「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館

多摩美術大学美術館
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 
7/12-9/15



多摩美術大学美術館で開催中の「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」を見て来ました。

古くから東北地方に伝わってきた正月のオカザリこと切り紙飾り。今も神社や民家などで作り続けられているそうです。主に宮城県北部から岩手県南部における紙飾り文化を紹介します。

さて紙飾り、必ずしも見る機会が多いとは言えませんが、まず思い浮かぶのは神社や神棚での飾り物。私も行く前は漠然とながらそのようなイメージで捉えていました。


「網飾り」宮城県 琴平神社

百聞は一見にしかずです。上の図版に挙げた飾りはどうでしょうか。やはり違って見える。これは宮城県の琴平神社に伝わる「網飾り」と呼ばれるもの。中には1メートル四方にも及ぶ大きな紙飾りもあります。これぞ東北独自のオカザリの姿なのです。

少し情報を整理しましょう。まず東北に伝わる紙飾り、主に正月飾りとして用いられます。出羽三山の修験道から自然神信仰との関係も指摘されているそうです。


「人形御幣」宮城県 御賀八幡宮

素材は一枚の紙です。それを折り畳んでは切り込みを入れ、最後に開いて成型するのが特徴。特殊技能として神社などで伝承されています。出来た飾りは神棚や天井に吊るします。会場でも殆ど全てのオカザリが高い位置に展示されていました。


「御幣 稲荷」 岩手県 江釣子・八坂神社

正月飾りのゆえでしょう。お目出度いモチーフが多いのもポイントです。鶴や鯛をはじめ、小判に打ち出の小槌、それに七福神を象ったものや、中には漢字で「福禄寿」と記した飾りもあります。その意匠はかなり精巧。一体どのように切れば出来るのかと感心してしまうほどです。また色紙をほぼ使わないのも特徴です。白一色としても過言ではありません。白の持つ美しさ。それを感じ取れる展示と言えるかもしれません。


「十六下げの小飾り」宮城県 計仙麻大嶋神社

実際に神棚などに飾られる様子は写真パネルで見ることが出来ます。なお飾りは郷土人形作家の千葉惣次氏のコレクション。また写真は千葉氏とともに東北で紙飾り文化を取材した大屋孝雄氏によるものだそうです。しかるべき場にあってこそより映えるオカザリ。臨場感のある写真で楽しめました。


「上町法印神楽」宮城県 豊里町

また臨場感といえば宮城県登米市での「上町法印神楽」も見逃せません。古くは江戸時代から執り行われてきたお神楽、会場ではその記録映像と写真、さらには舞台の天蓋に相当する「大乗荘厳」と呼ばれる紙飾りが展示されています。

この紙飾りはかなり大きい。内部には白い着物を纏う人形も吊るされています。また下にあるのは舞の際に翁が持つ指物とか。ちなみに映像は2時間ほどあるそうです。私が見た時はまだ日中の様子が映し出されていましたが、写真パネルにある日没後の神楽も美しい。篝火が舞台とオカザリを煌煌と照らし出す。そこで色鮮やかな衣装を纏った舞人が舞いを披露します。これが実に鮮やかです。

東北の民族資料も紹介されています。伏見人形に似た堤人形なども目を引くのではないでしょうか。また興味深いのは米沢地方に伝わる笹野一刀彫です。うち「お鷹ぽっぽ」と呼ばれる鷹の木彫、彩色も造形も至って素朴ですが、何でもアイヌで魔除けを意味しているそうです。そのほかには古布や籠など50点弱の資料が展示されていました。


「恵比須飾り手切り作業」岩手県 白澤神社

それにしてもオカザリ文化の残る地方、気仙沼や南三陸しかり、かの東日本大震災の被災地とも重なります。そのゆえか失われてしまってものも少なくありません。何とも胸の詰まるものがありました。(展示資料の多くは震災前のものだそうです。)

なお余談ですが、展示室は全部で4室です。1階の2室に加え、2階にも2つの展示室があります。(ひょっとすると分かりにくいかもしれません。)ご注意ください。


多摩美術大学美術館

図録が現在制作中です。予約での受付でした。9月頃には完成するそうです。(1冊1000円。)

失われつつも今もまさに神を宿し、さらには後世へと受け継がれようとする東北のオカザリ。シンプルな展示でしたが見入る点は多々あります。好企画でした。

「東北の伝承切り紙ー神を宿し神を招く/千葉惣次/平凡社」

9月15日まで開催されています。おすすめします。

「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館
会期:7月12日(土)~9月15日(月・祝)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般300(200)円、大学・高校生200(100)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:東京都多摩市落合1-33-1
交通:京王相模原線・小田急多摩線・多摩モノレール多摩センター駅から徒歩7分。
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「華麗なるジャポニスム展」 世田谷美術館

世田谷美術館
「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 印象派を魅了した日本の美」
6/28~9/15



世田谷美術館で開催中の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 印象派を魅了した日本の美」を見て来ました。

