崎コレクションの日本美術が、ここ丸の内でも楽しめる機会が増えるかもしれません。
また最後に一つ、是非とも挙げておきたいのが開館時間です。都心立地でも夕方過ぎには閉館してしまう美術館が多い中で、ここ三菱一号館美術館は、水曜日から金曜日まで、夜の8時まで開館しています。(月曜休館。他は18時まで。)場所柄、お仕事帰りという方も多いかもしれません。これは嬉しい配慮でした。
マネとモダンパリ展は、マネの魅力に改めて虜にされるような展覧会でした。近日中に感想をまとめます。
*の画像については美術館のリリースを転載しています。
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「日本の美・発見3 茶 Tea - 喫茶のたのしみ - 」 出光美術館
出光美術館(千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
「日本の美・発見3 茶 Tea - 喫茶のたのしみ - 」
4/3-6/6
出光美術館で開催中の「日本の美・発見3 茶 Tea - 喫茶のたのしみ - 」へ行ってきました。
私自身、お茶の素養はまるでありませんが、それ自体に意匠のこらされた器や水注、また箱などを見るのは素直に楽しいものです。館内には出光コレクションの誇る茶道具や煎茶具、さらには書画など、全120点の作品が紹介されていました。
1.「愛用・愛玩の美学」
2.「注ぐ 水注とポット」
3.「茶の室礼」
4.「喫茶の彩り」
なお構成は道具別ではなく、例えば茶を取り巻くシーン毎に作品を見るものと言えるかもしれません。良い意味で大まかな括りでした。
今回、私が惹かれたのは、水や湯を器物に注ぐための水注です。その形状は多様ですが、湯をはって器を温める、まるで蓮の花のような承盤の付いた水注には目を奪われました。またもう一つ興味深いのは、柿右衛門とほぼそれを写したウースター窯による水注(ポット)の比較展示です。鮮やかな彩色が施されながらも、細部の異なる意匠に、また相互の文化の趣味の違いを知ることが出来ました。またマイセンの水注やティーカップも1、2点ほど展示されています。華やかでした。
茶碗の出品は多くありませんが、「井戸茶碗 銘 奈良」は一推しの一点です。釉薬の収縮によって出来たという梅花紋が、器に独特の景色を広げています。また他には黄天目と、出光では比較的見る機会も多い禾天目の天目二点も印象に残りました。
なおお茶を楽しむ人々を表した屏風絵なども一部展示されていますが、中でも書画で注目したいのは佐竹本です。何故かチラシや美術館WEBサイトでは殆ど告知されていませんが、本展には2つの佐竹本が出品されます。
「佐竹本三十六歌仙絵 遍照」(鎌倉時代) 伝藤原信実 4/3~5/9
「佐竹本三十六歌仙絵 人麿」(鎌倉時代) 伝藤原信実 5/11~6/6
会期中、一度の展示替えを挟んで計2点ほどの紹介です。会期に十分にご注意下さい。(他にも数点ほど、途中に入れ替わる作品があります。出品リスト。)
また同じく展示替え前、前期中には東山御物から秀吉、また秀忠にも伝わったというかの牧けいの名作、「平沙落雁図」(~5/9)も展示のハイライトかもしれません。染み入るように広がる大気と、そこへ連なるか弱い雁の群れは、あまりにも儚く美しい景色を作り上げていました。
ところで余談ですが、この四月より、出光美術館の界隈の4つの美術館によって「東京駅周辺美術館MAP」が発行されました。
このパンフレットを持参すると、「2館目割り」として、例えばブリヂストンでは100円、また三井記念美では200円、さらにはオープンしたばかりの三菱一号館美術館が200円と、それぞれ割引優待が受けられます。MAPは館内で配布されていましたので、是非お手に取ってご覧下さい。
「すぐわかる茶の湯の美術/矢部良明/東京美術」
6月6日まで開催されています。
「日本の美・発見3 茶 Tea - 喫茶のたのしみ - 」
4/3-6/6
出光美術館で開催中の「日本の美・発見3 茶 Tea - 喫茶のたのしみ - 」へ行ってきました。
私自身、お茶の素養はまるでありませんが、それ自体に意匠のこらされた器や水注、また箱などを見るのは素直に楽しいものです。館内には出光コレクションの誇る茶道具や煎茶具、さらには書画など、全120点の作品が紹介されていました。
1.「愛用・愛玩の美学」
2.「注ぐ 水注とポット」
3.「茶の室礼」
4.「喫茶の彩り」
なお構成は道具別ではなく、例えば茶を取り巻くシーン毎に作品を見るものと言えるかもしれません。良い意味で大まかな括りでした。
今回、私が惹かれたのは、水や湯を器物に注ぐための水注です。その形状は多様ですが、湯をはって器を温める、まるで蓮の花のような承盤の付いた水注には目を奪われました。またもう一つ興味深いのは、柿右衛門とほぼそれを写したウースター窯による水注(ポット)の比較展示です。鮮やかな彩色が施されながらも、細部の異なる意匠に、また相互の文化の趣味の違いを知ることが出来ました。またマイセンの水注やティーカップも1、2点ほど展示されています。華やかでした。
茶碗の出品は多くありませんが、「井戸茶碗 銘 奈良」は一推しの一点です。釉薬の収縮によって出来たという梅花紋が、器に独特の景色を広げています。また他には黄天目と、出光では比較的見る機会も多い禾天目の天目二点も印象に残りました。
