今回は多くの専門家が高く評価した「自由市場の終焉」(Iブレマー)の読書をお勧めする。私が勧めなくとも既に欧米で広く読まれ評価の定まった書だ。中国の国家資本主義の台頭と米国の相対的停滞で自由市場資本主義が挑戦を受けてどう生き残るか、私が知る限り最も高い目線で論じられている。種々の政治経済書を読む時の座標軸として位置づけられる。
次に「格差社会論はウソである」(松田悦佐)と「バブルは10年に一度やってくる」(藤田勉)を紹介したい。両書のテーマは異なるものの、ともに客観的なデータをベースにしながら前者は楽観的な極論(!?)を展開し、後者は逆に教科書的公平さをもって経済事象を解明する。全く異なるアプローチながら真理を求める姿勢を感じる。
(2.5)2格差社会論はウソである 松田悦佐 2009 PHP 広範なデータを駆使してマスコミや専門家などの知識人が視野狭窄の主張する我が国の問題を否定する。日本人の世界一高い幸福要求水準を満たすために世界一の課題に取り込んでおり悲観論は無用と説く。我が国の知識人と大衆の間の知的能力格差が少なく、若者独自の文化を作る唯一の国、伝統的日本企業が新世界を作ると予測する。
(2.0)L世界経済危機は終わった 竹森俊平 2014 日本経済新聞 本書の題名と著者を期待して読み始めたが、途中から延々と経済学のうんちくを読む羽目になったと気付いた。MIT経済学部が輩出したノーベル賞受賞経済学者のケインズ人脈の紹介、続いてシカゴ大学系のフリードマンのマネタリスト人脈に経済危機を語らせている。技術系の私には理解不能だが、今回の経済危機はケインズ学の貢献で終わりそうだということのようだ。
(3.0-)L自由市場の終焉 Iブレマー 2011 日本経済新聞 自由市場資本主義が中ロに代表される国家資本主義の急成長を受けている状況を解き明かし、国家資本主義は政治目標の達成を最優先にするがために国同志の連携が出来ないと説く。その上で自由市場資本主義が何をすべきか対処法を示した佳作。
(2.0)Lリーマン・ショック5年目の真実 2014 日本経済新聞 リーマンショックが勃発時の金融機関や政府当局の動きと救済劇、日欧や新興国への危機の波及、危機後の政府や企業に刻まれた後遺症等を、その時々の当事者のインタビューを含めて描いたもの。あらゆる側面から追及しているので踏み込み不足なのは否めず物足りないが、ポイントはついている。
(2.0)Lグローバリズムが世界を滅ぼす Eトッド他 2014 文春新書 藤井・柴山・中野・堀の共著者が国際的に著名な学者Eトッド、Hチャンの名前を使って反グローバリズムを説く。グローバリズムが経済危機・格差拡大・社会崩壊の原因というが、読んでいて上記6人の考え方は同じではない(健康的な状態)ことが分かり面白い。根拠のないデータ誤用やこじつけ論が多いように私には感じるが、それを分かった上で読むのも面白い。
(2.5+)2バブルは10年に一度やって来る 藤田勉 2013 東洋経済 バブルと危機が繰り返し、何故防げないか歴史と理論を、慶応大学の教科書らしく分かり易く経済学的に公平で漏れなく諸説を網羅して解説している。リーマンショックの主因を世界の中央銀行による過度な金融緩和によってバブルが発生し崩壊したと説いたのは私には新鮮だった。
今年最後の読書録だが、実は今月はまだ1冊も読んでいない。読みたいと思って手に入れた本は何冊もあるのだが本棚に眠ったままだ。今年、たったの32冊しか読んでいないことになる。30代に入って年間100冊読破を目標にやって来たが、今年はこの40年弱で最少読の年になってしまった。来年も自宅の建て替えなど落ち着かない時が続くが、先ずは50冊読破を目標にしたい。■
凡例:
(0):読む価値なし (1)読んで益は無い (2):読んで損は無い
(3):お勧め、得るもの多い (4):名著です (5):人生観が変わった
0.5:中間の評価、例えば1.5は<暇なら読んだら良い>と<読んで損はない>の中間
