書き落としていたもの、短めにまとめてレポート。
■出光美術館 開館50周年記念『時代を映す仮名のかたち-国宝手鑑『見努世友』と古筆の名品』(2016年11月19日~12月18日)
最終日に観覧。仮名には「和歌を記す文字」という役割があり、平安時代から室町時代にかけて、和歌の社会における役割が、褻(ケ=私的)から晴(ハレ=公的)さらに儀礼へと変化したことを、仮名書様の変化と結びつけて考える。うーん、このコンセプトはいまいちよく分からなかった。私が感じる平安時代の仮名の美しさは、線が均一で、あまり肥痩のない点にある。少し慣れると読みやすい書体でもある。禁欲的なまでの均一さは、法隆寺金堂壁画の描線を思い出す。時代が下った仮名の書体は、単に慣れの問題かもしれないが、私は読みにくく感じる。室町後期の肥痩の大きい仮名を見ていると、江戸の読み本の書体に近いなあと思う。
面白かったのは、鎌倉時代を代表する「後京極様」「寂蓮様」が、法性寺様と呼ばれる藤原忠通の書体(もちろん漢文のための書体)から影響を受けているのではないかという指摘。はじめ、第2室の隅にポツンと置かれた忠通の書状を見て、あれ?仮名の展覧会なのに?と不思議に思ったが、同室の展示を最後まで見て納得した。
■出光美術館 開館50周年記念『大仙厓展-禅の心、ここに集う』(2016年10月1日~11月13日)
出光美術館の仙厓(がい)コレクションに加え、福岡市美術館のコレクション、九州大学文学部コレクションという三大コレクションの名品が勢揃いした展覧会。出光は、仙厓没後170年にあたる2007年秋にも『仙厓・センガイ・SENGAI-禅画にあそぶ-』という展覧会をおこなっている。記憶によれば、私はこれを見ているはずだが、あまり面白さを感じなかったため、レポートを書き逃してしまった。ネットで検索すると「仙厓の禅画を楽しむとともに、そこにこめられた心温まるメッセージを読み解き」という趣旨の展覧会だったようだが、この「心温まる」推しが私は苦手で、以来、仙厓を遠ざけるようになってしまい、2013年の日本の美・発見VIII『仙厓と禅の世界』も見逃がしている。今回は、仙厓の無邪気さというか、大胆不敵さがよく分かって面白かった。パイナップルみたいな『トド画賛』大好き。
■永青文庫 『仙厓ワールド-来て見て笑って!仙厓さんのゆるカワ絵画-』(第1期:2016年10月15日~11月6日)
永青文庫の仙厓コレクション初の一挙大公開!と聞いて、これは見たいと思ったが、絵画104点を4期に分けて完全入替の公開だった(第4期は来月)。私の行った第1期に見ることができたのは、4階展示室に収まった26点。3階と2階は館蔵の茶道具・文具などで、仙厓所持の雲鶴茶碗(中国もの)と仙厓作の茶杓が通期で出ている。ちょっとガッカリ。でもまあ、第1期は、SNSに画像が流れてきて一目惚れした『龍虎図』2幅が見られたのでいいことにする。図録は作られていないが、雑誌『季刊永青文庫』96号(400円)に104点全ての図版が掲載されているのは貴重。
■静嘉堂文庫 『漆芸名品展-うるしで伝える美の世界-』(2016年10月8日~12月11日)
館蔵の日本・中国・朝鮮・琉球等の漆芸品から優品を精選して公開。近年修理を終えた『羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風』(かっこさいか・もみじのがずみつだえびょうぶ)二曲一双の修理後初公開が見どころだったが、私は両隻展示期間を逃して、羯鼓催花図しか見ることができなかった。くやしい~。しかし私は漆工芸が全般的に好きなのでとても楽しかった。
日本の漆芸では、ドーム形の『秋草蒔絵菓子器』、黒と金の『秋草蜘蛛巣蒔絵箱』など、紙でイミテーションを作ったら、現代の高級スイーツ(チョコレートとか)の包装箱に絶対使える。唐物瓢箪茶入(稲葉瓢箪)に付属した『人魚箔絵挽家(ひきや)』というのは茶筒形の容器(東南アジア製)で、上蓋に二尾の人魚、側面に羽人や人魚が描かれている。存星や密陀もいいな~。『蝶嵌装入隅四方組皿』(清時代)は、正方形の漆皿にカラフルな素材を嵌め込んで、絵変わりの蝶の姿を表現する。朝鮮の螺鈿箱の絵柄は、民画みたいに素朴でかわいい。曜変天目と油滴天目、灰被天目は、天目台つきで出ていた。
■東京国立博物館・本館(特別1-2室) 『歌仙絵』(2016年10月18日~11月27日)
特別展でもなく特集展示ですらないのに、ある日、東博に行ったらやっていて、佐竹本の坂上是則(文化庁蔵)、住吉大明神(松永安左エ門氏寄贈)、小野小町(個人蔵)、壬生忠峯(原操氏寄贈)、藤原元真(文化庁蔵)が並んでいて、びっくりした。さらに上畳本の源宗于、為家本の藤原敦忠など。各種の柿本人麻呂像や和歌三神像などの関連資料を含め、53件を展示。これだけの規模で歌仙絵を見比べることができる機会はめったにないと思ったので、記録しておく。
