ジョーダン・ハーパー著、鈴木恵訳『拳銃使いの娘』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック1939、2019年1月早川書房発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
11歳のポリーの前に、刑務所帰りの実の父親ネイトが突然現われた。獄中でギャング組織を敵に回したネイトは、自分に妻子ともども処刑命令が出たのを知り、家族を救うために駆けつけたのだ。だが時すでに遅くポリーの母親は殺されてしまっていた。やむをえずネイトは娘を連れて逃亡の旅に出る。犯罪と暴力に満ちた危険な旅だ。だがその中で、少女は徐々に生き延びる術を身に着けていく……人気TVシリーズのクリエイターが鮮烈なデビューを飾りアメリカアメリカ探偵作家クラブ賞を射止めた傑作犯罪アクション! 解説/堺三保
アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞、アレックス賞受賞
原書名の“SHE RIDES SHOTGUN”(2017年)は、「助手席に乗る」というスラング。
父ネイトは刑務所で出所直前に、終身刑囚人、ギャング<アーリアン・スティール>の総長クレージー・クレイグの弟を殺してしまう。クレイグはネイトと妻と娘の処刑宣告を内外に発信する。娘ポリーは学校でいじめられている11歳。色褪せ、片目になってしまったクマのぬいぐるみを大切にしている。出所したネイトが自宅に駆け付けたときには既に妻エイヴィスは殺されていて、父と8年ぶりにあった弱虫の娘はいきなり逃走劇となる。
クレイグ総長の〈アーリアン・スティール〉の配下には、〈ナチ・ドープ・ボーイズ〉など多くのギャング団があり、そこいらじゅうの命知らずから親子は命を狙われる。歩くゾンビ状態の中、大逆転を図ろうとする。
登場人物
ポリー:11歳の少女 / ネイト・マクラスキー:ポリーの父親 / エイヴィス:ポリーの母親
トム:ポリーの継父 / ニック:ネイトの兄 ビッグ・カーラ:ネイトの旧友
クレージー・クレイグ:<アーリアン・スティール>の総長 / ディック:同・副官
シャーロット:同・連絡役 / チャック:クレージー・クレイグの弟
A・ロッド:<ナチ・ド—ブ・ボーイズ>の殺し屋 / スカビー:同・味見役
ボクセル:<ラ・エメ>のボス
ハウザー:ハングツリーの保安官 / ジミー・キャレン:同・保安官補
ジョン・パク:フォンタナ警察の刑事
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)
ちょっと甘い評価だが、弱虫で父親を恐れる少女が、命を狙われる逃走の中、ぬいぐるみのクマにも助けられ、自分を捨てて少女を助けようとする父親との心のつながりも得て、格闘術も会得し、銃も使いこなして、成長していく。
このぬいぐるみのクマが生き生きと効果を発揮している。少女はクマに語りかけ、クマにしぐさをさせて他の人に語りかける。
各節(?)初めに、語り手の名前と場所が示されるので話がごちゃごちゃにならない。
ジョーダン・ハーパー Jordan Haper
人気TVドラマ「メンタリスト」「ゴッサム」のクリエーター。小説デビュー作の本書で各賞を受賞。
鈴木恵(すずき・めぐみ)
1959年長野県松本市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。英米文学翻訳家。
30歳を過ぎた頃から翻訳家を志し、1998年、初の単独翻訳本『大洪水』刊行。
訳書多数。