西加奈子著『白いしるし』(新潮文庫430、2013年7月1日新潮社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた夏目。間島の絵を一目見た瞬間、心は波立ち、持っていかれてしまう。走り出した恋に夢中の夏目と裏腹に、けして彼女だけのものにならない間島。触れるたび、募る想いに痛みは増して、夏目は笑えなくなった――。恋の終わりを知ることは、人を強くしてくれるのだろうか? ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説。
夏目:32歳独身で恋人なし。アルバイトしながら金にならない個性の強い絵を描いている。18歳で彼と同じ青い髪にして刺青をした。失恋して美術短大をやめて、大阪から東京へ来た。その後の2年間もカメラマン、ミュージシャン、劇団員と失恋し、完全に「あかん人」になった。
瀬田:女性誌などで活躍する写真家。明朗なわかではないが、話が面白く信頼できるので友達が多い。瀬田は夏目に間島を紹介して言う。「絵もすきやろうけどな。夏目、まじま本人のことも、絶対好きになるで。」「まあ、色々へたくそなところもあるんやけどな、信頼できる、ええ奴。」「恋人も、信頼できる人やねん。
間島昭史:白い紙に白い絵の具で描く画家。
初出:2012年12月新潮社より刊行
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
変な女性が変な男性に、狂信的に恋をする。何よりのめり込むのを恐れていて、そうなってしまうことに確信があるのに、喜んで会ってしまう。わて、付いて行かれへん!
最後の方には透明な人と思われた瀬田まで変人と明らかにされる。
しかし、解説の作家・栗田有起さんは書いている。
男修行が一生つづくのは、吉報ではないかもしれない。しかしそれはけっして不幸なことではないと思う。
夏目の凛々しい姿を目の当たりにしたら、こわいものなんてないではないか。
最後の最後まで、だれも恨まず、妬まず、いたずらに卑下もせず、それこそ真白な心根で、恋した男と、自分自身にぶつかっていった彼女に、心からの拍手を送りたい。
たしかにその通りだと私も思うのだが、小説としては、私にとっては、ただ、おもろうない。