一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(最終手)・最後の最後まで

2012-11-15 00:08:11 | 将棋イベント
午後5時すぎ、上里サービスエリアに着く。私は一局将棋を指し終えた気分だった。
Wカーの面々は着いていたが、Honカーがまだだ。20分ほど遅れて到着。聞くと、途中サービスエリアに寄り、Hon氏が奥さんにお土産を買ったという。
都心側でお土産を買うと、片手間で買ったのではないかと疑われる。地方色の濃い地域で買うお土産にこそ、価値があるらしい。
それはもっともだが、ご苦労なことではある。
上里で夕食の手もあったが、野辺山での昼食が少し遅かった。ここでは休憩に留め、最後の晩餐は高坂サービスエリアで、ということになった。
それはいいが、同乗者のシャッフルはしないのだろうか。誰か、中井広恵女流六段のクルマに乗ってくれないか?
しかしクルマは、6時20分、同じメンバーで出発した。何だか、中井女流六段の負のオーラが凄まじいのだが、気のせいだろうか。
しばらく経つと、旅行の話になった。私は、沖縄旅行はお盆休み、九州旅行はゴールデンウィークを利用すると言うと、大野八一雄七段が意外そうだった。私が年中ヒマそうにしているから、行きたいときに行っていると思っていたらしい。さすがの私も、そこまでヒマではない。2月の北海道旅行だって、週末と建国記念の日を利用しているのだ。
…と、ここまで話して、12月の長崎旅行の話に触れないのは不自然だと思った。しかしここで切り出して中井女流六段を長崎に誘っても、断られるに決まっている。
それまでにも車中で、「長崎の喫茶店のマスターが…」と何度か口にしたが、中井女流六段がノッテくる気配がなかった。これは脈がない証左だ。残念だが、長崎へは私ひとりで行くしかないようだ。
教育委員会の話になった。中井女流六段は2003年9月に蕨市の教育委員に任命され、現在3期目。その活動はハタで見るより激務で、私は、「はあ、それは大変ですね」「お疲れさまです」と、ひたすら低姿勢で相槌を打つ。
すると中井女流六段の機嫌も直ってきたみたいで、中井女流六段が私をチラ見して話す回数が多くなってきた。
最後は朗らかな笑みも戻り、私はほっと胸を撫でおろした。
7時すぎ、高坂サービスエリアに到着。全員がそろい、エリア内のレストランで最後の食事を摂る。激混みだったが、何とか入れた。今回は3つに分かれ、私はW氏、Kun氏と同席となった。
待っている最中、私がKun氏に、きのうの横歩取りの変化の正解手を述べる。
するとW氏が、「大沢さん、やっぱり将棋好きだよね」と苦笑いした。多少誤解はあるが、否定はしない。
注文したホルモン焼定食は美味かった。奥のテーブルではMinamiちゃんが「スカイツリーパフェ」なるものを追加で頼んでいるので、彼女らを残して、私たちはレストランを出た。
お土産コーナーで、信玄もちと、宇都宮餃子を買う。上里では水沢うどんを買ったが、これらはすべて、自分用である。ここが切ないチョンガーの気楽さだ。
まだ時間があるので、何人かでサービスエリアの下り側に回る。上りとは目と鼻の先だ。ここのレストランはすいていて、次回寄ったときの穴場になると思った。しかし次回は遅くとも半年後。いまの私は毎日を生きるのが精一杯で、とても半年先のことを考える余裕はない。
