付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「天久鷹央の推理カルテ」 知念実希人

2015-01-18 | ミステリー・推理小説
「倫理とは社会の“空気”が決めることだが、私にはその能力が欠けているからな」
 天久鷹央は自らの弱点を認識している。

 天医会総合病院の各課で診断困難とされた、または持て余された患者が回されてくる統括診断部に君臨するのは、頭脳明晰にして博覧強記の変人女医・天久鷹央。そして、その手下はたった1人の部員にして内科医の玉子の小鳥遊優。
 彼らのもとには河童に出会ったという少年、人魂を見た看護師と、さまざまな事件が持ち込まれるのだが……。

 いとののいぢの表紙イラストで、河童だ人魂だという怪異譚が繰り広げられますが、あくまで医療ミステリとして収まるのがポイント。
 この世に不思議なことなど、なにもないのです。

【天久鷹央の推理カルテ】【知念実希人】【いとうのいぢ】【新潮文庫nex】【メディカル・ミステリー】【医療ミス】【アル中】【想像妊娠】【中絶】【ミュンヒハウゼン】
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「薬屋のひとりごと」 日向夏

2014-11-05 | ミステリー・推理小説
 もともとウェブ小説として連載されていて、2012年にソフトカバーで書籍化されたものの文庫化です。しのとうこのイラストが良い感じに物語にマッチしています。 

 花街の薬師・猫猫(マオマオ)は、ちょっとした気の緩みから人さらいにあって後宮に売り飛ばされてしまった。
 人さらいに儲けさせるのも癪なので、薬の知識があることも文字を読めることもその他諸々ごまかして、何の取り柄もない下女として下働きを淡々とこなしていたのだが、後宮で発生した赤ん坊の連続死をこっそり解決してしまったのを宦官の壬氏に見抜かれてしまい、皇帝の寵妃の「毒見役」として抜擢されてしまう。
 暗殺の危険が少なくない後宮での毒味役であったが、これこそ猫猫にとっての天職だった。彼女は実はマッドがつくほどの毒薬マニアだったのだ……。

 中世レベルの文明で、中国っぽい東洋風の帝国を舞台にしたミステリ。
 ミステリといっても、トリックというかネタそのものはある程度毒薬ミステリとか雑学本を読んでいれば聞いたことあるなというものがほとんどではあるので、そういう方面に期待するものじゃないです。むしろ主人公の変わり者っぷりと、その彼女に振り回されたり振り回したりする後宮の側室や侍女や宦官たちとのやりとりを愉しむもののような気がします。
 あの名探偵ホームズだってトリックやストーリーよりも、自室の壁に銃弾を撃ち込んで文字を刻んだりコカイン中毒になったりするキャラクターの切れっぷりの方が魅力みたいな気がします。それを思うと、売れっ子の妓女たちを相手に花街の裏も表も知り尽くし、毒薬を盛られるのがご褒美という主人公は、ミステリの正統派ヒロインというべきなのかもしれません。

【薬屋のひとりごと】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【痛快ミステリー】 【夾竹桃】【夢遊病】【鉛中毒】【松茸】【テトロドトキシン】【チョコレート】【冬虫夏草】
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「迷いアルパカ拾いました」 似鳥鶏

2014-09-07 | ミステリー・推理小説
「でも負けたくない。脅して黙らせた方が勝ちなんて許せない」

 楓ヶ丘動物園に迷子のアルパカがやってきて間もなく、飼育員の七森さんの学生時代の友人、花里千恵が行方不明になったらしい。心配してアパートを訪ねてみれば暖房はつけっぱなしで、ケージのハムスターも餓死寸前。
 買えば何百万円というアルパカの所有者も見つからないけれど、まずは花里さんの行方を捜そうと桃くんたちは捜査に乗り出すのだが……。

