一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

佐藤一族

2021-03-05 00:09:14 | 将棋雑記
日本でいちばん多い名字は「佐藤」である。将棋界もそうで、現在現役棋士の佐藤姓は6名に上る。退役者も含めるともっと多くなる。では、「佐藤一族」を記してみよう。

まずは佐藤康光九段(1969~)。日本将棋連盟の現会長で、元竜王・元名人の、押しも押されもせぬ佐藤界の顔だ。齢51だがA級順位戦では早々と残留を決め、その変態将棋にいささかの翳りもない。
次に佐藤天彦九段(1988~)。天彦九段は「貴族」と呼ばれるほど私生活が華麗だ。将棋は実はオシャレなゲームなんじゃないか、と世間に錯覚させた功績は大きい。ただし対局時は、「アンタ、具合が悪いんじゃないか?」と訝るほど体をふたつに折って苦悶する。
個人的には、佐藤といえば佐藤大五郎九段(1936~2010)である。「マキ割り流」の異名があり、その豪快な手つきと指し手には多くのファンがいた。私が最初に買った著書が大五郎九段の「やさしい詰将棋」だったこともあり、私もファンだった。
「佐藤九段」はもうひとり、佐藤義則九段(1949~)がいる。かつて阪急ブレーブスに同姓同名のピッチャーがいたがそれはともかく、義則九段はパイプが趣味で、ゆったりと煙をくゆらせる姿が絵になった。
順位戦は最高がB級2組だったが、大御所や若手強豪によく勝った。谷川浩司九段が五段だったころ対戦し、義則九段が相矢倉の将棋で快勝した。将棋界は義則九段が最強じゃないか? と思ったものだ。
現役棋士に戻り、佐藤紳哉七段(1977~)。紳哉七段はデビュー時、「歌って踊れる棋士を目指します」とスピーチしたが、若くしてハゲる、という悲劇に見舞われた。だが紳哉七段はカツラを巧みに使い、それを笑いに変えた。歌って踊れるはともかく、紳哉七段は棋界一のエンターテイナーになったのである。
佐藤和俊七段(1978~)は、2003年10月のデビューだが、順位戦のC級1組昇級には15年を要した。だが竜王戦では昇級を続け、2020年に1組昇級を決めた。
和俊七段は真面目一辺倒という雰囲気だが、将棋は振り飛車から居飛車雁木まで何でも指し、変幻自在なところがある。
佐藤秀司八段(1967~)は中原誠十六世名人の一番弟子である。その体格からか、容易に負けない将棋という印象がある。
昨年の王位戦ではリーグ入りし、周りをアッと言わせた。順位戦はB級2組まで昇っているが、昇段はすべて勝星によるもの。このまま勝星で九段まで昇ってほしい。
佐藤慎一五段(1982~)は、天野貴元・元奨励会三段の名著「オール・イン 実録・奨励会三段リーグ」に出てくる。天野三段は三段リーグで自信を持って指していたが、自分より弱いと見ていた慎一三段が四段昇段したことに大きな衝撃を受ける。それが三段リーグなのだ。
慎一五段は、「シモキタ名人戦」会場で拝見したことがある。指導対局では対局者に丁寧に指導をし、その真摯な姿に感銘を受けた。
慎一五段は現在C級2組で降級点2の3勝6敗である。最終戦はきょう5日で、相手は昇級が懸かる大橋貴洸六段である(ほかの佐藤姓5名も、3日~5日のいずれかに対局がある)。慎一五段は絶体絶命だが、天国から天野氏も見守っているだろう。頑張ってください。
ほかに引退・物故者としては、佐藤庄平八段(1933~2005)がいる。むかしの将棋の本を見ると、「佐藤庄平」の名前が時々見つかる。現在の将棋界では順位戦から陥落しない限りめったに引退はしないが、庄平八段は指し盛りと思える38歳で引退した。どうも、健康に不安があったようである。順位戦の最高位はB級1組だったから、頑健ならA級に昇っただろう。
佐藤豊六段(1914~2001)もいる。1948年に四段に昇ったが、C級2組から降級したのち、予備リーグ(奨励会)を戦って引退した。
女流棋士では、佐藤寿子(ひさこ)女流1級(1946~)がいる。女流棋界草創期の入会で、1981年の退会。どんな将棋を指したか、まったく知らない。
以上11名だが、佐藤姓ではもうひとり、佐藤健伍準棋士六段(1928~1987)を忘れてはなるまい。
健伍準棋士六段は若き日に三段に昇ったが、四段にはなれず、1966年退会。その後、準棋士(現在の指導棋士)になった。
河口俊彦八段の著書によれば、健伍準棋士六段は、街中で行われる大盤解説の駒操作に定評があった。とくに木村義雄十四世名人とのコンビは絶妙で、名人の解説に合わせて巧みに駒を捌き、これが決め手!という手には、駒音をひときわ大きくし、観戦者を沸かせたという。
健伍準棋士六段は、1987年12月、自宅にてひっそりと亡くなった。いまでいう「孤独死」で、当時は読売新聞に大きく取り上げられ、私はかなり衝撃を受けた。
もし健伍準棋士六段が棋士になっていたら、全く違う人生になっていた。天野氏の例も含め、運命は残酷である。
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