19世紀末より20世紀にかけて西洋で流行した日本趣味ことジャポニスム。印象派画家らも多く影響を受けた。例えばゴッホが浮世絵に強い関心を持っていたことは良く知られているかもしれません。


アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック「レスタンプ・オリジナル 第1年次のための表紙」1893年

本展のテーマもずばりジャポニスムです。絵画を中心に工芸や版画、さらに写真まで視野に入れて検証する。またかなり細かく影響関係を追っているのもポイントです。具体的に浮世絵と西洋絵画を並べて比較しています。

冒頭は西洋人の見た日本趣味。浮世絵や蒔絵に七宝です。うち驚くのがブシュロン社の「インクスタンド」(1876)。四方に亀を台座にしてのスタンド、中央の突起物はペン立てです。そして模様が七宝。題材は浮世絵です。例えば富士山と釣り人の絵は北斎の「富嶽三十六型 武州千住」から取り込んでいる。会場では元になった浮世絵も展示されています。

ファネージが収集していたという伝小川破笠の「棕櫚意匠料紙箱」(江戸時代)も美しいのではないでしょうか。意匠は言うまでもなく棕櫚、それを桐箱に象嵌で描きます。左右非対称です。棕櫚は箱の側面から上部の左側に寄っている。構図に妙味があります。

ちなみにファネージは日本に3ヶ月滞在したことでも知られる画家。彼の記した日本滞在記はかの天心に献呈されました。アメリカのジャポニスム展開に重要な役割を果たした人物でもあります。

日本趣味の文物を展観した後はテーマ別にジャポニスムの諸相を追いかけます。テーマはそれぞれ「女性」、「シティ・ライフ」、「自然」、「風景」です。

 
左:喜多川歌麿「母子図 たらい遊」1803年頃
右:メアリー・スティーヴンソン・カサット「湯浴み」1891年頃


歌麿の「母子図 たらい遊」(1803年頃)とカサットの「湯浴み」(1891年頃)はどうでしょうか。同じ母子、しかもたらいを前に子どもを水浴び、もしくは水遊びさせる主題の作品。もちろん厳密にカサットが参照したかどうか定かではありませんが、似た部分があるのは一目瞭然です。向きは反対ですが、たらいを画面から切る構図などは特に類似しています。またカサットにおける衣服の曲線、黒の輪郭線を巧みに利用していますが、これも浮世絵、歌麿の素早い筆致に似ています。そしてカサットも浮世絵のコレクターだったそうです。

 
左:歌川国貞(三代豊国)・歌川広重「当盛十花撰 夏菊」1858年
右:フィンセント・ファン・ゴッホ「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」1889年


ゴッホの「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」(1889年)、今度は背景に注目しましょう。菊が装飾的に描かれる様子、これは国貞・広重の「当盛十花撰 夏菊」(1858年)の菊に似てはいないでしょうか。正面性の高い菊の表現、まるで花火が開くようでもある。何かしらゴッホが参照したに相違ありません。

モネの「ラ・ジャポネーズ」(1876年)がやって来ました。第2回印象派展に出品された一枚。修復後初の公開です。まず驚くのは大きさ、高さは2メートル30センチもあります。団扇を散らした背景を前に扇子を振り上げて舞う金髪の女性。緋の打掛の描写が極めて精密。少し離れて立つと刀を持った武者が浮き上がってくるようにも見えます。それにしても深紅の鮮やかな様、ともすると俗っぽくも思える。ほかのモネ作品ではなかなか見られません。ちなみに床はござです。また鶴や花魁といった団扇はモネも家に飾っていたのだそうです。


アーサー・ウェズリー・ダウ「沼地風景」1900年頃 

さてボストン美術館のコレクション展でもある今回の展示、アメリカ人の画家が数多く取り上げられています。


チャールズ・カーライル・コールマン「つつじと林檎の花のある静物」1878年

例えばチャールズ・カーライル・コールマンです。「つつじと林檎の花のある静物」(1878年)では日本風の壺をモチーフにしています。短冊風の書き込みも日本を意識してのことでしょう。背景に透けて浮かぶ曲線を描いた花の模様も美しい。また額も目を引きました。菊と三つ葉葵の紋が彫られています。

フランク・ウェストン・ベンソンもアメリカの印象派の画家。「早朝」(1899年頃)における水鳥は応挙の「浜波雁図屏風」を参照しているそうです。また同じくベンソンの「銀屏風」(1921年)も面白い。背景に銀屏風を置き、手前にはフルーツが盛られたガラス器を描く。屏風には無地でしょうか。目を凝らすとうっすら梅が描かれているようにも見えます。

ホイッスラーは2点ほど出ていました。「ノクターン」における闇夜の描写は幻想的です。ほかにもハーマン・ダドリー・マーフィーにチャールズ・ハーバード・ウットベリーの名も挙げられる。またアメリカの写真表現おけるジャポニスムの影響を見る展示もあります。チラシにはモネ、マネ、ロートレック、ドガなどの名が中心に掲げられていますが、実はアメリカの画家の作品こそが今回の大きな見どころだとしても過言ではありません。

