見もの・読みもの日記

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2014年9月@西日本大旅行:京へのいざない(京博)その2

2014-09-25 00:07:33 | 行ったもの(美術館・見仏)
京都国立博物館 平成知新館オープン記念展『京へのいざない』(2014年9月13日~11月16日)

■2F-2室(仏画)「浄土教信仰の名品」


(1)釈迦金棺出現図 京都国立博物館
(2)釈迦如来像(赤釈迦) 神護寺
(3)閻魔天曼荼羅 京都国立博物館
(4)六道図(譬喩経所説念仏功徳図、人道無常相)2幅 滋賀・聖衆来迎寺
(5)山越阿弥陀図 京都国立博物館
(6)阿弥陀二十五菩薩来迎図 奈良・興福院
(7)阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎) 知恩院
(8)阿弥陀二十五菩薩来迎図 2幅 浄福寺

 大々大好きな『釈迦金棺出現図』を久しぶりに見ることができてうれしい。しかし最近買った雑誌「日経おとなのOFF」2014年10月号の「秋の国宝展 絶対見逃せないランキングBEST25」という特集記事で、安村敏信先生がこの仏画について「まるで宝塚のフィナーレみたい」とコメントしているのを読んだおかげで、金棺から半身を起こした釈迦如来の後光が、作り物の孔雀の羽根にしか見えなくなってしまった。この格好で大階段を下りてきてほしい。

 「赤釈迦」は平安仏画(12世紀前半)唯一の如来独尊図だそうだ。美麗の極み。赤い衣は、斜めの交差線が作る格子模様になっていて、菱形の一つ一つに金の点が打たれている。何かに似ていると思ったら、若冲のタイル絵に似ている気がする。

 聖衆来迎寺の六道絵は、茫漠とした風景の中、必死に崖をよじのぼる人、波間に逆さに墜落した人、虚空を昇天していく人などが小さく描かれていて、最近、雑誌「芸術新潮」で見たヒエロニムス・ボスの『最後の審判』の図を思い出した。

 「早来迎」は往生者のもとに駆け付ける仏菩薩の列に、岩間を下る滝のような緩急をつけて、スピード感を強調しているように思う。画面中央付近で、見る者に背中を向けて片足を浮かせた菩薩の存在がポイント。上記の「日経おとなのOFF」で、山下裕二先生は「この図柄を車にペイントしてみたくなる」(どんなイタ車だw)とコメントしていた。スピード感がありすぎて、往生者の前で急停止できないんじゃないかと心配になる。

 色彩的には、奈良・興福院のパステルカラーの来迎図も好きだ。阿弥陀如来を中心とする主集団の隊列の前に進み出ている二菩薩がいて、ひとりは大和座り、もうひとりは片膝を立てている。髪飾りが美しく、よく見ると蓮華座の花弁も風になびいているようで、芸が細かい。

■2F-3室(中世絵画)「幽玄の美-山水画の世界-」


(1)瓢鮎図〔如拙筆〕退蔵院
(2)古寺春雲図 京都国立博物館
(3)湖山小景図〔松谿筆〕京都国立博物館
(4)舟行送別図 京都国立博物館
(5)放牛図〔文成外史筆〕京都国立博物館
(6)鍾秀斎図〔祥啓筆〕
(7)楼閣山水図〔拙宗(雪舟)筆〕京都国立博物館
(8)山水図〔雪舟筆〕
(9)天橋立図〔雪舟筆〕京都国立博物館
(10)楼閣山水図〔伝元信筆〕金地院

 (8)はあまり見た記憶がなかったが、雪舟の絶筆とされる作品。前景の幾何学的な岩山の造形、ベタッと無頓着な墨の塗り方が雪舟らしい。中景の松の木は、手前の二、三本だけがはっきり描かれていて、その背後に霞みながら奥へ松林が続いている(ようだ)。遠景には、ぼんやりと霞むばかりの連山の影。そして、広い虚空。よいなあ、好きだ。

■2F-4室(近世絵画)「京のにぎわい」


(1)祇園祭礼図屏風 6曲1双 京都国立博物館
(2)釈迦堂春景図屏風〔狩野松栄筆〕2曲1隻 京都国立博物館
(3)洛外名所遊楽図屏風〔狩野永徳筆〕4曲1双
(4)阿国歌舞伎図屏風 6曲1隻 京都国立博物館
(5)四条河原遊楽図屏風 2曲1隻
(6)舞踊図屏風 6曲1隻 京都市

 近世絵画は屏風絵特集。金雲+色彩が華やかだし、「祇園祭だ~今とおんなじじゃん!」「船鉾だ!」と喜んでいるお客さんが多かったのでよいことにしておくが、「近世絵画」はこれだけ? 後期のラインナップを見ても、若冲も蕭白も応挙も見当たらないってどおゆうこと!?と、かなり本気で私は憤っている。

■2F-5室(中国絵画)「宋元絵画と京都」 


(1)山水図〔李唐筆〕2幅 高桐院
(2)寒林帰樵図 京都国立博物館
(3)柘榴栗鼠図〔松田筆〕
(4)達磨図〔伝牧谿筆〕天龍寺
(5)五祖荷鋤図
(6)布袋図(眠り布袋)〔伝牧谿筆〕京都国立博物館
(7)遠浦帰帆図〔牧谿筆〕京都国立博物館
(8)幽篁枯木図 京都国立博物館(上野理一コレクション)
(9)草虫図 2幅 京都国立博物館
(10)牡丹図 2幅 高桐院
(11)岳陽楼図〔夏永筆〕 14世紀・元
(12)雪中行旅図 12世紀・南宋

 展示室に入って、うわ、李唐の『山水図』だ!と声が出そうになった。昨秋、高桐院の宝物風入れで見た印象深い作品である。今年も10月第2週は高桐院で展示されるのだろう、京博での展示は9/28までの予定となっている。なお展示リストには「山水図 附絹本墨画楊柳観音図一幅」のタイトルで掲載されているが、附(つけたり)の楊柳観音図はなくて、展示は山水図2幅のみ。向かって左が「滝と滝を眺める道士二人」、右が「松の木と荷物を担いだ旅人」の図様だった。この左右は、ときどき逆転して展示される(ようだ)。(10)の『牡丹図』2幅も高桐院に伝わるもので、やはり9/28までの展示。

 (3)松田の『柘榴栗鼠図』はなつかしい。3匹のリスが描かれていて、1匹はまさに枝に飛び移る瞬間。(4)伝牧谿筆の『達磨図』は、大きな耳輪をつけた達磨の横顔で、団子鼻、むき出しの歯など、キャラクター化が徹底している。(5)も(6)も、こんな汚い爺さんを描いて何が嬉しいのだろうと思うが、その精神の自由闊達さが面白い。(7)は薄墨の中に小さく霞む二艘の帆かけ船。手前の岸辺の木々が撓っているのは、雨まじりの風が強く吹き付けているからか。簡素な線と濃淡で豊かな詩情を表現している。(11)と(12)は団扇図。『雪中行旅図』は、積み荷を背負った馬か驢馬の列が小さく連なる。

 これで2階を終了。1階と3階はまた別稿とする。なお、あらさがしばかりで申し訳ないが、京博ホームページの「施設案内」からたどる「平成知新館(平常展示館)」のフロアマップだと、1階に特別展示室があることになっているのは正しくない。2F-1(絵巻)の展示室と入れ替わっている。いや、この混乱ぶりは、直前までいろいろ大変だったんだろうなと思うよ。
コメント
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