かぶれの世界(新)

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魔の時間

2020-03-02 18:50:29 | 日記・エッセイ・コラム
私の魔の時間が夜の8時頃から10時過ぎまで続く。毎日ではない。週1から週3程度の割合で魔の時間が来る。我が家の優しいジキルがハイドに豹変するのだ。家内が豹変する薬はお酒だ。通常は夕方日本酒をチビリチビリやりながら夕食を作る。夕食時はワインかシャンパン、缶ビールを飲む。夕食時は私もお相伴するか安価な焼酎のお湯割りを飲み、たまに息子も一口飲む。二人とも下戸なので食事時の飲酒で終わる。

この頃はまだ楽しく会話を交わす優しいジキルだ。家内はその後スコッチやバーボンのオンザロック、若しくは少しだけ水割りにして飲む。特にスモーキーな山崎が好きだが、最近は入手難で他のウィスキーや特別な焼酎をチーズや干し魚を肴に美味しそうに飲む。一言でいえば酒好きだ。

通常はこのまま何事もなく一緒にテレビを見て、私は11時頃までにベッドに入る。ところがたまに怒り狂う。我々二人の耳が遠くなり、しかも私の喋る言葉がボソボソと不明確で、聞き返している間に彼女は激高してジキルになってしまう。聞き返すと彼女は非難されたと誤解して大声で怒鳴り返す、というのがよくあるパターンだ。

普段は優しくてよく気が利くカミさんなのだが、一旦ジキルになると理性的な会話は不可能だ。私は捨て台詞を言って寝室に逃避する。多分、これは私側のストーリーで彼女には彼女の訳があるかもと思う。というのは45年近く夫婦だったが、子育てを含め家庭を彼女に任せた。彼女は一人で良くやったと思うが私は当たり前と思ってた。

その頃でも衝突はあった。だが、ジキル度は軽く頻度も稀だった。孤独な苦労を忘れた訳ではなく、当時の恨みを20-30年経った持ち出して来た。私は私で休みなしで滅茶苦茶働き、海外で意識を失いそうになったり高血圧や不整脈になり死にそうななったことがある。私にもそれを吐き出す機会すらなかったという不満がある。

何れにしてもよく家庭を切り盛りし子供3人を立派に育ててくれた。だが、彼女は自分は報われてないという内に秘めた思いが、アルコールを触媒にして何かのきっかけで暴発していた。私としては一度もアパート暮らしをさせず、何度も海外旅行に連れて行ったりし、それでチャラにして欲しいのだが感謝された記憶はない。

実は別の理由がある。私はサラリーマンとしてはまあまあ成功した方だが、会社のポジションに関係なく質素に生活して欲しいと求め何度か強く反発された。私が相談なく早期退職してから彼女の怒りが強まった気がする。逆に彼女が外に出て働き稼ぎ始め、私も率先して節約し洗濯皿洗いなどを分担し、買い物を申し出て支援した。

だが、自分の稼ぎで好きなお酒を買って飲むようになって急激にジキル頻度が増えた。年令のせいだ。お酒は弱くなったので飲む量は減ったというが、だからこそ少ないお酒でも悪酔いして喧嘩になってしまうと思う。今も変わらずゴミ捨て缶ビン類の量は町内随一だ。彼女の健康は心配だが、酒を止めろと言ってジキルを誘発したくない。

実は彼女にもう勘弁してくれと2週間前に頼み、彼女もある程度理解してくれお酒の量を加減したらしくジキル頻度が減った。私も魔の時間帯に入ると刺激しないように言葉を選び、ジキルになりそうだと10時半ばまでには寝室に移動しベッドにつくようにした。救われるのは朝起きると例外なく優しいハイドに戻っていることだ。

魔の時間を除けば理想的な夫婦に見えるはずだ。昔から夫婦とは割れ鍋に綴じ蓋というではないか。テレビで見る仲のいい夫婦とはいかないが、9割のハイドと1割のジキルなら寧ろ上等ではないだろうか。■
コメント
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