ちなみに同じくチラシ表紙を飾る「ラ・ジャポネーズ」しかり、どこか一点豪華主義にも思えてしまいますが、必ずしもそうではないのも嬉しいところです。ピサロの「雪に映える、エラニー=シュル=エプト」(1895年)やマティスの「花瓶の花」(1924年)、それにムンクの「真夏の夜の夢」(1893年)など、ジャポニスムの文脈云々を離れても魅惑的な作品が目立ちます。

 
左:歌川広重「名所江戸百景 神田明神曙之景」1857年
右:エドヴァルド・ムンク「真夏の夜の夢(声)」1893年


ちなみにムンクの作品、何がジャポニスムといえば、木立を形成する格子状の構図、その垂直性に、例えば広重の風景画との関連が指摘されるそうです。どうなのでしょうか。


クロード・モネ「睡蓮」1905年

ラストは再びモネ、お馴染みの積みわらに睡蓮です。うち「積みわら(日没)」(1891年)、夕焼けに染める積みわらを描いた一枚ですが、これがまた広重に関係しているのではないかとのこと。非対称性です。「東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店」(1833年頃)における茶店と積みわらを比較する。確かに見比べると小屋や山と積みわらが似ているようにも思えます。また色彩による遠近感の表現も同様です。果たして説得力を持つのかは分かりませんが、私自身、こうした見方をしたことがなかっただけに、ある意味で新鮮に見えました。

さて今年も暑い夏、如何せん駅から遠い世田谷美術館。なかなか足が向かないという方もおられるかもしれません。

朗報です。用賀駅より美術館までの100円直行バスが運転されています。(展覧会会期中。休館日を除く。)

「華麗なるジャポニスム展」東京展アクセス情報(バス時刻表)

私も直行バスを利用しましたが、ともかく途中停留所を経由しないのでスムーズ。駅から10分もかからないうちに美術館に着くことが出来ました。

平日は便数もやや少なめですが、土日はほぼ毎時5本以上。かなり便利です。お出かけには用賀駅からの100円直行バスの利用をおすすめします。

[華麗なるジャポニスム展 巡回予定]
京都市美術館:2014年9月30日(火)~11月30日(日)
名古屋ボストン美術館:2015年1月2日(金)~5月10日(日)

「印象派で近代を読むー光のモネから、ゴッホの闇へ/中野京子/NHK出版」

9月15日まで開催されています。

「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 印象派を魅了した日本の美」 世田谷美術館
会期:6月28日(土)~9月15日(月・祝)
休館:毎週月曜日。但し7月21日(月・祝)、9月15日(月・祝)は開館、7月22日(火)は休館。
時間:10:00~18:00 *最終入場は17:30
料金:一般1500(1300)円、65歳以上1200(1000)円、大学・高校生900(700)円、中学・小学生500(300)円。
 *( )内は20名以上の団体料金
住所:世田谷区砧公園1-2
交通:東急田園都市線用賀駅より徒歩17分。美術館行バス「美術館」下車徒歩3分。会期中は用賀駅より100円直行バスあり。

*出品作品図版は全てボストン美術館所蔵品
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「江川純太 全ては奥歯で砕かれる。」 eitoeiko

eitoeiko
「江川純太 全ては奥歯で砕かれる。」 
7/26-8/30



eitoeikoで開催中の江川純太個展、「全ては奥歯で砕かれる。」を見て来ました。

同ギャラリーでは昨年秋以来となる個展です。見る度に「変化」に驚かされもする江川の制作ですが、今回はいつもに増して統一感がある。そのように感じたのは私だけではないかもしれません。



それは色に由来するのでしょうか。前回展や以前の展示で見せた黒などの濃い色合いは影を潜め、どこか白を基調としたシルバー、もしくはうっすら紫を帯びた色が広がっています。もちろん鍵穴的なモチーフも見られますが、強い色で空間を閉ざすのか、淡い色でそうするのかでは印象が異なるもの。ともかく何か心地良さすら感じる色遣い。いつになく「光」を帯びていました。



そして今回、特に目を引くのがドット状に広がる筆触の展開です。赤に青に緑、一つの筆触でも多様にグラデーションを描いている。まるで宝石のように煌めきながら散るドット。それが時に縦方向へ川の流れるように滲む絵具の向こうに見え隠れしています。さらには色の点をそのまま見せて描いた作品もある。ともすればオールオーヴァー的な志向も伺えました。



一方でさらなる「変化」がある点も見逃せません。ストライプです。もちろんこれまでにもストライプをとりこんだ作品がありましたが、今回展ではストライプそのものがモチーフとなっている作品があります。太いストライプが縦や横、斜めに繋がる。そこに雲のような色面が浸食しています。細かなドットも広い余白もありません。