なおお茶を楽しむ人々を表した屏風絵なども一部展示されていますが、中でも書画で注目したいのは佐竹本です。何故かチラシや美術館WEBサイトでは殆ど告知されていませんが、本展には2つの佐竹本が出品されます。
「佐竹本三十六歌仙絵 遍照」(鎌倉時代) 伝藤原信実 4/3~5/9
「佐竹本三十六歌仙絵 人麿」(鎌倉時代) 伝藤原信実 5/11~6/6
会期中、一度の展示替えを挟んで計2点ほどの紹介です。会期に十分にご注意下さい。(他にも数点ほど、途中に入れ替わる作品があります。出品リスト。)
また同じく展示替え前、前期中には東山御物から秀吉、また秀忠にも伝わったというかの牧けいの名作、「平沙落雁図」(~5/9)も展示のハイライトかもしれません。染み入るように広がる大気と、そこへ連なるか弱い雁の群れは、あまりにも儚く美しい景色を作り上げていました。
ところで余談ですが、この四月より、出光美術館の界隈の4つの美術館によって「東京駅周辺美術館MAP」が発行されました。
このパンフレットを持参すると、「2館目割り」として、例えばブリヂストンでは100円、また三井記念美では200円、さらにはオープンしたばかりの三菱一号館美術館が200円と、それぞれ割引優待が受けられます。MAPは館内で配布されていましたので、是非お手に取ってご覧下さい。
「すぐわかる茶の湯の美術/矢部良明/東京美術」
6月6日まで開催されています。
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2010年4月の予定
記録編に引き続きます。今月に見たい展示を挙げてみました。
展覧会
「お江戸の絵画は大賑わい」 板橋区立美術館 (~5/9)
「森村泰昌 なにものかへのレクイエム - 戦場の頂上の芸術」 東京都写真美術館 (~5/9)
「リニューアルオープン記念所蔵名品展 近代日本美術の百花」 千葉市美術館 (4/6~5/9)
「歌川国芳 奇と笑いの木版画」(後期展示) 府中市美術館 (4/20~5/9)
「ジョン・ルーリー ドローイング展」 ワタリウム美術館 (~5/16)
「ピカソと20世紀美術の巨匠たち」 そごう美術館 (4/8~5/16)
#講演会 「モダンアートの開花 20世紀初頭のパリを中心として」(島田紀夫) 4/18 14:00~
#講演会 「モダンアートの冒険 戦中から戦後へ」(千足伸行) 4/25 13:30~ 各1000円。先着順。
「横山大観展」 講談社野間記念館 (~5/23)
「生誕120年 奥村土牛」 山種美術館 (~5/23)
「国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開」 根津美術館 (4/24~5/23)
#講演会 「燕子花図屏風の魅力をさぐる」(河野元昭) 5/1 14:00~ 往復はがきで要申し込み(期限は4/10まで)
「日本の美・発見3 茶 Tea」 出光美術館 (~6/6)
「爽やかな日本美術 ~風・流れ・涼の表現」 大倉集古館 (~6/6)
「細川家の至宝 - 珠玉の永青文庫コレクション」 東京国立博物館 (4/20~6/6)
「ユビュ 知られざるルオーの素顔」 パナソニック電工汐留ミュージアム (4/10~6/13)
#講演会 「わが祖父、ジョルジュ・ルオー」(ジャン=イヴ・ルオー) 4/10 14:00~ 葉書にて要申し込み
「平明・静謐・孤高 長谷川潾二郎展」 平塚市美術館 (4/17~6/13)
#講演会 「長谷川潾二郎の魅力」(原田光) 4/29 14:00~
「フセイン・チャラヤン」 東京都現代美術館 (~6/20)
「江戸を開いた天下人 徳川家康の遺愛品」 三井記念美術館 (4/14~6/20)
「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」 森アーツセンターギャラリー(4/17~6/20)
「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」 東京都庭園美術館 (4/24~6/20)
「モーリス・ユトリロ展」 損保ジャパン東郷青児美術館 (4/17~7/4)
「ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」 川村記念美術館 (4/10~7/19)
#朗読会 「コーネルの箱宇宙を讃える」(高橋睦郎) 4/17 14:00~ 予約不要
「マネとモダン・パリ」 三菱一号館美術館 (4/6-7/25)
ギャラリー
「巧術」 スパイラルガーデン(~4/7)
「roots/東北画は可能か?」 アートスペース羅針盤(~4/10)
「カオスラウンジ2010」 高橋コレクション日比谷(4/10~4/18)
「松井えり菜 ワンタッチ・タイムマシーーン!」 山本現代(~5/1)
「八木良太」 無人島プロダクション(4/16~5/29)
コンサート
NHK交響楽団第1670回定期公演Aプログラム」 マーラー「交響曲第9番」 ブロムシュテット(10日)
今月は首都圏郊外の展覧会にも要注目です。既に話題となっている川村のコーネルはもちろんのこと、平塚の長谷川潾二郎もまた見逃せない展覧会になるのではないでしょうか。こちらは岩手県立美術館館長、原田氏による講演会もあるので、出来ればあわせて聞きに行きたいと思います。
