付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「キングの身代金」 エド・マクベイン

2008-10-08 | ミステリー・推理小説
「わたしが変わるとは思わん。仕事はわたしの命の一部で、仕事なしでは死んだも同然だ」
 ダグラス・キングの言葉。

 グレンジャー製靴会社の重役キングは、野望達成を目の前にしていた。会社乗っ取りに必要な資金の確保に成功したのだ。
 だが、そこで思わぬ事態が発生した。
 身代金目当ての男たちが子供を誘拐したのだ。それも、キングの息子と間違えて、彼の運転手の子供を。
 しかし、誘拐犯は誘拐する子供を間違えたと指摘されても動じなかった。誰の子供でもかまわない。とにかくキングが身代金を払わなければ子供は死ぬのだ……。

 すべての財産を抵当に入れてかき集めた買収資金を身代金にしろ、いや、してくださいと運転手夫婦や妻や子供や果ては警察からも迫られるキングの周囲に集まってくるのは、仲介を名乗り出る詐欺師に、今が足を引っ張るチャンスと狙うライバルに、雲霞の如くのマスコミたち。
 孤立無援のキングは果たして会社乗っ取りに成功するのか!?

 黒澤明が映画化したり、古谷一行主演のテレビシリーズでもエピソード化された代表作。もっといろんな事件や人間が錯綜した方が87分署らしい気もしますけれど、やはり今回の主役は貧乏で無学な靴工場の下っ端からのし上がったダグ・キング。
 この話のミソは「誘拐するのは誰でも良い」というところで、鼻持ちならぬ野心家のキングですが、他人の子供の身代金を払うために破産しそうになる姿についつい応援したくなります。

【キングの身代金】【87分署シリーズ】【エド・マクベイン】【ハヤカワ・ミステリ文庫】【誘拐】
コメント
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