かぶれの世界(新)

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西海岸の偽寅さん

2014-05-05 23:53:06 | 日記・エッセイ・コラム

 映画の寅さんは惚れっぽく美人に弱い。普段ならフラれるというより対象にもならない。だが、たまにシナリオ作家の筆が滑って、マドンナに愛を告白させると寅さんは腰砕けになり旅に出る、これが定番の「フラれの寅さん」だ。こういう色っぽい話にとんと縁のない私だが、実は90年代半ばに米国に住んだ時、寅さんみたいな情けない経験が何度かある。

 米国に赴任した時は相当に身構えた。当時、日本企業の米国工場でヌード写真を掲載した日本の週刊誌を回し読みしたところを現地女子社員に見とがめられ、セクハラで訴えられるといった当時の文化の違いに気を付けるよう赴任前教育を受けていた。だが、自他ともに認める助平オヤジの私は1年も経つと女友達の一人や二人欲しくなった。寅さんと同じで四角い顔のちんちくりんを省みずにだ。

 最初は初めて仕事以外で懇意になった子連れのシングルママのカイロプラクティシャン(マッサージ師)。毎週末にシアトル郊外の診療所でカイロプラクティスを受けていたが、ある時診療所の予約が取れず彼女の自宅に来てくれと電話があった。少し心が波立った。施術が終わったあとぎこちない会話を交わしてそそくさと帰った。それ以来自意識過剰になった私と彼女の関係が何となくギクシャクした感じになり、暫くして彼女はNZに旅立って行った。 

 次は何人目かの秘書だった。私の秘書は一度も自分で選んだことは無く、何時も人事スタッフにあてがわれ、常にリストラの対象になったが私は気にしなかった。この女性は既婚者で秘書の教育を受けてなかったが性格が良く仲良くなって自宅に招かれた。音楽家のご主人にも紹介され楽しいパーティを過ごした。親密になってお返しに彼女をディナーに誘った後駐車場でお別れのハグをした時、彼女に「私結婚してるのよ」と言い訳するように言われて返す言葉がなかった。

 最後が大本命、フランス系米人の人事マネージャだった。私は工場移転後サクラメントに引っ越し、彼女はシアトルに残り定期的にサクラメントに出張して来て移転した従業員のフォロウをしてくれた。ある時、ねぎらいを兼ねて彼女を郊外の洒落たレストランに誘い楽しいディナーを一緒した。翌朝スタッフと廊下で立ち話をしている時彼女が通り掛かり、私が普通におはようと言うと彼女がハグをしてディナーのお礼を言った。私は皆の前でハグされて狼狽し、ぎこちなくハグを返した。彼女は私が迷惑していると敏感に感じ取ったのだろう、それっきりになった。とんだ偽寅さんだった。■

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