また同じく郊外としては千葉市美術館がリニューアルを終え、その記念展ともなり得る本格的な企画展を開催します。次の若冲にばかり目が向くところですが、こちらも早々に出かけるつもりです。
れんが造りのビルも丸の内に溶け込んできました。明日、いよいよ開館を迎える三菱一号館美術館のオープニングはマネ展です。既に同館WEBサイト上では展覧会の詳細な章立ても記載されています。是非ご覧下さい。
根津美術館にとうとう燕子花が舞い戻ってきます。大琳派展でも出たのでさほど久しぶりではありませんが、河野先生の講演会は必聴です。申し込み期限が迫っていますので十分にご注意下さい。
大型展では東博の細川、また森アーツセンターのボストン美術館展などに関心が集まるのではないでしょうか。ボストン美と名の付く展示で見応えがなかったことはなかっただけに、今回の「名画のフルコース」にも大いに期待したいと思います。
ギャラリーでは先日、都美館の東北芸術工科大卒展でも触れた「東北画」の他、高円寺から一気に下町エリア、清澄に移転する無人島のオープニングなどに注目したいです。
毎月、この「予定と振り返り」に展示を挙げているうちに、自分でも展覧会の整理がつかなくなってきました。今後、気になる企画についてはまた別途、単発で記事にしていくつもりです。
それでは遅くなりましたが今月もよろしくお願いします。
展覧会
「お江戸の絵画は大賑わい」 板橋区立美術館 (~5/9)
「森村泰昌 なにものかへのレクイエム - 戦場の頂上の芸術」 東京都写真美術館 (~5/9)
「リニューアルオープン記念所蔵名品展 近代日本美術の百花」 千葉市美術館 (4/6~5/9)
「歌川国芳 奇と笑いの木版画」(後期展示) 府中市美術館 (4/20~5/9)
「ジョン・ルーリー ドローイング展」 ワタリウム美術館 (~5/16)
「ピカソと20世紀美術の巨匠たち」 そごう美術館 (4/8~5/16)
#講演会 「モダンアートの開花 20世紀初頭のパリを中心として」(島田紀夫) 4/18 14:00~
#講演会 「モダンアートの冒険 戦中から戦後へ」(千足伸行) 4/25 13:30~ 各1000円。先着順。
「横山大観展」 講談社野間記念館 (~5/23)
「生誕120年 奥村土牛」 山種美術館 (~5/23)
「国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開」 根津美術館 (4/24~5/23)
#講演会 「燕子花図屏風の魅力をさぐる」(河野元昭) 5/1 14:00~ 往復はがきで要申し込み(期限は4/10まで)
「日本の美・発見3 茶 Tea」 出光美術館 (~6/6)
「爽やかな日本美術 ~風・流れ・涼の表現」 大倉集古館 (~6/6)
「細川家の至宝 - 珠玉の永青文庫コレクション」 東京国立博物館 (4/20~6/6)
「ユビュ 知られざるルオーの素顔」 パナソニック電工汐留ミュージアム (4/10~6/13)
#講演会 「わが祖父、ジョルジュ・ルオー」(ジャン=イヴ・ルオー) 4/10 14:00~ 葉書にて要申し込み
「平明・静謐・孤高 長谷川潾二郎展」 平塚市美術館 (4/17~6/13)
#講演会 「長谷川潾二郎の魅力」(原田光) 4/29 14:00~
「フセイン・チャラヤン」 東京都現代美術館 (~6/20)
「江戸を開いた天下人 徳川家康の遺愛品」 三井記念美術館 (4/14~6/20)
「ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち」 森アーツセンターギャラリー(4/17~6/20)
「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」 東京都庭園美術館 (4/24~6/20)
「モーリス・ユトリロ展」 損保ジャパン東郷青児美術館 (4/17~7/4)
「ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎 箱宇宙を讃えて」 川村記念美術館 (4/10~7/19)
#朗読会 「コーネルの箱宇宙を讃える」(高橋睦郎) 4/17 14:00~ 予約不要
「マネとモダン・パリ」 三菱一号館美術館 (4/6-7/25)
ギャラリー
「巧術」 スパイラルガーデン(~4/7)
「roots/東北画は可能か?」 アートスペース羅針盤(~4/10)
「カオスラウンジ2010」 高橋コレクション日比谷(4/10~4/18)
「松井えり菜 ワンタッチ・タイムマシーーン!」 山本現代(~5/1)
「八木良太」 無人島プロダクション(4/16~5/29)
コンサート
NHK交響楽団第1670回定期公演Aプログラム」 マーラー「交響曲第9番」 ブロムシュテット(10日)
今月は首都圏郊外の展覧会にも要注目です。既に話題となっている川村のコーネルはもちろんのこと、平塚の長谷川潾二郎もまた見逃せない展覧会になるのではないでしょうか。こちらは岩手県立美術館館長、原田氏による講演会もあるので、出来ればあわせて聞きに行きたいと思います。
また同じく郊外としては千葉市美術館がリニューアルを終え、その記念展ともなり得る本格的な企画展を開催します。次の若冲にばかり目が向くところですが、こちらも早々に出かけるつもりです。
れんが造りのビルも丸の内に溶け込んできました。明日、いよいよ開館を迎える三菱一号館美術館のオープニングはマネ展です。既に同館WEBサイト上では展覧会の詳細な章立ても記載されています。是非ご覧下さい。