ちょうど私が出向いた時にギャラリーに西日が差し込んできました。すると色の盛られたドットに影が出来ます。光は色をさも透かすかのように影を描く。これが実に美しい。思わず息をのみました。

なお作家の江川は現在、川栗市立アートギャラリー・アトリアで開催中の「アーティスト・ラボ つくられるの実験」にも出展中です。



「アーティスト・ラボ つくられるの実験」@川口市立アートギャラリー・アトリア(7/19-8/31)

私も先日行って来ましたが、言葉を取り込んだ新作など、新たな展開も見られる展示です。あわせて出かけても面白いかもしれません。

「アーティスト・ラボ つくられるの実験」川口市立アートギャラリー・アトリア(はろるど)

8月30日まで開催されています。*夏期休廊:8月12日(火)~8月16日(土)

「江川純太 全ては奥歯で砕かれる。」 eitoeiko@eitoeiko
会期:7月26日(土)~8月30日(土)
休廊:日月祝。夏期休廊:8月12日(火)~8月16日(土)
時間:12:00~19:00
住所:新宿区矢来町32-2
交通:東京メトロ東西線神楽坂駅より徒歩5分、都営地下鉄大江戸線牛込神楽坂駅より徒歩10分

*作品写真は全て「江川純太 全ては奥歯で砕かれる」展示室風景
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「李禹煥個展」 カイカイキキギャラリー

カイカイキキギャラリー
「李禹煥個展」 
7/25-8/21



カイカイキキギャラリーで開催中の「李禹煥個展」を見て来ました。

いわゆる「もの派」の「中心的存在」(ギャラリーサイトより)として知られる作家、李禹煥。都内のギャラリーでの個展は2011年のSCAI(谷中)以来のことかもしれません。ここ元麻布のカイカイキキギャラリーにて始まっています。

さてギャラリー内の2つのスペースを用いての展示。まずは「Relatum-Excavation」です。目に飛び込んでくるのは一面に敷き詰められた石。10センチ近くは盛られています。砂利というには少し大きめ。全てが白く清潔感がある。3箇所ほど窪んでいます。そこに細かな砂、黄土色の土が散っていました。そして例の絵具のストロークです。ワインレッドとシルバー。ともにうっすら白いグラデーションを描く。まるでぽっかりあいた穴のようでもある。絵具が床に染み込むかのように広がっています。

次は「Relatum-Silence」、大きな石とキャンバスとの関係です。今度の床はコンクリート打ちっ放し。その上に大きな石が置かれています。また壁面の白いキャンバスには何も描かれていない。ライティングの効果でしょう。石の影だけがさもキャンバスの方へ向かうかのようにのびています。

もう一方の空間は畳敷きです。40畳ほどあるかもしれません。壁面には2枚の絵画、「Dialogue」です。白地に一つはシルバー、もう一つはオレンジのストロークが思いがけないほど力強くのびている。先の床面の油彩に対して今度はアクリル。キャンバスはかなり厚みがあります。そのゆえでしょうか。しばらく眺めているとキャンバスが窓、さらに絵具の色がその向こうで煌めく光のようにも見えました。

畳敷きということで座って鑑賞することが可能です。これが思いの外に居心地が良い。下から少し見上げる形で作品を味わえます。また会場はビルの地下ではありますが、入口を通してでしょうか。ふと蝉の音が聞こえてきました。すると横目にうつる白い石の効果もあるのかもしれません。さも枯山水庭園にいるような感覚さえ覚えます。不思議と涼感のある展示です。しばし時間を忘れて滞在してしまいました。

カイカイキキは広尾駅から有栖川宮公園横の坂道をあがった先に位置するギャラリー。愛育病院の裏手、駅から10分弱ほどかかります。真夏の日中では少々難儀しますが、辿り着いた空間と言ったら美しい。漠然とした印象で恐縮ですが、久しぶりに李のインスタレーションから立ち上がる引き締まった空気感、気配を堪能しました。



なお8月9日(土)の15時より李本人のトークが行われます。料金はかかりません。

「余白の芸術/李禹煥/みすず書房」

8月21日まで開催されています。

「李禹煥個展」 カイカイキキギャラリー
会期:7月25日(金)~8月21日(木)
休廊:日・月曜日
時間:11:00~19:00
住所:港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1F
交通:東京メトロ日比谷線広尾駅より徒歩8分。
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「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアム
「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 
7/26-10/13



パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「建築家ピエール・シャローとガラスの家」を見て来ました。

「アール・デコ時代の最も革新的な建築家」(同館WEBサイトより)と呼ばれるピエール・シャロー。日本初の個展だそうです。パリのポンピドゥー・センターより図面、模型、写真のほか、家具や照明器具などがやって来ています。

さてシャロー、ひょっとするとあまり知られていないかもしれません。生まれは1883年です。青年期に家具会社に入社。デザインと製図を学び、後に独立。早くも1920年頃にはフランスの装飾芸術家展やサロンにインテリア家具を発表します。


