朝井リョウ著『何者』(2012年11月新潮社発行)を読んだ。
大学生の二宮拓人(たくと、語り手)、ルームシェアしている神谷光太郎、そして光太郎の元カノの田名部瑞月、瑞月の友人の小早川理香、理香の同棲相手宮本隆良。彼らのそれぞれの就活の過程が語られる。
エントリーシートESの提出に始まり、WEBテスト、集団面接、筆記試験を経て、グループディスカッション、個人面接といった流れに沿って、それぞれの迷い、悩み、疑念が交差する。 2013年直木賞受賞作。
就活が始まると突然、自分を上手に、誇大にアッピールすることを強制される。それでも何度も試験に落ち、拒絶される辛い体験を先が見えないまま繰り返すと、自信を失い、プライドを守ろうと依怙地になり、友人と距離が生じ、やがて自分が何者か混乱してくる。
これまで、仲間同士で批判することを避けてうまく付き合っていたのに、突然、「なにがなんでも就職しなければならない」という人間が、就活のために考えを曲げるのはおかしいと非難する人間に強烈に反論する。主人公も「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな」「おまえはずっと、その中からでられないんだよ」と決めつけるのだが、・・・。
仲間が徐々に内定を決める中で、依然落ち続ける一人が「イタクて、カッコ悪い姿であがき続ける」ことの意味を強く説くことになる。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
現代の就活事情はよくわかるが、古希の身には若書きと映る。若者だから生硬なんだろうが、文章も固く、生々しい。直木賞は、作品にではなく、実績を認められた作家に与えられるのだと思っていたが。
文の中にしょっちゅうツイッターの文が混じり、新しいというより、あまり意味がないと感じる。
主人公がTwitterのIDをメールアドレスから検索できることを知らなかったとは信じられない。それにメールアドレスはいくつでも持てるでしょうに。
大学の就職課には、先に内定した学生が、内定者ボランティアとして就活生の相談に乗る。そこにはその人の名前よりも大きな文字で内定先企業名が書かれているという。そんなことやってるの今の(私立)大学は。
朝井リョウ
1989年、岐阜県生まれ。2012年春早稲田大学文化構想学部卒業。半官半民の会社の営業部員。
2009年、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞受賞。現役大学生作家として注目
その他、『チア男子!!』『星やどりの声』『もういちど生まれる』(直木賞候補)、『少女は卒業しない』などを在学中に刊行。
大学を卒業して就職後、エッセイ集『学生時代にやらなくてもいい20のこと』
二宮拓人 …主人公、大学の劇団プラネット所属、心配性、
神谷光太郎…主人公のルームメイト。明るく人付き合いが良い。バンドのヴォーカル
田名部瑞月…光太郎の元カノ。真面目。大学途中でコロラド州に留学。
小早川理香…高校、大学で留学。ストレートな性格。学級委員女子がそのまま大学生になった感じ。
宮本隆良 …理香の彼氏。アーティスト志向でぶっているので、よそ者扱い。
以上4人とも、御山大学生。
烏丸ギンジ…かつて拓人と御山大の劇団で演出。退学し劇団を主宰。ツイッターでしか多く登場しない。
サワ先輩・・・沢渡、理系院生、内定済、拓人のバイト先の先輩