見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

雑誌・芸術新潮「わたしが選ぶ日本遺産」に付け加える

2010-01-04 23:58:56 | 読んだもの(書籍)
○『芸術新潮』2010年1月号「わたしが選ぶ日本遺産」 新潮社 2010.1

 雑誌『芸術新潮』が、創刊60周年(還暦)を記念して、わたしたち日本人が誇るべきものとして、これから後の世代へと伝え、いつまでも残してゆきたいものは何か、というアンケート調査を各界の著名人に行った。あらかじめ、アンケートに付記された「誰もが認めるような最大公約数的な『世界遺産の日本版』とは一線を画するものです」という注釈が効いているので、国宝・重要文化財的な美術品、工芸品は、ほとんど挙がってこない。そのかわり、風景、食べもの、マンガ、大衆芸能、モニュメントなど、なるほど、と思う「物件」を、なるほどと思う人物が挙げていて面白い。

 そこで、私ならこう選ぶ「日本遺産」。

■日本語

 とにかく、漢字と仮名という、全く別の表記システムを平然と併用してきた鷹揚さが素敵だと思う。文体にも、漢文訓読体と「やまとことば」という二種類があって、その混交とか中間とか亜種を用いれば、同じ内容を何十通りもの文体で言い表し、書き表すことができる。融通無碍、変幻自在。

■日本の本(和本)

 和紙と墨と糸でできていて、軽くてしなやかで、強くて長持ち。とりわけ素晴らしいのは、絵と文章がコラボレーションする江戸の版本。近世初期に入ってきた活字印刷という最新技術を捨てても、挿絵を入れることが容易な木版印刷を選んだ。日本人のマンガ好きは、江戸の読書習慣で作られたのだと思う。

■東大寺の修二会

 説明不要。聖なる総合芸術である。

■観音札所巡礼

 一昨年から、西国三十三所巡礼を体験中。主体的に「参詣している」ようで、決められた場所へ「参詣させられている」ような感覚が、次第に信仰心を育てていくのだろうか。キリスト教のサンチャゴ巡礼や、イスラムのメッカ巡礼は、どこか最終目的地を目指して直線的に巡礼するのだけど、日本の巡礼は、ぐるぐる巡っている状態が全てで、どこから始めても、どこで満願になってもOKというところがいい。

 最後に、絵画とか工芸とか彫刻とか、何か具体的な「かたちあるもの」をひとつ挙げて、計5件にしようと思ったが、これがなかなか難しい。やむを得ないので、4つで打ち止め。
コメント
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