ピエール・シャロー「透視図 サロン」制作年不詳 ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館

折しも当時はアール・デコの時代。まずはシャローもフランスの装飾の伝統を踏まえた作品を生み出します。

面白いのは金属に対する強い関心です。

1922年に金属職人ルイ・ダルベとの協働関係を築いたシャロー。インテリアに次々と錬鉄を取り込みます。また金属を用いることで家具や照明の接続可動部分に耐久性を得ることにも成功。単に装飾的だけではなく、実用にも耐え得るような機能性の高いインテリアを生み出しました。


ピエール・シャロー「テーブルランプ」1923年 ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館

照明も数多く手がけています。うち素材としてはアラバスターを用いているのが特徴です。これは半透明の白い鉱物によって出来たものですが、シャローは照明のシェードに使っている。光源があたると少しオレンジ色がかった温かみのある光が放たれます。

またシェードしかり、扇形や円などを組み合わせたデザインが多いのも興味深いところ。そもそもシャローはピカソやブラックを収集するなど、キュビズムに関心がありました。それにシャローはアール・デコ期の建築家ではありますが、最終的に志向したのはモダニズムです。(実際に途中からアール・デコとは決別します。)ひょっとするとその源泉にキュビズムがあったのかもしれません。


ピエール・シャロー「マレ=ステヴァンスのための 事務机」1927年 ポンピドゥー・センター、パリ国立近代美術館

化粧台も目を引きます。茶色のマホガニーにカエデの素材を重ね合わせた化粧台。曲線と直線が交差する。「マレ=ステヴァンスのための事務机」(1927年)はどうでしょうか。天板は木製、支柱は金属製で平べったい。また別の金属の椅子は扇子のように折り畳むことも出来ます。シャローは扇形の構造を好みました。近未来を思わせるような仕上げです。工業的とも呼べる幾何学デザインと木と金属の組み合わせ。これもシャロー・インテリアの特徴と言えそうです。


ピエール・シャロー「ガラスの家」1927-1931年

代表作「ガラスの家」に進みましょう。アパルトマンを改造しての建築作品。顧客であった医師夫妻のための新居です。巨大なガラスブロックのファサード。9m×9mもあります。階段は金属製。得意とした可動式のタンスや間仕切りなどもある。見るからにスタイリッシュな空間です。なお会場では「ガラスの家」の模型のほか、写真資料のスライド映像、さらに室内に設置されていたコート掛けなどを展示。「内」と「外」を分かりやすく見せる工夫がとられていました。


ピエール・シャロー「ガラスの家」1927-1931年

1930年代半ば頃になるとシャローの活動は急速に縮小します。ヨーロッパでは二次大戦も目前。経済状況の悪化も要因だそうです。結果的にシャローは1940年、アメリカへ亡命しました。

よって亡くなるまでの10年間はアメリカでの活動です。「ガラスの家」までの流れからすると作品も少なく、やや寂しくも思えますが、画家のロバート・マザウエルのためのアトリエ兼住宅などは興味深い。アーチ状の建築物。長さは28m。地下を掘り下げている。一方の壁にガラス窓がカーブを描いています。何でも米軍の避難施設を転用したのだそうです。

ところでシャローの装飾デザイン(特に初期)の魅力に鮮やかな色も挙げられていましたが、展示写真は時代もあってか白黒です。まるで分かりません。この辺は図面やスケッチにあたるほかなさそうです。

「世界現代住宅全集13 ピエール・シャロー ガラスの家/ADAエディタトーキョー」

汐留のスペースに17章立ての展示。出品は200点近くにも及びます。如何せん手狭な感は拭えませんが、ガラスの家を頂点に時系列でシャローの制作を追う構成。時に家具や図面が交互に並ぶ。なかなか効果的な展示です。また会場はみかんぐみが手がけています。その辺も見どころの一つと言えそうです。

「建築家ピエール・シャローとガラスの家/鹿島出版会」

10月13日まで開催されています。

「建築家ピエール・シャローとガラスの家」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:7月26日(土)~10月13日(月・祝)
休館:水曜日。夏期休館:8月11日(月)~15日(金)
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般800円、大学生600円、中・高校生200円、小学生以下無料。
 *65歳以上700円、20名以上の団体は各100円引。
 *ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。
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「宇宙博2014」 幕張メッセ

幕張メッセ 国際展示場10・11ホール
「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」
7/19-9/23



幕張メッセで開催中の「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」のプレスプレビューに参加してきました。

「宇宙。それは最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。」(スタートレック・オープニング・ナレーションより)

もちろん本展、何もスタートレックの展覧会ではありませんが、宇宙への挑戦、探査と言って私がすぐ思いつくのはこの一節。そもそも1970年代、スペースシャトル計画の初代の試験機は、ファンの声によりスタートレックからエンタープライズ号と名付けられたことも知られています。