根津美術館にとうとう燕子花が舞い戻ってきます。大琳派展でも出たのでさほど久しぶりではありませんが、河野先生の講演会は必聴です。申し込み期限が迫っていますので十分にご注意下さい。
大型展では東博の細川、また森アーツセンターのボストン美術館展などに関心が集まるのではないでしょうか。ボストン美と名の付く展示で見応えがなかったことはなかっただけに、今回の「名画のフルコース」にも大いに期待したいと思います。
ギャラリーでは先日、都美館の東北芸術工科大卒展でも触れた「東北画」の他、高円寺から一気に下町エリア、清澄に移転する無人島のオープニングなどに注目したいです。
毎月、この「予定と振り返り」に展示を挙げているうちに、自分でも展覧会の整理がつかなくなってきました。今後、気になる企画についてはまた別途、単発で記事にしていくつもりです。
それでは遅くなりましたが今月もよろしくお願いします。
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2010年3月の記録
3月に見た展示の一覧です。手短かにリストアップします。
展覧会
◯「アーティスト・ファイル2010」 国立新美術館
◯「六本木クロッシング2010」 森美術館
◯「和ガラス」 サントリー美術館
◎「フランク・ブラングィン展」 国立西洋美術館
◯「東北芸術工科大学 卒業・修了展(東京展)」 東京都美術館
◯「命の認識」 東京大学総合研究博物館
◯「六本木アートナイト2010」(「ビフォア・フラワー」オープニングアクト) 六本木ヒルズ他
☆「歌川国芳 奇と笑いの木版画」(前期) 府中市美術館
・「第4回 展覧会企画公募 - 菊地容作/土橋素子・仲島香/オル太 - 」 TWS本郷
◯「ポンペイ展」 横浜美術館
・「見るまえに跳べ」 3331 Arts Chiyoda
・「所蔵水彩・素描展 - 松方コレクションとその後」 国立西洋美術館
・「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」 江戸東京博物館
・「第29回 損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館
◎「水浴考」 東京国立近代美術館(所蔵作品展ギャラリー4)
◯「VOCA展 2010」 上野の森美術館
◯「生誕120年 小野竹喬展(前期)」 東京国立近代美術館
◯「大哺乳類展 - 陸のなかまたち」 国立科学博物館
◯「安田靫彦展 - 花を愛でる心」 ニューオータニ美術館
◎「美しき挑発 レンピッカ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
ギャラリー
◯「照屋勇賢 ひいおばあさんはUSA」 上野の森美術館(ギャラリー)
◎「灰原愛展 - はじまりの世界」 unseal contemporary
・「第4回 shiseido art egg 村山悟郎 - 絵画的主体の再魔術化」 資生堂ギャラリー
・「吉田晋之介/平子雄一展」 GALLERY MoMo 両国
◯「変成態 - リアルな現代の物質性 Vol.8 半田真規」 ギャラリーαM
・「だれもいないまちで 小林耕平 西尾康之 杉浦慶太」 山本現代
◎「鈴木基真 - World is yours」 TSCA
・「東信 - 鎧松」 ポーラミュージアムアネックス
・「トイショー」 MEGUMI OGITA GALLERY
3月は府中の国芳展、そして西美のブラングィン、また文化村のレンピッカと印象に深い展示が続きました。また画廊ではアンシールの灰原、TSCAの鈴木と、木彫の個展がとても魅力的だったと思います。αMのフィナーレも意表を突く形で楽しめました。
ところでしばらく前のことになりますが、西洋絵画を楽しむのに最適な著作が刊行されました。
「西洋絵画のひみつ/藤原えりみ/朝日出版社」
「聖書の名画はなぜこんなに面白いのか/井出洋一郎/中経文庫」
ともに西洋絵画のエッセンスを非常に掴みやすい切り口でひも解いています。取っ付き易い語り口ながらも、内容的にはかなり突っ込んだ部分があるのも好印象でした。既に話題の本でもありますが、是非書店にてご覧下さい。
4月の予定へと続きます。
展覧会
◯「アーティスト・ファイル2010」 国立新美術館
◯「六本木クロッシング2010」 森美術館
◯「和ガラス」 サントリー美術館
◎「フランク・ブラングィン展」 国立西洋美術館
◯「東北芸術工科大学 卒業・修了展(東京展)」 東京都美術館
◯「命の認識」 東京大学総合研究博物館
◯「六本木アートナイト2010」(「ビフォア・フラワー」オープニングアクト) 六本木ヒルズ他
☆「歌川国芳 奇と笑いの木版画」(前期) 府中市美術館
・「第4回 展覧会企画公募 - 菊地容作/土橋素子・仲島香/オル太 - 」 TWS本郷
◯「ポンペイ展」 横浜美術館
・「見るまえに跳べ」 3331 Arts Chiyoda
・「所蔵水彩・素描展 - 松方コレクションとその後」 国立西洋美術館
・「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」 江戸東京博物館
・「第29回 損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館
