付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「西洋人形は夢を見る」 相良頴

2013-10-10 | ミステリー・推理小説
「孤独なやつが一番強い」
 大事なものが増えると身体が重くなると、不良警官の千崎銀鷹。
 「友達を作ると人間強度が下がる」と主張する阿良々木暦みたいなことを言っております。

 西洋人形にまつわる怪事件を調査していた不良警官の千崎は、人形の製作者である神撫月灯斎のもとを訪れるが既に亡く、後を継いでいた二代目月灯斎は西洋人形と見間違うほどの美少女だった……。

 大正ヒトケタを舞台に、天才的な人形技師の二代目を継いだ美少女と、そのお付きの美青年、そして不良警官の3人が遭遇する怪事件を描いた連作ミステリです。
 長髪美青年がやたら出てくるけれど、『はいからさんが通る』で大正浪漫を初体験した自分にはまったく拒否感はありません(でもチェックはしちゃうんだ)。
 そもそも、そんなに史実に忠実なリアリティは求めていないのだけれど、唯一引っかかったのは「ワイン」という単語。ここは「赤葡萄酒」くらいの方が大正っぽさが出た気がします。「ブドウ酒」というのも、もう死語なのかなあ。

【西洋人形は夢を見る】【瑠璃色の事件手帖】【相良頴】【氷堂れん】【コバルト文庫】【大正浪漫】【嵐の山荘】【密室殺人】【ダイイングメッセージ】
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「紳堂助教授の帝都怪異考2」 エドワード・スミス

2013-09-02 | ミステリー・推理小説
「人は、生まれてきたからには恋をしなければならない生き物なのよ」
 そう紳堂に教えられたと、美作春奈。

 猫は夜の番人だ。
 夜は彼らの領分であり、夜の世界を脅かす魑魅魍魎の敵なのだ……。
 

 大正時代の帝都東京を舞台にしたミステリで、1作目は本物の怪異がかかわる事件ばかりでしたが、今回は若干控え目で普通のライトミステリっぽいです。
 今回は才媛篇ということで、狭い世界で深く生きている美作中尉の妹の春菜や貫間邸の女中である町子、そしてアキヲの叔母にあたる相沢時子が登場し、それぞれの話を彩っています。探偵助手である篠崎アキヲも才媛といえば才媛かな。

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「紳堂助教授の帝都怪異考」 エドワード・スミス

2013-08-23 | ミステリー・推理小説
 大正時代の帝都東京を舞台に、帝国大の助教授を務める美青年が、美少年を助手としてさまざまな怪事件を解決していくミステリー短編集。

「魔道は人道」
 紳堂麗児は常々、怪異であろうとなんであろうと人がかかわる事件には人の論理が存在していると語っている。

 エドワード・スミスなので、もうちょい斜め上の展開になるのかと思ったら、案外とタイトルとあらすじままの「プレイボーイの青年が、怪異な事件に立ち向かう」話になりました。最近、美青年が表紙の軽いミステリが流行っているけれど、その路線を狙っている感じです。探偵助手のアキヲくんをもっと前面に持ってくれば良いのに……。

【紳堂助教授の帝都怪異考】【エドワード・スミス】【碧風羽】【メディアワークス文庫】【イフリート】【幽霊画】【アニミズム】【ブラウニー】【媚薬】【人形使い】
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「顔のない魔術師」 ベン・アーロノヴィッチ

2013-08-04 | ミステリー・推理小説
「あなたが火の玉で倒したもっとも大きなものは?」
「タイガーだろうな」

 絶滅危惧種の方ではなく、パンツァーカンプフ=ヴァーゲン・ゼクス・アオスフ・Eの方だとナイティンゲール警部。

 他人を害する邪悪な目的で魔法を使う者が「ブラックマジシャン」だと警部は言うのだが、新米刑事のピーター・グラントとしてはその分類には承服しかねるのだ。
 だって、それは黒人の魔術師、つまり自分を意味することになるではないか……。

 次々に変死していくジャズ・ミュージシャンの謎と、股間を噛み切られていく連続殺人を、たった2人のロンドン警視庁特殊犯罪課(しかも課長は負傷中)が殺人課などと協力して追い詰めていくミステリの2作目。前作のラストで負傷した女性警官のレスリーは、命を取り留めたものの顔面が破壊されたままで、本人はもちろん読者もやりきれないままです。簡単に傷を治せる魔法はないよ……という事実がつきつけられます。

 さて、イギリスの軍の組織は頻繁に改組されるので、せいぜい第2次大戦当時のことでもはっきりわからないことが多いという話を読んだばかりだったのだけれど、こちらもいきなり「警察組織は数年で名称が変わるので、みんな正式名称よりも通称を好む」という話が出てきました。個人的にタイムリー。
 そして、イギリスの話であるせいなのか、やたら食事のシーンはあるけれど、湿気っていながら固くなっているサンドイッチとか、むやみに不味そうです。せいぜいグレービーソースのかかったソーセージくらいですが、これも読んでいて美味しそうには思えません。
 ヒロイン……というわけではないのだけれど、館付きメイドで黒髪吸血鬼のモリーも飯が不味くて、こっそり外食することが多かったというエピソードにもショボン。なんというか、いかにも英国舞台にした小説を読んでいるという気になります。

【顔のない魔術師】【ロンドン警視庁特殊犯罪課2】【ベン・アーロノヴィッチ】【山本のり】【ハヤカワ文庫FT】【ドクター・フー】【ブーヘンヴァルト強制収容所】【偉大なるマンチュー】【ドクター・モロー】【】
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「チャーチル閣下の秘書」 スーザン・イーリア・マクニール

2013-07-28 | ミステリー・推理小説

 第二次大戦下のロンドン。イギリス生まれながら、両親の死によってアメリカの叔母に育てられたマギー・ホープだったが、MIT進学資金のためにイギリスの舘を処分しようと渡英。いつの間にか友人らと同居生活をするようになって1年が経過していた。
 そんなにマギーに舞い込んできた仕事は、首相官邸でのタイピストというものだったが……。

 数学者なので、その知識を活かした仕事につきたいと思っていても、そういう仕事は自分よりバカな男たちにとられてしまい、カリカリしているマギー。
 タイピストなんか誰でもできると思っていたけれど、チャーチル首相の演説原稿や外交文書の清書とか、いろいろ重要な仕事も回ってきます。
 出だしの印象と異なってロマンス分は控えめで、戦時下のスパイアクションとしてはヒギンズよりぬるめ。ただ、ロンドン空襲やらIRAのテロを背景に、死んだはずの両親の謎を巡って陰謀が錯綜し、共同生活をしている友人たちとの友情や裏切りなどてんこ盛りで一気に読んでしまいました。
 これはこれでアリで、続きが楽しみ。

「わたしたち自身が、この戦争の新たな前線にいる」
 このナチスとの戦いは、遠くの前線の兵士だけの戦いではないと、マーガレット・ホープ。

【チャーチル閣下の秘書】【スーザン・イーリア・マクニール】【シライシユウコ】【創元推理文庫】【IRA】【セント・ポール大聖堂】【アプヴェーア】【白鳥の湖】【ロンドン空襲】【MI-5】【同性愛】 【オペレーションズ・リサーチ】【アラン・チューリング】【エニグマ】【RDF】 【クロスワードパズル】 【バトル・オブ・ブリテン】
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「オツベルと笑う水曜日」 成田良悟

2013-07-21 | ミステリー・推理小説
『私は、何一つ悪事を働いておりません。故に私は、己の身が清廉潔白である事を証明しようかと思います』
 乙野辺ルイこと通称オツベルは、芸能ゴシップからオカルト・都市伝説までを扱う三流雑誌の編集部に君臨する若き女帝。そのオツベルの編集部に突然配属されてきたのは、身長2mはあるのではないかという顔面に傷痕が走る巨漢、喜佐雪弘だった。
 凶悪な人相に反して常に低姿勢で礼儀正しい喜佐に、オツベルはなんでもいいから特ダネ記事をとってこいと放り出したのだが……。

 自分は悪人だと自負するルイと強面の新人記者・喜佐が、包帯男の連続強盗事件をきっかけに連続殺人事件に巻き込まれていくサスペンスアクション。根拠不明のオカルト記事の断片などから『バッカーノ!』『ヴぁんぷ!』『デュラララ!!』など他のシリーズと世界を共有していることがうかがわれるが、『越佐大橋』シリーズが始まるよりは少し前の時代みたい。
 ただし、これらシリーズとは関係なく愉しめるし、むしろ知らない方がいいかな。今、誰かに成田良悟の作品を1冊だけ薦めるなら、この作品になると思います。一気に読めて面白く、ストーリー展開やキャラクター設定の振れ幅がそれほど大きくなく、それでも十分アクの強いキャラクターが活発に動き回りますので。

【オツベルと笑う水曜日】【成田良悟】【メディアワークス文庫】【サスペンスアクション】【冤罪】【偽証】
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「香彩七色」 浅葉なつ

2013-07-16 | ミステリー・推理小説
「どうか覚えていてね。目に見えるものだけが、この世のすべてじゃないってこと」
 祖母の言葉は秋山結月に大きな影響を与えた。