宇宙博2014は、これまでの人類への宇宙への挑戦を知り、未来へのさらなる展望を切り開く展覧会です。


アポロ司令船(CM) 訓練用シュミレーター レプリカ

会場を追ってみましょう。まずはアポロ。人類初の有人月飛行着陸計画です。実際にNASAで使われた訓練用のシュミレーターのレプリカが出ています。実に精巧、内部の空間もリアルです。ちなみに上のパラシュート、よく見ると無数の穴が空いていることが分かりますが、こちらはようは本物。1972年12月、アポロ17号が太平洋上に着水した際に使用されたものです。


スペースシャトル「アトランティス」フライトデッキ レプリカ

同じく精巧な内部空間といえばスペースシャトルのキャビンも同様ではないでしょうか。フライトデッキとミッドデッキの二層構造。飛行機のコックピットを思わせる造り。チェレンジャー号やコロンビア号の痛ましい事故もありましたが、スペースシャトルは計130以上のミッションをこなしました。


スペースシャトル「アトランティス」機首部分 レプリカ *前で解説するのはJAXA名誉教授的川泰宣氏

モデルは2011年に最後の飛行をしたアトランティス号の機首部分です。ちなみにスペースシャトル関連ではタイヤや24分の1スケールの全体模型なども展示されています。


小惑星探査機「はやぶさ」 熱構造モデル

「奇跡の生還」の記憶も新しいかもしれません。小惑星探査機「はやぶさ」です。7年の旅を終え地球に帰還してきた「はやぶさ」の実寸大モデル。その横には後継機の「はやぶさ2」のモデルも紹介されています。


「はやぶさ」イトカワ微粒子サンプル 実物

そして言うまでもなく「はやぶさ」が持ち帰ったのは小惑星イトカワの微粒子。大きさは最大で0.1mmと非常に小さなものですが、実際のサンプルを顕微鏡で見ることも出来ます。また地球への再突入カプセルのモデルも展示。カプセルは2010年にオーストラリアの砂漠に着陸しましたが、例えばカプセルを分離するスプリングは社員5~6名の小さな会社によって作られたとか。地道なものづくりあってからこそなし得たプロジェクトでもあるわけです。


国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」 1/1モデル

ハイライトと言えるのではないでしょうか。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の実物大モデルです。長さ11m、直径4mの巨大な宇宙施設。円筒型の実験室と保管室が目を引きますが、その前にのびるロボットアームも興味深い。そしてアームの下に広がるプラットフォームはISSで唯一の宇宙空間にさらされた船外実験施設です。実験装置を12箇所取り付けることが出来ます。ここで様々な科学観測や理工学、材料実験などが行われているそうです。


国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」内部 1/1モデル

宇宙飛行士気分です。「きぼう」には搭乗も出来ます。内部には操作パネルがびっしり。また宇宙では無重力ですが、飛行士のためにあえて上下を区別しているのもポイント。床と壁と天井が分かれています。

ちなみにこのモデル、プレビュー時に解説して下さったJAXA名誉教授の的川泰宣さんによれば、つくばにある訓練用のモデルよりも良く出来ているとのこと。また実際の「きぼう」もISSの中で最も清潔でかつ静かだと評判だそうです。それにアームの作業も日本人が優れていて、例えば若田さんが指導的役割を果たすことも少なくなかったそうです。


国際宇宙ステーション(ISS) 1/10モデル

「きぼう」の上にはISSの10分の1モデルも展示されていますが、本物は全長110mもあるとか。サッカーグランド程度の広さです。それが今も上空400キロの宇宙空間を廻っています。


ISSのベット/トイレ 1/1モデル

ISSでのベットやトイレの実寸大モデルも面白いと思いました。ベットは縦。寝ている間にふわふわと飛んでいかないためにも袋型です。トイレには脚を固定するためのベルトなどもついています。(やむを得ないとは言え、シャワーがないのは辛そうです。)宇宙飛行士の生活を肌で感じ取れる展示と言えるかもしれません。


火星探査車「キュリオシティ」 1/1モデル

火星探査車キュリオシティがやって来ました。NASAで制作された実寸大モデル。重さは約900キログラムです。カメラや分析装置などが装備されています。また前方のアームは主にドリルで地面に穴をあけるためのもの。自動プログラムによって作動しますが、地球からも交信によっても動かすことが出来ます。

このキュリオシティの成果は目覚ましい。かつて火星に微生物が生息可能だったこと、また川が流れていたことなどが分かりました。そして現在も観測を継続中。日々、地球へデータを送信して来ているそうです。


イプシロンロケット 1/20モデル 他

日本のロケットや衛星の開発のコーナーもあります。うちイプシロンロケットのモデルは目を引くのではないでしょうか。このイプシロンは打ち上げ前の点検を自ら行うという新時代のロケット。コンセプトは「ロケットの知能化」だそうです。2013年に試験機が打ち上げに成功したことでも話題となりました。