◎「水浴考」 東京国立近代美術館(所蔵作品展ギャラリー4)
◯「VOCA展 2010」 上野の森美術館
◯「生誕120年 小野竹喬展(前期)」 東京国立近代美術館
◯「大哺乳類展 - 陸のなかまたち」 国立科学博物館
◯「安田靫彦展 - 花を愛でる心」 ニューオータニ美術館
◎「美しき挑発 レンピッカ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
ギャラリー
◯「照屋勇賢 ひいおばあさんはUSA」 上野の森美術館(ギャラリー)
◎「灰原愛展 - はじまりの世界」 unseal contemporary
・「第4回 shiseido art egg 村山悟郎 - 絵画的主体の再魔術化」 資生堂ギャラリー
・「吉田晋之介/平子雄一展」 GALLERY MoMo 両国
◯「変成態 - リアルな現代の物質性 Vol.8 半田真規」 ギャラリーαM
・「だれもいないまちで 小林耕平 西尾康之 杉浦慶太」 山本現代
◎「鈴木基真 - World is yours」 TSCA
・「東信 - 鎧松」 ポーラミュージアムアネックス
・「トイショー」 MEGUMI OGITA GALLERY
3月は府中の国芳展、そして西美のブラングィン、また文化村のレンピッカと印象に深い展示が続きました。また画廊ではアンシールの灰原、TSCAの鈴木と、木彫の個展がとても魅力的だったと思います。αMのフィナーレも意表を突く形で楽しめました。
ところでしばらく前のことになりますが、西洋絵画を楽しむのに最適な著作が刊行されました。
「西洋絵画のひみつ/藤原えりみ/朝日出版社」
「聖書の名画はなぜこんなに面白いのか/井出洋一郎/中経文庫」
ともに西洋絵画のエッセンスを非常に掴みやすい切り口でひも解いています。取っ付き易い語り口ながらも、内容的にはかなり突っ込んだ部分があるのも好印象でした。既に話題の本でもありますが、是非書店にてご覧下さい。
4月の予定へと続きます。
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「巧術 KOH-JUTSU展」 スパイラルガーデン
スパイラルガーデン(港区南青山5-6-23)
「巧術 KOH-JUTSU展」
4/2-4/7
スパイラルガーデンで開催中の「巧術 KOH-JUTSU展」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。レントゲンや小柳の個展などでも印象に深い12名の作家が登場しました。
青木克世、あるがせいじ、内海聖史、カンノサカン、桑島秀樹、佐藤好彦、須田悦弘、諏訪敦、高田安規子・政子、中村哲也、満田晴穂、山本タカト
元来、技巧とは、芸術上の表現における技術的な工夫を指す用語ですが、ここでは既存の美術観への批判をこめた上で、それを「巧術」という新たなキーワードに置き換えています。確かに字面より想像されるように、細やかさや器用さという点において、他に類を見ない作品が紹介されていました。
あるがせいじ「1147」
まず入口左の枠の中にすっぽりと収まるのはあるがせいじの新作です。緻密に彫り込まれたそのテクスチャには毎度ながら驚かされるばかりですが、今回はこのサイズにも圧倒されました。まるでビルの窓の断面のようです。
青木且世「鏡よ鏡」
続いてアニュアル展にも出品のあった青木且世がセラミック製のオブジェを展開します。表面の生クリームのような独特な質感も必見ではないでしょうか。
桑島秀樹「Horizontal 001」
2008年の個展で至極感銘させられた桑島秀樹のガラスの迷宮も登場しました。デカンタやグラスをくみ上げて出来たイメージは、織りなす光の陰影と相まって、見る者をその無限回廊へと引込んで行きます。
細部の細部までじっくりとご覧下さい。眩いばかりの後光が放たれていました。
入口左に目を向けると、カンノサカン「HUNCH」シリーズと中村哲也の「紫電プロトタイプ」がその尖った作風で火花を散らします。
カンノサカン「HUNCH」(一部)
メインの吹き抜けに鎮座するするのは内海聖史の大作と、佐藤好彦「Model」シリーズなどでした。佐藤の作品は六本木の旧レントゲンで見たことを思い出します。ホワイトキューブにモノリスのように立つスピーカーの迫力は満点でした。
さて個々で注目したいのが、上の写真の左、床面に置かれた白い板状の作品です。
高田安規子・政子「Mt.Fuji」
近寄ってみると驚くべきことに等高線が出現しました。何とこれらは全て紙をカッターなどで切り抜いて出来ています。手作業でしか制作出来ないとは理解しながらも、実物を見ても到底人の手のみで完成させられたとは思えません。これこそ「巧術」ではないでしょうか。
内海聖史「色彩に入る」
もう一度掲載します。やはりぐっと心に響くのは内海の「色彩に入る」でした。資生堂のアートエッグで一目惚れして以来、私の中で彼の最高傑作だと勝手に位置づけていますが、この広いスパイラルで見ると、粒の運動がさらなる広がりもって拡散していくようなイメージも与えられます。青い色彩は雲のように広がり、時に余白を巻き込んで嵐のように荒れ狂いました。見ていて色に溺れる感覚とはまさにこのことかもしれません。