 どこの動物園も経営が苦しくて、旭山動物園みたいに特色が出せればいいけれど予算も無しに一朝一夕にできることではなく、まずはあるものでなんとか工夫しよう……と頑張っている中、楓ヶ丘動物園の飼育員たちが花里千恵を見つけ出そうとか、アルパカの斎藤くんの持ち主を探そうと奔走する動物園ミステリの第3弾。
 獣医の鴇先生はあいかわらず経歴不明の正体不明のツンデレさんで、服部くんは変態で桃くんのストーカーと化していて、アイドル系飼育員の七森さんもまともそうでいて暇があれば手元にある紙をなんでも折ってしまう手癖は挙動不審。「『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンを演じる鹿賀丈史」って、どーよ?
 刑事の都築さんも、確かに最初から事件の全貌を把握しているみたいでしたね。読み返して納得。

【迷いアルパカ拾いました】【似鳥鶏】【スカイエマ】【文春文庫】【動物園ミステリー】【動物プロダクション】【はにかみ屋の弁当】
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「死体が多すぎる~修道士カドフェル(2)」 エリス・ピーターズ

2014-06-04 | ミステリー・推理小説
「ほかの人を楽にしてやることは、いつでも、その分の重荷を引き受けるということなのだ」
 修道士カドフェルの言葉。

 12世紀のイングランドを舞台にしたミステリの第2弾。これもはざまくんから教えてもらったのだったかな。

 第1回十字軍に兵士として参加し、以来四半世紀を海外で過ごしたカドフェルは、残りの人生を送る場所として修道院を選んだ。
 しかし、そのシュルーズベリ大修道院も平穏ではなかった。
 王位をめぐってスティーブン王と女帝モードが対立してイングランド各地で戦が絶えず、シュルーズベリ城もスティーブン王によって陥落してしまう。その戦いで捕虜となり処刑された者は94名。ところが、埋葬を頼まれたカドフェルが見たのは95名分の遺体だった……。

 薬草に詳しい十字軍兵士あがりの修道士が謎を解いていく、イングランド歴史ミステリの王道シリーズ。今回は「木の葉を隠すなら森の中、死体を隠すなら……」の事件に臨みつつ、逃亡する男女の道行きに力を貸します。その行く手に立ち塞がるのは、敵か味方か、ヒュー・ベリンガー……。
 戦争なんだから死んだのが94人でも95人でも関係ないだろう?と見過ごされがちなところをあえてツッコミ、その捜査を王に認めさせる論旨が実は今回最大のポイントなのかもしれません。

 これも東海豪雨で被災した書架にあった本だったけれど、上の方の棚だったのでかろうじて救出に成功。ただし、湿気で紙がかなり傷んで悲惨な状況ではありました。
 美品にこだわりはしないけれど、手にしてさらさらと流れるような手触りの方がいいなあ。廃刊となった社会思想社の教養文庫で揃え直すべきか、はたまた光文社文庫版で統一すべきか……。

【死体が多すぎる】【修道士カドフェル】【エリス・ピーターズ】【財宝】【復讐】【決闘】【アンダースロー】
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「空中庭園の魔術師」 ベン・アーロノヴィッチ

2014-05-18 | ミステリー・推理小説
 現代ロンドンを舞台に、魔法がらみの事件を密かに担当している特殊犯罪課の物語も4冊目。いろいろ大きな変化がありました。

「おっと失礼、あれはきみのタイガー戦車だったかな」
 各国の魔法使いの多くは第二次大戦によって損耗し、その痛手から回復しないまま現在に至っている。

 たまたまの交通事故から死体遺棄が発覚し、古書店への盗品持ち込みからプロの金庫破りが身体を内側から焼かれて焼死しているのが発見された。その一方、平凡な飛び込み事故と思われていた都市計画担当者の死にも不審な点が。
 これらの事件を追いかけるピーターたちは、やがて高層住宅スカイガーデンへとたどり着く。それはかつては先進的なデザインだったが、今は老朽化して取り壊しの話も出ており、立ち退き騒ぎが起きていた……。

