一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

十一たび大野教室に行く(前編)・クワガタに指を挟まれた男

2011-10-17 00:14:51 | 大野教室
2日(日)の午前11時11分、中井広恵女流六段からメールを頂戴した。これは中井女流六段とメル友になったと認識していいのだろうか?
そのメール、けっこうな長文の中に、「今頃、皆さんでNHK杯を見ているのでしょうね」という一節があった。
中井女流六段は、前夜「大野教室」に泊まった私とFuj氏が、そのまま大野教室で、大野八一雄七段とNHK杯を観ていると思っているのだ。
実際はふたりとも帰宅してしまったわけだが、ただこのNHK杯、視聴者向けの解説に加え、毒舌・怪説・裏話・何でもありの大野解説も同時に聴けたら、これはおもしろいことになったはずだ。
私は貴重なチャンスを逃したかもしれない。

午後1時すぎに自宅を出る。2時少し前に大野教室に着き、受講料の3,500円を払った。今月はもう2回目なので、次回お邪魔するときは、2,500円になる。
きょうの生徒は、W氏、Mi氏、ほかに成人男性2人、少年4人だった。
大野七段の指導対局が埋まっているので、私は新聞を読んで一休み。早くも将棋欄が切り抜かれていた。
しばらくして、
「大沢さん、出番だよ」
とW氏が言った。
W氏は臨時の手合い係である。少年のひとりが指導対局を終えたので、私と対局をつけたのだ。後でW氏が話してくれたのだが、一般対局をする場合、私がいると手合いを付けるのに便利なのだそうだ。強くもなく弱くもなく、戦法も適当にレパートリーがある。それで重宝しているらしい。
そんなことを聞かされると、私は毎回大野教室に来なければならなくなるが、さすがにそれはむずかしい。
少年の先手四間飛車に、私は居飛車穴熊に構える。穴熊、それもイビアナである。自ら穴熊に囲うということは、ショックが消え去ったということだ。
私は△3五歩から△3二飛と回る。たまにイビアナを指すときの得意戦法で、かつてLPSA金曜サロンで、それまでTom氏に4連敗だったのを、この手を用いて完勝し、Tom氏を感心させた覚えがある。
本譜も私の構想どおりの展開となった。と、そこへ植山悦行七段が来る。きのうの時点では、きょうの戦力補強はナシの予定だったが、きょうも生徒が多く、急遽駆り出されたものらしい。
植山七段は、クワガタが入ったカゴを持っていた。なんだか知らないが、これから家で飼うらしい。クワガタをカゴから出して、様子を見ていた。
「大沢クンに話したいことがあるんだよ」
植山七段が改まって言うので何事かと思いきや、植山七段と中井女流六段は、前夜、駐車場からクルマを出そうとしたところ、深夜の12時を過ぎたからか、駐車場のカギが閉まっておりクルマを出せなかったらしい。困ったふたりはW氏に電話をし、彼のクルマで自宅まで送ってもらったという。
そんなことがあったのか…。きのうはみんな、厄日だった。

「イテテテテッ!!」
室内に、植山七段の絶叫がコダマした。クワガタに右手人差し指を挟まれたようだ。
「うるさい」
「静かにしてください」
の声が飛ぶ。ホントにこのオッサン、何しに来たのだ…。
私は快勝。相手の少年は強いが、中盤の折衝で素直に指すときがある。もっと曲線的な指し方を心得るとよい。もちろん棋才はあるので、これからどんどん伸びるだろう。
植山七段に指導対局を請おうと思いきや、Hon氏が来たので、軽い雑談に入る。いま私が最も癒されるのは中井女流六段と話しているときだが、男性ではHon氏である。彼は私の泣きごとを否定せず、いつも私の望む答えを述べてくれる。得がたい友人である。
話がだんだん重いものになってきたので、外へ出て話すことになった。教室の表の道路が簡易喫煙場所になっており、そこでの雑談が楽しいのだ。W氏もそうだが、Hon氏も私も、大野教室の雰囲気が好きで来ているので、指し将棋にこだわってはいない。その意味では、不良生徒といえる。
そこへW氏が来る。今度は3人でおしゃべり。やがて植山七段が来る。だんだん豪華になってきた。
「痛みはどうですか」
「さっきよりは治まってきたよ。イテテ…」
まったく、棋士が右手の人差し指を負傷するとは、何たる不注意か。
ついに大野七段も現れ、どこが将棋教室だか分からなくなった。大野七段が、3時休みに解く、詰将棋プリントをくださる。
「す、すみません! すぐに解きます」
と、私は教室に戻る。
3時休み後は、植山七段との角落ち戦である。私は三間飛車に構えた。前日、「大沢さんは飛車を振ってくれない」とつぶやかれたので、きょうは振ってみたのだ。が、薄い1筋を狙って▲7九角と引いたのがマズかった。
すかさず△6四歩と動かれ、▲6八飛とせざるを得ないようでは、作戦の失敗である。
数手進み、私は角損の攻めで飛車を入手し敵陣に下ろしたが、持ち駒が銀1枚では指し切り筋がはっきりした。
以後は正確に受けられて負け。プロはこういったところは間違えない。右手人差し指を負傷しても、強いものは強いのだ。
私が投了を告げると、植山七段は、うん…といった。
植山七段は完勝しても、決して驕らない。むずかしい将棋だったと、いつも下手の顔を立ててくれる。
しかし…これで植山七段には、角落ちで4勝8敗となった。植山七段は三分の力で指している。明らかに緩めているのが分かる。それでこの戦績は、下手がだらしない、というべきだろう。もっと精進しなければ、と思った。
(つづく)
コメント (4)
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