かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

大統領選直前分析

2004-10-30 13:17:04 | 国際・政治
11月2日の投票日に向けて大統領選は益々ヒートアップしてかつてない大激戦となっている。激戦州のフローパ(FLOHPA:フロリダ・オハイオ・フィラデルフィア3州)に加えウィスコンシン、ハワイ等5州の支持率が拮抗してきて両陣営が運動を強化したと報じられた。かつてない多くの人達が今回の大統領選に参加し国中が盛り上がっている。一方で選挙戦があまりに白熱化して政策より個人攻撃、揚げ足取り、根拠のない非難が増え、フェアでないと考える選挙民が3割以上に増えてきている。大統領選ウォッチャーとして、選挙4日前になった現時点での私の見方を整理しておく。

主要な争点はイラク戦争、対テロ戦争と減税・最低賃金・雇用等の国内問題だが、無党派層の票を狙って中絶・同性婚等の個人の信条や宗教観の論争を持ち込み、更に激戦州のマイノリティ対応にフォーカスし、争点が矮小化してきた。激戦州は大都市と農業州の間にあり価値観のぶつかるところである。一方でカリフォルニアやテキサスの大票田は情勢が決定的なので選挙運動が全くない空白地帯となっている。このような政治的地域対立の構造が固定化してきた。前回は激戦州フロリダの540票差で大統領が決まった。

今回も両党員内の支持が非常に堅い為、最終的に大統領を決めるのは激戦州の三集団、1)黒人、ヒスパニックのマイノリティ、2)新選挙人となる若者、3)ラルフ・ネーダ効果と天候である。今回これらの人達の選挙人登録がかつてないペースで増えたと報告されている。フロリダ州だけで選挙人が前回より150万人も増えており情勢判断は混沌としている。黒人は前回公平に選挙が行われたらブッシュは当選しなかったと不満に思っている。ヒスパニックは総人口の1/3(1/3は未成年、1/3は不法滞在者)しか登録せず、70%が投票しても全体の2割強にしかならないので、圧倒的に影響するのは次回からと見ている。携帯電話しか保有してない若者が非常に多く固定電話ベースの世論調査にならないので、私の直感は若者の票が決定的な役割を果すだろうと見ている。ネーダがいなければケリーの勝利は間違いないと思うが、民主党陣営から陰に陽に圧力を受けてネーダは反発、意地でも降りないだろう。

著名なノンフィクション作家のデイビッド・ハルバーシュタム氏はNHKのインタビューでこの選挙を生涯で最も重要な選挙であるとし、次のように語っている。「従来は経済がテーマだったが、今回は冷戦後の国のあり方と9・11後の自ら制御できない不安への対処が問われ、最も基本的なところでビジョンが対立している。生き方・価値観という精神的な基盤を問う選挙になり、国民は第2の南北戦争のようにお互いに傷つけている。ケリーは戦争反対と兵士支援を微妙に使い分け苦戦していたが、最近の情勢変化で盛り返した。」 

政策を厳密に評価すると、従来の共和党と民主党の主張が逆転したかに見える。A.サリバン氏は、ブッシュはケネディ張りの民主主義追求外交、宗教観に基づいた大きい政府が内政の基本である。ケリーはパウエル国務長官・ブッシュ父のいわゆる保守派外交、内政はクリントン政権の中道スタイルと説明している。民主党リベラルはケリーの保守的傾斜に若干不安を持っていると言う声がある。政策面で共和党員のブッシュ支持は80%と非常に高く、民主党員のケリー支持は40%と言われている。もっと根本的なところで、かつては大統領が誰であろうと基本シナリオとしての冷戦構造の枠組み下での国家戦略があった。現在はそれに替わる長期的な国家戦略(私はグローバル資本主義の枠組みであると思う)がない。中印の急成長を織り込み、グローバルマネーの7割以上を吸上げる構造(貿易赤字)と国内の団塊世代の引退に対応する長期経済計画、テロのグローバル化に対応した軍と諜報組織の展開と各国との連携の再構築が欠けている。

実際のところ、米国の多くの識者はもっと身近なところで心配している。どちらでもいいから決定的な選挙結果で終わり、混乱なく11月4日に大統領が決まって欲しいと考えている。前回のように1ヶ月も大統領が決まらず最後に最高裁が裁定する事になってはならないと祈っている。東海岸の票が開き、FLOHPA3州の出口調査でどちらかが大差で勝てばその日のうちに勝負は決する。大差がつかないと不在投票や軍人投票が数日かけて集計される。各州の結果が確定し、選挙人が同数になると議会の投票になるので自動的にブッシュの勝ちとなる。しかし結果が僅差の場合、結果確定とはいかず前回のように訴訟合戦が起こる。今回、フロリダに3000人、全米で2万人の弁護士が対応を準備していると言う。次元は低いが心配する理由は十分理解できる。

しかし本当の困難はこの後来ると思われる。国民は価値観をかけた深刻な対立で二分された後、新大統領は反対した49%とどう向き合っていくか手腕が問われる。上述したように両陣営の政策に大きな差があるわけではなく共通点もあり、相手候補の政策を取り入れる現実的な対応が予想される。ケリーの当選を市場はマイナスと捉えているが、既にその可能性をある程度織り込んだ相場になっていると見られ大きな影響はないと(期待を込めて)予測している。むしろ、今回かつてない数の若者、マイノリティ、無関心派が選挙戦に参加し、小泉政権が生まれた時の熱気を感じる。このエネルギーが次の4年をより良いものにすると言う楽観的な期待で結果を見まもりたい。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする