日本中がWBC優勝の快挙で沸いていたとき、米国は3月の狂騒(March Madness)といって全米大学バスケットボールに熱中していた。同じ時ヘッジファンドの世界では3月業績が予想以上に好調で盛り上がっていたと11日CNN Moneyは報じた。第一四半期の利益は3.26%から5.87%と堅調だった。
ヘッジファンドは株式市場のような公開市場で取引されるわけでない私的なもので、業績は投資家にのみ報告され、リアルタイムで全体像を追いかけることは不可能に近い。しかし、グローバルな余剰資金が集まり世界中の最もホットな領域に投資される。その総額は1.3兆ドルに上りグローバリゼーション進展に伴い2010年には10兆ドルにまで膨れ上がる可能性もあるといわれている。その動向を知ることは世界の経済動向の前衛を感じ取れる、1Qの業績は悪くないシグナルだ。
Money、HFNとも3月の好業績は好調なエネルギー、テクノロジー市場、エマージング(いわゆるBRICs)市場、企業買収(M&A)領域、アジア投資が貢献したと分析している。第一四半期の世界経済が概して好調だったということだ。アジア投資は日本市場が主要な貢献をしたと報告されており、日本の景気回復が本物になってきたことがここでも証明されたといえる。
昨年ヘッジファンドはGMショックなどのせいで3月と10月に大穴を明け、年末の追い上げも届かず年間を通じて取り戻せないところも出た。高い手数料を払う値打ちが無いと酷評されたファンドも続出、未熟なマネージャが槍玉に上がった。1Qの好業績でほっとしているかと思いきやどうもそうでもないらしい。
勝者はファンドオブファンド(優良なヘッジファンドをある比率(戦略)で売り買いして最大の利益を得るファンド)だったとCNNは報じている。ヘッジファンド数は2004年に1400、2005年に2000増え(850が消滅)、現在8500存在するといわれる。40%が過去2年間に生まれたもので、2001年から資金量4倍増、ファンド数5倍増という激烈な競争環境にある。
しかし、3月の狂騒でベスト4にシード校が1校も残らなかったように(日本ならさしずめWBCのベスト4に日本、韓国、キューバが残ったようにというべきか)、ヘッジファンドの勝者はニューヨークやロンドンの著名なファンドは一つも無く、田舎にある聞いたことも無いブランドのファンドだったとHFNは報じている。
ブートル氏(ベストセラー「デフレの恐怖」の著者)はヘッジファンドの真の優秀なマネージャ以外は全員仕事をさせるなと極論を言っているが、ヘッジファンドはそういう性格がある。同じ意味で優秀な人材が世界金融の中心ニューヨークから離れても資金が付いてきて結果を出したということではないかと私は推測する。どっちにしても2006年は少なくとも半ばまでは好調な世界経済が続くサインが出たと思っている。■