■出光美術館 開館50周年記念『時代を映す仮名のかたち-国宝手鑑『見努世友』と古筆の名品』(2016年11月19日~12月18日)
最終日に観覧。仮名には「和歌を記す文字」という役割があり、平安時代から室町時代にかけて、和歌の社会における役割が、褻(ケ=私的)から晴(ハレ=公的)さらに儀礼へと変化したことを、仮名書様の変化と結びつけて考える。うーん、このコンセプトはいまいちよく分からなかった。私が感じる平安時代の仮名の美しさは、線が均一で、あまり肥痩のない点にある。少し慣れると読みやすい書体でもある。禁欲的なまでの均一さは、法隆寺金堂壁画の描線を思い出す。時代が下った仮名の書体は、単に慣れの問題かもしれないが、私は読みにくく感じる。室町後期の肥痩の大きい仮名を見ていると、江戸の読み本の書体に近いなあと思う。
面白かったのは、鎌倉時代を代表する「後京極様」「寂蓮様」が、法性寺様と呼ばれる藤原忠通の書体(もちろん漢文のための書体)から影響を受けているのではないかという指摘。はじめ、第2室の隅にポツンと置かれた忠通の書状を見て、あれ?仮名の展覧会なのに?と不思議に思ったが、同室の展示を最後まで見て納得した。
■出光美術館 開館50周年記念『大仙厓展-禅の心、ここに集う』(2016年10月1日~11月13日)
出光美術館の仙厓(がい)コレクションに加え、福岡市美術館のコレクション、九州大学文学部コレクションという三大コレクションの名品が勢揃いした展覧会。出光は、仙厓没後170年にあたる2007年秋にも『仙厓・センガイ・SENGAI-禅画にあそぶ-』という展覧会をおこなっている。記憶によれば、私はこれを見ているはずだが、あまり面白さを感じなかったため、レポートを書き逃してしまった。ネットで検索すると「仙厓の禅画を楽しむとともに、そこにこめられた心温まるメッセージを読み解き」という趣旨の展覧会だったようだが、この「心温まる」推しが私は苦手で、以来、仙厓を遠ざけるようになってしまい、2013年の日本の美・発見VIII『仙厓と禅の世界』も見逃がしている。今回は、仙厓の無邪気さというか、大胆不敵さがよく分かって面白かった。パイナップルみたいな『トド画賛』大好き。
■永青文庫 『仙厓ワールド-来て見て笑って!仙厓さんのゆるカワ絵画-』(第1期:2016年10月15日~11月6日)
永青文庫の仙厓コレクション初の一挙大公開!と聞いて、これは見たいと思ったが、絵画104点を4期に分けて完全入替の公開だった(第4期は来月)。私の行った第1期に見ることができたのは、4階展示室に収まった26点。3階と2階は館蔵の茶道具・文具などで、仙厓所持の雲鶴茶碗(中国もの)と仙厓作の茶杓が通期で出ている。ちょっとガッカリ。でもまあ、第1期は、SNSに画像が流れてきて一目惚れした『龍虎図』2幅が見られたのでいいことにする。図録は作られていないが、雑誌『季刊永青文庫』96号(400円)に104点全ての図版が掲載されているのは貴重。
■静嘉堂文庫 『漆芸名品展-うるしで伝える美の世界-』(2016年10月8日~12月11日)
館蔵の日本・中国・朝鮮・琉球等の漆芸品から優品を精選して公開。近年修理を終えた『羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風』(かっこさいか・もみじのがずみつだえびょうぶ)二曲一双の修理後初公開が見どころだったが、私は両隻展示期間を逃して、羯鼓催花図しか見ることができなかった。くやしい~。しかし私は漆工芸が全般的に好きなのでとても楽しかった。
日本の漆芸では、ドーム形の『秋草蒔絵菓子器』、黒と金の『秋草蜘蛛巣蒔絵箱』など、紙でイミテーションを作ったら、現代の高級スイーツ(チョコレートとか)の包装箱に絶対使える。唐物瓢箪茶入(稲葉瓢箪)に付属した『人魚箔絵挽家(ひきや)』というのは茶筒形の容器(東南アジア製)で、上蓋に二尾の人魚、側面に羽人や人魚が描かれている。存星や密陀もいいな~。『蝶嵌装入隅四方組皿』(清時代)は、正方形の漆皿にカラフルな素材を嵌め込んで、絵変わりの蝶の姿を表現する。朝鮮の螺鈿箱の絵柄は、民画みたいに素朴でかわいい。曜変天目と油滴天目、灰被天目は、天目台つきで出ていた。
■東京国立博物館・本館(特別1-2室) 『歌仙絵』(2016年10月18日~11月27日)
特別展でもなく特集展示ですらないのに、ある日、東博に行ったらやっていて、佐竹本の坂上是則(文化庁蔵)、住吉大明神(松永安左エ門氏寄贈)、小野小町(個人蔵)、壬生忠峯(原操氏寄贈)、藤原元真(文化庁蔵)が並んでいて、びっくりした。さらに上畳本の源宗于、為家本の藤原敦忠など。各種の柿本人麻呂像や和歌三神像などの関連資料を含め、53件を展示。これだけの規模で歌仙絵を見比べることができる機会はめったにないと思ったので、記録しておく。