ツリーパフェを完食したMinamiちゃんが戻り、ついに最終ランである。中井カーには大野七段、Minamiちゃん、WカーにはIs氏、Hanaちゃん。HonカーにはKun氏、Kaz氏、Fuj氏、私が乗る。
私たちは中井女流六段、大野七段に改めて挨拶。お二方には今回の合宿でも、たいへんお世話になった。
いつも書いているが、一将棋ファンにすぎない私が、不思議な縁によって合宿に加わらせていただくことは、感謝の一語につきる。その恩を返す術はないが、私はいままでどおり、両棋士を応援するしかない。
3台が出発した。東京(川口)に着いてから、ファミレスで最後のおしゃべりを楽しむかどうかは、運転手のHon氏次第である。しかしHon氏は「(クルマの中で)移動ジョナ研ですね」と笑う。これは川口で解散か。
車内は将棋の話題を中心に、みんなで言いたいことを言ってゲラゲラ笑う。そのうちHon氏が、「ガストに寄って行きましょうか」というので、私たちはもちろん賛成した。
そうと決まって、Hon氏の運転にも力が入る。所沢インターチェンジで高速道路を降り、西川口駅前のガストに寄る。すると、Kaz氏のケータイに、奥さんからメールが入った。
「今どこにいるの?」
Kaz氏は奥さんから、将棋での外出は月に1回にして、と釘を刺されているらしい。Kaz氏は仕事に忙殺され、将棋が唯一の癒しの場なのだ。それを規制するとは何たる嫁かと思う。Kaz氏もガツンと言い返してやればいいのだ。
Kaz氏は、「いま高速を走っている」って書きました、とせめてもの反抗だが、店内に入ると、視線が空をさまよっている。このゴマカシも数十分が限度だ。
Kaz氏はコーヒー1杯を飲んで、すぐに店を後にした。Kaz氏の未来に幸あれ。
残る4人でおしゃべり。私が「将棋バカ」を否定すると、「何で否定する必要があるの?」とKun氏。言われてみればたしかにそうだ。
そのKun氏、自ブログで紹介している棋書を全部購入しているそうで、蔵書は300冊になるという。ちょっとしたライブラリーで、さぞかし壮観だろう。
11時10分ごろ、Kun氏も帰るというので、じゃあこれでお開きにしましょうかと私が言うと、とたんにHon氏の表情が曇った。
Hon氏はきょう、深夜まで外出の許可が下りているのだろう。Hon氏、ギリギリまで私たちとの談笑を楽しみたいのだ。
それは私もそうである。あすからはまた仕事が待っている。現実の世界に戻りたくないのだ。私たちはさらに30分、談笑。それでようやくお開きとなった。
帰りはFuj氏と、京浜東北線に乗る。いろいろあったが、今回も楽しい合宿だった。…と、次の駅が「蕨」なのでビックリした。私たちは大宮方面行きに乗っていたのだ。
私たちは慌てて降り、東京方面行きを待つ。何と、次が上野行きの最終電車だ。横にはFuj氏。時刻は午前0時を回った。この言いようのない虚しさは何だろう、と思った。
(おわり)
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第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(第8手)・中井広恵女流六段の逆襲

2012-11-14 00:27:35 | 将棋イベント
しかし、私が▲1五角と放った手が冴えなかった。それでも私たちが優勢をキープしているようだ。さらに進み、あとは私たちがどう決めるかというところで、中井広恵女流六段が▲5五の銀を、▲5四銀と出た! このタダ捨ては何だ!?