なおちらし表紙に掲げられた「ねえ、池内さん、人間の手法には限界が無いんですよ。」の文言は、かの諏訪敦がレントゲン主宰の池内務に投げかけた言葉だそうです。元々レントゲンでは非常に作り込まれた作品を目にする機会が多いのですが、点数こそ決して多くないものの、今回はそれを厳選されたパッケージで伺い知れる内容だと言えるかもしれません。
ちなみにレントゲンはアートフェアに出品がありません。比較はナンセンスですが、言うまでもなく展示の完成度はこちらに軍配が挙ります。
僅か6日間限定のグループショーです。会期中無休にて7日まで開催されています。なお入場は無料でした。
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
「巧術 KOH-JUTSU展」
4/2-4/7
スパイラルガーデンで開催中の「巧術 KOH-JUTSU展」へ行ってきました。
出品作家は以下の通りです。レントゲンや小柳の個展などでも印象に深い12名の作家が登場しました。
青木克世、あるがせいじ、内海聖史、カンノサカン、桑島秀樹、佐藤好彦、須田悦弘、諏訪敦、高田安規子・政子、中村哲也、満田晴穂、山本タカト
元来、技巧とは、芸術上の表現における技術的な工夫を指す用語ですが、ここでは既存の美術観への批判をこめた上で、それを「巧術」という新たなキーワードに置き換えています。確かに字面より想像されるように、細やかさや器用さという点において、他に類を見ない作品が紹介されていました。
あるがせいじ「1147」
まず入口左の枠の中にすっぽりと収まるのはあるがせいじの新作です。緻密に彫り込まれたそのテクスチャには毎度ながら驚かされるばかりですが、今回はこのサイズにも圧倒されました。まるでビルの窓の断面のようです。
青木且世「鏡よ鏡」
続いてアニュアル展にも出品のあった青木且世がセラミック製のオブジェを展開します。表面の生クリームのような独特な質感も必見ではないでしょうか。
桑島秀樹「Horizontal 001」
2008年の個展で至極感銘させられた桑島秀樹のガラスの迷宮も登場しました。デカンタやグラスをくみ上げて出来たイメージは、織りなす光の陰影と相まって、見る者をその無限回廊へと引込んで行きます。
細部の細部までじっくりとご覧下さい。眩いばかりの後光が放たれていました。
入口左に目を向けると、カンノサカン「HUNCH」シリーズと中村哲也の「紫電プロトタイプ」がその尖った作風で火花を散らします。
カンノサカン「HUNCH」(一部)
メインの吹き抜けに鎮座するするのは内海聖史の大作と、佐藤好彦「Model」シリーズなどでした。佐藤の作品は六本木の旧レントゲンで見たことを思い出します。ホワイトキューブにモノリスのように立つスピーカーの迫力は満点でした。
さて個々で注目したいのが、上の写真の左、床面に置かれた白い板状の作品です。
高田安規子・政子「Mt.Fuji」
近寄ってみると驚くべきことに等高線が出現しました。何とこれらは全て紙をカッターなどで切り抜いて出来ています。手作業でしか制作出来ないとは理解しながらも、実物を見ても到底人の手のみで完成させられたとは思えません。これこそ「巧術」ではないでしょうか。
内海聖史「色彩に入る」
もう一度掲載します。やはりぐっと心に響くのは内海の「色彩に入る」でした。資生堂のアートエッグで一目惚れして以来、私の中で彼の最高傑作だと勝手に位置づけていますが、この広いスパイラルで見ると、粒の運動がさらなる広がりもって拡散していくようなイメージも与えられます。青い色彩は雲のように広がり、時に余白を巻き込んで嵐のように荒れ狂いました。見ていて色に溺れる感覚とはまさにこのことかもしれません。
なおちらし表紙に掲げられた「ねえ、池内さん、人間の手法には限界が無いんですよ。」の文言は、かの諏訪敦がレントゲン主宰の池内務に投げかけた言葉だそうです。元々レントゲンでは非常に作り込まれた作品を目にする機会が多いのですが、点数こそ決して多くないものの、今回はそれを厳選されたパッケージで伺い知れる内容だと言えるかもしれません。
ちなみにレントゲンはアートフェアに出品がありません。比較はナンセンスですが、言うまでもなく展示の完成度はこちらに軍配が挙ります。
僅か6日間限定のグループショーです。会期中無休にて7日まで開催されています。なお入場は無料でした。
注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
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「アートフェア東京2010」 東京国際フォーラム
東京国際フォーラム(千代田区丸の内3-5-1)
「アートフェア東京2010」
4/2-4/4
東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2010」のオープニングプレビューに参加してきました。
プレビューに出かけたのは今回が初めてでしたが、思いの外に会場内は混雑していました。なお本年の出品画廊は以下のリストの通りです。計138軒でした。
出展者一覧
現代美術や古美術を問わず、それこそ骨董から若手アーティストの新作までの「美術品」を、ほぼ即売会方式で紹介する国内最大の見本市です。またその価格帯も取り扱い画廊にて非常に幅があります。(1、2万円から数千万円まで。)例えば洋画と現代美術が隣り合わせに並ぶ、言わば一種のカオス感こそ、この企画の醍醐味かもしれません。
