付け焼き刃の覚え書き

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「“文学少女”と死にたがりの道化」 野村美月

2009-04-16 | 本屋・図書館・愛書家
 野村美月は『赤城山卓球場に歌声は響く』から読み始めてはいたけれど、あまり熱心な読者ではなく、卓球シリーズだけは抑えておこう程度。ありふれた舞台に奇想天外だけれどもゆる~い展開、脱力系の笑いにほんほり暖かいストーリーというのが自分にとっての野村美月作品です。それが上手くいくときもありいかないときもあり。
 それで久しく読んでいなかったのだけれど、気がつくと息子の本棚に文学少女シリーズが並んでいて、「野村美月を面白いと思うんだ」と手にとって読んでみたら確かに面白かったわけで、借りてきて久々に堪能させてもらいました。

 部長が勝手に相談ポストを設置したことから、文芸部に「どうかあたしの恋を叶えてください!」と相談が舞い込んできた。もちろん部長は責任をとらず、もう1人の部員にして後輩である井上心葉はひたすら恋文の代筆をするはめに。
 おかげで依頼者の恋は順調だというのだが、心葉は恋文の宛先人が存在しないことに気づいてしまう……。

 元覆面少女作家な少年と本のページを食べてしまう文学少女の2人を主人公に、太宰治の「人間失格」を軸に展開される学園ミステリー。太宰治をモチーフにしている段階でハッピーエンドでは終わらないことが約束されているようなものだけれど、それを「ほろ苦い」程度で収めてしまうのが野村美月かな。普通に書いたらドロドロの人間関係が交錯するサイコスリラーにでもなりそうなところを「ビター&ミステリアス・学園コメディ」にしちゃってるんですから。
 ミステリアスだラブコメだといってもほんわかゆるゆるで、あまり萌えとかコメディといった感じもないけれど、続きが楽しみなシリーズです。きついことばかり言う琴吹ななせとか、ちょっとだけの出番のキャラクターたちの今後も気になるところです。

追伸。玄関先に高校図書館から借りてきたと思しき文学全集の太宰治が……。

【“文学少女”と死にたがりの道化】【野村美月】【太宰治】【弓道】【図書室】【人間失格】【恋文代筆】

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