やむない△同金に、私は▲5一竜捨ての王手! △同玉には▲8八角が▲3三に成り、即詰みがあるのだ。
「そんな手がありましたか…」
とKaz氏がつぶやき、▲5一竜の局面で投了。まさに3手一組の名手で、最後の最後になって初めて、私たちふたりがひとつになった気がした。
感想戦では、序盤を重点的に検討した。しかしこれ、私の指し手が疑問手だらけで、呆れた。すでに▲3七銀と上がっているのに▲7八玉と寄ったり、角道を通しておきたいのに▲7七銀と上がったり、▲6六歩と突いて角道を二重に止めたりと、散々。とくに、▲4五同桂の角取りに△1五角と覗かれていたら、明らかに先手ペアが悪かった。
重複するが、横に中井女流六段がいるから、多少疑問手を指しても何とかしてくれるとタカを括っていたのだが、そう簡単にカバーはできないのだ。
でも中井女流六段とのペアは、ちょっとドキドキして、楽しかった。
大野八一雄-Minamiペアは、大野七段がMinamiちゃんを引っ張ったようで、下手の快勝。ほかの対局も順次終わり、1局目は終了。
表ではMinamiちゃん、Hanaちゃんらがボール遊びをしている。それも空が快晴だからである。植山悦行七段には感謝しなければならない。遊戯の原風景を見た気がした。
最終2局目はペアを変える。私はFuj氏と組むことになった。中井女流六段は、推薦によりHon氏と。Hon氏の変態三間飛車穴熊を体験してもらい、その困惑ぶりを私たちが楽しもう、のハラである。
しかし中井女流六段も肝が据わっていて、変態穴熊の指し方を、私たちに聞く。これはおもしろい将棋になると思った。
私たちはW-Kunペアと戦う。これは石田流が予想されるが、もしそう来たら、「棒金で行きましょう(Fuj)」と作戦を立てた。
対局開始。私たちの後手で、W-Kunペアは予想通り▲7五歩。そこで私が早いところ△7二金を決めればよかったのだが、つい△4四歩と指してしまう。
先手は当然▲4六歩。私たちは△5四銀左。私が自分勝手に指したために、棒金をする流れでなくなってしまった。
Fuj氏、スミマセン、と△5二金右。謝るのは私のほうであった。
この将棋、終始むずかしかったが、最後は私たちの勝ち。大野七段は引き続きMinamiちゃんとペアを組み、やはり勝利していた。下手を持った大野七段の弁、「上手は二枚落ちでよく勝てるなあと思いました」は、私などは実感である。
大野七段は引き続き、私たちの感想戦に付き合ってくれた。いつも思うのだが、プロの読みは私たちとは全然違う。お馴染みの局面でもハッとする手順を指摘してくれ、それが大いに参考になるのだった。
中井-Honペアは、変態穴熊は採用しなかったようだ。しかしHon氏、いい記念になったことだろう。
時刻は12時近く。楽しかった信濃わらび山荘も、いよいよチェックアウトである。中井女流六段が管理人さんに挨拶に行くと、将棋盤に揮毫を、の希望である。
中井女流六段は馴れた手つきで揮毫。それは「鏡花水月」であった。

帰りは中井カー、Wカー、Honカーの3台で戻る。現在12人だから、1台あたり4人の乗車となる。中井カーには大野七段、Minamiちゃんが乗車。残るひとりは、私が乗ることになった。誰かひとり棋友がいてくれたらと思うが、贅沢は言えない。
書き遅れたが、今回の合宿では、もうひとつ目的があった。年頭の目標にしていた、「中井女流六段と長崎県の『あんでるせん』に行く」ということである。今年ももう残り2か月。直に誘うなら、この合宿しかない。それには、このクルマの中が最初で最後のチャンスなのだった。
私は助手席に座る。ここは植山悦行七段の指定席で、一般人は遠慮すべきなのだが、まあ、許してもらおう。
まずは、JR最高所の野辺山駅近くにある、蕎麦屋へ向かう。昨年もお邪魔したところだ。道に迷いかけたが、そこは中井女流六段一流のカンで、蕎麦屋には寄り道なしで着いた。
店に入ると、去年の店員さんがいた。中村桃子女流1級似のかわいいコで、1年ぶりの再会?に、感激する。
私は大もりを頼む。蕎麦はしこしこしていて、美味だった。私は観光地の食事は信用しないが、ここの蕎麦は本物である。
離れて座っている中井女流六段に、デザートを頼んだかどうかメールを出すと、「頼みました」の返事が来た。こういう他愛もないメールのやり取りをするのが、本当のメル友なのだろう。
ところでこの店は、ジャムやお菓子のお土産も売っている。見ると、食事を終えたHon氏が、それらを大量に買っていた。もちろん奥さんにである。その顔は真剣そのもの、きのうまでの笑顔はない。それも道理で、ここで奥さんに点数を稼ぐことにより、次回の将棋イベントにも、参加の許可が下りるのだ。
蕎麦屋を出発。途中、ガソリンスタンドに寄る。中井女流六段が缶コーヒーをごちそうしてくれ、ここまではまあ、いい感じだった。ここまでは。
茨城在住のHis氏は、途中帰宅となる。長野新幹線・佐久平駅でHis氏を降ろす。Hisさん、また大野教室やジョナ研で指しましょう。
クルマに戻り、目指すは上里サービスエリアである。私は大野七段に、 Kun氏との横歩取りの将棋で生じた最善手を聞く。すると、変化の▲8四飛には△2五角!を教えられた。なるほど…▲8一飛成には△4七角成で後手十分か。勉強になった。
Minamiちゃんは先ほどから夢の中だ。大野七段もうつらうつらしていたようで、いまはウンともスンとも言わない。
これは…中井女流六段と密室にふたりきり、ともいえる。長崎旅行を切りだすのに絶好のタイミングではないか!
