○高知県立美術館 『空海の足音 四国へんろ展』《高知編》(2014年8月23日~9月23日)
九州への出張が決まり、ついでに宿願の白峯寺に参拝できないかと思って調べているうち、この情報を見つけた。四国霊場開創1200年記念四県連携事業『空海の足音 四国へんろ展』。四国4県の4つの美術館・博物館が「四国へんろ」という共通テーマのもとに、各県の特色をいかした展覧会を開催するというもの。巡回展ではないので、全貌を知るには、4県すべてを「お遍路」しなければならない。会場と日程は以下のとおり。
・高知編 高知県立美術館(2014年8月23日~9月23日)
・愛媛編 愛媛県美術館(2014年9月6日~10月13日)
・香川編 香川県立ミュージアム(2014年10月18日~11月24日)
・徳島編 徳島県立博物館(2014年10月25日~11月30日)
とりあえず始まっている高知と愛媛に行ってみようと思い、無理を承知で旅の計画を練った。土曜の朝、新幹線で博多を発ち、岡山へ。高知行き特急「南風」に乗り換える。初めて渡る瀬戸大橋から眺める瀬戸内海が絶景。やがて山の中に入ると、大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)の渓谷美も楽しめて、とても贅沢な車窓風景だった。
高知は2007年の夏に「絵金祭り」を見に来て以来、二度目。記憶よりも駅舎がきれいになっているような気がした。市電で高知県立美術館へ。2つの展示室を使って、約100件の資料が展示されている(一部は前後期で展示替え)。(1)空海とその時代、(2)霊地四国、(3)四国遍路の形成と定着・天界、(4)土佐の霊場の四部構成。あとで分かったが、他の館もだいたい同様のようだ。
まず「空海とその時代」に着目するセクションでは、四国だけではなく、京都・東寺や和歌山・金剛峯寺など、空海ゆかりの寺院から貴重な文化財が出陳されている。東寺でもめったに見られない『御遺告(ごゆいごう)』や高野山の霊宝館で見たことがある唐代の『諸尊仏龕』(枕本尊)など。京都・安楽寿院所蔵の絵巻『高祖大師秘密縁起』も面白かった。
高知県の文化財のうち、彫刻では、雪蹊寺の毘沙門天立像(鎌倉時代)が優品。典型的な「美男」毘沙門天である。小さな脇侍の吉祥天と善膩師童子(ぜんにしどうじ)は愛らしい。善膩師童子は、頭部がかなり磨滅して、小さな黒目が木肌に埋もれかけているが、みんなに撫ぜ愛しまれた結果、こうなったのではないかと思う。吉祥天は、超人的な美貌ではないが、優しい女人の姿を写実的にあらわしている。宋風彫刻のおもむき。
最御崎寺の金剛力士像(江戸時代)は砂岩に刻まれためずらしいもの。細マッチョで暑苦しくないのがよい。同寺には、赤紫っぽい大理石造りの如意輪観音半跏像(年代注記なし)も伝わる。定朝様に通じる穏やかな容貌で「中央の作とする意見も根強い」とあったが、いや渡来仏じゃないかなあ。細くくびれた腰が色っぽい。背面もちゃんと彫刻されている。横から見た体躯は薄い。右膝を立て気味にし、その上に置かれていたかもしれない右腕は途中で失われている。左手は天衣の端を巻き付け、地面に下ろしている。髪は失われているが、ツインテールにして肩に垂らしていた様子。
絵画では、金剛頂寺の『両頭愛染曼荼羅図』(鎌倉中期)が面白かった。向かって左向きに斜め横顔を見せる愛染明王像で、珍しいなあと思って眺めているうち、右側に黒い別の顔が載っていることにようやく気づいた。愛染/不動の両頭明王なのである。画面上部の左右には金剛界/胎蔵界の大日如来。画面下部には、向かって左に獅子の上で弓を構える童子、右に白象の上で弓を構える童子が描かれている。
工芸では、香川県の善通寺から出陳の錫杖頭が白眉。唐代工芸の粋を感じさせる。表裏それぞれに、三尊+二天王を配する。主尊は釈迦如来と薬師如来かな。二天王は両面あわせて四天王になる構成。一体が横抱きにしている持物は琵琶だろうか?と思ったが、確認できなかった。
なお、同展入場者に無料で配られている冊子「仏像のちょこっとばなし」はうれしかった。明るく、品のある色づかいが私好み。「編集、発行:高知県立歴史民俗資料館」とあるだけで作者名表記が見当たらないけど、職員の方の片手間しごと? それにしてはレベルが高すぎる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/09/6fc7c05675abd61a8ad3d69a62fb93a2.jpg)
個人的にツボにはまったイラスト「如来の特徴」↓
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/f8/308e9be0258a309bc642c63ebaa34590.jpg)
この素敵な冊子を貰えるのもあと1週間(なのかな?)。みなさん、高知へ急ぎましょ~。
この日は、高知駅前から高速バスで松山へ。松山市内のホテルが取れなかったので、伊予鉄に30分ほど乗り、「見奈良」の天然温泉ホテルに落宿。いい温泉、いいホテルだったが、駅を降りたとき、あたりが真っ暗でびっくりした(たまにあること)。夜空に星座がよく見えた。