 水源の主がそんなことして良いのかとか、モリーはパソコンで何をしていたのかとか、ツッコミどころやら伏線やら満載なのに、「え、ここで終わり!?」みたいなところで幕ですが、原作もこの4巻が2014年の最新刊。続きをやきもきしながら待つしかありません。

【空中庭園の魔術師】【ロンドン警視庁特殊犯罪課4】【ベン・アーロノヴィッチ】【山本のり】【ハヤカワ文庫FT】【ヴォイト=カンプフ・テスト】【ピシング・コンテスト】【夜の魔女】【ブルーノ・タウト】【ドリュアド】
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「コップクラフト4」 賀東招二

2014-05-12 | ミステリー・推理小説
 異世界とのゲートが開いている都市サンテレサを舞台に、敏腕刑事ケイ・マトバと異世界セマーニから来た美少女魔法剣士ティラナのコンビが活躍するポリスアクション。3年ぶりの新作で、押収品に紛れていたマジックアイテムによって猫のクロイと精神が入れ替わってしまったティラナの窮地……というか、検死官セシルの受難を描いた話。これに風紀班のゴドノフ刑事が刑事になった経緯とか語った小篇やオニール師と準騎士ティラナのグダグダトーク、そしていつものあとがきがついてます。
 しかし、ティラナはいつもお色気要員にしてコメディリリーフにされちゃいますね、すっかり汚れ役が板について。ヒロインじゃないのか?

【コップクラフト4】【賀東招二】【村田蓮爾】【ガガガ文庫】【ポリスアクション】【スマートフォン】【SMの女王様】【ミランダ警告】
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「小倫敦の幽霊」 平谷美樹

2014-05-04 | ミステリー・推理小説
 小松左京賞を受賞するなどSF作品でデビューし活躍していたけれど、昨今は時代小説に軸足が移っている平谷美樹の捕物帖。

 時は幕末、慶応三年。所は横浜外国人居留地。
 横浜外国奉行所の同心、草間凌之介のもとに持ち込まれたのは、購入した屋敷に幽霊が出るという新聞社社長ミルトンの相談だった。
「キリスト教では、死者は最後の審判まで墓の下で眠っていることになっているのでは?」
「イギリス人は幽霊好きなのだ」

 攘夷派浪士が出没する横浜で、日本と西洋のぶつかる中を飄々と生きる若き侍の捕物帖。羊羹の正体は早々に推測したのが当たってました。子供の頃に伝記とか読んでたから、なんとなくそういうものだという基礎知識があったんだ。

「日本人は流行に弱いですからね。深く意味も考えず、流されるんです」
 議会制民主主義だって簡単に衆愚政治になりかねない。そもそも大政奉還だって武士と武士の争いであって、そこにそれ以外の民の意思は存在していないと草間凌之介。
 時代の流れが見えていながら、なんともできない歯がゆさが伝わってきます。

【小倫敦(リトル・ロンドン)の幽霊】【居留地同心・凌之介秘帖】【平谷美樹】【宮川雄一】【講談社文庫】【エンタメ時代小説】【幽霊事件】【隕石】【大政奉還】【苧環】
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「祝もものき事務所」 茅田砂胡

2014-04-26 | ミステリー・推理小説
 百之喜太郎は事務所に持ち込まれる依頼は原則として断ることにしている。面倒くさいから。それに探偵業の届け出もしていないし。
 でも、ときおりどうしても断り切れない気がする依頼があったりする。たとえば、凶器あり、指紋あり、目撃者あり、動機あり、無いのはアリバイだけ……という容疑者を無罪にするための証拠集めとか。
 そうすると、秘書の凰華に尻を叩かれるように調査に出かけるのだけれど、実は凰華も、彼に仕事を回す弁護士の雉名も、他の幼馴染みの仲間たちも、彼自身には何の期待もしていなかったのだ……。