心臓の鼓動が早くなり、私は中井女流六段と当たり障りのない会話をする。それはやがて、観戦記論に移った。私は中井女流六段の話に傾聴していたが、けっこう内容はキツイ。そして聞いているうち、その内容がどうも、私のブログのことをいっているような気がしてきた。いや、絶対そうだ。
私は先の倉敷藤花戦・中井女流六段-矢内理絵子女流四段の一戦で、中井女流六段の指し手をケチョンケチョンにけなしていた。あれをいま、中井女流六段は糾弾しているのだ!
中井女流六段、ときおり笑いも交えながら、ビシビシ言う。その視線は真っ直ぐ前を見据えているが、その目が笑ってないのは明白である。
私も、ああそうですか、とケラケラ笑うが、内心は冷や汗モノである。右の頬は笑っているが、左の頬はみにくく歪むだけだ。
これは長崎行きを誘うどころではない。私は中井女流六段に面と向かって意見されたことがあるから分かる。いまの彼女は、かなりご機嫌ナナメだ!
大野七段が目を覚ましたとしても、この人は中井女流六段のほうにつく。さっきまでは天国に思えたこの「走る密室」が、いまは逃げようのない「恐怖の密室」に変わっていることに私は驚愕し、心臓が縮み上がる思いだった。
休憩予定の上里サービスエリアまでは、まだ数キロある。こんな針のムシロ状態があと数十分続くのかと思うと、目の前が暗くなった。
(つづく)
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第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(第7手)・中井広恵女流六段とペアを組む

2012-11-13 00:25:31 | 将棋イベント
11月4日、3日目の朝である。早くも将棋合宿最終日。楽しい時間はときが経つのが早い。
大広間に出ると、His氏とHanaちゃんが将棋を指していた。よくある光景だが、改めて圧倒される。
外に出ると、きょうも快晴である。合宿の雨男は、植山悦行七段と断定していいと思う。
午前7時すぎ、食堂に入るが、調理のおばちゃんから、食事は7時半からと告げられた。きのう中井広恵女流六段は「朝食は7時から」と言って平気で食べていたが、やはりあれは間違いだったのだ。
私は7時半に出直し、最後の朝食を摂る。ふだんの私は牛乳1杯だが、旅では朝食がしっかり摂れる。これが不思議だ。
Sat氏、N氏の両名はきょう用事があり、今朝6時すぎに山荘を発ったという。結局ふたりが山荘に居たのは丸1日で、Kun氏やKaz以上にタイトだ。ふたりとも立派な「将棋バカ」であった。
食後、大野八一雄七段が中井女流六段に肩揉みをしている。しばし眺めていたら、大野七段が私にバトンタッチしてくれた。光栄だが、わたくしめでいいんでしょうか。
最初は恐る恐る揉んでいたが、それでは力が弱すぎたようだ。それでギュウギュウ揉んでみたが、ものの3分でこちらの手が疲れてしまった。
私は大野七段にバトンを返す。肩揉みもラクではないのだ。
ところで昨夜2時すぎ、中井女流六段やW氏のケータイに、植山七段から電話がかかっていたという。ずいぶん夜更けだが、その時間我々が起きているとのヨミだったのだろう。
今朝連絡が取れたのだが、なんと植山七段の泊まったホテルでボヤ騒ぎがあり、植山七段も叩き起こされたという。
それからは一睡もできなかったそうで、とんだ災難だったが、私は植山七段が浴衣姿でホテルを右往左往するさまを想像して、口元が緩んでしまった。
ともあれ植山七段、合宿不参加でも、いろいろ話題を提供してくれる。
さてコテージに戻って、きょうも可能な限り将棋を指す。
まず、Kun氏と対局。私の先手で、▲2六歩△3四歩▲7六歩△8四歩に、私は気分を変えて▲6六歩。軟弱でも気合負けでもいいのだ。
