hiyamizu's blog

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伊与原新『梟のシェスタ』を読む

2019年07月20日 | 読書2

 

伊与原新著『梟(ふくろう)のシェスタ』(2015年7月20日光文社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

昼夜逆転の生活。昼間は眠そうで不機嫌、ときどきアルコールが入っている。嫌われてもひかれても気にしない。中世スペインを中心にした西洋建築史の専門家で、休暇はスペインで過ごす―。学長選挙の迫る地方国立大学に新たに赴任してきた袋井准教授。型破りな「フクロウ」は、閉塞感漂う学内のムードをものともしない。次々とトラブルに首を突っ込み、教授たちのスキャンダルを暴き立てていく。彼の目的は、いったい何なのか?

 

主人公・語り手はキャラが立っていない吉川。しかし、本当の主人公はフクロウと呼ばれる袋井。ワトソンとホームズの関係だ。

 

吉川:専任講師。34歳独身。上司の首藤とは修復不可能。他のポストを探している。

首藤教授:吉川の上司。

里崎:心理学講座のただ一人の大学院生。首藤にこき使われている。情報通。

宗像教授:人文学部の学部長

袋井准教授:新任3ヶ月。上司は佐古教授。昼間は眠そうで、夜ギラギラし、よく「ほう」と言うので「フクロウ」と言われる。


佐古教授:西洋文化史講座。年度末で定年。日が落ちると同時に帰宅するのでカラスと呼ばれる。

 

吉川がアカハラ(アカデミック・ハラスメント)を行なっていると学生の砂原かなでから訴えられた。実際の加害者は首藤教授だが、なかなか暴露できない。学部長室で聴聞が行われ、吉川はついに激怒し……。

 


人文学部のパンフレット、学部紹介DVD作成すを吉川が押し付けられた。発注先はツクモ印刷で、担当は大学の卒業生の榎本だった。しかし、学長選にからむ無理な発注が告発され、発注先が変わった。その会社の営業マンは、袋井がナイペス(トランプ)のムス(ポーカー)で負けがこんでいた。

 

学会の基調講演を文科省にも顔がきく著名なボス教授を招待して行うことになったが、会場はダブルブッキングされていた。学部新設、変更をボス教授の協力で申請し、人文系を存続させる計画が危うくなった。ここでも袋井が暗躍し、…。

 

学長選が近づく中、大学に泥棒が入り、パソコンや現金が盗まれた。犯人は見つかったが、倫理学講座の助教・薮下は被害が無かったという。学長選では、首藤がつぶれた人文系には学長候補がおらず、人文系に否定的な医学部長の財津教授を阻止するために、理工学部候補を応援するしかない。

 

自分だけ生き残るための裏切りがあり、混乱したが、学内の意向投票では理学部の宇田川教授が圧勝した。しかし、学外委員が圧倒的な学長選考会議では、意向投票の結果が……。

 

 

伊与原新(いよはら・しん)の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

大学内の勢力争いは、テクニックの実例豊富で良くわかる。しかし、大学職員間の実情や、小ざかしい争い、裏切りの連鎖に興味のない人には飽きが来るだろう。

 

なぞの人物である袋井には興味は湧くが、謎の部分がそのままで、もう少し描きこんでもらいたかった。

 

コメント
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