-/+:数値で表した評価より「やや低い」、又は「やや高い」評価です。
2: 古本屋で手に入れた本
L: 図書館で借りた本
新: 「定価」で買った本
次に「格差社会論はウソである」(松田悦佐)と「バブルは10年に一度やってくる」(藤田勉)を紹介したい。両書のテーマは異なるものの、ともに客観的なデータをベースにしながら前者は楽観的な極論(!?)を展開し、後者は逆に教科書的公平さをもって経済事象を解明する。全く異なるアプローチながら真理を求める姿勢を感じる。
(2.5)2格差社会論はウソである 松田悦佐 2009 PHP 広範なデータを駆使してマスコミや専門家などの知識人が視野狭窄の主張する我が国の問題を否定する。日本人の世界一高い幸福要求水準を満たすために世界一の課題に取り込んでおり悲観論は無用と説く。我が国の知識人と大衆の間の知的能力格差が少なく、若者独自の文化を作る唯一の国、伝統的日本企業が新世界を作ると予測する。
(2.0)L世界経済危機は終わった 竹森俊平 2014 日本経済新聞 本書の題名と著者を期待して読み始めたが、途中から延々と経済学のうんちくを読む羽目になったと気付いた。MIT経済学部が輩出したノーベル賞受賞経済学者のケインズ人脈の紹介、続いてシカゴ大学系のフリードマンのマネタリスト人脈に経済危機を語らせている。技術系の私には理解不能だが、今回の経済危機はケインズ学の貢献で終わりそうだということのようだ。
(3.0-)L自由市場の終焉 Iブレマー 2011 日本経済新聞 自由市場資本主義が中ロに代表される国家資本主義の急成長を受けている状況を解き明かし、国家資本主義は政治目標の達成を最優先にするがために国同志の連携が出来ないと説く。その上で自由市場資本主義が何をすべきか対処法を示した佳作。
(2.0)Lリーマン・ショック5年目の真実 2014 日本経済新聞 リーマンショックが勃発時の金融機関や政府当局の動きと救済劇、日欧や新興国への危機の波及、危機後の政府や企業に刻まれた後遺症等を、その時々の当事者のインタビューを含めて描いたもの。あらゆる側面から追及しているので踏み込み不足なのは否めず物足りないが、ポイントはついている。
(2.0)Lグローバリズムが世界を滅ぼす Eトッド他 2014 文春新書 藤井・柴山・中野・堀の共著者が国際的に著名な学者Eトッド、Hチャンの名前を使って反グローバリズムを説く。グローバリズムが経済危機・格差拡大・社会崩壊の原因というが、読んでいて上記6人の考え方は同じではない(健康的な状態)ことが分かり面白い。根拠のないデータ誤用やこじつけ論が多いように私には感じるが、それを分かった上で読むのも面白い。
(2.5+)2バブルは10年に一度やって来る 藤田勉 2013 東洋経済 バブルと危機が繰り返し、何故防げないか歴史と理論を、慶応大学の教科書らしく分かり易く経済学的に公平で漏れなく諸説を網羅して解説している。リーマンショックの主因を世界の中央銀行による過度な金融緩和によってバブルが発生し崩壊したと説いたのは私には新鮮だった。
今年最後の読書録だが、実は今月はまだ1冊も読んでいない。読みたいと思って手に入れた本は何冊もあるのだが本棚に眠ったままだ。今年、たったの32冊しか読んでいないことになる。30代に入って年間100冊読破を目標にやって来たが、今年はこの40年弱で最少読の年になってしまった。来年も自宅の建て替えなど落ち着かない時が続くが、先ずは50冊読破を目標にしたい。■
凡例:
(0):読む価値なし (1)読んで益は無い (2):読んで損は無い
(3):お勧め、得るもの多い (4):名著です (5):人生観が変わった
0.5:中間の評価、例えば1.5は<暇なら読んだら良い>と<読んで損はない>の中間
-/+:数値で表した評価より「やや低い」、又は「やや高い」評価です。
2: 古本屋で手に入れた本
L: 図書館で借りた本
新: 「定価」で買った本