作品を楽しむ、そして購入するには会場へ出かけるのが一番ですが、以下、私がざっと会場を廻った中で興味を引かれた作家、作品を簡単に挙げてみました。
[neutron tokyo/大舩真言]
日本画をオブジェ、そしてインスタレーションとしても美しく見せることに成功しています。同画廊のオープニング展もまた見事でした。
[新生堂/大森暁生]
ほぼ個展形式で作家を紹介する画廊もいくつかありましたが、中でも目立っていたのが主に動物などを木彫で象る大森暁生でした。
[SHINOBAZU GALLERY/山田純嗣]
先日、汐留の鉄道歴史展示室にも出品のあった山田純嗣が完全な個展形式で紹介されています。当然ながらこの作品の繊細さは写真ではお伝え出来ません。なお秋には同画郎で個展の開催も予定されているそうです。
[SCAI THE BATHHOUSE/小笠原美環]
ヨーロッパを中心に活動する小笠原美環の個展です。グレーの抑えられた色調にはかのハンマースホイを連想させるものもあります。前回のSCAI個展からやや時間も経ち、作風に変化が生じているような気もしました。
こちらは会場内の休憩スポットです。和をイメージしたスペースでしたが、さり気なく奥に展示されていたのが狩野派の屏風でした。
またあまりこれまでは意識しませんでしたが、陶芸や古美術関係でも目を引くブースがいくつかあります。
[水戸忠交易/ルーシー・リー]
新美の回顧展もひかえたルーシー・リーの器が20点ほど販売されています。
茶の湯との取り合わせの展示が斬新でした。このブースは一推しです。
[加島美術/長沢蘆雪]
「江戸の奇才」と題された加島美術のブースには、何とかの長沢蘆雪の掛け軸画が登場していました。普段、値段を意識して見ることはありませんが、この日ばかりはプライスリストにも目が向いてしまいます。
[角匠/葛飾北斎]
これまた江戸絵画ではお馴染みの北斎のご登場です。特に肉筆三点は状態も良く、その鮮やかな彩色にも見入るものがありました。
こちらの雀は見覚えのある方も多いのではないでしょうか。板橋美の江戸絵画展に出品されたこともあるのだそうです。ちなみに価格は◯千万円でした。
[ギャルリー サン・ギョーム/クリスト]
デザインサイトで開催中の個展も記憶も蘇ります。クリストのドローイングです。
[YOKOI FINE ART/三宅一樹]
仏像を思わせる静謐な木彫です。手から腕の部分にかけてと着衣の質感なども見事でした。販売はこの一点のみでしたが、これは他の作品も気になるところです。
[ギャラリー小柳/須田悦弘]
一点勝負で来場者の目を引くのは、これまたお馴染みの須田悦弘の可憐な花の彫刻でした。飾らないホワイトキューブに一輪の花のみを掲げる展示に、むしろ心地よい潔さすら覚えます。これは見事でした。
もはや説明の必要はないかもしれません。ひょっとするとこの作品、全出品の中で最高値であったのではないでしょうか。
ちなみに会場はメインの展示ホールと、主に若手作家を集めたロビーの「PROJECTS」に分かれています。しかしながら昨年のように建物からして別というわけではありません。そう迷うことはなさそうです。
フロアマップ(PDF)
また会場内でいわゆる見どころをピックアップしたガイドブック(アートコレクター)が何と無料で配布されていました。必見です。
会期中、3つのトークイベントがフォーラム内のセミナールームで開催されます。それぞれ無料で参加出来るのは嬉しいところですが、何と今回はその模様がUstreamでライブ配信されるそうです。
トーク・シリーズ 「ダイアローグinアート」 アートフェア東京Ustream
・「文化政策はアートを救うか?―ポスト政権交代におけるアートを考える」 4/2 17:00~
蓑豊(サザビーズ北米本社副会長)/逢坂恵理子(横浜美術館館長)/鈴木寛(文部科学副大臣)
・「脱ガラパゴス化 日本のアートをもっと元気に」 4/3 13:00~
建畠晢(国立国際美術館館長)/イーデン・コーキル(ジャパン・タイムズ編集局学芸部記者)/廣田登支彦(ギャラリー広田美術取締役)/吉井仁実(hiromiyoshii代表)/野呂洋子(銀座柳画廊取締役副社長)/辛美沙(アートフェア東京エグゼクティブ・ディレクター)/小澤慶介(アートフェア東京 アソシエイト・ディレクター)
・「コレクタートーク」 4/4 13:00~
田中恒子(「美術館にアートを贈る会」副理事長)
G-Tokyoの関係もあるのか、例年、非常に力の入った展示を繰り広げたミヅマなどが出展を取りやめています。あまり全体としての印象を云々するイベントでもないような気もしますが、その動向が今度どうアートフェアの運営や集客に影響していくかにも興味がわきました。
4月4日の日曜日までの開催です。なお開催中、開場時間が異なります。ご注意下さい。
*4/2(金)11:00~21:00、4/3(土)11:00~20:00、4/4(日)10:30~17:00
注)写真の撮影と掲載については主催者の許可を得ています。
「アートフェア東京2010」
4/2-4/4
東京国際フォーラムで開催中の「アートフェア東京2010」のオープニングプレビューに参加してきました。
プレビューに出かけたのは今回が初めてでしたが、思いの外に会場内は混雑していました。なお本年の出品画廊は以下のリストの通りです。計138軒でした。
出展者一覧
