hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

米澤穂信『満願』を読む

2015年03月28日 | 読書2

 

米澤穂信著『満願』(2014年3月20日新潮社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは――。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、フリーライターなど、切実に生きる人々が遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジック。「日常の謎」の名手が描く、王道的ミステリの新たな傑作誕生!

 

 

山本周五郎賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 」・「週刊文春ミステリーベスト10」・「ミステリーが読みたい! 」ともに第1位を獲得した作品。

 

「夜警」
部下・川藤浩志巡査は殉職し二階級特進し警部補になった。川藤の最初の配属先が勤続20年のベテラン・柳岡巡査部長の勤務する緑1交番だった。柳岡は、川藤が警察官としての資質を欠いていることを一目で見抜く

警官に向かない資質には何タイプかがある。警官として守るべき最後の一線が理解できない者、自分の見たものがこの世のすべてだと思い込む者、すべての人間は一皮剥けば真っ黒だと思い込む者などは早めに辞めた方がよい。川藤は小心者だった。そして、予感は的中する。しかも、事件の背後には川藤のごまかしがあったのだ。

 

「死人宿」

職場の上司から嫌がらせや恫喝を繰り返されていると佐和子が訴えても、どこにでもそういう奴がいるものだと常識的に答えるばかりで、結局恋人には何もしてやらなかった。失踪した佐和子は山奥の温泉宿の仲居に納まっていた。宿から河原に下りると火山ガスが溜まりやすい窪地があって、楽に綺麗に死ねる死人宿として評判だった。風呂場に置き忘れた手紙から自殺者が誰かを推理し、見事止めることに成功するのだが、・・・。

 

「柘榴」

とりわけ美人の私は、どことなく人気がある佐原成海と結婚することに成功する。彼女は生まれた二人の娘、夕子、月子を心から愛した。しかし、夫・成海は決まった職にも就かず、女たちに貢がせるしまつで、離婚の話が進む。そのとき、親権者として姉妹が選んだのは? 40歳が近づいても衰えない容色をもつ彼女か、うわべは優しいが生活力がない夫か? そして、姉妹の希望を叶えるための手段は?

 

「万灯」

バングラデシュでガス田開発を目指す商社マンが奮闘する。そして、開発に反対する現地リーダーのアラムだけでなく、ライバルで共犯者である森下も殺してしまう。(そこまでやる?)

 

「関守」

事故の相次ぐ峠近くのドライブインで、雑誌記者の取材に応じていた老女。次々と、ああ、あの人は・・・と語りだす。そして、自分の娘の身の上話になったとき、お定まりのように、力が出なくなってきて・・・。

 

「満願」

弁護士の藤井が独り立ちして初めて取り扱った殺人事件。弁護人は、貧乏で勉強を続けるのが困難なころに世話になった下宿先のつつましく優しい女性・鵜川妙子。彼女は夫が借金を拵えた相手を刺殺して罪に問われたのである。藤井は事件には計画性がなく突発的なものだったとなんとか証明し、一審判決で懲役8年に持ち込んだ。被告は「もういいんです。先生、もういいんです」と裁判を続けることを許さず、控訴を取り下げた。

事件現場の証拠品だけは検察に預けられ、差し押さえを免れていたということが、真相へのヒントになる。

 

 

 

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年岐阜県生まれ。金沢大学文学部卒業。
大学卒業後、2年間だけという約束で書店員をしながら執筆を続ける。
2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞受賞しデビュー。
その他、『遠まわりする雛』『さよなら妖精』『春期限定いちごタルト事件』『愚者のエンドロール』『儚い羊たちの祝宴』『犬はどこだ』『ボトルネック』『インシミテル 』『遠まわりする雛』『ふたりの距離の概算』など

 

 

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