沢穂希が女子サッカーのFIFA年間最優秀選手、佐々木監督が同じく最優秀監督に選ばれたという。女子サッカーにもバロンドールがあることは知らなかったが、サッカーファンの一人としてメッシの横に並ぶ沢さんの写真を見て「凄いこと」だと思った。世界の女子サッカーを変えたといわれるなでしこジャパンの監督である佐々木氏の受賞も当然という気がする。
今の時期は、振り返ってこの1年を特徴付けた人を選ぶイベントが続々と予定されている。その中で注目したのは、雑誌Timeが選ぶPerson of the Year だ。 2011年はThe Protesterが選ばれた。日本語訳すると「抗議する人」だが、単数形だから具体的な誰かを指すのではなく抽象的な意味合いがあるように感じる。
つまり、アラブの春で独裁体制を崩壊させ、中ロの汚職や腐敗に対する反体制の声を上げた民衆、格差是正を求めて立ち上がり世界に広がったWS占拠デモ、財政危機に陥った欧州諸国で起こった政治家不信のデモなど、世界各国で体制を問わず民衆の抗議行動が噴出し政治を動かした。既成体制に対して「抗議する人」が主役の年だったというわけだ。
だが、私にはいまいちピンと来ない。日本はまだまだ豊かだ。「抗議する人」は日本を除いて選ばれた人達のことだ。日本人社会は元々個人が突出して活動や組織全体を特徴付けしない、寧ろそういうことを嫌う「出る釘は打たれる」傾向の強い社会だ。海外から見ると顔が見えないという。それが原因で政治家や企業トップのリーダーシップの欠如のように見做されることもある。
だが、顔が見えないと大きなことが出来ないかというと決してそんなことはない。今でも世界第3位の経済力を誇り、すぐれた科学技術で世界に貢献している。特に2011年は東日本大震災に見舞われ、直接の被災者のみならず多くのボランティアが世界にお手本を示した。政治の迷走とかマイナス面ばかりに目を向けるが、実際その何倍もプラス面があることを再認識すべきだ。
被災者は困難なときにも秩序を失わず思いやりと優しさを保った。全国から続々とボランティアが集結して復興を助けた。寸断されたサプライチェーンは驚くべき速度で回復し、色々批判派あるが未曾有の原発事故でも死者一人出さず、深刻な被爆も報告されてない。こんなことが世界の他の国で可能だったろうか。いまだ復旧の進まないハイチと比べなくとも、日本人は凄いと思う。
こういう人達を2011年の人として私は選びたい。だが「抗議する人」風に特徴付けて名前を付けるとしたら、どういえばいいだろうか。これが又極めて日本的で、一言でピッタリ来る言葉がない。最近流行の言葉で言えば、これが「クール・ジャパン」ということかもしれない。■