見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2019年1月@関西:京の冬の旅・妙心寺 天球院ほか

2019-01-14 22:48:22 | 行ったもの(美術館・見仏)
 この数年、正月最初の三連休は大阪の新春文楽を見にいくことが恒例になっている。他に何か見ものはないかと思って探していたら、「第53回 京の冬の旅」が面白そうなことに気づいた。「秘められた京の美をたずねて」と題して、障壁画等が多く公開されている。近年、冬の特別公開にはあまり心を動かされなかったが、今年のラインナップはなかなかよい。中でも妙心寺の3塔頭が外せないと思ったので、まず妙心寺に向かうことにした。京都駅で新幹線から嵯峨野線(山陰本線)に乗り換え、花園下車。このへんは2013年に夏の法金剛院に来て以来だと思う。

 妙心寺南門に向かう定番ルートを少し外れて、上西門院統子内親王の花園東陵に寄りみち。鳥羽天皇第二皇女、母は待賢門院璋子。同母兄弟に崇徳院、後白河院がいる。法金剛院の敷地の北東にあたり、かなり高低差のある石段をあがったところに御陵があった。



妙心寺 龍泉庵



 いきなり長谷川等伯筆『古木猿猴図』2幅(掛軸装)が飾ってある。複製だが表具も含めてよくできている。この名作の本来の所有者が龍泉庵なのだ。現在は京博に保管されているとのこと。方丈の襖絵は日本画家の由里本出(ゆりもといづる、1939-)氏による。初めて知った方だが、阿蘇山、石鎚山など、写実的でスケールの大きい山の風景が気に入った。奥の部屋には古い絵画を展示。解説札などは置いていなくて、聞くと案内の女性の方が教えてくれる。「京の冬の旅」のサイトに、狩野探幽筆『観音・龍虎図』、谷文晁筆『秋山出屋図』(中略)長沢芦雪、松村景文の作品などの寺宝も特別公開される」とあったのだが、芦雪の作品がないので聞いてみたら「ああ、ないんですよ~」と申し訳なさそうに解説用のアンチョコを見せてくれた。なぜか芦雪の名前のあとが空白になっていたのは予定が変わったのかな? でも探幽の白衣観音と龍虎の3幅対がよかったし、作者不詳の墨画の羅漢図(五百羅漢図の一部?)もよかった。『鴨・達磨・鴨』という3幅対もあって、達磨図は無款、鴨図2幅は朱印があるけど全然読めなかった。それから方丈のあちこちにある杉戸絵も面白かった。大きくハリネズミを描いたものがあった。

妙心寺 麟祥院



 家光が春日局の冥福を祈るために創建した寺院。受付でいただいたご朱印の「御福」が読めなくてしばらく考えてから、あ、春日局だから「お福」かと理解した。受付の方は「お正月ですからね。時々変わります」とおっしゃっていた。方丈の障壁画は海北友雪(海北友松の子)の筆で、室中が『雲龍図』、左右に『西湖図』と『瀟湘八景図』を描く。『雲龍図』は左右の襖に巨大な龍の顔があって「左の角を垂れているほうが雌で、右の角を立てているほうが雄です」と分かりやすく解説されてしまうのが面白いなあと思った。御霊屋には春日局の木像を祀り、ガラスのビーズを編んだ「瑠璃天蓋」が下がっていた。どこかで同じものを見た記憶があったが、東博の『妙心寺展』かもしれない。

妙心寺 天球院



 さあ、そして今回のお目当て、天球院である。姫路城主・池田輝政公の妹・天久院によって創建され、建立の際に地中から球を掘り出したことにより天球院と名づけられたそうである。美術ファンにとっては、京狩野の祖・狩野山楽と娘婿の山雪が手がけた障壁画が伝えられていることで、あまりにも有名。方丈の南東にくっついた玄関から入り、方丈の南側の3室を右(東)側から順に見ていく。右が『籬草花図』(朝顔の間)、室中が『竹虎図』、左が『梅に遊禽図』。ただし、これらは全てキャノンの「綴プロジェクト」により制作された高精細複製品に取り換えられている。しかし、ほの暗い照明の下の金箔の重厚な輝きは、言われなければ複製と気づかない再現度である。一見の価値あり。直線と曲線の組み合わせが、文句なく気持ちいいのだが、解説(ここは学生さん)が「3匹の虎は、山楽、山雪、永納。豹は山楽の娘で山雪の妻、お竹と言われています」と説明していて、やっぱりそういう見立てが好まれるのかなあと苦笑した。御朱印はその場で書いていただける。受付の女性の方に「本物はどちらにあるんですか?」とお聞きしたら「京都国立博物館に保管しています」とのこと。「ここ何年かは複製品で公開しています。いつか一度、本物を戻したいとは思っているんですけど」ともおっしゃっていた。なお、3室以外に突き当たりのこじんまりした部屋(上間一の間)も公開されており、水墨の障壁画『山水人物図』を見ることができる。たぶんこれは原品。

 意外と効率よく3箇所拝観することができたので、「京の冬の旅」探訪、まだ続く。
コメント
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