 結月は匂いに敏感な女子大生。通りすがりのレストランや民家で調理されている匂いに誘われて、いつもふらふらしていて、太りにくい体質と言いつつも最近は体重の微増が悩みの種だ。
 そんな彼女が珈琲の匂いに誘われているうちに出会ったのは、古今東西の香りに精通する香道宗家の跡取りの神門千尋だった……。

 嗅覚は犬並みだけれど(食べ物以外は)何の匂いまでか知識不足で断言できない女子大生と、人嫌いで家出中の香道宗家跡取りが、ほのかな香りに隠された謎を解いていく3つの物語。日常系ミステリで、基本ほのぼの、少ししんみり……といったところかな。
 香道というと『丘の家のミッキー』で少し間違った方向にかじったことがあるだけでしたが、料理ミステリがありなら、香りミステリもありなんですね。

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「ダチョウは軽車両に該当します」 似鳥鶏

2013-07-04 | ミステリー・推理小説
 県民マラソン大会に、どこからか出現したダチョウが乱入!
 たまたま居合わせて捕獲することになった桃くんたち楓ヶ丘動物園の飼育員たちだったが、その様子がネットで公開されてしまい……。

「チンパンジーやニホンザルの群れなんかも、順位争いを見てると人間並みに黒いですよ」
 動物は無垢で人間は醜いというのは、単なる思い込みだよと桃くん。

 残念な動物園スタッフが活躍する動物園ミステリの第2弾。
 今回はいつも折り紙と共にあるガフのようなアイドル飼育員の七森さんの出番は控えめな感じで(印象だけで実際はそんなに少なくは無いけれど)、服部くんの正体不明な変態さ加減がクローズアップされています。
 あいつはいったいなんなんだ?

【ダチョウは軽車両に該当します】【似鳥鶏】【スカイエマ】【文春文庫】【製薬会社】【インフルエンザ】

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「覆面作家の愛の歌」 北村薫

2013-06-24 | ミステリー・推理小説
 新妻千秋は大富豪の御令嬢。そして「覆面作家」というペンネームでミステリー界にデビューしたのだが、彼女はまた現実に起こる事件の謎までも鮮やかに解き明かす、名探偵だった……。

 覆面作家の先生とどこか頼りない編集者のリョースケ、それにリョースケの兄で警察官やらライバル出版社の編集者まで加わってのミステリ短編集の第2弾。
 最初は千秋さんのことを「なんだ、こいつ」と思っていたリョースケも、だんだん気心が知れてきて阿吽の呼吸に。それに連れて、いざというときの気合いが変わってきています。身体を張って作家を守る編集者の心意気!(たぶん違います)
 ハードカバーでそろえていたけれど、文庫版は雑誌掲載時のイラストが収録されていると聞いて、あらためて購入。イラストはさておき、これくらいの薄さの文庫は読みやすいので、ついつい手にとって何度も読み返してしまいます。

【覆面作家の愛の歌】【北村薫】【高野文子】【角川書店】【“覆面作家”シリーズ】【春のお菓子】【スナップ写真】【シェークスピア劇】【ペンギン】【路線価】
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「ハルさん」 藤野恵美

2013-05-29 | ミステリー・推理小説
「友情ってなくなったりしないよね」

 今日は一人娘の結婚式。
 人形作家の「ハルさん」は式場へと向かいながら、男手一つで育てた娘との日々を思い起こします。
 その中で語られる5つの謎は、小さかった「ふうちゃん」の成長の彩りとなるものでした……。

 お弁当から玉子焼きが消えたのはなぜ? 「ツリーの間」とはどこ?など、少女が保育園児だった頃から小学生となり高校生となり、成長していく今日までのタペストリーを、天国にいる奥さんの瑠璃子さんとの対話の中で回想していく物語。
 ミステリ難度は低めで、素直に「頼りない花嫁の父の回想」として読むべき話。しかし、娘は着々と成長してしっかりしていくのに、仕事を口実に引きこもりがちな父親はぜんぜん成長していなくて、今ひとつ頼りない気がするところがポイント。
 娘が結婚して大丈夫か、はなはだ不安です。

【ハルさん】【藤野恵美】【大塚砂織】【創元推理文庫】【花嫁の父】【日常の謎】
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「少女は黄昏に住む」 山田彩人

2013-05-28 | ミステリー・推理小説

 童顔で甘い物好きだけれど、任侠映画を愛して日本男児を誇る姫山誠は刑事。しかも数々の難事件を解決してきた名刑事『名探偵マコちゃん』だ。
 しかし、その推理は警察OBの作家に助言されていたというのが真相で、さらに真が初めて知った真実は、その謎を本当に解いていたのは引きこもりのオタク女の琴乃だということだった……。

