日銀は注目されていた量的金融緩和政策の解除を本日の政策委員会・金融政策決定会合で決めた。3月の解除はないという慎重論が有力だったので、意外に早い解除という見方があるが、私は以下の理由で妥当であると考える。
元来量的緩和政策は民間の資金需要と金融システム不安対策のため、不良債権処理を後押しすることが目的だった。量的緩和政策実施後、日銀の当座預金残高は04年には30-35兆円にまで膨れ上がる異常な状態が続いていた。この結果、銀行は息をつき主要企業は史上最高利益を叩き出すまでに収益性を回復した。
デフレは終っていないと憂慮する声はあるが、そもそもデフレはグローバリゼーションの進展に伴う構造的なもので、今後もグローバリゼーション下の世界が提供する最安値で物価が安定的に推移すると考える。中国の供給過剰など今後もデフレ要因は強く、その中で日本経済が成長する力強さが回復したと判断したのである。
量的緩和は民間資金需要を満たす目的から外れ、低金利資金が海外に流れ(所謂円キャリー)によりグローバルマネーの供給元になった。一方、預金者の逸失利益は01/3の量的緩和から05/9までに20兆円(第一生命研究所)に達し、個人マネーの海外流出が続いた。
家計の金融資産1453兆7千億円(日銀試算05/09)のうちリスク資産(株式・信託投資・外貨預金・対外証券投資)が年間で23%増加し153兆円となった。外貨建て投信の純資産残高20兆円弱(量的緩和で6倍増になった)、金融資産に占めるリスク資産比率が10.5%となり、安定志向から投資に向け始めた。
3月の量的緩和解除が適切であると考えるのは、物価上昇だけでなく余剰資金が株式や不動産に向かいバブル化しつつあるからである。現在市中に出回っている資金量はバブル時代より20-30%多いと報じられており、不健全な領域へ資金が流れる恐れが無いとは言えないのである。
株式市場は昨日まで量的緩和解除を恐れ軟調に推移していたが、ゼロ金利は当面継続すると発表されたのを受け400円余り上げ落ち着きを取り戻したように感じる。今後どう展開するか専門家の詳細な検討を見たいが、この決定により日銀は市場との正常な形で対話が出来るようになったといえる。
適切な対話の実行は日本経済の健全な成長に貢献すると考える。竹中総務相が言うように今後の日本経済について日銀は自ら大きな責任を抱えた。その通りだが、決して間違った決定をした訳では無いと私は考える。■
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