hiyamizu's blog

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ピエール・ルメートル『その女アレックス』を読む

2016年03月28日 | 読書2

 

 

ピエール・ルメートル著、橘明美訳『その女アレックス』(文春文庫ル6-1、2014年9月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

 

本屋大賞翻訳小説部門第1位、「このミステリーがすごい!」第1位など各賞を総なめしたらしい。

 

3部構成、449ページのミステリー。

 

第一部は185ページで、各章約7ページの25章に分かれている。最初のうちは、偶数章が捜査側で、奇数章が誘拐された若い美女の主人公アレックスの話で進む。しかし、第一部では、誘拐された者と捜査する者が交互に現れるが双方の出会いはない。

 

捜査側は、パリ警察犯罪捜査部の四人組で、班長が主人公の身長が145cmしかないカミーユ・ヴェルーヴェン。部下が金持ち・イケメンで完璧な知識を持つルイ・マリア―ニ、地味で確実な捜査をするケチなアルマン、大柄で口は悪いが部下思いの上司のジャン・ル・グエン、そしてことあるごとにぶつかる嫌味なヴィダール予審判事。

 

誘拐された若い美女の主人公アレックスは謎の男に拉致、監禁され、ネズミに喰われそうになる。偶数章几帳面に章を変えて、

結局、第一部では、誘拐犯の正体、動機が明らかになるが、アレックスは保護されず、誰かもわからない。同時に残忍な殺人事件が行われる。

 

 

 第二部は145ページで25章に分かれている。偶数章のアレックスが状況を打開して進展するのに対し、奇数章の捜査側の進展は少ない。39章からは交互の原則が崩れる。

後半でアレックスの実像が姿を現し、捜査側のカミーユはアレックスにたどり着くが、まだまだ影の真相は闇の中だ。

 第三部は115ページで、取調室を中心に、真相解明が進む。カミーユは、死者が残した日記と罠を武器に、真実より正義を優先し、証拠も証人もなしに悪事を行った人物を追い詰めていく。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

各章が短く、章ごとに誘拐されたアレックスの視点と、捜査側の視点が切り替わり、解りやすく、快適なテンポだ。さすが脚本家としても知られる著者の技だ。場面のイメージも描きやすい。

一言で言えば“面白い”。

 

アレックスが第一部では哀れを誘う弱き女性の印象で、第2部ではしぶとくたくましく、そして第3部では・・・。同情が、はてなとなり、なんでそれほどまで・・・と変わっていく。

 

ストーリー展開と最後の意外性は確かにすごい。

 

しかし、かなり暴力的でグロテスクな場面があり、語り口も公正な第三者とは言えないところがあり、ミステリーとしては不満がある

 

 

ピエール・ルメートル Pierre Lemaitre

1951年、パリに生まれる。教職を経て、2006年、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第1作Travail soignéでデビュー、同作でコニャック・ミステリ大賞ほか4つのミステリ賞を受賞した。

本作『その女アレックス』はヴェルーヴェン・シリーズ第2作で、イギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞を受賞。日本では「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」ほか4つのミステリ・ランキングで1位となった。

2013年、はじめて発表した文学作品Au revoir là-hautで、フランスを代表する文学賞ゴンクール賞を受賞する。

 

橘明美(たちばな・あけみ)

1958年東京生まれ。お茶の水女子大文教育学部卒。英語・フランス語翻訳家。

訳書、J・ディケール『ハリー・クバート事件』、H・ボンド『ラカンの殺人現場案内』、K・E・ウッディウィス『川面に揺れる花』など。

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