かぶれの世界(新)

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世界国家の幻想

2006-04-24 22:29:15 | 国際・政治

グローバリゼーションの進展とそれが与える影響をテーマにしたトピックについて色々な角度から見た私の考え方を紹介してきた。今月22日QMSSさんが書かれた「国際関係論:基本の基本」http://diary.jp.aol.com/b2rpmeyzkchp/492.htmlは触発されるものがある。私が追ってきたグローバリゼーションと共通するものがあり、若干こじつけの感はあるが論じてみる。これは反対とか賛成の議論ではない。

グローバリゼーションは市場原理主義に基づく世界規模の経済行為で世界中の人々の生活に影響を与えなお進行中である。国内なら組合等の利益団体が民主主義的政治プロセスにより職を守りセーフティネットを作り助けてくれるが、国境を越えた瞬間事態は変化する。国連もIMFWTO等90余りの国際機関の誰も雇用を助けてくれない。国連など全く役に立たず国対国の対決になる。世界国家は無いに等しい。その点ではQMSSさんの言うアナーキー状態だと思う。

グローバリゼーション自体にはイデオロギーが無い純粋な経済行為だが、時に「国内」民主主義と「世界」市場資本主義がセットになって相対立するものとして語られる。欧州大陸では民衆はグローバリゼーションを恐れEU憲法にノンを突きつけ、CPEを葬った。

民主主義国においては民主主義(政治システム)と市場資本主義(経済システム)は基本的なもので他の何とも取り替えることが出来ない。両者の緊張関係に大いなる真実があるからだ。しかし、正真正銘の世界国家は存在しないし、いつ実現するかわからないとRダールはいう。つまり世界はアナーキーだと言う。

だが議論は必ずしもオール・オア・ナッシングではない、適切な制度が存在すれば民主主義下で無くとも90%まで市場経済は達成できるとJHハロウェルは説いている。榊原英資氏などの経済学者やエコノミストはもっと極端で、イデオロギー(人の心)を軽視し制度的に中国は既に十分資本主義国であるという。それも一理で、冷戦終結までは民主主義国かどうかは一かゼロか(西か東か)の議論だったが、現代中国は限りないグレイゾーンの中にいるように思える。

現代民主主義成立の根拠は経済成長による分厚い中流階級の成立により、彼らの意見を政治決定に反映させるプロセスが必要になった背景がある。それが必要かつ十分条件かは既に2-3億の中流階級が生まれたといわれる中国がまもなく実験結果を出してくれるはずだ。今のところ最下層にいる農民が反乱しているが、大半の中流階級はまだ生活をエンジョイするのに忙しい。

ダールは存在しないといったが、「グレイ」な世界国家が存在するという仮定が成り立つかもしれないと私は思う。元々民主主義の思想はこの世に完全なものは無い、より良き物に向かって変えていくやり直しの効くシステムだ。近い将来、米中2大国の影響力の度合いにより灰色の濃さが異なるだろう。この議論の延長に「灰色のアナーキー」が存在するというのが私の仮説である。

米中首脳会談は総論だけで殆ど中身の無い儀式だった。「責任ある大国」を中国に求めたのはもう少し白い灰色になれというメッセージだった。しかし、胡錦濤主席は休む間も無くサウディ・アラビア訪問、更にナイジェリア訪問予定で石油確保が彼の最大優先事項であることが返事だった。好ましくない灰色、はっきり言うと現実の世界国家は限りなく幻想というべきかも知れない。

ここまで能書きを言っておいて私はQMSSさんに同意する。古森義久氏によれば日本の戦後の歴史は世界的にユニークである。戦後の日本では、国にとっても、人間集団にとっても、いちばん貴重なのは平和であると、教えられてきた。その平和絶対優先に少しでも疑義を呈せば、「軍国主義者」というような糾弾を即座に受けた。「平和」は「平和」でも、独立や自由がない場合にはどうするのか、というような議論はタブーだった。(抜粋)

「国家や民族、社会にとって平和より大切なものが存在する」という考え方は犯罪的とされてきた。世界はその日本的な平和至上主義とはまるで正反対の考えをとる人たちだけである。一体何処の国のために働いているのか分からない親米派とか親中派の外交やメディアでなく、常に国益を第一に主張する親日本派XXでなければならない。

現在中国は明らかにアナーキーの世界で外交をやっている。メディアはある時は遅れをとったと言い、ある時は人権を言い座標軸の原点が動いている。しかし、守るべき我国の原点は不可分である政治システムと経済システムの両方でなければならないと私は考える。貿易や資源のためだけに積み重ねてきた国の誇りを売るわけには行かない。■

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