 やたら偉そうで偏見バリバリの童顔のスイート刑事が、これまた偏見を助長するだけの性格が悪くて嫌みな少女探偵に使いっ走り扱いされながら事件を解決していく話。もうちょいどこかで突き抜けないと笑い飛ばすのに苦労します。
 ホームズがいて、レストレード警部がいるのに、愚直なワトスン博士がいないミステリは人間関係が終始ギスギスしていて構図として不安定なのです。
 これだけギスギスしているから最終話のインパクトが活きてくるわけですが。

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「悩み相談、ときどき、謎解き?」 成田名璃子

2013-05-25 | ミステリー・推理小説
 田中花子は夜と昼との顔を使い分けていた。
 昼間は周囲から何を考えているかわからないと噂される、冴えないOLのミス・ブースカ。夜は街角の占い師として人気のミス・アンジェリカ。
 最初は単なるインチキ占いだったが、ときおり本人の意志とは関係なく降りてくる言霊が妙に的中することから評判となり、気がつけば持ち込まれる一風変わった悩みに翻弄されるようになっていた……。

 日常系というほどミステリ要素は強くなく、タイトル通り「ときどき、謎解き?」。最後に「?」がつくところがポイント。女性の悩みのエネルギーを、占いを介することによって地球緑化の資金へと変換する、緑のマネーロンダリング小説というべきかな。

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「質屋「六文屋」の訳アリな訪問客」 吉川美樹

2013-05-21 | ミステリー・推理小説
 ビルの谷間の狭い路地を抜けた先にある質屋「六文屋」は、喫茶店が併設されていて、どちらが主だかわかりかねる不思議な店なのだが……。

 最近多い「お店ミステリ」で今回は質屋。
 ポストカードやら黄色い浴衣やら、持ち込んだ当人にもわからない謎を、店主である片倉十士の目利きと、喫茶店を受け持つ少女ミカのテキトーな推理で明らかにしていく話。
 ただ、日常系ミステリとしても軽め。

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「女王陛下の魔術師」 ベン・アーロノヴィッチ

2013-05-20 | ミステリー・推理小説
 美中年っぽくて、ちょっと手に取りにくい表紙イラストですね。自分はハリー・ポッターみたいな架空のキャラクターではないと、憮然とする警部はかわいいですが。

 ピーターは「オバマの替え玉に使えるんじゃないか」とジョークの種にされるようなアフリカ系の新米巡査で、彼の配属先の第一希望は殺人課。第一線で活躍して市民のために働きたいというのは立前で、本当は派手に活躍して出世してかっこいい車を乗り回したいだけ……という本音はナイショだ。
 そんな彼が特殊犯罪課に配属されることになったのは、通り魔殺人の目撃情報を通りすがりの幽霊から聞かされたのがきっかけで……。

 こちらもニュートン卿が最後の錬金術師ではなく、科学と魔法を統合した近代魔術の始祖のような位置づけです。一般人は何も知らされてはいないけれど、警察には魔術やオカルトにかかわるたった1人の部署があり、そこに配属させられた新米警官の冒険。ちょうど香月日輪の『全裸男と柴犬男』を読んだばかり。警察の日英オカルト事件対策の比較をするつもりで読了。
 ピーターは今まで魔法のマの字も信じていなかったのに、「この目で見たものは信じる」と、ちょっと適応が早すぎます。もっとも、特殊犯罪課に配属というか英国唯一の魔法使いであるナイティンゲール主任警部に弟子入りするや否や、原因不明の連続殺人は暴動へとスケールアップしていくし、テムズ川で男神と女神の紛争に介入せざるを得なくなるし、メイドは牙がはえてるし……そりゃあ、慣れるしかないですね。 

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「全裸男と柴犬男」 香月日輪

2013-05-07 | ミステリー・推理小説
 石田智宏がマンションに帰宅してみると、彼の部屋には見知らぬ全裸の男がいた。
 男は煙草を斜に咥えたまま、智宏を見て言った。
「お前、誰?」

 霊感ゼロの若い刑事が警視庁のオバケ対策部署に配属され、曲者揃いの遊撃捜査班の中で憑依事件やら生き霊相手に仕事をしながら美味しい食事を堪能する話。
 このタイトルとホワイトハートというレーベルに恐れおののきながら購入してみたけれど、いつもの香月日輪で一安心。他作品でちらりと見た顔、聞いたような名前の登場と人物も顔を見せる、『妖怪アパートの幽雅な日常』や『僕とおじいちゃんと魔法の塔』と世界を共有する作品です。これらよりは説教臭さは少なめかな。
 それにしても帯がでかいなー。

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