道尾秀介著『ノエル a story of stories 』(2012年9月新潮社発行)を読んだ。
宣伝文句はこうだ。
理不尽な暴力をかわすために、絵本作りを始めた中学生の男女。妹の誕生と祖母の病で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失った老境の元教師。それぞれの切ない人生を「物語」が変えていく……どうしようもない現実に舞い降りた、奇跡のようなチェーン・ストーリー。最も美しく劇的な道尾マジック!
光の箱
童話作家の圭介は、高校の同窓会に出席するため14年ぶりに故郷に帰る。貧しい家庭。イジメられた中学時代。そして、創ったお話と、弥生との出逢い。
暗がりの子供
莉子がひな壇の中に隠れているとき、大人たちの話を聞いてしまう。母親のお腹にいる赤ちゃんに嫉妬し傷つき、童話の世界に入っていく。
物語の夕暮れ
児童館で読み聞かせ会をしている元教師の与沢は妻を亡くして、子もなく、生きていてもしかたないと思っている。
四つのエピローグ
以上の3つの話のつながりがはっきりする。
初出:「小説新潮」2008年~2012年
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
道尾さんの小説にしては、子供の頃のおぞましい話が一つだけで、しかもハッピーに終わるので、後味は良いし、登場人物間のつながりも良く考えてある。
題名にa story of stories ともあるように、話の中に童話が挿入され、やがて話と絡むようになる。しかし、童話になじみのない私にはまどろっこしく、退屈だ。「物語の夕暮れ」では半分にもなる。
道尾秀介の略歴と既読本リスト
以下、私のメモ
登場人物
「光の箱」
卯月圭介 童話作家のペンネーム、小4で始めて物語を書く、小学校でイジメられる
葉山弥生 圭介と小中高が同じ、圭介の物語に絵を書いて絵本(『リンゴの布ぶくろ』『光の箱』を作る、高校で写真も始める
富沢 高校3年間同じクラス、圭介を探し出して14年後の同窓会の連絡をする
岩槻 小学校で圭介をいじめる金持ちの子
守谷夏実 圭介と同じ高校で弥生の友人、事件があり転校する
「暗がりの子供」
莉子 真子が落ちた穴には空を飛ぶ宝物があるという圭介の絵本『空飛ぶ宝物』を読む。病気の祖母が心配。妹が生まれるのが不安。莉子の妹の名前は真子になる。
「物語の夕暮れ」
与沢昭 児童館で読み聞かせ会をしている元教師。故郷の海沿いの古い家を売った。
ときちゃん 与沢の亡き妻が名付けたインコ。妻の名は時子。
ときちゃん 与沢が子供の頃、祭りのときに自作の話(蛍とかぶと虫)を聞かせた女の子。
重森 児童館の職員
「四つのエピローグ」
圭介と与沢のつながりが明らかになる。
莉子の妹真子は児童館で与沢の話を聞く。
そして、結局、与沢は・・・