〇浅草文化観光センター 第3回【パネル展・講演会】『湖北・長浜に息づく観音文化~ホトケと祈りの姿~』(2022年2月15日~3月6日)
東京長浜観音堂に千手千足観音立像を見に行ったら、いま浅草でパネル展示もやっています、と聞いたので、さっそく見てきた。湖北・長浜の観音像17件がパネルで紹介されていた。必ず正面全身の白黒写真なのが、展覧会の図録っぽい。様式、伝来、見どころなど丁寧な解説が加えられている。また保有施設(お寺、公民館など)の小さな写真パネルと、管理状況(〇〇町内会で管理など)、年中行事、ご開帳日なども添えられていた。
せっかくなので(チラシにも掲載されているが)17件の観音像を転記しておこう。
・向源寺(渡岸寺観音堂) 十一面観音立像
・医王寺 十一面観音立像
・鶏足寺 十一面観音立像
・石道寺 十一面観音立像
・来現寺 聖観音立像
・神照寺 千手観音立像
・知善院 十一面観音坐像
・総持寺 聖観音立像
・充満寺(西野薬師堂) 十一面観音立像
・観音寺(黒田) 伝・十一面観音立像
・善隆寺(和蔵堂) 十一面観音立像
・赤後寺(日吉神社) 千手観音立像
・赤後寺(日吉神社) 菩薩立像(伝・聖観音)
・洞寿院 観音菩薩立像
・山門自治会 馬頭観音坐像
・徳圓寺 馬頭観音坐像
・千手院 千手観音立像(御代仏)
湖北の観音といえば、やっぱりこれ!と思うのは、向源寺の十一面観音。どこで何度見てもいい。医王寺の十一面観音は、宝冠、瓔珞など華やかな装飾に負けない、気品あるお顔立ちが好き。赤後寺の仏様は2体が取り上げられており、腕先のない千手観音(太い腕の数は十数本)は日本の仏像と思えない迫力で大好きだが、立ち姿にひねりのない、スッキリした菩薩立像もいいと思った。黒田観音寺の伝・千手観音像は、威厳と優しさが同居するお顔と、リズミカルに花が開くような脇手のかたちが好き。「伝」がつくのは、頭上に十一面がないこと、脇手が18臂であること等から、准胝観音との考えられるためである。
千手院(長浜市川道町)の千手観音も、翼を開いたような脇手が美しかった。私は千手や多臂の観音に強く惹かれるのだ。この仏様、初めて知ったような気がしたが、調べたら2011年に「平成23年新指定重要文化財」として東博で紹介されていた。秘仏本尊の身代わりに祀られている御代仏(ごだいぶつ)で、調べたら本尊並みに古いもの(平安前期)だったという。神照寺の千手観音は、光背に半肉彫で千手を表わす、珍しい造型。石仏かと思ったが、木造だった。
個性で魅せるのは馬頭観音。山門(やまかど)自治会の馬頭観音、ネットでカラー画像を検索したら全身が黒で頭髪が赤なんだ。カッコいい! 馬頭観音は滋賀県では作例が少なく、多くは湖北に伝来しており、若狭・奥丹後との関係が推定されているが、よく分かっていないとのこと。善隆寺の十一面観音もツンとした簡素で古風なお顔立ちが好き。
しかし調べてみたら、ほとんどの仏像の画像や解説をネットで探し当てることができた。いい時代になったものである。「長浜・米原を楽しむ観光情報サイト」の充実、ありがとうございます。
なお、なぜ浅草で湖北・長浜の展示を?というのが不思議だったのだが、2014年と2016年に、台東区の東京芸大美術館で『観音の里の祈りとくらし展』を開催したことが、ひとつのご縁だったようだ。あと、よくよく考えれば、浅草寺は観音さまの聖地なのだ。
というわけで、久しぶりに浅草寺にもお参りしてきた。南無観世音菩薩。