以下矢倉模様に進むが、Kun氏に△8五歩と伸ばされ、▲6八角の瞬間の角交換を見せられ、おもしろくなかった。
角交換後、Kun氏△3五歩に、私は▲4六角。1歩得して反攻するハラだが、角を手放すから結構な勝負手だ。
△4四銀右▲同角△同銀▲6三歩成△8五桂。私は角銀交換の強攻からと金に期待したが、直後に△8五桂と跳ばれるのがいまいましい。
「と金は引いて使え」という。私は▲6四とと引く。ではこの局面を載せよう。

先手・一公:1五歩、1九香、2六歩、2八飛、2九桂、3七歩、4七歩、5六銀、6四と、6八金、7六歩、7八金、8六銀、8七歩、8八玉、8九桂、9七歩、9九香 持駒:銀、歩3
後手・Kun:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3一玉、3二金、4三金、4四銀、4五歩、6六歩、7四歩、8二飛、8五桂、9一香、9五歩 持駒:角2、歩

以下の指し手。△4九角▲5八歩△5二飛▲5七歩△7六角成▲7七歩△4九馬▲6五と△5五歩 まで、Kun氏の勝ち。

Kun氏は△4九角。▲7六歩を取らせる手もあったと思うが、私は▲5八歩。しかしKun氏に△5二飛と回られて困ってしまった。と金を引かなければこの手はなかったが、仕方ない。
私は熟考の末▲5七歩だが、△7六角成でこちらが悪い。泣きの▲7七歩△4九馬に、私は初志貫徹で▲6五と。しかしこの瞬間△5五歩と打たれてシビレてしまった。銀を助けるためには▲同としかないが、△同銀▲同銀△同飛は、何の見返りもなくと金を損し、駒損が残るだけ。そんなバカバカしい手は指せぬので、私はここで投了した。
もう私の構想が悪かったというしかないが、▲1五歩では▲2五歩と突いて、早めに攻勢を取っておくのだった。
間を置かず、Kun氏と再戦。今度は私の後手で、横歩取りに進む。Kun氏▲3四飛に、私は角を換わって△2八歩~△4五角。
「(横歩取りを指すと)△4五角があるんだよなァ」
とKun氏がつぶやく。
ここで定跡では▲2四飛だが、Kun氏はたんに▲7七角。これもあるところで、以前私はLPSA芝浦サロンでU氏にこれをやられ、惨敗したことがある。
△8八飛成▲同角△3四角▲1一角成△3三桂。ここで▲8四飛と指されたらどう返していいか分からなかったが、Kun氏は▲3六香。これには△3五歩▲同香△2五飛▲3四香△2八飛成▲3八角△2七銀で、私がおもしろい形勢になった。以下、私の勝ち。
Kun氏も感想戦、というか研究が好きだ。当然ながら、▲1一角成△3四角の周辺を重点的に行った。しかしどうやっても後手が不利になってしまう。そんなバカな! これはあとで大野七段に請わないとダメだ。
コテージは10時に引き揚げることになっている。買いだしの飲食類だが、飲み物はいいとして、またもお菓子がごってり残ってしまった。毎回お菓子を余らすのに、またやってしまった。どうして私たちは、学習能力がないのだろう。
私たちは対局机と椅子を部屋に戻すが、大野七段以下数名はまだ将棋に熱中している。社団戦で掃除の時間になっても、我関せずで研究に余念がない手合いがいるが、それを思い出した。しかしまあ、その将棋熱がうらやましくもある。
とにもかくにも、これで一般対局は終了。私のリーグ戦は、6勝4敗。指導対局は0勝2敗。中井女流六段との角落ち戦やMinamiちゃんとの二枚落ち戦など、おまけ対局は5勝3敗だった。ちなみに今回のトップはFuj氏で、指導対局2勝も含み、リーグ9勝1敗だった。とりわけ、中井女流六段に相矢倉で勝った星が光る。
このあとはFuj氏お待ちかね、食堂で「ペア将棋」である。
