hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

有川浩『旅猫リポート』を読む

2013年02月09日 | 読書2


有川浩著『旅猫リポート』(2012年11月文藝春秋発行)を読んだ。

誰とでも親しく接することができるサトルは、元野良猫のナナを連れて、懐かしい人々を訪ねる旅に出る。

写真館を継いだものの父との折り合いが悪く、それもあって妻が家出中の幼馴染コースケ。
農業を営む豪放な中学時代の親友ヨシミネ。
高校・大学の同級生同士で結婚してペンションを営むスギとチカコ。
思い出が少しずつ過去のベールを剥ぎ、ナナを預けるための旅が、サトルとナナの絆を強めてゆく。しかし、やがて旅も終わりを迎え・・・。
今を誇るストーリーテラーが紡ぎだす動物モノのロードムービー。

吠えかかるペンションの飼い犬にナナが啖呵をきる。

喧嘩なら僕のほうが一枚上手だ、お前なんかナリはでっかいけど命がけの喧嘩なんてしたことないだろう。
この縄張りを取られたら明日からごはんが減っちゃうような喧嘩はしたことないだろう、この幸せなもらわれっ子のお犬様め。




私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

話の展開は意外性のあるものではないが、人と猫との心のつながりがよく書けている。元野良猫としての誇りを失わないまま、ナナが、深く愛してくれるサトルへの愛を深めていく過程が心を打つ。人に媚びることがなく、人の心を鋭く読み取る猫ナナの語りが「いいね!」。

これ以上無いほど家族に恵まれなかったサトルが、それだからこそなのか、明るく、やさしい。人間など信用しないという野良猫が、サトルとどうしても一緒に居たいと思うようになる。この設定がいかにも泣かせの有川浩のたくらみだ。渋々?乗せてもらいました。


目次
Pre-Report 僕たちが旅に出る前のこと
Report-01 コースケ
Report-02 ヨシミネ
Report-03 スギとチカコ
Report-3.5 最後の旅
Last-Report ノリコ

登場人物

サトル 宮脇悟
30歳過ぎ。子供の頃から引越しを繰り返す。5年間飼ったナナを銀色のワゴンに乗せて懐かしい人々を訪ねる旅をする。
ナナ
三毛猫オス元は野良だったが、足を怪我してサトルの猫になる。たくましい野良精神を忘れない誇り高い猫。
コースケ 澤田幸介
サトルの小学校での友達。猫のハチを2人で見つけた。家業の写真館を継いでいる。強引な父親と仲が悪く、このため妻も実家に帰っている。
ヨシミネ 吉峯大吾
田舎町で農業を営み、子猫を飼う。両親が仕事中心で祖母の家に預けられ、サトルと中学で同じクラスになる。豪放な性格。
スギとチカコ 杉修介・千佳子夫妻
富士山のふもとで犬と猫両方OKのペンションを3年ほど経営。幼馴染の2人は高校でサトルと同級生で、東京の大学で再会。
ノリコ 香島法子
サトルの母親の妹。不器用な50代。判事で長らく全国を転勤。最近弁護士になり札幌の保立事務所に務める。猫が苦手。

有川浩(ありかわ・ひろ)の略歴と既読本リスト







コメント
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