H-2ロケット8号機 回収LE-7エンジン

あえて注目したいのがH-2ロケット8号機です。1999年に打ち上げられた同機、エンジンの異常停止により打ち上げに失敗してしまいます。そして原因を解明するために海底深くから引き上げられたのがLE-7エンジン。実物の展示です。どうでしょうか。黒く少し歪んだ胴体は生々しくさえある。宇宙への挑戦は何も成功ばかりだけではありません。


「NASA A HUMAN ADVENTURE」展示室風景

さて色々見どころをピックアップしてきましたが、実のところ、これらはほぼ展示の後半部分。さらに前半部分が加わります。ようは2部構成なのです。後半は「はやぶさ」や「きぼう」といった「日本の宇宙開発」。では前半は何でしょうか。既にこのエントリでも一部をご紹介しましたが、端的に言ってしまえばNASAの活動を追っている。それがこれまで世界各地で行われ、今回アジアで初めて開催された「NASA A HUMAN ADVENTURE展」の日本巡回展なのです。


アポロ月面車 レプリカ

もう一度整理すると、流れとして「NASA A HUMAN ADVENTURE展」が先にあり、次いで「日本の宇宙開発」と続く。そしてこのNASA展も見るべきところがかなり多い。何せはじまりはジューヌ・ベルヌの「月世界旅行」です。そして米ソの宇宙開発競争、さらにはアメリカのロケット開発、またアポロ、スペースシャトルへと歴史を辿っていく。アポロ計画時代の運用コンソールや司令船のハッチ、それに月面車や有人宇宙船マーキュリーのレプリカなどもやって来ています。


ジェミニ計画の宇宙服(G4C) 他

アメリカの歴代の宇宙服も並びます。モデルだけではなく実際に利用されたものも少なくありません。

幕張メッセの2つのホールを用いての宇宙博。広さは約9000平方メートルもあります。ゆうに2時間はかかるのではないでしょうか。私も思わず夢中になってしまい、気がつけば規定の時間を過ぎていました。


ジェミニ計画のアジェナ標的機 トレーナー

会場内は一部を除き撮影が可能(フラッシュ不可。)です。貴重な宇宙船のモデルなど前にしての撮影スポットも多数。カメラをお忘れなきようご注意ください。

ミュージアムショップも展示のスケールに見合ってか広々としたものでした。総アイテムは2000点。お馴染み海洋堂のフィギュアなどに人気が集まるかもしれません。

「小惑星探査機 はやぶさ物語/的川泰宣/日本放送出版協会」

9月23日まで開催されています。

「宇宙博2014ーNASA・JAXAの挑戦」@SpaceExpo2014) 幕張メッセ 国際展示場10・11ホール
会期:7月19日(土)~9月23日(火・祝) 
休館:会期中無休。
時間:9:30~17:00 入館は閉場の30分前まで。
料金:一般2500(2200)円 、大高生1500(1200)円、小・中学生900(800)円。未就学児は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市美浜区中瀬2-1
交通:JR線海浜幕張駅より徒歩5分。JR線・京成線幕張本郷駅から京成バス「幕張メッセ中央・QVCマリンフィールド」行きに乗車、「海浜幕張駅」及び「タウンセンター」、「幕張メッセ中央バス停」下車徒歩3~5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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8月の展覧会・ギャラリーetc

暑い夏がやって来ました。8月中に見たい展覧会などをリストアップしてみました。

展覧会

・「没後50年回顧展 板谷波山」 泉屋博古館分館(~8/24)
・「ミッション[宇宙×芸術]/ワンダフルワールド」 東京都現代美術館(~8/31)
・「生誕120年記念 濱田庄司展」 日本民藝館(~8/31)
・「第20回 アートコレクション展 日本の美を極める」 ホテルオークラ東京(8/8~8/31)
・「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」 国立新美術館(~9/1)
・「アニマルワールドー美術のなかのどうぶつたち」 静岡県立美術館(~9/7)
・「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」 世田谷美術館(~9/15)
・「指輪 神々の時代から現代まで」 国立西洋美術館(~9/15)
・「水の音ー広重から千住博まで」 山種美術館(~9/15)
・「東北のオカザリ展ー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館(~9/15)
・「ジョージ・ネルソン展」 目黒区美術館(~9/18)
・「いま 台湾ー台灣美術院の作家たち」 渋谷区立松濤美術館(8/9~9/21)
・「フィオナ・タン まなざしの詩学」 東京都写真美術館(~9/23)
・「メトロポリタン美術館 古代エジプト展~女王と女神」 東京都美術館(~9/23)
・「日本SF展・SFの国」 世田谷文学館(~9/28)
・「耀きの静と動 ボヘミアン・グラス」 サントリー美術館(8/2~9/28)
・「美術の冒険 国立国際美術館コレクション展」 茨城県近代美術館(8/9~9/28)
・「だまし絵2 進化するだまし絵」 Bunkamura ザ・ミュージアム(8/9~10/5)
・「アート・スコープ 2012-2014」 原美術館(~10/13)
・「鈴木康広展 近所の地球」 水戸芸術館(8/2~10/19)
・「ヨコハマトリエンナーレ2014」 横浜美術館・新港ピア(8/1~11/3)
・「Find ASIA 横浜で出逢う、アジアの創造の担い手」 ヨコハマ創造都市センター(8/1~11/3)
・「東アジアの夢ーBankART Life4」 BankART Studio NYK(8/1~11/3)
・「黄金町バザール2014」 黄金町エリアマネジメントセンター(8/1~11/3)