荷物や将棋盤、お菓子類一切合切をそちらに移す。現在12人いるから、6ペアができる。一部ペアは事前に組み、あとはアミダクジでペアを決める。私は特別に、中井女流六段と組ませていただいた。女流棋士と組むのは初めてだが、その相手が中井女流六段とは光栄である。
大野七段はMinamiちゃんと組む。そして手合いは、大野・Minamiペアの下手二枚落ち。プロの七段でも下手の二枚落ちを指すところに、ペア将棋のおもしろさがある。
私たちの対戦相手はW・Kazペアに決まった。ペア将棋は相方との呼吸が大事だが、私は多少ヘマをやっても、中井女流六段が何とかしてくれるの気があるから、ラクなものだ。とにかく、悪手の類を指さないよう心掛けた。
W・Kazペアのゴキゲン中飛車に、私は超速▲3七銀を目指す。しかし▲3七銀の前に私が▲7八玉と寄ろうとして、どうもぎごちない。
中井女流六段は私の指し手に一喜一憂せず、目の前の最善手を模索している感じ。
中盤は見応えある攻防が続くが、あのギクシャク感は、対局当初から私(たち)を支配している。それでも何とか、私たちが優勢になった。
(つづく)
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第24期女流王位戦紅白リーグ戦・全勝敗予想

2012-11-12 01:00:55 | 勝敗予想
第24期女流王位戦リーグは、きょう12日、清水市代女流六段-山口恵梨子女流初段と、中井広恵女流六段-千葉涼子女流四段の2局からスタートする。
きょうはリーグ戦の全勝敗と、挑戦者を予想する。

<紅組>
1回戦
○甲斐智美女流四段-●鈴木環那女流二段
●中村真梨花女流二段-○本田小百合女流三段
●早水千紗女流二段-○香川愛生女流1級
2回戦
●甲斐女流四段-○本田女流三段
●鈴木女流二段-○香川女流1級
○中村女流二段-●早水女流二段
3回戦
○甲斐女流四段-●早水女流二段
●鈴木女流二段-○本田女流三段
○中村女流二段-●香川女流1級
4回戦
○甲斐女流四段-●香川女流1級
●鈴木女流二段-○中村女流二段
○本田女流三段-●早水女流二段
5回戦
●甲斐女流四段-○中村女流二段
○鈴木女流二段-●早水女流二段
○本田女流三段-●香川女流1級
※本田女流三段、5勝0敗で紅組優勝。

<白組>
1回戦
○清水市代女流六段-●山口恵梨子女流初段
○中井広恵女流六段-●千葉涼子女流四段
●矢内理絵子女流四段-○岩根忍女流二段
2回戦
○清水女流六段-●矢内女流四段
○中井女流六段-●山口女流初段
●千葉女流四段-○岩根女流二段
3回戦
○清水女流六段-●千葉女流四段
●中井女流六段-○岩根女流二段
○矢内女流四段-●山口女流初段
4回戦
●清水女流六段-○中井女流六段
●矢内女流四段-○千葉女流四段
○岩根女流二段-●山口女流初段
5回戦
○清水女流六段-●岩根女流二段
○中井女流六段-●矢内女流四段
○千葉女流四段-●山口女流初段
※清水女流六段、中井女流六段が4勝1敗でプレーオフ。
●清水女流六段-○中井女流六段
中井女流六段、白組優勝。

挑戦者決定戦
○中井女流六段-●本田女流三段
中井女流六段、挑戦者に。

紅組は本田女流三段が全勝優勝と予想。白組は4勝1敗の清水女流六段と中井女流六段でプレーオフが行われ、中井女流六段の勝ち。紅白決戦も中井女流六段が勝ち、挑戦者になると予想した。
中井女流六段ファンの私がこんな予想をしたら、それじゃあ公私混同だろう、と読者から指摘を受けそうだが、これが私の正直な予想なのだから仕方ない。
ひとつ記せば、白組は岩根女流二段も4勝1敗と予想したが、女流王位戦は上位2人しかプレーオフに進出できなかったと思う。もし中井女流六段-岩根女流二段のプレーオフがあったら、これも本割り同様、岩根女流二段の勝ちと予想していた。
