母が亡くなって以来、酒に関しては一向に意気が上がらず、ほとんど缶ビール1~2本
飲まない日も結構あって、日本酒に関しては冷や酒を寝酒に、ちびりちびりくらい
燗をする元気も泣く、熱燗にはご無沙汰だった
宴会に出ても、ノンアルコールかビールで、陽気に飲む気になれなかったのだ
ところで夕べは、市民吹奏楽団の演奏会があった
ボランティア仲間のSくんがこの楽団でトランペットを吹いていて、かっては楽団長もやっていたのだ
その彼に頼まれて、金5000円也の協賛をしたらチケット一枚もらったので見に行ってきた
生の演奏会は久しぶりだ、一部はクラシック、二部はポップスで二時間楽しんだ
今回はSくんのソロパートがやたら多くて驚いたが、われわれの小さなイベントでやるのとちがって
800名収容の会場では思い切り吹くことが出来る、いつもの何倍も上手く吹いていた
久しぶりに脳内をリラックスさせて音楽を楽しんだ
外に出たら雨がやんでいた、20mほど向こうにに小さな一杯飲み屋がある
まだ暖簾が外でなびいている(一杯飲んでいこうか)
私が一人で飲みに行くなんて滅多にあることじゃない、急に熱燗が飲みたくなったのだった
そして夕飯も食べていないし、腹ごしらえもしたい、焼き魚が食べたくなった
この店の女将さんは60歳くらい、同じ水商売だから顔なじみだ、家庭料理が美味しい店だ
店に入ったら5席しか無いカウンターに2人先客が居た
軽く挨拶をして、まず熱燗2合頼み、「ご飯も食べてないから、少し腹ごしらえもしたい」
と頼んだら、素敵なセットが出てきた
そのあとも、小鉢、甘エビのさしみ、そしてこれは蒸したカブ、とても柔らかい
美味しい出汁が染みこんでいる
その後には、食べたかった焼き物が「鰺の塩焼き」も出てきた
隣のおじさん「失礼だけど、ほんとうに美味しそうに食べますねえ、嬉しくなっちゃう」
いつしか知らない者同士の会話が始まって、意気投合
おじさん、どこかの警備員をやっているそうだ、その帰りすがらだそうで、私と同年代の連れも居る
おじさんは71歳で、踊りが大好きなんだそうだ、隣町の人で「踊りの**って聞けばみんな知ってるよ」だそうだ
子供の時から踊りが好きで習い始め、10代で免許皆伝いただけるまでになったけれど、免許料の35万円
払えなくてあきらめたんだそうだ
越中八尾「風の盆」の話しで盛り上がった、おじさんほとんど一人で独壇場、わたしも食べながら楽しく聞かせて
もらっている
おじさん、すっかり嬉しくなって「まあやんなよ、遠慮はだめだよ」って2合とっくり一本おごってくれた
「おごったなんていわないでさ、ぐっと飲んでくださいよ」、すっかり良い調子
私はいつも熱燗はコップ酒だからペースが速い、4合カラにしたところで、おじさん達はお帰り
「またここで会いたいね」と言って帰って行った
あとは女将さんと二人きりだ、いろいろ話しをして、彼女も一緒に酒を飲み出した
「料理なんか自己流で習ったこともないから、こんなものしかだせないの、すみませんね」
「ここへ来る客は、ママの家庭料理を食べたくて来るんじゃ無いかと思うよ、美味いしこれが良いと思う」
「そうですか?」「そうだよ」私ももう一合注文して
それを飲み終えて「じゃあ帰るわ」
見送りに玄関まで出てきてくれた、雨はすっかりあがっていた、ここから父の家まで5分足らず
良い気持ちで歩いた。