付け焼き刃の覚え書き

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「荒野のホームズ」 スティーヴ・ホッケンスミス

2008-10-13 | ミステリー・推理小説
「品質改良ってのは牛の場合だ。人間は自分で道を選ぶもんですよ」
 「育ち breeding」に対して「品質改良 breeding」で応えたオールド・レッドの言葉。

 アムリングマイヤー家の生き残りもいまや兄“オールド・レッド”グスタフと弟“ビッグ・レッド”オットーの2人だけ。洪水によって家も家族も失った兄弟は、雇われカウボーイとして食うや食わずの生活をしている。
 しかし、かろうじて雇われた牧場はいかにも怪しげだった。
 雇われたカウボーイたちは銃を取り上げられ、厳しい監視の下で単調な作業に従事させられるだけだ。
 ところがある日、彼らは牛の暴走に踏みにじられた死体を発見する。それは出かけたまま戻らない牧場の支配人であったが、そこでオールド・レッドは不審な点に気がついた。
 無学で文字すら読めないオールド・レッドだったが、彼はまたシャーロック・ホームズの信奉者であり、その推理法の実践者であった!

 ウェスタン+ミステリという、ちょっと他ではお目にかかれないような組み合わせの1冊だけれども、なおかつホームズもののパスティーシュ。最初、この作品でのホームズは「小説の人物」という扱いだと思っていたら「実在の人物」なのですね。『赤毛連盟』もあくまでワトスン博士が雑誌に寄稿した作品。そして兄弟は、ホームズがライヘンバッハの滝に落ちて行方不明との最新ニュースを最悪の形で聞かされます。
 自分たちが赤毛だったことから『赤毛連盟』にのめり込み、ついには探偵ホームズの推理法を頭に叩き込んだオールド・レッドことグスタフ。無法西部のカウボーイとしては学もあるが、なにより兄想いの巨漢オットー。この兄弟コンビが良い感じにかみ合ってます。
 ちゃんと「名探偵 皆を集めて “さて”といい」のミステリであり、カウボーイが馬に乗り牛を追い銃を撃ち合うウェスタン小説であり、また原作をうまく取り込んだパスティーシュです。

【荒野のホームズ】【スティーヴ・ホッケンスミス】【名探偵】
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