見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2019年1月@関西:古社寺保存法の時代(京都文博)、亥づくし(京博)ほか

2019-01-15 23:29:50 | 行ったもの(美術館・見仏)
転法輪寺(右京区龍安寺山田町)



 妙心寺の3塔頭を拝観後、北門を出て徒歩で仁和寺方面に向かう。仁和寺境内の東側の塀に沿うようにして、さらに北行すると、駐車場の前に「京の冬の旅の旅」の立て看板が出ており、奥に中国風の山門が見える。本堂に入ると、大きなストーブがガンガン炊かれていて暖かかった。大仏があると聞いて半信半疑だったが、ご本尊の阿弥陀如来坐像は、確かに見上げるように大きい。二丈四尺(約7.5メートル)だというが、高い基壇に座り、光背と天蓋も付いているので、さらに大きく見える。解説のおじいちゃんによれば、京都で一番大きい木造仏なのだそうだ。宝暦8年(1758)に関通上人が建立した浄土宗のお寺。大仏は、桜町天皇の追福のため造られたもので、光背の中央に遺愛の手鏡が嵌め込まれている。宝暦年間の巨大な涅槃図や、めずらしい裸形阿弥陀如来像(裙をつける)も公開されている。解説の最中、お客さんがバシバシ写真を撮っているので怪しんだが、「ぜひたくさんの方に見ていただきたいというご住職のお考えで、全て撮影可能です」とのこと。では畏れながら。



 甘茶と煎餅の接待(100円)もあり、檀家さんなのだろうか、運営を手伝っている方々も楽しそうだった。こういうお寺を訪ねることができるのは、季節限定の特別公開のいいところである。

善想寺(中京区三条大宮町)



 もう1箇所行けそうだったので、バスで四条大宮に出る。あまり歩いたことのない道を歩いて、住宅と商店街の中に埋もれたような善想寺へ。天文年間の建立だというが、伝わっている仏像はもっと古そうなものもある。方丈の本尊は美麗な阿弥陀如来立像。山門の横の地蔵堂には、滋賀県坂本村から移されたと伝わる、片足踏み下げ式の地蔵菩薩坐像を祀る。また墓地に白川の赤石(花崗岩)の石仏阿弥陀如来坐像がある。善想寺のご住職は、この石仏の造立者を後白河法皇と考えているようだ。それは推測の域を出ないが、かなり古い石仏ではある。かつて見た「崇徳地蔵(人喰い地蔵)」を思い出した。あらためて善想寺のサイトなどを覗いてみたら、この地には藤原頼忠の邸宅があり、四条後院とも呼ばれ、円融天皇が里内裏としたこともあるそうだ。他にもいくつか気になる伝承を見つけたけれど、もう少し調べてみたい。

■京都文化博物館 総合展示『古社寺保存法の時代』(2019年1月5日~3月3日)

 このへんでタイムアップだろうと思っていたが、まだ行けそうなので、歩いて文博へ。明治30年(1897)に成立した古社寺保存法に着目し、近代という激動の時代を背景に生まれ出た日本の文化財保護のあゆみを紹介する展示を見に行った。展示室1室のみの小規模な展示だが中身は濃い。ちょうど学芸員さんのギャラリートークらしいものが終わりかけていて、最後の質疑を遠くから拝聴した。明治の神仏分離令について、江戸時代は神社がお寺の下に置かれていたので、神社の側に見返してやりたい気持ちがあった(大意)というのが耳に残った。展示の行政文書類は、多くが京都学・歴彩館(旧・京都府立総合資料館)の所蔵で、さすがである。国宝修理を多く手がけた表具店・伴能十全堂(ホームページがある!)の資料や、彫刻家・新納忠之介の調査手帳の山も面白かった。

 いちばん面白かったのは、明治17年(1884)刊行の『大倭画名巻競』で、162の古絵巻の優劣を番付形式で定めている。東の大関が『信貴山縁起』で西の大関が『伴大納言絵詞』なのは文句のないところ。東の前頭六枚目に『吉備大臣入唐双紙』が入っているのは、まだ海外流出していないんだな。私の好きな『随身庭騎図』が東の前頭二枚目というのは意外と評価が高くてうれしい。など、いくらでも楽しんでいられる(図録の掲載写真が小さくて残念~)。編輯人に「柏木貨一郎」の名前を見つけて、なるほどと思った。数か月前に中之島香雪美術館で覚えたばかりの名前である。

京都国立博物館 新春特集展示『亥づくし-干支を愛でる-』(2018年12月18日~ 2019年1月27日)

 そろそろ暗くなってきたが、土曜日の夜間開館を活用して京博へ。静かで空いていてゆっくり見ることができた。そして、どの展示室の特集も面白かった。3階の「紺紙経」と「銅鏡」、2階の「神々の伝説」(特に『厳島縁起絵巻』の中世神話の魅力!)、「十二天屏風」。中世絵画「禅宗の人物画」は、展示室の角を曲がったとたん、不意打ちで雪舟の『慧可断臂図』があらわれて、死ぬほど驚いた。正月からこの絵か(喜んでいる)。元信の『浄瓶踢倒図』も好き。あと「渡辺始興」と「京の冬景色」。1階は2室を使って松井宏次氏寄贈の中国陶磁を特集。「清朝陶磁を中心とした」と言いつつ、古代の青銅器や加彩俑などもあって面白かった。「亥づくし」は、狩野山雪筆『猪頭像』がすごい変化球で笑った。

 南門横のカフェは、昨年2月から運営が前田珈琲に変わっていたのだな。気づいていなかった。京博のキャラクターにちなんだ「トラりんパフェ」をいただいてみた。見た目はいまいちだけど、ビターなチョコレートが美味しい。

 
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