リーグ戦は、来年3月まで行われるのだろうか。選ばれし12人による挑戦レースを、大いに楽しみたい。
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第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(第6手)・対局つづくパート2

2012-11-11 00:04:06 | 将棋イベント
午後10時22分、私はKun氏と対局。振り飛車党のKun氏、今回の合宿では全局居飛車宣言をしている。最近は振り飛車党のHon氏が居飛車を勉強、居飛車党のFuj氏が振り飛車を勉強、じっくり型のR氏は横歩取りを自分のものにしようとしている。ジョナ研メンバーの志の高さは相当なものだ。
私の先手で、▲7六歩△3四歩▲7五歩。ミエミエの石田流明示で、Kunさん、これでも居飛車で指しますか? と私は問うたのだ。
Kun氏は苦笑した後、△8四歩。さすがだと思った。
しかし▲7八飛△8五歩▲4八玉に、角を換わって△4五角がKun流。居飛車ではいくけど、タダでは収めませんよ、という指し手だ。
私は▲7六角。△3二金▲3八玉△8六歩。しまった…。これに▲同歩は△同飛▲8七歩△7六飛▲同飛△6七角成で先手不愉快。私は泣く泣く▲5八金左だが、Kun氏に△8七歩成とされ、▲同角以下おもしろくなかった。
ところが将棋はむずかしいもので、以下Kun氏に疑問手が出て、私の勝ち。しかしここからが長い。Kun氏もW氏に劣らず感想戦…というか、研究好きである。私も石田流の急戦は不案内なので、勉強した。
本局、序盤でどうやっても私が不利になる。いろいろ調べたが、△8七歩成を▲同角と取ったのがマズかったようだ。ここは▲同銀が正着と結論づけたが、いま考えれば△8六歩に▲同歩△同飛▲5八金左で差し支えなかったようだ。
感想戦終了は11時10分。対局より感想戦のほうが長かったのではないか?

「Honさん、将棋指す?」
と私。
「ああ、指しましょうか」
「何だよHonさん、Honさんも将棋好きだなー」
という訳の分からない会話を経て、11時19分、今度はHon氏と対局。今回3局目だ。
Hon氏の四間飛車藤井システムに、私は穴熊を指向する。ところがHon氏に急攻を見せられ、穴熊を断念。美濃に変更したが、Hon氏に4筋の歩を交換され、また指しにくくしてしまった。
中盤、Hon氏に玉頭を攻められ、私の玉は▲8五まで釣りだされる。ここで△4二角と玉の退路を断たれていたら私が悪かったが、別の手だったので、私は玉を引き、小康を得た。
隣では、Kun氏と、眠りから覚めたKaz氏が対局している。この合宿は、どの組み合わせもおもしろい。どうかすると、対局より観戦のほうがおもしろい。
Hon戦、最後は私の勝ち。対Hon戦の3局は、全部拾わせていただいた。
と、中井広恵女流六段、Minamiちゃんが起きてきた。コテージ内の部屋で眠っていたらしい。それぞれ4~6人部屋なので、ベッドはあり余っている。
寝起きの中井女流六段がアンニュイな感じで、こよなく色っぽい。Kaz氏が「中井先生、いいッスよねえ…」と嘆息した。
今回の合宿では植山悦行七段とR氏が休みで、中井女流六段とお近づきになれるチャンスが拡大したと歓んでいたのだが、とんだ伏兵がいたものだ。
しかし中井女流六段、Minamiちゃんは、そのまま離れで就寝となった。中井女流六段はあすの運転もある。今宵はゆっくり休んでください。