 田舎の因習がらみで、金と権力はあっても世の中の流れから完全に置いていかれつつも全然気にしていない旧家が話に絡んでくるミステリだけれど、推理小説ではなく探偵小説。探偵があれこれ調査して、真相を追究するのを読者は後ろから見守ります。
 登場人物は桃太郎よろしく、もも、犬、猿、雉とそろっているけれど、鬼と鳳凰までが仲間だし、きび団子代わりなのか仕事を頼む代わりにメシを奢るのは桃太郎ではなく雉の方だし、特に昔話がベースとかネタになってるわけじゃないんですね。単に名前ネタに使っただけという感じ。むしろ三年寝太郎とわらしべ長者の方が近そうです。
 それにしても、るり香さんが本当にワンポイントなキャラだったのには、むしろびっくり。出番、あれで終わりなんだ……。

【祝もものき事務所】【茅田砂胡】【睦月ムンク】【C・NOVELS】【中央公論新社】【嫁入り行列】【ホストクラブ】【冤罪事件】【婚約破棄】
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「警官嫌い」 エド・マクベイン

2014-04-16 | ミステリー・推理小説
 『名探偵紳士録』で古典ミステリを踏破してやろうと無謀な意気込みに燃えていた高校時代に購入。当初は名探偵1人につき1冊くらいのつもりでいたのに、この黄色い背表紙の87分署シリーズにはまって、しばらく抜けられなくなりました。

 猛暑のアイソラ市で警官が射殺されるという事件が相次ぐ。
 犯人の目的は何か? 単なる警官嫌いなのか……?

 ニューヨークがモデルの架空の街アイソラを舞台に繰り広げられる警察小説の名作。メインとなるスティーブ・キャレラやバート・クリングなどのレギュラー刑事や何度か再登場する犯罪者もいるけれど、毎回のように視点となる人物やスタイルが変わるのが特色。『キングの身代金』のように誘拐事件捜査だけで終わる話もあるし、ケチな泥棒から殺人までいろいろな事件が多発して慌ただしい情景が最後まで続く話もあるし、犯人視点で続く『灰色のためらい』なんて異色作もあって飽きさせません。
 読者も作者も飽きないせいか50年以上50作以上書き続けられ、警察の捜査方法や社会状況は激変していますし、殉職したり異動する仲間もいますが、基本的にほとんど同じメンバーが緩く年をとりながらやってるところも良いのです。

【警官嫌い】【87分署シリーズ】【エド・マクベイン】【ハヤカワ・ミステリ文庫】【警察小説】【サザエさん時空】
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「福家警部補の挨拶」 大倉祟裕

2014-02-21 | ミステリー・推理小説
 連続ミステリードラマ『刑事コロンボ』に惚れ込んだ著者らが、そのTVプログラムに倣って警察官らしからぬ刑事を主人公に据え、手がかりや伏線を詰め込んだ倒叙形式のミステリ短編集を書きました。
 その中でも4篇めの『月の雫』は、いかにも刑事コロンボ第19話「別れのワイン」を意識してますよね。酒造りに全身全霊を賭けていた酒造家が酒を守るために殺人を犯し、酒を愛しているが故に犯行が露見するという構図が同じです。もっとも、犯人を特定する決め手になったのが、同じく第28話「祝砲の挽歌」におけるリンゴの密造酒ネタだったりするので、単純な倒叙ミステリというより、コロンボという作品のパスティーシュとして愉しんでしまいます。
 ただ、このシリーズが『信濃のコロンボ』とか『古畑任三郎』のような、同じくコロンボをパスティーシュした先行作品と違うのは、探偵役が小柄で童顔な女警部補というあたりで、いかにも今風ではあるけれど、現場に駆けつけては検問の警察官や容疑者から警察官と思われなくて一騒動というあたりのお約束はきっちり押さえてます。
 そして、あえて違いを指摘するなら、このシリーズではまだ犯人役のセレブ度が低いです。まだまだ庶民的すぎます。