現代美術や古美術を問わず、それこそ骨董から若手アーティストの新作までの「美術品」を、ほぼ即売会方式で紹介する国内最大の見本市です。またその価格帯も取り扱い画廊にて非常に幅があります。(1、2万円から数千万円まで。)例えば洋画と現代美術が隣り合わせに並ぶ、言わば一種のカオス感こそ、この企画の醍醐味かもしれません。
作品を楽しむ、そして購入するには会場へ出かけるのが一番ですが、以下、私がざっと会場を廻った中で興味を引かれた作家、作品を簡単に挙げてみました。
[neutron tokyo/大舩真言]
日本画をオブジェ、そしてインスタレーションとしても美しく見せることに成功しています。同画廊のオープニング展もまた見事でした。
[新生堂/大森暁生]
ほぼ個展形式で作家を紹介する画廊もいくつかありましたが、中でも目立っていたのが主に動物などを木彫で象る大森暁生でした。
[SHINOBAZU GALLERY/山田純嗣]
先日、汐留の鉄道歴史展示室にも出品のあった山田純嗣が完全な個展形式で紹介されています。当然ながらこの作品の繊細さは写真ではお伝え出来ません。なお秋には同画郎で個展の開催も予定されているそうです。
[SCAI THE BATHHOUSE/小笠原美環]
ヨーロッパを中心に活動する小笠原美環の個展です。グレーの抑えられた色調にはかのハンマースホイを連想させるものもあります。前回のSCAI個展からやや時間も経ち、作風に変化が生じているような気もしました。
こちらは会場内の休憩スポットです。和をイメージしたスペースでしたが、さり気なく奥に展示されていたのが狩野派の屏風でした。
またあまりこれまでは意識しませんでしたが、陶芸や古美術関係でも目を引くブースがいくつかあります。
[水戸忠交易/ルーシー・リー]
新美の回顧展もひかえたルーシー・リーの器が20点ほど販売されています。
茶の湯との取り合わせの展示が斬新でした。このブースは一推しです。
[加島美術/長沢蘆雪]
「江戸の奇才」と題された加島美術のブースには、何とかの長沢蘆雪の掛け軸画が登場していました。普段、値段を意識して見ることはありませんが、この日ばかりはプライスリストにも目が向いてしまいます。
[角匠/葛飾北斎]
これまた江戸絵画ではお馴染みの北斎のご登場です。特に肉筆三点は状態も良く、その鮮やかな彩色にも見入るものがありました。
こちらの雀は見覚えのある方も多いのではないでしょうか。板橋美の江戸絵画展に出品されたこともあるのだそうです。ちなみに価格は◯千万円でした。
[ギャルリー サン・ギョーム/クリスト]
デザインサイトで開催中の個展も記憶も蘇ります。クリストのドローイングです。
[YOKOI FINE ART/三宅一樹]
仏像を思わせる静謐な木彫です。手から腕の部分にかけてと着衣の質感なども見事でした。販売はこの一点のみでしたが、これは他の作品も気になるところです。
[ギャラリー小柳/須田悦弘]
一点勝負で来場者の目を引くのは、これまたお馴染みの須田悦弘の可憐な花の彫刻でした。飾らないホワイトキューブに一輪の花のみを掲げる展示に、むしろ心地よい潔さすら覚えます。これは見事でした。
もはや説明の必要はないかもしれません。ひょっとするとこの作品、全出品の中で最高値であったのではないでしょうか。
ちなみに会場はメインの展示ホールと、主に若手作家を集めたロビーの「PROJECTS」に分かれています。しかしながら昨年のように建物からして別というわけではありません。そう迷うことはなさそうです。
フロアマップ(PDF)
また会場内でいわゆる見どころをピックアップしたガイドブック(アートコレクター)が何と無料で配布されていました。必見です。
会期中、3つのトークイベントがフォーラム内のセミナールームで開催されます。それぞれ無料で参加出来るのは嬉しいところですが、何と今回はその模様がUstreamでライブ配信されるそうです。
トーク・シリーズ 「ダイアローグinアート」 アートフェア東京Ustream
・「文化政策はアートを救うか?―ポスト政権交代におけるアートを考える」 4/2 17:00~
蓑豊(サザビーズ北米本社副会長)/逢坂恵理子(横浜美術館館長)/鈴木寛(文部科学副大臣)
・「脱ガラパゴス化 日本のアートをもっと元気に」 4/3 13:00~
建畠晢(国立国際美術館館長)/イーデン・コーキル(ジャパン・タイムズ編集局学芸部記者)/廣田登支彦(ギャラリー広田美術取締役)/吉井仁実(hiromiyoshii代表)/野呂洋子(銀座柳画廊取締役副社長)/辛美沙(アートフェア東京エグゼクティブ・ディレクター)/小澤慶介(アートフェア東京 アソシエイト・ディレクター)
・「コレクタートーク」 4/4 13:00~
田中恒子(「美術館にアートを贈る会」副理事長)
G-Tokyoの関係もあるのか、例年、非常に力の入った展示を繰り広げたミヅマなどが出展を取りやめています。あまり全体としての印象を云々するイベントでもないような気もしますが、その動向が今度どうアートフェアの運営や集客に影響していくかにも興味がわきました。
4月4日の日曜日までの開催です。なお開催中、開場時間が異なります。ご注意下さい。
*4/2(金)11:00~21:00、4/3(土)11:00~20:00、4/4(日)10:30~17:00
注)写真の撮影と掲載については主催者の許可を得ています。
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