おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
さて、H.オーグラー著『アドラー心理学入門』シリーズ、今回は第16回目です。
今回は、ライフ・タスク(人生の課題)― 仕事・交友・愛 ― に相当する「3つの人生問題」としての社会的関心(実は「共同体感覚」)、職業、恋愛と結婚のうちの職業をテーマにします。
H.オーグラー著『アドラー心理学入門』では、「3つの大きな人生問題のうちで、職業の問題は一番解決のたやすいものである」とし、その理由として、「たいていの人は、金を稼ぐ必要からこの問題に近づき、それを成功裏に解決せざるをえないから」と始まります。
私たちは、カウンセリングを行う際も、その人が直面している仕事→交友→愛の順番でライフ・タスクを扱います。
さて、この本では、職業と関連して「怠惰」と「誇張された野心」にも触れています。
「怠惰」は、以前にテーマにした「劣等コンプレックス」の、あるいは、「好戦的態度」の兆候に他ならないことが多く、「甘やかされた子どもたちにとっては、自主的に仕事をするのがひどくむずかしいが、(それというのも)、自分たちは必ずや他の人々から助けてもらえると信じて育ってきているからだ」としています。
また、「誇張された野心」に関しては、アドラーが誇張された野心が真に偉大な達成を妨げるかを心理学的に説明していることを解き、次のように書いています。
「誇張された野心は、我々の心に過度の心的緊張を作り出し、能力の完全な展開を抑制する。誇張された野心は、作業能力を促進しないで、かえってそれを制限する。我々は、仕事に客観的な態度を取るときにのみ、能力を十分に展開することができるのである」
注釈を加えると、上のことは、優越コンプレックスのことでもあります。
この項の最後には、アドラーの指摘をもとに「職業問題のよい解決が心理学的、社会学的な協力によって見出される」とし、職業問題と協力との切っても切れない関係を職業選択とも関連づけ、次の記述で結びます。
「我々の全社会体制は、協力の上に基礎づけられている。それゆえに、すべての人々が人類の組織の中に自分の適所を見つけ出し、自分の全能力を発揮できる職業を選ぶことは、この上ない重要事である」
次回は、「恋愛と結婚」がテーマです。乞うご期待!