【福家警部補の挨拶】【大倉祟裕】【町田暁雄】【くまおり純】【創元推理文庫】【図書館長】【元科警研主任】【女優】【酒造会社社長】
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「特命指揮官」 梶永正史

2014-02-01 | ミステリー・推理小説
「自分に必要なものがなんなのかを分かっていることほど幸せなことはありません」
 三流ジャーナリストの丸山の言葉。

 郷間彩香は32歳で独身で、捜査二課で収賄や詐欺・横領などを担当する捜査二課の主任代理。金の流れを追い続ける彼女のあだ名は“電卓女”。
 そんな彼女に銀行立て籠もりの犯人グループから、交渉役と現場指揮の担当者にするよう要求が出された。なぜ管轄外の自分を名指しで指名したのか、困惑しながら渋谷に急行する彩香だが……。

 立て篭もった銀行強盗を前に、目の前で何が起きているのか、何が彼らの真の目的なのか、誰が敵で誰が味方なのか、五里霧中のまま1980円のワンピース姿で陣頭指揮を執る警部補の活躍で、社会派ミステリであり、ある種のコンゲームでもあり、最後に特命を下したのが誰か判明するまで一気呵成に転がり続ける物語。
 ユーモアあふれた語り口もあって、最後までハラハラドキドキしながらも気分良く読み終えることができました。
 でも、みんなフローズン生を好き過ぎます。

【警視庁捜査二課・郷間彩香】【特命指揮官】【梶永正史】【宝島社】【「このミステリーがすごい!」大賞】【警察ミステリ】【銀行強盗】【フローズン生】【戦争犯罪】【玉璽】【篭城】【巨悪】
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「覆面作家の夢の家」 北村薫

2014-01-24 | ミステリー・推理小説
 ミステリー界の人気作家となった「覆面作家」こと新妻千秋さん。
 若手編集者、岡部良介とともにさまざまな謎を解いていくのだが、2人の前に現れた謎の男は……。

 覆面作家の3冊目で、以後続刊は出ていないし、ストーリー的にも区切りが付いているので、これで三部作の完結とみればいいのかな。もう少し、この2人の話が読みたかった気もするけれど、「もう少し」と思われている内に区切りをつけるのは良いタイミングなのかもしれません。
 最後はさすがに甘甘で、読んでいて気恥ずかしくなりましたが、それが読みたかったのだから仕方がありません。

【覆面作家の夢の家】【北村薫】【高野文子】【角川書店】【覆面作家シリーズ】【ドールハウス】
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「ディーン牧師の事件簿」 ハル・ホワイト

2013-12-26 | ミステリー・推理小説
「死後の世界があるのなら、間違いなく神は存在する。神が存在するのなら、魂が道をさまようことを、お許しになるはずがない」
 超常現象そのものを否定するつもりはないけれど、幽霊が悪さをしでかすということがあるはずないとサディアス・ディーン牧師の言葉。

 読書家な引退した老牧師が遭遇する不可能犯罪をテーマにした短編集。
 カーを彷彿とさせる雰囲気なので、なんとなくその頃の時代の話のつもりで読んでいたら、「携帯電話は持っていない」とか「パソコンのブラウザは2つ前のバージョン」とか今も今じゃないですか。よく見たら原書は2008年刊行。
 でも、トリックその他はいつの時代でも通じそうなものばかり。そして、単純に信仰にすがるだけではなんともならない人間の歴史を前提に、信仰者であるからこそ、目の前の出来事を無批判に受けいれるのではなく、論理的に物事を判断することが大切なのだというスタンスに共感。

【ディーン牧師の事件簿】【ハル・ホワイト】【創元推理文庫】【プロローグ】【足跡のない連続殺人】【四階から消えた狙撃者】【不吉なカリブ海クルーズ】【正餐式の予告殺人】【血の気の多い密室】【ガレージ密室の謎】
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「丑三つ時から夜明けまで」 大倉祟裕

