付け焼き刃の覚え書き

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「最後の星戦~老人と宇宙3」 ジョン・スコルジー

2009-07-02 | ミリタリーSF・未来戦記
「征服によって生まれた帝国は長続きしない。支配者の強欲や果てしない戦争への渇望によって内部から崩れていく」
 コンクラーベのガウ将軍の言葉。つい「根比べ」と置き換えたくなりますが、実際に根比べです。

 なぜか邦訳タイトルが名作や名画のパロディになっている『老人と宇宙』シリーズの第3弾は「最後の星戦」。いかがなものかと思わないではないけれど、確かに内容にふさわしい邦訳なので文句はつけられません……。

 コロニー防衛軍を無事に退役したジョン・ペリーは、戦闘用ではない肉体を手に入れ、ゴースト部隊出身の妻ジェーンと養女ゾーイと共に植民惑星ハックルベリーで穏やかな日々を過ごしていた。
 そこに突然降って湧いたのは、新たに植民される惑星ロアノークを率いる行政官職の任命。各植民惑星の思惑が絡んでしまった新たな植民には、中立な立場の軍出身者であり、かつ植民者としての経験を積んでいる者がふさわしいというのだが……。

 やっぱり罠でした。
 老いさらばえて死ぬよりはと宇宙世界で若い肉体を手に入れて戦争に飛び込むジョン・ペリーの物語だった『老人と宇宙』、ジェーン・セーガンが所属していたゴースト部隊兵士の物語『遠すぎた星』に続くのは、退役し結婚したペリーとジェーンの物語です。ひとことで総括すれば「人間は実現性は高いけれど聞きたくない答より、実現性は低くても聞きたい答を望む」でしょう。それから「イヤなやつだと思っていても、そしてどれだけつき合っても好きになれなくても、互いの能力を認めるかどうかは別問題」。気にくわない相手でも有能であれば能力は認めてつきあえるというあたりが、さすがペリーは老人だと思いました。頭脳は老人、体は若者。
 
 最近、読書スピードが落ちていますが、それでもさくさくと読めるというか、読みたくなるテンポの良い展開と先の読めないハラハラ感が最後まで続きます。

 キャラ的には今回初登場の監査官助手サヴィトリ・グントゥパーリがお気に入り。あまのじゃくで堅物でいつも不機嫌そうなのに有能。控えめだけれど超有能。田舎に眠らせておくのがもったいない。しかし主人公を食ってしまうような大活躍をするのではなく、ポイントをきちんと抑え、主人公たちの道を整えるといった役どころ。でも目立つ。そこがいいのだ。
 一方、すごく重要な役目を与えられながら、途中で物語の舞台から消えてしまうゾーイについては4作目であらためて体験が語られることになるそうです。1作目と2作目の関係と同じですね。
 でも、狼男はどうなったんでしょう?

【最後の星戦】【老人と宇宙】【ジョン・スコルジー】【前嶋重機】【ゲーム番組】【ドッジボール】【狼男】

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