日付変わって午前0時18分、スマホで、ブログの更新をする。3日と4日のぶんは先月26日のジョナ研の模様を書いているが、3日付では、中井女流六段の神経を逆撫でするようなことを書いている。棋友は「いまのうちに書き直せ」と忠告してくれるが、スマホで文章を書くのは意外にめんどうなのだ。ど、どうしようか…。
休憩を終えた大野八一雄七段に、角落ちで再び教えていただく。相居飛車のでだしで、大野七段が「まあこの時間だから」と△3五歩。私も大野七段に数多く角落ち戦を教えていただいているが、△3五歩の位取りがいちばんイヤだ。
それに加え、仮眠してシャキンとしているプロと、連戦で疲れもたまっているアマでは、将棋の勢いも違う。▲4五歩△同歩に、私は▲6八の角で▲2四角と切り角銀交換の強攻に出るが、これはさすがに無謀だった。以下、簡単に切らされて負け。
▲2四角では▲3五歩と抑え、△4四金に▲3六銀と出れば下手が十分だったという。夜も更けて、辛抱が足りなかった。感想戦終了は0時39分。せっかくプロに教えていただいているのだから、もっと将棋を大事にしないといけない。
続いてHis氏と。私の後手で、▲7六歩△6二銀。His氏は最近筋違い角を常用しているので、それを防いだ。結果、His氏のふつうの中飛車に落ち着いた。
広間はだいぶ人数が減り、あとはKun-Fuj、Hon-Kaz戦が行われているのみ。それを観戦しているW氏。
私はHis氏に完敗。His氏の中飛車が原始中飛車風になり、5筋からの殺到を私が受け損ねた。すると、His氏が神妙に、「あのう、もう一局お願いできますか」というので、私もお付き合いした。His氏、本当に将棋が好きだ。もちろん私も。
2局目は私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩と指したら、
「ワタシはゴキゲン中飛車が好きなんだけど、最近は優秀な対策が出てきて…それでワタシも考えた手があんのヨ」
と、角を換わって△6五角。なんだ、いつもの筋違い角ではないか…。
この将棋は激戦となった。いくらか私が優勢だと思ったが、His氏の追い込みも凄い。
最終盤、△9四角と、▲7六玉に王手。私は▲8五桂ハネで受ける。His氏、△7九竜と回ってまた王手。私は▲7七金だが、△7五香と打たれて飛び上がった。トン死である。
相手の持ち駒なんか見ていなかった。香があるなら、△7九竜には▲8六玉で、それまでだったのに…。His氏のスタミナに負けたという感じだった。
さらに時間が経ち、最後に残ったのは▲Kaz-△Fuj戦である。横歩取り系の将棋だった。▲7五歩△同歩に▲7四金がFuj流。深夜にこのまったりとした指し手はどうなのだろう。
これに意表を衝かれたのか、数手後Kaz氏が△9七桂成としたのが失着。Fuj氏に▲8六歩と戻され、指す手がなくなってしまった。桂成では不成とすれば、次に△8九桂成があり、これなら互角だった。
本譜はKaz氏が戦意喪失で投了。きょうはちょっと早いが、これでお開きにしよう…というところで、Fuj氏が中倉彰子女流初段-Tod氏の指導対局を並べ始める。これ、私たちの間でけっこう話題になっている将棋なのだ。
急所の局面を並べて、Kaz氏が唸る。ハイ、これできょうはもう終わり! というところで、「でもここで上手が△5二角と受けたら、現実問題どうするんだろ?」とFuj氏が続けるので、さすがに私が制止した。もう、Fuj氏に駒を持たせたらダメである。
就寝は2時すぎ。さすがにきょうは、すぐに眠りに落ちた。
このころ、函館の植山七段の身に、たいへんな災難が降りかかっていようとは、私たちは知る由もなかった。
(13日につづく)
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