ピエール・ルメートル著、橘明美訳『その女アレックス』(文春文庫ル6-1、2014年9月10日文藝春秋発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。
捜査側は、パリ警察犯罪捜査部の四人組で、班長が主人公の身長が145cmしかないカミーユ・ヴェルーヴェン。部下が金持ち・イケメンで完璧な知識を持つルイ・マリア―ニ、地味で確実な捜査をするケチなアルマン、大柄で口は悪いが部下思いの上司のジャン・ル・グエン、そしてことあるごとにぶつかる嫌味なヴィダール予審判事。
ストーリー展開と最後の意外性は確かにすごい。
しかし、かなり暴力的でグロテスクな場面があり、語り口も公正な第三者とは言えないところがあり、ミステリーとしては不満がある
ピエール・ルメートル Pierre Lemaitre
1951年、パリに生まれる。教職を経て、2006年、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第1作Travail soignéでデビュー、同作でコニャック・ミステリ大賞ほか4つのミステリ賞を受賞した。
本作『その女アレックス』はヴェルーヴェン・シリーズ第2作で、イギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞を受賞。日本では「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」ほか4つのミステリ・ランキングで1位となった。
2013年、はじめて発表した文学作品Au revoir là-hautで、フランスを代表する文学賞ゴンクール賞を受賞する。
橘明美(たちばな・あけみ)
1958年東京生まれ。お茶の水女子大文教育学部卒。英語・フランス語翻訳家。
訳書、J・ディケール『ハリー・クバート事件』、H・ボンド『ラカンの殺人現場案内』、K・E・ウッディウィス『川面に揺れる花』など。