九州への出張が決まり、ついでに宿願の白峯寺に参拝できないかと思って調べているうち、この情報を見つけた。四国霊場開創1200年記念四県連携事業『空海の足音 四国へんろ展』。四国4県の4つの美術館・博物館が「四国へんろ」という共通テーマのもとに、各県の特色をいかした展覧会を開催するというもの。巡回展ではないので、全貌を知るには、4県すべてを「お遍路」しなければならない。会場と日程は以下のとおり。
・高知編 高知県立美術館(2014年8月23日~9月23日)
・愛媛編 愛媛県美術館(2014年9月6日~10月13日)
・香川編 香川県立ミュージアム(2014年10月18日~11月24日)
・徳島編 徳島県立博物館(2014年10月25日~11月30日)
とりあえず始まっている高知と愛媛に行ってみようと思い、無理を承知で旅の計画を練った。土曜の朝、新幹線で博多を発ち、岡山へ。高知行き特急「南風」に乗り換える。初めて渡る瀬戸大橋から眺める瀬戸内海が絶景。やがて山の中に入ると、大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)の渓谷美も楽しめて、とても贅沢な車窓風景だった。
高知は2007年の夏に「絵金祭り」を見に来て以来、二度目。記憶よりも駅舎がきれいになっているような気がした。市電で高知県立美術館へ。2つの展示室を使って、約100件の資料が展示されている(一部は前後期で展示替え)。(1)空海とその時代、(2)霊地四国、(3)四国遍路の形成と定着・天界、(4)土佐の霊場の四部構成。あとで分かったが、他の館もだいたい同様のようだ。
まず「空海とその時代」に着目するセクションでは、四国だけではなく、京都・東寺や和歌山・金剛峯寺など、空海ゆかりの寺院から貴重な文化財が出陳されている。東寺でもめったに見られない『御遺告(ごゆいごう)』や高野山の霊宝館で見たことがある唐代の『諸尊仏龕』(枕本尊)など。京都・安楽寿院所蔵の絵巻『高祖大師秘密縁起』も面白かった。
高知県の文化財のうち、彫刻では、雪蹊寺の毘沙門天立像(鎌倉時代)が優品。典型的な「美男」毘沙門天である。小さな脇侍の吉祥天と善膩師童子(ぜんにしどうじ)は愛らしい。善膩師童子は、頭部がかなり磨滅して、小さな黒目が木肌に埋もれかけているが、みんなに撫ぜ愛しまれた結果、こうなったのではないかと思う。吉祥天は、超人的な美貌ではないが、優しい女人の姿を写実的にあらわしている。宋風彫刻のおもむき。
最御崎寺の金剛力士像(江戸時代)は砂岩に刻まれためずらしいもの。細マッチョで暑苦しくないのがよい。同寺には、赤紫っぽい大理石造りの如意輪観音半跏像(年代注記なし)も伝わる。定朝様に通じる穏やかな容貌で「中央の作とする意見も根強い」とあったが、いや渡来仏じゃないかなあ。細くくびれた腰が色っぽい。背面もちゃんと彫刻されている。横から見た体躯は薄い。右膝を立て気味にし、その上に置かれていたかもしれない右腕は途中で失われている。左手は天衣の端を巻き付け、地面に下ろしている。髪は失われているが、ツインテールにして肩に垂らしていた様子。
絵画では、金剛頂寺の『両頭愛染曼荼羅図』(鎌倉中期)が面白かった。向かって左向きに斜め横顔を見せる愛染明王像で、珍しいなあと思って眺めているうち、右側に黒い別の顔が載っていることにようやく気づいた。愛染/不動の両頭明王なのである。画面上部の左右には金剛界/胎蔵界の大日如来。画面下部には、向かって左に獅子の上で弓を構える童子、右に白象の上で弓を構える童子が描かれている。
工芸では、香川県の善通寺から出陳の錫杖頭が白眉。唐代工芸の粋を感じさせる。表裏それぞれに、三尊+二天王を配する。主尊は釈迦如来と薬師如来かな。二天王は両面あわせて四天王になる構成。一体が横抱きにしている持物は琵琶だろうか?と思ったが、確認できなかった。
なお、同展入場者に無料で配られている冊子「仏像のちょこっとばなし」はうれしかった。明るく、品のある色づかいが私好み。「編集、発行:高知県立歴史民俗資料館」とあるだけで作者名表記が見当たらないけど、職員の方の片手間しごと? それにしてはレベルが高すぎる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/09/6fc7c05675abd61a8ad3d69a62fb93a2.jpg)
個人的にツボにはまったイラスト「如来の特徴」↓
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この素敵な冊子を貰えるのもあと1週間(なのかな?)。みなさん、高知へ急ぎましょ~。
この日は、高知駅前から高速バスで松山へ。松山市内のホテルが取れなかったので、伊予鉄に30分ほど乗り、「見奈良」の天然温泉ホテルに落宿。いい温泉、いいホテルだったが、駅を降りたとき、あたりが真っ暗でびっくりした(たまにあること)。夜空に星座がよく見えた。