ギャラリー

・「李禹煥個展」 カイカイキキギャラリー(~8/21)
・「五月女哲平 : 記号ではなく、もちろん石でもなく」 青山|目黒(~8/23)
・「三好彩 本当」 イムラアートギャラリー東京(8/2~8/24)
・「江川純太 全ては奥歯で砕かれる。」 eitoeiko(~8/30)
・「八重樫ゆい 行儀と支度」 MISAKO & ROSEN(~8/31)
・「TWS-Emerging 2014 第1期 本田アヤノ/清水香帆/衣真一郎」 トーキョーワンダーサイト渋谷(8/9~8/31)
・「無人島プロダクション8周年記念展」 無人島プロダクション(8/8~9/15)
・「トロリ 原真一」 山本現代(8/23~9/20)
・「フィオナ・タン Nellie」 ワコウ・ワークス・オブ・アート(~9/27)
・「パランプセストー重ね書きされた記憶 vol.3 井上雅之」 ギャラリーαM(8/30~9/27)

さて夏休み、今年も残念ながら殆ど遠出は出来そうもありませんが、それでも見ておきたいのは水戸芸術館。鈴木康広展です。



「鈴木康広展 近所の地球」@水戸芸術館(8/2~10/19)

映像ほか、インスタレーションでも活動する鈴木康広の個展。良く知られるのは「まばたきの葉」ですが、特徴的な水戸芸術館の空間をどう変化させるかにも着目したいところ。また8/8からは近隣の商店街を巻き込んでのイベント、「パラパラマンガ商店街」も行われるそうです。

同じく水戸市内の茨城県立近代美術館で開催される国立国際美術館(大阪)のコレクション展とあわせて出かけたいと思います。

新出、個人蔵の江戸絵画が目白押しです。静岡県立美術館で「アニマルワールド」展が開催されます。



「アニマルワールドー美術のなかのどうぶつたち」@静岡県立美術館(7/29~9/7)

江戸期の動物をモチーフとした絵画に着目しての展覧会です。お馴染みの若冲の「樹下鳥獣図屏風」や「白象群像図」なども出展されますが、何よりもリストを見て驚くのは大半が個人蔵の作品であることです。(出品リスト

また先日、一部の報道でも取り上げられましたが、これまで全く知られていなかった全長16mの大作絵巻、長沢芦雪の「人物花鳥図図巻」も初めて公開されます。

「長沢芦雪:長さ16メートル超 大作絵巻見つかる」(毎日新聞)

静岡県美と言えば秋に青森から巡回してくる「美少女の美術史展」(9/20~)も気になりますが、その前の「アニマルワールド」。江戸絵画好きにはチェックしていおきたい展覧会と言えそうです。

都内の展示にも目を向けましょう。2009年以来の第二弾です。Bunkamuraザ・ミュージアムで「だまし絵2 進化するだまし絵」展が始まります。



「だまし絵2 進化するだまし絵」@Bunkamura ザ・ミュージアム(8/9~10/5)

前回展では主に西洋絵画におけるだまし絵の系譜を展観。それに加えて一部、日本のだまし絵などを紹介する内容でしたが、今回はまた異なった展示になるとのこと。チラシこそ再びアルチンボルドですが、古典を参照はするものの、現代美術に重きの置く構成となるそうです。(そういえば前回もラストは現代美術でした。)

だまし絵展、2009年の際は大変な評判となり、会期後半には入場待ちの行列も発生しました。今回はどうでしょうか。なるべく早めに出かけた方が良いかもしれません。



「ヨコハマトリエンナーレ2014」@横浜美術館・新港ピア(8/1~11/3)

ヨコハマトリエンナーレが始まりました。各種広域プログラムとあわせて8月の早い段階に見に行くつもりです。

ギャラリーの展示もいくつかピックアップしましたが、いずれも会期中に夏休みが入る場合があります。お出かけの際は各ギャラリーのサイトをあらかじめご確認ください。

[お知らせ]
現在、損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「キネティック・アート展」のチケットが若干枚手元にあります。先着順でお一人様一枚ずつ差し上げます。ご希望の方は件名に「キネティック・アート展チケット希望」、本文にフルネームでお名前とメールアドレスを明記の上、拙ブログアドレス harold1234アットマークgoo.jp (アットマークの表記は@にお書き直し下さい。)までお知らせください。*携帯電話のアドレスからはメールを受け付けておりません。

それでは今月も宜しくお願いします。
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