2013-12-15 | ミステリー・推理小説
 事件現場は完全な密室だった。
 容疑者には全員にアリバイがあった。
 しかし、状況的にどう見ても殺人事件だった。
 そこで捜査現場に出てくるのは“名探偵”ではない。
 静岡県警の捜査五課、幽霊を取り締まる専門部隊のエキスパートたちである……。

「完全黙秘さ。課員が総出でかかっている。あの世から母親の霊まで呼んで来て、説得に当たっている」

 試験的に運用されている捜査五課と共同捜査することになった捜査一課の刑事の体験する、奇妙な5つの難事件。
 前に読んだ同じ作者の『小鳥を愛した容疑者』より好きだな。
 幽霊による不可能犯罪に立ち向かう捜査五課の面々は、行者みたいだったり白塗りの坊主頭の巨漢だったり人形を抱いたおかっぱ頭の少女だったり僧侶だったりと見た目は個性豊かながら、意外にも出番はほとんどなし。ほとんどが語り手である捜査一課の「私」とその先輩の米田警部補、そして捜査五課の七種警部補で話が進み、メンバー総動員となっても「戦いは三日三晩続いた」で語り終えて流されてしまう不幸。そういう視点からすると、確かにライトノベルではなくてユーモアミステリなんでしょうね。小野不由美の悪霊シリーズみたいな話になりそうなところを、わざわざ美味しそうなところをチラ見させてはスルーしていくんですよ。いけず。
 怪談話としてもミステリとしても面白く読めましたからいいんですけどね。

【丑三つ時から夜明けまで】【大倉祟裕】【平沢下戸】【光文社文庫】【異色ユーモアミステリー】【憑依霊】【地縛霊】【雪おろし】【嵐の山荘】【最後の事件】
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「地下迷宮の魔術師」 ベン・アーロノヴィッチ

2013-11-21 | ミステリー・推理小説

 本当のところを言えば特殊犯罪課の新米刑事ピーターに責があるわけではないのだけれど、周囲は彼のせいでヘリが墜ちたり大爆発が起きたことを忘れてくれない。目の届くところにいて、おとなしくしていろという。
 それでも従妹が線路上で幽霊を見たと言えば引っ張り出されるし、地下鉄ベイカー・ストリート駅の構内で若い男の死体が発見されたといえば午前3時でもたたき起こされる……。

「魔術師でもある警官はもっと興味ぶかいものだと思うでしょ。ハリー・ポッターだって、これほど退屈じゃないわよ」
 ピーター・グラントがいかに退屈な男か、レスリー・メイは懇々と説く。

 新米刑事にして新米魔術師でもあるピーターの捜査日誌。パリやニューヨークの地下だけでなく、ロンドンにも地下迷宮はあるのです。なにせ、世界最古の地下鉄がある都市ですから。
 ナイティンゲール警部は別仕事やバックアップが多く、館付きメイドのモリーもいつものように暗闇から音もなく現れてはすべるように去って行くだけ。いまだマスクが手放せないレスリー刑事を相棒に、ピーターが鉄道警察と協力しつつ捜査を進めていきますが、被害者がアメリカからの留学生で父親が議会の重鎮だったことからFBI捜査官が派遣されてきて、敵か味方か……というのが今回の話です。
 細々した事件やトラブルがいくつも発生し、怪しげな人物たちが捜査線上に浮かんでは消えますが、これらが本筋に関係するのかしないのか、はっきりしないままクライマックスに突入します。こういう街は24時間眠らない……的なのりは87分署シリーズから続く警察小説の伝統です。殺人課と特殊犯罪課と鉄道警察の所轄問題とか、単なる縄張り意識だけではなく「魔法なんてうさんくさいものには関わりたくない」とか「捜査予算が」とかあれこれで左右されるのも世知辛いですね。

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